◇4 問題児たちが異世界から来るそうですよ?にお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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よろ、取り敢えず捕獲で。おk?

 降り注ぐ雨。しかしてそれは、真っ黒だった。その正体は黒い契約書類(ギアスロール)である。魔王ドラキュラの起こしたギフトゲーム。その内容は以下の通り。

 

 

 ギフトゲーム名:SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING

 

 ・プレイヤー一覧

 獣の帯に巻かれた全ての生命体

 ・プレイヤー側敗北条件

 なし(死亡も敗北と認めず)

 ・プレイヤー側禁止事項

 なし

 ・プレイヤー側ペナルティ事項

 ゲームマスターと交戦した全てのプレイヤーは時間制限を設ける。

 時間制限は十日毎にリセットされ、繰り返される。

 ペナルティは『串刺し刑』『磔刑』『焚刑』のいずれかからランダムに選択される。

 解除方法はゲームクリア及び中断された際のみ適用

 ・ホストマスター側勝利条件

 なし

 ・プレイヤー側勝利条件

 ①魔王ドラキュラの殺害

 ②レティシア=ドラクレアの殺害

 ③砕かれた星空を集め、獣の帯を玉座に捧げよ

 ④玉座に示された獣の帯を導に、鎖に繋がれた革命主義者の心臓を撃て

 

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開始します。

 

 

 以上、黒いギアスロールの記載事項。これが今回の魔王、ひいては吸血鬼の純血であるレティシアのギフトゲームだった。

 敵はレティシアが昔魔王だった頃に持っていた『主催者権限』の封印を解いたのだ。故に、これは正式な権限の下、正しい手順で行われるギフトゲームとなるのだ。

 

「なるほどなるほど、レティシアちゃんをぶっ殺せばクリアなのか……面白くないからやんないけどね」

 

 珱嗄は片手で黒いギアスロールを持ち、なんなら鼻歌でも歌いそうな軽快さでそう呟く。

 

 

 ―――もう一方の手で龍の動きを止めながら

 

 

 珱嗄はその右手で持って、龍の頭を地面に縫いつけていた。具体的に言えば、通常では考えられない程の威力で空を舞う龍の頭を地面に向かって殴り飛ばし、そのまま凄まじい腕力で頭を地面に押さえ付けているのだ。周囲も唖然とするしかない光景だ。

 何せ、幻獣であり、最強種の一角を担う龍の純血種を、人間が腕力だけで捻子伏せているのだから。巨躯が暴れるが、頭を見えない力で抑えられているかのように動けない。しかも、本来なら巨大な龍が、幾ら凄まじい腕力で抑えられていようと、たかが人間程度の重量で動けなくなる筈が無いにも拘らずだ。

 

 だが、それもその筈だ。珱嗄の身体能力は、珱嗄の神様によって創られた肉体だからこそ発揮出来る代物であり、その肉体には神の力が宿っている。しかも、通常の人間とは中身の質が一つ一つ違う。

 筋肉の筋の一本一本が強靭な耐久力とそれ相応の重量を持っている。通常の人間の筋肉の筋をタコ糸と例えるのなら、珱嗄の筋肉の筋は金属で作られた糸、と言ったところだろうか。ゆえに、その一本一本の重さは桁違いだ。その筋肉繊維もまた同じ。

 更に言えば、その回復能力も通常の人間より桁違いに高い。そして、損傷した筋肉は、超回復によってより強靭に成長する。3兆もの年数の中で、そうした超回復を何度繰り返しただろうか。計り知れない。

 

 

 そんな珱嗄の体重は、およそ100t

 

 

 普通なら歩く事も出来ず、逆に身体が重さに耐え切れずに死んでしまう重量だが、珱嗄の肉体は神様製。更に筋肉の筋の一本一本がそれぞれ3tもの重量を支えられる強靭さと柔軟さを持っている。100tなど、容易に機動させることが出来る。成長すれば更に強靭になるのだから、その限界は無いだろう。

 え? 珱嗄が何度か吹き飛ばされたシーンがあるけどあれはなんだって? 3兆年以上も前の事なんだから、その頃の珱嗄の体重は普通位だろうから大丈夫。あくまで約3兆年の人生のせいだ。

 

「ま、ゲームは十六夜ちゃん達がクリアしてくれるだろ」

 

 珱嗄はそう言って、巨竜を抑えつけながら笑う。

 それまでは、巨龍でも使って遊ぶとしよう。遊びたがりなのは、3兆年の年月でも変えられない。珱嗄の最初の本質なのだから。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 十六夜達は、とりあえず巨人達の対処をしながら巨龍を抑えつけている珱嗄に驚愕―――を通り越して呆然としていた。あー、やっぱりかー的な胸中だった。

 ペストの死の風や、珱嗄には負けるが高位の実力者である十六夜が暴れれば、巨人やその他の幻獣など大した相手では無い。とりあえず黒ウサギの持つ『審判権限(ジャッジマスター)』を発動させ、このゲームを中断させるまでは、総動員で巨人達の掃討に務めることにしたらしい。まずは一度体勢を立て直すべきなのだ。

 

「さーて……お前らーとりあえずさくっと巨人倒すぞー」

「「「「りょうかーい」」」」

 

 珱嗄の規格外っぷりを見せつけられると、もはやどんなに手を抜いても負けなさそう、という結論に達した十六夜達は、少しやる気を削がれていた。とはいえ、珱嗄が巨龍を倒してしまわないで抑えつけるに留まっているのを見ると、ゲームのクリアは十六夜達に任せているのだろう。それが理解出来ない十六夜達ではない。

 

「……ま、珱嗄ばかり目立ってんのも癪だ……楽しんで行こうぜ、木偶の坊共!!」

 

 十六夜はそう言って、歯を向いて笑う。そして、巨人を一体その星を砕く一撃で薙ぎ払った。

 


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