桜花妖々録   作:秋風とも

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第125話「パラダイス・ロスト#10」

 

 レミリア・スカーレットは、どこか疲れたように肩の力を抜いていた。

 ふぅと、思わず嘆息をする。彼女が座る客室には先程まで何人かの客人が集まっていたのだが、今はレミリア一人である。薄暗い室内に、糸を貼ったような静寂が漂っている。人の気配はなかった。

 

「……まったく」

 

 レミリアは一人呟く。

 

「まさか魂魄妖夢と同じ反応を示されるとは」

 

 予測出来なかった訳ではない。あんな事実を突きつければ、彼女らは必ず何らかの反応を見せるだろうと。それは判っていた事だったのだから。

 判っていた上で、レミリアはあのような態度で真実を突きつけた。

 

 

 *

 

 

「ちょっと、待ってよ……!」

 

 真実を告げた途端、堪らずといった様子でいきり立ったのは、宇佐見蓮子という人間の少女だった。

 鬼気迫る表情を浮かべている。信じられぬものでも見ているかのような、そんな表示だ。拒絶感が入り混じったような雰囲気。向けられるこの目を、レミリアは知っている。

 『能力』を使う必要もない。この後に彼女が何を言ってくるか、凡その予測はつく。故にレミリアは、先んじてその回答を用意していた。

 

「それって……。それじゃあ、貴方は……。進一君の、事を……!」

「ああ。見殺しにしたとも」

「ッ!?」

 

 蓮子が疑問を口にし終える前に答えを提示すると、彼女の表情はますます愕然の色に染まった。文字通り言葉を見失っている様子である。

 ああ。やはり、レミリアの予想通りだ。相手は外の世界の人間。そうでなくとも、こんな事実を突きつけられれば、返ってくる反応は大体二極化される。驚愕の後、哀しみに沈むか、或いは。

 

「貴方は、全部分かってて……。どうなるのか、理解していて……。それなのに……」

 

 震えている。だが、彼女から伝わってくるこの感情は、哀しみではないように思う。

 そう。彼女は、哀しみに沈んでいる訳ではない。

 

「何よ、それ……」

 

 宇佐見蓮子という少女の場合は、おそらく()()だったのだと。そういう事なのだろう。

 

「何なのよそれッ!」

 

 ()()。宇佐見蓮子は、この日一番の感情の昂りを見せていた。

 勢いよく身を乗り出す。その拍子に座っていた椅子が音を立てて倒れるが、それでも彼女は意に返さない。──鋭い眼光を向けられている。レミリアに対して、ともすれば憎悪にも近い感情を向けているようで。

 

「人……、人が、死んでるのよ……!? 殺されたのよッ!? それなのに貴方は、何も思わないって言うの!?」

「フッ……。喚き散らすな、品がないぞ。何を今更熱くなっている?」

「今更、って……!」

 

 そんな宇佐見蓮子に対して、レミリアは言い放つ。

 

「この場に来てからというものの、お前からは諦観めいた雰囲気が漂っていたのだがな。てっきり、自らの意志の殆どを手放したのだと思っていたのだが」

「な、何を、言って……」

「だが、分かりやすく憎悪の対象が現れた途端に、その態度。お前──」

 

 はっきりと突きつけなければ、この人間は判らない。

 

「──()()()()()()()()()?」

「……っ」

 

 ぐうの音も出ない、とでも言いたげな表情を蓮子は浮かべていた。

 内心、彼女は自分でも判っているのだろう。自身の思考と行動が、どうしようもなく矛盾に満ちている事くらい。だが、判っていたとしても、それでも尚この人間は逃避する事を選択している。それも恐らく、無意識に。

 

「お前は、恐怖しているのだな。この世界の理不尽さに。そしてこの世界の不条理さに」

「恐、怖……?」

「絶対的な“死”の体現。それを間近で認識して、お前はこの世界に存在する幻想の本質に触れてしまった。お前はそれに対して文字通りの()()を抱いていたのかも知れないが、実際のところは夢や希望なんて取り分け溢れている訳でもない。幻想だって、一つの現実だ」

 

 宇佐見蓮子が幻想に対してどれほどの憧れや拘りを持っていたのか。マエリベリー・ハーンを監視する過程で、レミリアもそれを多少は理解している。故に、突きつけられた現実とのギャップを受け入れられないのだろうと、そう察する事は難しくない。

 

 幻想郷は、最早楽園などではない。

 楽園なんて、そんなものは既に()()している。

 

 そのような事実に対して、彼女は恐怖している。これまで憧れを抱いていたはずの、幻想に対して。身近な人間の死を目の当たりにした事により、それが胸中に深く根強いてしまっているのだろう。

 

 宇佐見蓮子は、そんな心を必死になってひた隠しにしようとしている。隠して、目を背けて。そうして自分自身を保とうと躍起になっているのだ。

 それ故の矛盾。その場凌ぎで形成された仮面なんて、どこまでも脆く壊れ易い。少しでもつつけば、簡単に崩れ落ちてしまう。

 

「恐、怖……。恐怖なんて、そんなの……」

 

 自分自身に言い聞かせるかのように、宇佐見蓮子は何かを呟いている。レミリアの言っている事は間違ってる。自分は、恐怖などしていないのだと。

 

「話の論点を、すり替えないで……。私の事なんかどうでもいい……! 貴方が進一君を見殺しにした事には変わりないじゃない!」

「まぁ、それはそうだな」

「ッ!? それはそうだなって、何なの……。ふざけないでよ! 貴方が何らかの行動を起こしていれば、進一君は……! 進一君は……!!」

「れ、蓮子、待って……。お願い……!」

 

 怒号を上げる宇佐見蓮子を宥めようと声をかけたのは、傍らにいるマエリベリー・ハーンだった。

 縋るような目つき。振り返った宇佐見蓮子は、そんな彼女と視線がぶつかる事となる。その瞬間までレミリアに対する感情を昂らせていた彼女だったが、マエリベリー・ハーンの視線に射抜かれた途端に言葉を飲み込んでしまう。

 

 酷い表情だ。

 恐怖だとか、悲痛だとか。そんな感情が複雑に入り混じったような──。

 

「お願い……。もう、止めて、蓮子……」

「メリー……?」

「見たく、ない……。蓮子の、そんな姿……」

「……っ」

 

 息を飲み込んだ宇佐見蓮子は、返事すらもまともに出来ない状態だった。

 我に返った、とでも言うべきか。きっと彼女も理解しているのだろう。こんな所でレミリアに怒号を荒らげた所で、生産性なんて欠片も無いという事に。

 判っていたのだ。宇佐見蓮子は、とっくの昔に判っていた。

 もう、何もかもが、どうしようもない段階に突入してしまっている事に。

 選択肢なんて、残されていないのだという事に。

 

「わた、しは……。それでも……」

 

 震えた声。まるで自分自身にも言い聞かせるかのように、蓮子は言葉を口にする。

 

「それでも、私は……。貴方の事を、信用出来ない……」

「ほう?」

 

 余計な口は挟まずに、レミリアは蓮子に続きを促す。

 

「貴方は、言った……。進一君が死ぬ事は、自分の計画遂行の為に必要な要素だったって……。つまり貴方にとって、人の生命なんてその程度のものという事でしょう……? 自分の目的の為ならば、見捨てる事も、犠牲にする事も、厭わない……」

 

 焦点の合わない瞳。震える彼女がその胸に抱くのは、恐怖と怒り。そして狼狽だろうか。

 壊れかけの心で必死になって絞り出すその言葉は、しかしレミリア・スカーレットにとって全くの予想外という訳でもなく。

 

「そんなの、『死霊』が……。今の幽々子さんがやっている事と、何が違うって言うの……?」

 

 『能力』を使う必要すらない。

 

「貴方は、メリーの事も自分の計画に含んでいるみたいだけど……。だけど、いざとなったら進一君と同じように……」

 

 ()()だ。

 一ヵ月前。計画の内容を魂魄妖夢に明かした時と、同じ。

 

「未来を変える……? 『運命を操る程度の能力』……? 何よそれ……。そんなの、結局は机上の空論じゃない……! それで本当に上手くいって、バッドエンドを回避できる保証なんてどこにもない……!」

 

 ()()()()だった。

 

「そんな貴方の計画に乗る事なんて出来る訳がない……! メリーを、犠牲になんて出来る訳がないッ!」

 

 正気を失っているかのような表情。少なくとも、冷静さに関しては完全に欠落している様子で、宇佐見蓮子はレミリアに向けてそう言い放った。

 強い既視感をレミリアは覚えている。何となくこうなるだろうと予想は出来ていたので、取り分け驚いている訳ではないが、それでも多少は思う所がある。

 

 否が応でも、想起する。

 

『ふざけないで下さいッ! そんなこと……!!』

 

 一ヶ月前のあの日。

 魂魄妖夢は、宇佐見蓮子と確かに同じ反応を示した。

 

『そんな計画、容認なんて出来る訳が無い! 進一さんだけでなく、メリーさんまで捨て駒にするつもりですかッ!?』

 

 それは、最もな感情だったのかも知れない。人の生命を切り捨てている時点で、西行寺幽々子がやっている事と何が違うのだろうと。結局、同じ事をしているのではないかと。

 その通りだ。得られる結果は違っても、過程は大差ない。犠牲の上に成り立つという意味で考えれば、何も──。

 

「お、おい、少し落ち着けってッ。熱くなるのも判るけど……」

 

 魔理沙が宥めようと声をかけるが、それでも蓮子の熱は下がらない。激情を昂らせたままで、レミリアへの睥睨を続けている。

 

「蓮、子……」

 

 必死の形相でそう訴える宇佐見蓮子を目の当たりにして、マエリベリー・ハーンは完全に言葉を見失っている様子だった。

 最早、何も言えなくなってしまっている。これ以上は止めて欲しいという想いは確かに残っているのだろうけれど、蓮子の激情が自らに起因していると知ってしまい、それ故に何も出来なくなってしまったのだろう。

 

 自分がこれ以上口を挟んでも、状況が悪化する結果にしかならない。

 彼女はそれを、痛いくらいに理解している。

 

 最早話し合いを続けられるような雰囲気ではなくなってしまった。宇佐見蓮子はこれ以上、レミリアの言葉に聞く耳も持たないだろうし、マエリベリー・ハーンだってあの様子では──。

 

「もう、いい……」

 

 そのまま蓮子は踵を返す。まるで、レミリアの全てを、拒絶しているかのように。

 

「どこに行く? 話はまだ終わってないぞ」

「……もう、貴方と話す事なんてない」

 

 拒絶。

 彼女との間に、決定的な溝が出来てしまったような感覚がある。最早、修復なんて不可能であるかのような、そんな溝が。

 

「……行こう、メリー」

「蓮、子……?」

 

 そして蓮子は、傍らにいた彼女にも声をかける。

 

「時間の無駄よ。これ以上、あの人の話を聞く必要なんてない」

「で、でも、私……」

「メリーが背負う必要なんてない。メリーは関係ないじゃない」

「関係ないって……」

 

 それでも迷いが振り切れない様子のマエリベリー・ハーンに対して、宇佐見蓮子は強引な行動に出る。

 

「ほら、行こう。帰らなくちゃ」

「帰るって……。きゃっ! れ、蓮子……!?」

 

 腕を掴んで引っ張る。なすがままに立ち上がらされたマエリベリー・ハーンは、そのまま蓮子に引っ張られ続けるような形で。

 

「メリーはもう、何もしなくて良いんだから」

「蓮、子……!」

 

 そのまま二人は部屋を後にする。乱暴気味に扉を開けて、どこか逃げるような足取りで。

 宇佐見蓮子は一度もこちらを振り返らない。最早疑う事も否定する事も出来ないような、決定的な拒絶感。

 

 一瞬。部屋を出ていく瞬間、マエリベリー・ハーンだけは、どこか申し訳なさそうにこちらを一瞥したのだけれども。それでも彼女は、相も変わらず宇佐見蓮子になすがまま。共に部屋を後にしてしまう。

 

「おい、待てって二人とも! ああッ、くそっ! やっぱこうなるよな……」

 

 二人を宥めようとしていた魔理沙が、乱暴気味に頭を掻きむしっている。彼女は尽力してくれたようだが、所詮、昨日今日会ったばかりの状態では言葉なんて届くはずもなく。

 

「でも、このまま放ってはおけないよな……。ったく、またこんな役回りかよ」

「フッ……。最早お約束だな魔理沙」

「お前が言うなっ! 誰の所為だと……」

 

 ぶつくさと文句を言いながらも、魔理沙もまた部屋を後にする。飛び出して行ってしまったあの二人を、フォローする為だろう。

 まったく、別に頼んでなどいないのに、人が良いと言うか何と言うか。損する性格だとは自覚しているようだが。

 

「……やっぱり、あれが普通の反応ですよ」

 

 ──と。これまで黙りこくっていた魂魄妖夢が、ふと口を開く。

 

「避けられない犠牲の上に成り立つ平穏なんて、そんなの……」

「綺麗事だな」

 

 ばっさりと、レミリアは切り捨てた。

 

「何の対価もなしに理想を叶えたいなんて、そんなものはあまりにも虫が良すぎる話だ。大なり小なり、この世界のあらゆる事象は必ず何らかの犠牲の上に成り立っている。今回もその例に漏れないという話だけではないか」

「それは……」

「人が生きていくには、例えば食事というプロセスが必要だ。その行為だって、動植物を犠牲にしていると捉える事だって出来ないか?」

「……っ」

「まぁ、()()()()()だ」

 

 そんなの、彼女だって理解しているはずなのに。

 

「判っているか? 今のお前の思考は、あまりにも──」

「──私も、メリーさん達を追いかけます」

 

 レミリアの言葉を遮るようにして、妖夢はそう言い放つ。

 

「魔理沙ばかりに任せてしまうのも、悪いですから」

 

 あまりにも一方的。これ以上、レミリアの言葉を聞くつもりなどないという事か。

 いや、それも少し違う。恐らく彼女は、()()()()()。未だに目を背け続けている。レミリアではなく、自分自身から。判っているはずなのに。理解しているはずなのに、それでも。

 

「私が、行かないと……」

 

 魂魄妖夢は、目を背け続ける。

 義務感のような台詞を言い残すと、彼女も魔理沙達を追って部屋を後にしてしまった。

 

 

 *

 

 

「蓮子! ねぇ、待って! 待ってよ……!」

 

 何度もそう呼びかける。けれどもメリーが幾らそう訴えようとも、蓮子は足を止めてくれない。半ば強引に、メリーの腕を引っ張り続ける。

 紅魔館の廊下を進んでいく。道は分かっているのだろうか。恐らく、闇雲。きっと彼女は、我を失っている。自らの感情をコントロール出来ていない。だから、メリーの声だって届かない。

 

「蓮子……」

 

 駄目だ。

 ただ、声をかけるだけじゃ駄目だ。メリーの意思を、もっと、明確に行動として示さなければ。今の蓮子には、届かない。

 

「……っ!」

「え……?」

 

 少し強引に、蓮子の腕を振り払う。そこでようやく、彼女の足が止まった。

 蓮子は呆けた声を上げる。どうして? 何で? と。そう言いたげな視線で、こちらを振り向いて。

 

「こんなの、おかしいわよ。蓮子……」

 

 そんな蓮子に向けて、メリーは言う。

 

「こんな、一方的に、逃げ出すみたいな……」

「……おかしい? おかしいって、どういう事……?」

 

 しかし蓮子は、メリーの言葉を受け入れてくれなかった。

 

「おかしいのはあの人の方でしょう!? 未来を変えるだとか何なのか知らないけど、進一君の事を見殺しにして……! しかも今度は、メリーまで利用しようなんて……!!」

「そ、それは……。でも、だけど……」

「な、何……? メリーはまさか、あの人の肩を持つって言うの……?」

 

 感情を昂らせる蓮子。上手く言葉を紡げずに言い淀むメリーに対して、彼女は一方的に解釈する。

 けれどもその解釈は、歪曲。まるでメリーに裏切られたのではないかと、そんな心情を抱いているかのような面持ちで、蓮子はメリーの両肩を掴んで。

 

「嘘でしょう……? メリーだって、わかってるはずよ……。あの人は、普通じゃないって……」

「蓮……子……?」

「そう……。きっとメリーは、混乱しているのね……。無理もないわ。あんな、突拍子もないような話を聞かされて……」

 

 矢継ぎ早に言葉を続ける。

 ああ、でも、何だろう。彼女の、この目は。

 

「八雲紫の忘れ形見……? だから、鍵だって……? は……。そんなの、妄言よ。戯言に違いないわ……」

「…………っ」

「有り得ない……。そんな特別、有り得る訳が無い……。メリーは、普通なの……。疑う余地なんて、微塵もないの……」

 

 彼女から感じる、この違和感は。

 

()()()()()()……! 特別なんかじゃ、ないはずなのよ!」

 

 ()()()()()()

 この時、メリーは確信した。──いや。ようやく気付く事が出来た、とでも表現するべきか。レミリアに様々な事実を突き付けられて、混乱して。いつしかメリーは、視野が狭くなっていた。自分自身の事しか、考える事が出来なくなっていた。

 故に、気づかなかった。向き合う事に遅れてしまった。

 

 メリーの事を心配し、追いかけて来てくれた蓮子。けれども彼女だって、普段通りの彼女に戻れた訳ではない。自ら立ち上がって、前を向けるようになった訳ではない。それはあくまで、表面上。平静を保てているように()()()()()()()に過ぎなかったのだ。

 

 そう。最早、目を背ける事なんて許されない。

 宇佐見蓮子は、()()()()()

 

「────ッ」

 

 そう認識した途端、メリーは耐え難い苦痛に襲われた。

 それは、触れる事さえも憚れるような。向き合う事なんて到底出来ぬような、そんな苦痛。忌避感、とでも表現できようか。

 心の奥のそのまた奥から強い拒絶感が湧き上がる。無意識のうちに、メリーは蓮子の両手を振り払った。

 

「メリー……?」

「な……なん、なのよ……。それ……」

 

 震える声で言葉を紡ぐ。──否。()()()、言葉が溢れてくる。

 心臓の鼓動が煩い。どくん、どくんと。激しく高鳴り続けていて。

 

「私の、って……。蓮子のって、どういう事……」

 

 頭の中に僅かに残った冷静な思考が、まるで客観的に自分自身を分析しているような気がする。故にメリーは、認識していた。自覚を持っていた。

 冷静じゃないのは蓮子だけではない。自分だって、同じ状態なのだという事を。

 

「何なの……。私は蓮子の、何だって言うの……!?」

 

 言葉が勝手に口をつく。感情を上手くコントロールする事が出来ない。

 

「勝手な事を言わないで! そうやって、私に感情をぶつけて……! だけど一方的よ! 結局、蓮子は私の事なんて見ていない! ただ、自分を納得させたいだけでしょう!? 自分自身に、必死になって言い聞かせて……!」

 

 ああ。何だろう、これは。

 何を言っている? 自分は、何を言おうとしている──?

 

「下手な誤魔化しなんていらない! はっきりと言ったらどうなの!?」

 

 踏み出す。

 踏み込んでしまう、このままでは。

 

(ダ、メ……。私……)

 

 だけど。

 

「私が……! 私の事が、怖いんでしょう!? だって……!」

 

 いけない。これ以上を口にしては駄目なのだと、そう頭の中では理解しているはずなのに。

 

「だって、私は……!」

 

 それなのに。

 

(言っちゃ、駄目……。こんなの……)

 

 身体が、言う事を聞いてくれない。

 

「私はッ!!」

 

 言ってしまう。決定的な一言を。そして認めてしまう。

 自分は、特別だ。()()なんかじゃない。

 

 そう。

 自分は、()()などでは──。

 

「そこまでだっ!」

 

 ──と。メリーの言葉は、不意に流れこんできた大声によって掻き消された。

 反射的に言葉を飲み込む。私は──。その後に続くはずだった言葉は、けれども音となる前に塞き止められた。

 

 誰だ、一体。お節介にも介入してきた、その人物は。

 

「ったく。怒号が聞こえてきたと思ったら、まさかこんな事になってたとはな」

「あ……」

 

 見覚えのある姿が、目に入った。

 白と黒のエプロンドレス姿の女性。部屋から飛び出したメリー達を、追いかけてきてくれたのだろうか。

 

「レミリアの奴、流石に突き放し過ぎだよなぁ……。私も、もうちょい早いタイミングで割り込めば良かったか」

 

 やれやれとでも、言いたげな。同時に軽い自己嫌悪にも陥っているような彼女は。

 

「私達も、色々と悪かったな。だけど、仲違いなんて絶対に駄目だ。お前ら友達同士なんだろ? だったらちゃんと向き合って話し合わないと、いつか後悔する事になるぞ」

 

 霧雨魔理沙は。

 

「まぁ、あれだ。人生のちょっとした先輩からのアドバイスってヤツだぜ」

 

 どこか、もの哀しげな表情を浮かべてそう口にしていた。

 

 

 *

 

 

 どかんと、不意にそんな大音を立てて部屋の扉が開け放たれた。

 蓮子達が退出してから数分。一人で椅子に腰掛けていたレミリアだったが、やれやれと言った様子で思わず嘆息する。一体誰がこんな事を──なんて、考えるまでもなかった。今の紅魔館でこんな風に乱暴な様子でレミリアの前に現れる人物なんて、彼女を除いて他にはいない。

 

「もう話は終わったんでしょ? だったら入るよ」

 

 等と言いつつ、レミリアの答えを待たずに足を踏み入れてくる少女。相も変わらず横暴と言うか、何と言うか。肩をすくめつつも、レミリアは彼女と向き合った。

 

「フッ……。返事を聞く前から入って来てるではないか。全く、我が妹ながら品がないな。フランドールよ」

「……うっざ。そういうの良いから」

 

 レミリアが苦言を漏らすと、その少女──フランドール・スカーレットは辟易とした様子で言い返してきた。

 スカーレットの名を持つ通り、彼女はレミリアの妹にあたる。間違いなく血の繋がった家族であるのだが、対峙する彼女はレミリアとはあまり似ていない印象だった。

 髪の色、の所為だろうか。レミリアが落ち着いた印象の青い髪であるのに対し、フランは明るい金髪である。瞳の色は同じ紅色であるものの、髪だけでも随分と印象が変わるものだ。

 

 それに、纏う雰囲気も違う。優雅(自称)な様子のレミリアとは異なり、フランはそれに反発するかのように感情的な様子であり。

 

「私、あんたに色々と言いたい事があるんだけど」

「だろうな。顔にそう書いてあるぞ」

「……その態度。私が何を言いたいのか、それも判ってるんでしょ?」

 

 苛立ちを隠す素振りも見せないフラン。そんな彼女の問い掛けに対し、レミリアは苦笑でそれに答える。

 判っている。判っているとも。今のフランがレミリアに対して何を感じ、そして何を思っているのか。そんなの、態々言葉にされずとも理解している。

 

「なら聞くけど。──さっきの()()、どういうつもり?」

 

 どんっと、乱暴気味な勢いでテーブルの上に片手をつきつつも、フランは言う。

 

「魔理沙が連れてきた、あの人達……。お姉様達の計画に必要な人達なんでしょ? それなのに、あんな……」

「フンッ……。お前、やはり盗み聞きをしていたな。全く、ますます品のない──」

「そんな事はどうだっていい。話を逸らさないで」

 

 露骨にイラっとしている。どうやら今のフランは、納得のいく回答以外の言動をレミリアには求めていないらしい。

 

「あんな風に焚きつけて……。普通に考えれば怒るって判るでしょ。妖夢の時もそうだったんだし……。それともワザとやってるの?」

 

 レミリアを値踏みするような、そんな視線をフランは向けている。その瞳からは、彼女の遣る瀬無い気持ちがありありと伝わってくるようだ。

 納得が出来ない。考えても理解が出来ない。故にこそ、その感情が苛立ちという形で表面化する。

 

「お姉様が何を考えてるのか、判らない……。あんたは一体、何がしたいの?」

 

 そしてフランはその苛立ちをレミリアにぶつける。理解が出来ないから、反抗する。

 

 レミリアは思案する。フランが苛立ちを覚えている原因は明確だが、だからと言ってどうアプローチをかけるべきか。適当に言い繕ってあしらう事も可能だが、あまりスマートとは言えない選択である。

 全く。反抗期の妹を持つと大変だなと、レミリアは内心思いつつも。

 

「クククッ……。判らんか? 我が妹よ」

 

 レミリアは、この()()を覆さない。

 

「西行寺幽々子を止める。私はただ、その目的達成の為に手段を選り好みしていないだけだ。確かに利用価値は充分過ぎる程ではあるが、所詮、奴らは外の世界の矮小な人間。計画遂行の過程でどうなろうとも、結果さえ変わらなければ私にとっては知った事ではないのだからな」

 

 例え、妹であるフランが相手であろうとも。

 レミリア・スカーレットは揺るがない。

 

「下手に懐かれるのも面倒だ。私達は仲良しこよしをしたい訳じゃない。──だったら、愛想よくする必要もあるまい。利用出来るだけ利用してやるさ」

 

 どこか飄々とした口調。だが、レミリアの芯は全くと言っていい程ブレていない。

 西行寺幽々子を止める。それが最終目的であり、あらゆる物事よりも優先すべき事象である。故に、手段の選り好みなんてしている場合ではない。

 何も間違ってはいないはずだ。文字通り、これは生きるか死ぬかの戦い。“生”にしがみつく自分達か、それとも“死”を振り撒く西行寺幽々子か。そのどちらかが勝者となるまで、終幕など有り得ないのだ。

 

 そして、この闘争の勝者は既に確定している。運命の収束は、緩やかに、そして着実に進んでいる。それこそが、()()()()における物語の結末。

 避けられようのない、バッドエンドなのだから。

 

「選り好みを、しない……。利用できるだけ、利用する……」

 

 ボソリと、フランがレミリアが言った言葉を呟く。噛み砕き、そして反芻するように。

 レミリアの事を理解しようとしている──訳ではない。彼女が浮かべる表情は、先ほどよりも更に苛立ちを募らせたもの。納得が出来ない。受け入れる事が出来ないのだと。そんな思いがより強く伝わってくるような。

 

「何、それ……」

 

 そしてフランのその思いは、言葉として直接レミリアに突き付けられる事となる。

 

「本当に、何なのあんた……。そうやって、何でもかんでも知ったような口を聞いちゃってさ……」

 

 憤りが滲む声。伝わってくるのは、拒絶感。

 やはり彼女は、どうしてもレミリアの行動を受け入れる事が出来ないらしい。

 

「フッ……。何を苛立っているフランドール? 実に合理的な考えだと思うのだが、この回答では納得出来ないか?」

「納得……? はっ……。本気で言ってるの?」

 

 再度レミリアが肩をすくめると、間髪入れずにフランは言い返してきた。

 今度は、更に感情を昂らせて。

 

「そういうのがウザいって言ってるんだよ! そうやっていつも上から目線で、常に先を見据えているような態度を取って……! 私の事だって、ずっとずっと子供扱いばかりして……!!」

 

 爆発した激情を、レミリアはぶつけられる。

 

「この際だからはっきりと言ってあげる! 私はずっと、お姉様の()()()()()が気に食わなかったんだ! 一方的に、勝手に一人で方針を決めちゃうのもウザい! 頼まれてもいないのに、勝手にリーダー面をしてるのもウザい! 曖昧な事ばかり言って、煙に巻いてばっかりで……! それで本心をひた隠しにし続けるのも本当にウザい!!」

「本心? ククク……。私は常に本心を口にしているぞフランドール。隠し事など、そんなもの──」

「あとその喋り方! 何それカッコいいとでも思ってんの!? 聞いてるこっちが恥ずかしいんだけどッ!」

 

 全く話を聞いてくれない。取り付く島もないとは、まさにこの事か。

 

「お姉様は嘘ばっかりだ! 全然本心を口にしてくれないッ! だから、判らないんだよ……! お姉様が、本当は何を考えているのか……!!」

 

 感情の昂りを抑える素振りも見せずに、フランはレミリアに対する怒号を続ける。遣る瀬無さや憤りを、投げる言葉に込められるだけ込めて。

 フランは言った。レミリアの事が気に食わないのだと。本心を口にしないから、何を考えているのかが全然判らないのだと。

 

(本心、か……)

 

 判っている。判っているのだ。フランがこうして怒るのも、無理はないという事くらい。

 

 けれどもそれでも、レミリア・スカーレットは揺らがない。()()()()()()()()()

 これは使命だ。『運命を操る程度の能力』という、あらゆる可能性を見据える事の出来る『能力』を持つ、自分に与えられた使命。それを、レミリアは全うしなければならない。中途半端に投げ出す事なんて許されない。

 

 未来を、変えるのだ。

 それ以外の事なんて、考える必要もない。

 

「フランドールよ。私の事が気に食わないという、お前の気持ちは良く判った。だがな、今はそんな個人的な感情に振り回される場合ではないのだよ。事態は既に深刻だ。最早猶予は殆ど残されていない」

「……っ」

「この私、レミリア・スカーレットの妹であるお前なら、同じように理解する事なんて容易いと思うのだがな」

 

 宥めるように、レミリアはそう口にする。フランの憤りを認めつつも、それでも尚自らの意思を曲げるつもりはないのだと。レミリアは主張した。

 レミリアの決意は絶対だ。今更心変わりなんてする訳が無い。

 例え、フランと分かり合う事が出来ずとも。レミリア・スカーレットは、最後まで駆け抜けるだけだ。

 

「……そう。結局、お姉様はそうなんだね」

 

 ボソリと、フランのか細い呟きが耳に入る。どこか諦観してしまったような、そんな口調で。

 

「判った。よく、理解したよ」

 

 踵を返す。レミリアに背を向けてしまう。

 愛想を尽かした、という事なのだろうか。どこまでも自らの意思を変えないレミリアに対し、流石に見限るしかないと判断したのだろうか。

 けれども。そのまま部屋を後にしようとするフランは、最後に一度だけ立ち止まって。

 

「……お姉様の計画には協力する」

 

 吐き捨てるように、そう言った。

 

「だけど、私の好きにやらせて貰うから」

 

 その言葉を最後に、フランは部屋を退出した。

 

 再び、嘆息。どっと疲れが押し寄せてきたような、そんな感覚がある。レミリアは椅子に深く座り直し、そして天井を仰いだ。

 

「フッ……」

 

 失笑──。

 

「全く、ままならない……」

 

 フランの性格を考えれば、レミリアに反発する事など予想の範疇だ。そこに驚きはない。だが、問題は反発されたその後だ。上手い着地点を見つける事が、中々どうして難しい。

 これで良かったのか──等という疑問が一瞬だけ脳裏を過ぎったが、レミリアはすぐに飲み込んでしまう。良かったのだ、これで。自分の選択は最善だった。

 

「…………」

 

 故に、この()()()()は筋違いだ。

 こんな感情に流される暇なんて──。

 

「何だかぼんやりしているみたいね」

「……む?」

 

 ふと、誰かに声をかけられた。

 

「流石にそろそろ堪えてきたのかしら?」

「……お前」

 

 一体、いつからそこにいたのだろう。

 振り向くと、暗がりから現れたのは一人の少女。レミリアも良く知っている、魔法使いの一人だった。

 

「フッ……。フランドールと言い、何故どいつもこいつも私の許可なく部屋入ってくる?」

「あら? 随分な物言いね。折角心配して様子を見にきてあげたのに」

「クククッ……。心配、ときたか」

 

 喉を鳴らして笑いながらも、レミリアは続ける。

 

「何も気に病む事はない。我が友、パチュリー・ノーレッジよ。吸血鬼の帝王たるこの私は、どんな時でも常に万全なのだからな」

「…………」

 

 仰々しげにそう告げると、彼女──パチュリー・ノーレッジは呆れ気味にジト目を向けてきた。

 ここ、紅魔館に存在する地下の大図書館を根城にする魔法使い。レミリアにとって唯一無二の親友である彼女は、フランとはまた別のベクトルで遠慮がない。

 隠す素振りもなく、彼女はあけすけに嘆息すると。

 

「……ねぇ、レミィ。()()、いい加減疲れない?」

「……それ? それとは、何を示しているのか分からんぞ」

「いや……。その喋り方とか、態度とか、その他諸々」

 

 やたらと冷静な口調でそう告げられる。何とも言えない表情を向けられた。

 何なんだその顔は。レミリアに呆れているとでも言うのか。馬鹿な。

 

「ククク……。パチュリーよ、お前もまだまだ青いな。この私の圧倒的な威光に気づいていないと見える」

「威光、ねぇ……」

「どうせお前もフランドールと同じで、私達の動向を探っていたのだろう? ならば目の当たりにしはずだ。あの人間二人が、この私の威厳を前にひれ伏す瞬間を──」

「はいはい。もう判ったから、それ以上は良いわよ」

 

 適当気味な調子であしらわれてしまう。全く、失礼な奴だ。こちらが話している途中だと言うのに。

 

 レミリアがパチュリー・ノーレッジと出逢ってから、もう何年になるのだろうか。従者でも家族でもない。対等な友人としての関わりは、間違いなく彼女が最も長い。レミリアにとっては、ある意味彼女が最も気を許せる存在であり、そして最大の理解者とも言える。

 だから、だろうか。心の内を見透かされているような、そんな気持ちになってしまうのは。

 

「……別に、良いんじゃないの? 私の前まで、()()()()を続けなくても」

 

 パチュリーがそんな事を口にする。しかし、つい先ほどまでの呆れたような口調ではない。

 どこか落ち着いた声調。それがかえって、レミリアの胸中に響き渡る。

 

「……何を言っている? まるで私が無理をしているとでも言いたげな言い草だな」

「……まぁ、あなたがそれで満足なら別に構わないけれど」

 

 レミリアが同じ調子で言い返すと、軽い嘆息を挟みつつもパチュリーが言葉を続けてくる。

 

「だけど、そうね。これだけは言わせて頂戴」

 

 そして彼女は、毅然として言い放つ。

 曇りも陰りもない。真っ直ぐとした面持ちで。

 

「例えどんな事があったとしても、私はあなたの味方だから」

 

 梃子でも動かぬ固い意思を、深く込めて。

 

「幾らあなたが、()()()()()憎まれ役に徹したとしても」

 

 レミリアの心に、その想いを響かせる。

 

「私だけは、思い通りになってあげないんだから」

 

 淡々とした口調。けれども、冷徹といった印象は無い。

 不思議な心地だった。レミリアだって、軽い気持ちでこの計画を遂行している訳ではない。絶対的な決意と覚悟。それを胸に抱いた上で、彼女は今日もここにいる。

 

「…………」

 

 その決意は揺らいでいない。その覚悟は崩れていないだけれど。

 

「……言いたかったのは、それだけ」

 

 ──だけど。

 

「それじゃ、私は図書館に戻るから」

 

 おもむろに歩き出して、退出していくパチュリー。

 その背中に向けて、レミリアは。

 

「……ねぇ、パチェ」

 

 気の迷い、だったのかも知れない。無意識だったのかも知れない。

 それはレミリアの心の中に残った、僅かな隙。決意と覚悟の裏に隠れた、ある種の弱さ。

 

「私、上手くやれているかしら──」

 

 ああ。やはり、駄目だな。

 幾らに冷酷に徹していたとしても、それまでに積み上げてきた情だけは、どうやっても崩せそうにない──。

 

「……まぁ、そうね」

 

 だけどパチュリー・ノーレッジは、やっぱり普段と変わらぬ様子で。

 

「十分よ。あなたは十分に頑張ってる」

 

 淡々と。けれども、どこか。

 どこか温かい声調で、彼女は言った。

 

「フランに反抗される程度には、上手くやれてるんじゃない?」

 

 それだけを言い残し、彼女は今度こそ部屋から出ていった。

 部屋の中に再び静寂が漂い始める。その静寂が、レミリアが胸中に秘める感情を少しずつ露呈させていくような。そんな気さえもしてしまう。

 けれども、まだだ。()()()()()()()()()

 決めたのだ。このふざけた未来を変えるのだと。それこそが、可能性世界を観測出来る──『運命を操る程度の能力』を持つ自分に課せられた、責務だと思うから。

 

『お姉様は嘘ばっかりだ! 全然本心を口にしてくれないッ!』

 

 先程フランが口にしていた言葉が、レミリアの脳裏に蘇る。

 

(……私が全然本心を口にしてくれない、か)

 

 妹は、あんな事を言っていたけれども。

 姉である、レミリアからしてみれば。

 

「……貴方も、人の事を言えないじゃない。フラン」

 

 結局、似たもの同士なのだ。血の繋がった姉妹なのだから、当然の事なのだろうけれど。

 だから、お相子。フランもレミリアも、最終的に目指すゴールは共通している。

 

 いや、フランだけじゃない。

 パチュリーも、美鈴も、魔理沙も。妖夢だって、きっと同じ方向を向いている。あの平穏を取り戻したいのだと、本気で望んでいるに違いない。

 だからレミリアは止まらない。絶対に諦めない。

 因果関係を読み取って、原因を塗り替えて。そして、結果を──未来を変える。

 

 その為ならば、例えこの身を犠牲にする事になっても構わないのだと。

 レミリアは再度決意を固めるのだった。


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