IS~codename blade nine~   作:きりみや

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馬鹿な事を書きたくてできた話。故に短いです


閑話 きょうかふらぐ?

「諸君、今回集まってもらったのは他でもない。早急に解決する事案が出来たからだ」

 

 K・アドヴァンス社。その本社の薄暗い会議室で白衣を着た男が宣言する。その言葉に、部屋に集まった、同じく白衣を着た者たちは姿勢を正した。

 

「主任、一体それは……?」

 

 一番若い青年が訳が分からず聞く。

 

「ズバリ、黒翼の武装についてだ!」

 

 どーん、と効果音でも聞こえてきそう勢いだった。そしてそれに数人が反応する。

 

「成程……新しいアイディアが浮かんだんですね」

「その通り。さて、諸君。君たちも先日の件は聞いていると思う。地下での戦いと、その脱出。中々にギリギリだったと聞いている。そこで私は考えた」

 

 ぴっ、と指を立てる。全員が注目する中、主任は続ける。

 

「もしあのまま生き埋めになってしまったら静司は助からなかったかもしれない。今回は助かったが次は無いかもしれない。ならば――次に備えた物を準備せねばならない!」

 

 おぉ、とどよめきが起きるが、まあ待て、と手で制す。

 

「では何を準備するか? そこで私は気づいてしまった。今まで我々は威力と浪漫。そしてその中にある狂気を追い求め、様々な武装を開発してきた。そう、例えば《クェイク・アンカー》!」

「ああ、あれは素晴らしかった」

「浪漫と狂気。その調和が生み出す破壊……素敵!」

「ISにあんなものを乗っけるイカレっぷりに僕は感動しました!」

 

 各々がうっとりと語る中、主任も頷く。

 

「そうだ。だが浪漫という点で私は大変な事を見逃していた。男の浪漫。その象徴たるあの武器の事を……っ!」

 

 ぐっ、と握りこぶしを天に掲げ、叫ぶ。

 

「すなわち、ドリルだ!」

 

 一瞬の沈黙。そして、

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 

 全員がテンションMAXで雄たけびを上げた。

 

「主任! それです! それは必要です!!」

「良いわ……嗚呼! 素晴らしすぎる!」

「ドーリルっ! ドーリルッ!」

 

 第三者が見れば確実にドン引きするだろう光景。しかしここではこれが日常茶飯事だ。

 

「ありがとう、諸君。つまり今日の会議の目的はズバリ! 『黒翼にどんなドリルつけようか? 皆で考えよう!』だっ!」

 

 再び全員が雄たけびを上げる。

 

「主任! やはり質です! どんな壁さえ突き破り、どんなバリアも突き破り、あの子の心も抉り取る! そんな超強化ドリルが良いと思います!」

「馬鹿、何言ってやがる! 時代は量だよ量! 全身にドリルを付けての体当たり。まさに浪漫じゃねえか!」

「何をぅ!?」

「そんな顔しても譲れんなぁ!」

 

 それぞれが意見を言い合いヒートアップしていく様を主任は満足げに眺めながら頷いていた。ああ、やっぱりこいつらは素晴らしい。きっと良い物が出来上がるに違いない、と。

 

「ふふ、馬鹿ね貴方達!」

『何!?』

 

 質か量か。意見が分かれグループ化してきた所で女の所員が高らかに笑った。

 

「質? 量? そんな風に考えるから駄目なのよ。もっと視野を大きく広げなさい。世界はこんなに広いのだから!」

 

 まるで翼を広げるかのように両手を広げ、意味不明な事を高らかに叫ぶ。もはや何がしたいのか一般人には分からない。しかしここに居るのは全員狂人なので気にしない。

 

「ほう、ならばお前の意見を言ってみろ」

 

 興味を持った主任が先を促すと女は最高の笑顔で、叫ぶ。

 

「一つに拘る必要はないわ。つまり私が提案するのは『質&量』 よ!」

『!?!?!?』

 

 会議室に衝撃が走る。

 

「超巨大。超硬い。超すげー。超強化ドリル。そしてそれを大量に! 『物の質』と『物量』を兼ね備えたそれこそまさしく『超質量』武装よ!!」

「お……」

『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』

 

 今日最大の雄たけびが上がった。

 

「すげえ、すげえよマジで! 思いつかなかったぜ!」

「そうだ。一つに拘る必要は無いんだな! 全部の要素を詰め込んじまえばいい!!」

「俺は今猛烈に感動している……っ!」

 

 決まったな、と主任も頷き高らかに宣言する。

 

「よし! ならば我々は本日より『超質量』ドリルの制作を開始する!! 静司がいつ埋まってもいい様に! そして気になるあの子の心の壁だろうが貫き掘り進み出口を見つけられる様に、全力を尽くすぞ!!」

『応っ!!!!』

 

 

 

「なんか会議室が五月蠅いんですが」

「というかアイツら静司が埋まる事前提に話してね? まず埋まらない様にするのが先じゃね?」

「そもそも予算申請通るのかな……」

 

 同僚の狂気に若干引きつつあるEXISTの面々だった。

 

 

 

 

「ん?」

「どうしたの、静司?」

「ああ、すまん。ちょっとメールが……な……?」

 

 静司とシャルロット。お互い話を終え一息ついた頃、静司の携帯に会社からのメールが入った。電話では無いので特に気にせずメールを開く。件名は『お前はどう思う!?』だ。嫌な予感がする。

 メールには本文と、添付ファイルがつけられている。どうやら何かの図面らしい。新しい武装だろうか? 念のためシャルロットには見られない様に角度を気にしつつファイルを開き、固まった。

 

【『超質量』ドリル案。メインとなる巨大ドリルの他に両手両足もドリル。ビット型ドリル。ドリルの中からも大量の子ドリル。その中には驚異の孫ドリル。必殺技として全身回転しながら全ドリルを敵にぶつける『テラドリルブレイカー』略してT・D・B。名前がどこかで聞いた気がするのはきっと気のせい。理論値では鋼鉄の壁だろうがISのシールドだろうが完全に貫けます。ただ人間相手に使うと高確率で相手の人生も抉り取るので注意が必要。 あと威力重視にしたため一回使うとガス欠です】

 

 なんだコレは? なんだこの完全に相手を殺しにかかってる武器は。技術部の連中とうとうイカれたか……いや元々だ。これを黒翼に付けると? この全身螺旋だらけでハリネズミみたいになっている武器を? というか一回しか使えない個性的すぎる武装をどこで使えと? 少なくともこんなIS居たら自分なら絶対近づかない。

 

【追伸:これで気になるあの子の心もハートブレイク♪】

 

「やかましいわああああああああああああ!?」

「せ、静司!? どうしたの!?」

 

 突然キレて携帯を床に叩きつける静司にビビるシャルロット。そんな騒がしさを残しつつ、日は暮れていった。

 


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