「班分けが完了したようだし、次はチーム分けをしていこうと思う! 《イルファング・ザ・コボルド・ロード》班と《ルイン・コボルド・センチネル》班だ。それぞれでまたチームリーダーを決めたいんだが、異論はないかな?
ないようなら、組んだパーティ内でレベルの平均を出して提出してくれ。チーム分けの参考にしようと思う。」
班分けが終わって気付いたことだが、俺たちの班は手練れが多いのかもしれない。何て言っても、七人のうちの四人がβテスターなのだ。
全プレイヤーの内、βテスターは千人のみ。単純計算、ここに集まっているプレイヤー49人に対し、βテスターが五、六人だとしたら、そのほどんどが俺たちの班に集中していることになる。
まぁ、攻略に参加するトッププレイヤーたちにその割合が適用できるとはさすがに思わないが。
「みんな、レベルいくつだったっけ?」
「俺は13だ。ハチマンは14だったっけ。」「あぁ。」「あたしは8で、ユキノンは10だよー。」「14。」
「そうかそうか。まぁ、ユイとユキノは除外していいだろう。俺が13でコペルが11だから、平均はちょうど13だな。」
おそらく、ここにいるプレイヤーの中でもレベル14などそうはいないだろう。第一階層ではどうしても13あたりが限界だ。
それにしても、ハチマンはともかく、アスナまで14ってのは少し意外だな。キリトの話じゃ、ここには一人で来てたって話だったが……。
「アスナはSAOでの知り合いは誰かいないのか?」
「いないわ。そんなの必要ないもの。」
「ひ、一人でここまで来たんですか……。もしかして、アスナさんってとてもお強い……?」
「さぁ。ずっと一人だったから分からないわね。」
「(あ、筋金入りのぼっちだ、これ。)」
これは思ったよりもいい拾い物だったか……? あとハチマン、笑うのはいいが、控えめにもちょっと気持ち悪いから気を付けろよ。
「(やっぱり大体の班の平均は10か11ってところか。うん、これだけの戦力が集まったなら本番に期待が持てる。えーと、次の班は……平均レベル13!? ここだけやけに飛び抜けてるな! そうか、
おそらく、あの中の二人、またはそれ以上がβテスターなんだな。……注意しておこう。)」
「みんな協力ありがとう! 集計の結果、俺たちのパーティが平均レベル12、そして、そこの……確かユキノさんだったかな。ユキノさんのパーティが平均レベル13だと分かった!
俺たちのパーティがボス班のリーダーをするとして、ユキノさんのパーティには取り巻き班のリーダーをお願いしたい。」
「な、なんやと!」『平均レベル13……!?』『とんでもないな……。』『つ、強ぇ……!』
はぁ……。やっぱこうなるのか。どうしてこう俺には面倒が押し付けられるんだか。あと、もうそこのトゲは黙れ。お前程度の関西弁負け犬キャラには見飽きてんだよ。
いや、”お願いしたい”ってことはまだ断れるんじゃないか? どうにかあのトゲに反感を買わせて異議を唱えるように誘導すれば……。
「おっし! 取り巻きは俺たちに任せとけ!」
キリトこの馬鹿野郎。
「あぁ、そう言ってくれると助かる。それじゃあ細かいチーム分けはこっちでしておこう。ボス攻略の日程だが……「ちょっと待ってくれ。」ん、どうかしたか。」
「まさか、次でもうボス部屋に挑むのか? 少なくとも、連携の確認くらいはしておくべきだと思うんだが。」
おぉ、さすがはカイト。なんとも神経の図太い奴。言い分は確かだけどな。
「あぁ、そうか。……そうだな、それじゃあ、もう一度攻略会議を挟んだ上でボスに挑むことにしよう。俺も少し焦っていたようだ。すまない。」
「いや、俺もすまなかった。話を続けてくれ。」
「ありがとう。第二回攻略会議は明後日、ボス攻略は、その結果を踏まえてだが、おそらくそのまた二日後になると思う。各々、覚悟を決めておくように! それじゃあ解散!!」
つまり、ボス攻略までは少なくとも四日、か。
「おーし、この後どうするよ。」
「あたしはもう帰るわ。」
「えー! アスナちゃんともっと話したかったのにー!」
「ユイさん、引き止めては悪いわ。私たちももう帰りましょう。」
「俺はちょっと《森》に行って運動してくるよ。カイトとコペルはどうする?」
「行くッス!」「そうするか。」
うん、俺のぼっちスキルは健在だ。一緒にいるのに、一人だけ声をかけられないようにするなど造作もないことよ! ……あれ、目から汗が。
まぁ、いいさ。俺はやることがあるからな。
「ディアベル、ちょっといいか。」
そして、俺は葉山(偽)に声をかけた。
二日後に行われた第二回攻略会議は、確かに有意義なものだった。ちなみに、ユイとユキノは今回は不参加だ。
何より、一番の収穫はアスナの実力が予想以上だと判明したことだろうか。
その強さには目を見張るものがあり、俺たちと比較しても勝るとも劣らない。一人でプレイしていたからか、チーム戦における知識が欠けているのは、まぁ、どうにでもなることだ。
しかし、それ以外に、アスナの戦法には決して見逃せない問題があった。
「あのー、アスナさん? 今までずっとそんな風にして戦ってきたんですか……?」
「えぇ、そうよ。それが何か?」
「”何か?”じゃなくて……アスナは生き残りたくないのか? そんな戦い方じゃ、いつか死ぬぞ。」
キリトがそう言うのも無理はない。アスナの戦いぶりはどこか鬼気迫る感じで、特攻とも言えるような無謀なものだった。
「えぇ、そうかもね。」
「「「「……ッ!?」」」」
その言葉を聞いて、一同に戦慄が走る。
「どういうことだ、それ。」
キリトの奴、半分キレてるんじゃないか? まぁ、無理もないか。
俺たちは、強くなるためにある程度のリスクを負うことは間々ある。それもこれも、無事に現実世界に戻るためだ。ここにいられる面子は、その思いが一際強い連中とも言えるだろう。
そんな俺たちに混じりながらも、生き残るのを放棄したようなことを言うアスナは、まぁ、別の生き物のように見えるのかもしれない。
「……そんなことはどうでもいいでしょ。」
「そ、そんな……「どうでも良くなんかない。」……ッ?」
突然、今まで静観していたハチマンがその口を開いた。
「お前が無茶をする分、その付けが回ってくんのはパーティを組んでる俺たちだ。」
「私のことは放っといていいわ。」
「それも良くない。今度のボス戦は”完全勝利”が理想的だ。誰も死なず、且つ一方的な勝利。そうすることで、”SAOはいつかクリアできる”印象をできるだけ強くする。」
「……ッ。」
「それに、目の前で死なれるとこっちの目覚めが悪いんだよ。死ぬなら俺たちのいない、どっか別の場所で勝手に死ね。」
「おい、ハチマン! そんな言い方はないだろ!」
「そ、そうですよ!」
ったく……あいつらしいと言えばあいつらしいが。これ以上関係悪くなったら目も当てられないっつうの。どんだけ人見知りなんだ。
「まぁ、とにかくよ、誰もお前に死んでほしくなんかないってことだよ。こいつはちょっと口が悪いんだ、すまないな。」
「いえ、別にいいわ。その人の言いたいことも……えぇ、よく分かったし。こちらこそごめんなさい。今度のボス戦、頑張りましょう。」
お? なんか知らないけど吹っ切れてないか、こいつ。ハチマンにそんなつもりは無かったろうが……これは結果オーライってやつだな。
そして、ボス攻略の日にちは二日後の12月10日に決まり、第二回攻略会議はお開きとなった。
やっと攻略会議終わった……。
9話やでもう……。前作なら第一階層どころか、第二十五階層まで終わってるんですけど(笑)
こういうところに、リメイクすることの難しさを感じますよね。