ソードアート・オンライン《三人の勇者》   作:ホイコーロー

3 / 14
週二投稿(週二話投稿とはいっていない)。

さすがに展開遅すぎるんでね、二話同日投稿いたします。


3話《鐘の音》

 《浮遊城アインクラッド》

 これが、俺たちがいる世界の名称だ。その名の通り空間に浮いている要塞で、横から見ると下から上に向かって徐々に細くなっていく円錐のような形をしている。”空”ではなく”空間”と言ったのは、”地上”があるか分からないからだと付け加えておく。

 このアインクラッドは百の階層に分かれていて、各々が別のフィールドとして存在する。干渉し合うことのない百の国が縦に並んでいる、と言えば分かりやすいだろうか。

 全ての階層に共通するのは、それぞれに《迷宮区(ダンジョン)》が存在すること、そして、そのどこかに上の階層への道を阻む《階層主(フィールドボス)》がいることだ。

 つまり、プレイヤーたちは第一階層から始め、各階層のボスを倒しながら第百階層のボス攻略を最終目標に進んでいくことになる。

 

 テレビなどでアインクラッドの様子を中や外から傍観した映像が流れていたりしたが、それはまさに”異世界”といった感じであり、人々の好奇心を掻き立てるのに、さほど時間はかからなかった。

 

 

 

 

 カイトと合流した後、ハチマンを加えた俺たち三人はフィールドに出て狩りの練習をしていた。

 俺とカイトはβテスターだ。SAOにおける、幾多の状況の対処方法は既に身に付いている。二人だけならこんな練習もなしに、とりあえず狩りに行ってβテスト時との違いを検証しているところだっただろう。

 なら、なぜこんなことをしているかと言うと、俺たちと違ってハチマンはβテスターではなかったからだ。というか、兄弟揃ってβテスターという俺たちの方が希少なのだからしょうがない。むしろ、そんな俺たちと一緒に狩りの練習ができるハチマンはこれ以上ない幸運の持ち主と言える。

 

「じゃあ早速始めるか。」

 

「おう、よろしく頼む。」

 

「とりあえずはSAOの基本中の基本、ソードスキルからレクチャーしてくぞ。」

 

 《ソードスキル》

 知っての通り、このSAOはVRMMORPGだ。そんなSAOでは、普通のゲームのようにコントローラーを操作することなどなく、自分の身一つで敵と対峙することになる。

 もちろん、普通に斬って蹴って殴り合うような戦闘もSAOならではのものだが、それでは現実の格闘技と変わらない。ゲームならではのシステムが当然必要になる。

 

「それこそがソードスキル。言わば、必殺技みたいなもんだな。」

 

「へー、なるほど。◯カチュウの10◯ボルト、孫◯空のかめ◯め波みたいなものか。」

 

「お、面白い表現だな。その認識で合ってるぞ。」

 

 必殺技というからにはもちろん必殺技ゲージなるものも存在する。プレイヤーの視界の左上に様々なバーがあるが、その内の青いものがソードスキルを発動するときに使うMPの残量を表したものだ。

 回復手段はいくつかあるが……最も有効なのは時間経過によるものと、敵にダメージを与えた際の報酬によるものだろう。このMPの残量と睨めっこをしながら、普通の剣戟とソードスキルをいかに上手く組み合わせて戦うか、SAOでの戦闘はこれに尽きると言っても過言じゃない。

 

「で、肝心の使い方だが、別に難しいことじゃない。剣を構えて、振る。それだけだ。」

 

「はぁ。」

 

 そう言って、試しにソードスキルを発動して空振りして見せる。肩の上に手を振り上げ、そこから突き出すような動作をしてみると青いエフェクトを残しながら剣が空間を斬り裂いた。

 

「正しく剣を構えることができりゃあ、後はシステムが勝手にお前の体を動かしてくれる。」

 

 後ろでカイトが説明を付け加えている。簡単に言うけど、一発で成功してくれてよかった。ここで失敗してたら形無しだからな。

 

「ただな、今キリトが説明して簡単にやって見せたが、これがなかなか難しい。コツを掴むまでに数時間はかかるだろうな。まぁ、気長に頑張れ……や……。」

 

 ん? なんだか歯切れが悪いような気がするが。

 

「どうかしたの……か……。」

 

「え、何か言ったか?」

 

 不思議に思ってカイトの方を振り返ると、そこには青いエフェクトを放ちながら剣を振るうハチマンの姿があった。

 

 

 

 

 え、なんでこいつらこんな固まってんの。なんか悪いことしたのか、俺。まさかやっちゃいけないことでもした? マジかよ……開始早々黒歴史作っちゃうとかシャレにならねぇ……。はい、リセマラ確定ー。

 

「お、おま、お前。今ソードスキル使ってたか……?」

 

「お、おう、使っちゃったな。なんかおかしかったか?」

 

 とりあえず何がおかしかったのかははっきりさせねぇと。やり直しても同じ過ちを繰り返してたら意味がねぇからな。あれ、てかSAOってリセマラできんのかな? できない理由はなさそうだが……。

 いや、プレイヤー同士の軋轢を生まないためにも一人の人間が複数のアカウントを持つのは普通に考えて無理っぽいな。名前や見た目を変更することもできなかったわけだし。

 オワタ\(^o^)/

 

「す、すげえ……。」

 

「え?」

 

「おかしいも何も、こんなに簡単にソードスキル発動する奴なんか初めて見たぞ。ハチマン、本当にβテスターじゃないのか?」

 

 あれ、なんか逆に褒められてるっぽいな。ソードスキルってそんな高等技術だったのか? 基本中の基本が高等技術とか、これから先が思いやられるんですが。

 俺ってまさか天才?

 

「ソードスキルが使えるなら話は早い。後は実践での練習あるのみだ。」

 

 は? マジかよ。どんなスパルタだっつーの。こちとら始めてまだ二時間も経ってないんだぞ。そんな俺をSAO経験者二人と同じとこに連れ回すとか正気の沙汰じゃないな。殺す気か。

 あ、死んでも大丈夫なんでしたっけ……。はぁ、死にたくない、帰りたい。

 

 

 

 

 「(まさかこの短時間でソードスキルを扱えるようになるとは……。)」

 

 これは思わぬ拾い物をしたかもしれない。今日一日の殆どはそれに費やすつもりだったんだ。嬉しい誤算である。

 ハチマンにソードスキルを教えた後、何もなければ三人で狩りに行くはずだった。はずだった、というのはもちろん何かあったってことだ。また一人、連れが増えたのである。

 その名も《クライン》。人数が増えるのは全く問題ない。多いに越したことはないからな。ハチマンが「小が大を兼ねることもあるだろ。」とか言ってたが、お前も俺が連れ回してるだけだからな。拒否権なんかない。

 

 とは言ったものの、このクラインがなかなかの曲者だった。ソードスキルを出すことができないのである。

 いや、こっちが普通といえば普通なのだが、ハチマンに次のステップを教えなければいけない。ここで足止めをさせてしまうには惜しい人材だ。

 そこで、二人組に分かれて俺がハチマンを、キリトがクラインをそれぞれレクチャーすることになった。ハチマンの奴、キリトに預けようものならすぐさま逃げ出しかねない雰囲気だったからな……。

 すまん、キリト。

 

 四人で合流したのはそれから二時間ほど経った時だった。

 

 

 

 

「うっひょオオォォォ!」

 

「おい、なんだあれは。」

 

「いやー、ソードスキルが出せるようになったのが余程嬉しかったみたいで。ずっとあんな調子なんだ。」

 

 まぁ、その気持ちは分からんでもない。ハチマンには分からないかもしれないがな。お前、いい加減その腐ったものを見るような目でクラインを見るのはやめてやってくれないか……?

 

「これからどうする?」

 

「あー、それなんだが、ハチマンは一度落ちるらしい。なんでも妹との約束があるんだと。」

 

「え! ハチマン、妹がいんのかよ! 今度紹介してくれ!」

 

「黙れ、殺すぞ。」

 

「殺すの!?」

 

「あはは……。それなら今日はお開きにするか。フレンド申請送っといたから、承認しといてくれ。」

 

「おう!」「うす。」

 

 フレンド申請が承認されたことを確認し、俺たちは解散しようとする。解散と言っても、ハチマンがログアウトした後は俺とキリトとクラインでもう少し狩りをすることになりそうだが。

 

「なぁ、ちょっと質問なんだが。」

 

「お、どうしたハチマン。」

 

「ログアウトってどうやってするんだ……?」

 

「「「は?」」」

 

『リンゴーン、リンゴーン』

 

 それが起こったのは、ハチマンの質問の意味がわからず俺たちが首を傾げたのと同時だった。

 大きな鐘の音がアインクラッド中に響き渡る。

 SAOプレイヤーたちの運命を告げる鐘の音が……。

 

 

 

 




SAOはリセマラできんのかな? GGOはアバターの譲渡とかあったような。
でも、リセマラできないゲームとか、今時流行んないですよね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。