◇4 問題児たちが異世界から来るそうですよ?にお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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問題児によって魔王連盟が着々と潰されていくようですよ?

 煌炎の都、珱嗄がやってきたこの都市の中……サラマンドラには魔王連盟の一員である所の、そして巨龍召喚時にも姿を見せた、リンと呼ばれた少女と、殿下と呼ばれる少年がいた。

 

 サンドラとは面識があり、現在はジンとペストとサンドラの三人と共に、その二人も行動を共にしていた。

 

 それというのも、現在珱嗄のいないノーネームは階層支配者の集まる召集会に出る為に、煌炎の都へとやって来ているのだが、召集会が始まる前にちょっとした問題が起こったのだ。

 つい先日から、煌炎の都では『神隠し騒動』が起こっているのだ。現在の時点で、既に三人もの被害者が姿を眩ませている。共通点と言えば、どの被害者も幼い子供であるというところか。

 

 サンドラ達は、召集会が始まる前にさくっと解決しようということで行動しているのだ。

 とはいえ、ペストは『グリムグリモワールハーメルン』で行動していた時、魔王連盟の一員であるリンと殿下の二人と行動を共にしている。この二人が、ただの商店コミュニティと自称しているとおりの人物ではないことを知っているのだ。

 だからこそ、何も知らないジンとサンドラとは違って、ペストだけは二人を警戒していた。

 

 ちなみにサンドラ達だけではなく、十六夜もこの『神隠し騒動』解決へと身を乗り出している。まぁ、面白半分で首を突っ込んでいるだけではあるが、彼が介入すれば百人力であるということは、現場で解決に出張っているマンドラ達も分かっていることだ。

 

 まぁそれはさておき、ペストはどうにかしてこのリンと殿下から逃げ切りたかった。ノーネームのメンバーの内、十六夜や黒ウサギと合流出来ればそれも出来る可能性がある。ほのかな可能性に賭けて、ペストは成り行きを見守っていた。

 

 

 にも拘らず、

 

 

「あれ? こんな所にチビが5人もいるー」

 

 

 ペストはそのほんの僅かな可能性の中から、一番最高の奇跡と対面した。そう、ペストを隷属させ、現在はノーネームから離れている珱嗄と、偶然にも遭遇したのだ。

 

「珱嗄さん、また会いましたね」

「あれ? サンドラちゃんじゃん、あの後別れたのに良く会うね」

「ええ、客人を待たせていたので」

「客人? ……そこの二人か? て、あれー? お前、この前のナイフ娘じゃーん元気? 魔王連盟の活動は捗ってるー?」

「……………!!」

 

 そして、リンは最悪の相手と対面したことに、青褪めた表情をしていた。ダラダラと嫌な汗が頬を伝い、目線は挙動不審に忙しなく動いている。そしてその隣にいた殿下と呼ばれる白髪金眼の少年は、そんなリンの様子に首を傾げながら、珱嗄をじっと観察している。

 

 特に、魔王連盟の人間であると暴露されたのは痛い。ここはどう動くかがかなり重要になって来る。

 

「お、珱嗄さん? その、リンが魔王連盟……というのは……?」

「え? だってこいつこの前の巨龍の騒動で俺にナイフ刺してきた奴だよ? 巨龍騒動を裏で手引きしていたみたいだし、絶対魔王連盟の一員じゃん。え? 何? サンドラちゃんこいつらと友達になっちゃった系? あはは、お前馬鹿だなぁ~魔王連盟の奴らをサラマンドラの中に入れちゃったわけ? どうしようもねぇな!」

 

 次々と重要事項を暴露していく珱嗄。最早この場に留まるのは得策ではないと、殿下もリンも考えていた。

 そろそろと後退し、そしてそのまま逃げようとした―――瞬間だった。

 

「おいおい何処行くんだよ。俺は鬼ごっこは嫌いじゃないけど、そういうのはもっとルールとかはっきりさせてからやろうぜ」

「「ッ……!?」」

 

 既に珱嗄は背後へと回り込んでいた。その逞しい胸板に、後退しようとした二人の少年少女はぶつかり、結局逃げられなかった。

 

 だが、リンと殿下が驚愕したのは、背後を取られたことではなく、逃げようとした自分達―――もっと言えばリンの逃走を、『阻止』したことだ。

 リンのギフトは、概念的な距離を操る空間支配のギフトだ。彼女との距離を詰めることだけでも、至難の業であるというのに、まさか背後を取れるなどと、規格外過ぎる。

 

「で、まぁ冗談はここまでにして、俺の今の役目は魔王連盟の邪魔なんだよねぇ。とりあえず―――」

 

 珱嗄がそう言って言葉を切ると、リンと殿下はその一挙手一投足を警戒する。

 だが、その警戒は無意味だ。何故なら、珱嗄は動かなくとも二人の行動を拘束する事が出来る。そのギフトは、例え概念的な距離を支配するリンのギフトでも、防ぐことは適わない。

 

「―――二名様、捕獲な」

 

 珱嗄はそう言って、パチンと指を鳴らした。

 瞬間、リンと殿下は電源が切れた様に意識を失う。覚醒状態の『反転』、意識がある状態を反転させて、強制的に気絶させたのだ。そして、珱嗄はリンと殿下の襟首を掴んで持ち上げると、どこからともなく取り出した縄で、二人とも亀甲縛りに縛り上げた。

 

「うん、中々良い感じじゃない?」

「……ねぇマスター、流石に亀甲縛りは可哀想だと思うの」

「いやでもほら? 運びやすいし?」

「社会的には死ぬわね、その二人……」

「大丈夫大丈夫、人通りの多い所を歩くようにするから」

「社会的に死んだわね! その二人!」

 

 こんな感じで、人知れず魔王連盟の企みが潰されていく。

 

 

 


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