◇4 問題児たちが異世界から来るそうですよ?にお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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収穫祭

 更新再開。

 

 これまでのあらすじ

 

 火龍誕生祭にて黒死斑の魔王であるペストを打倒し、そこで出会ったサンドラを加えた、レティシア、白夜叉、サンドラ、ペストの四人組のアイドルグループを作りあげた珱嗄は、しばらく土地を耕す飛鳥達の作業を余所に、商売を勤しんでいた。

 

 飛鳥達によって耕された農園区は、死んでいた土を蘇らせ、後は苗や植物があれば良いという所まできていた。

 そしてそこへ都合よくやってきた『龍角を持つ鷲獅子連盟』から収穫祭の招待状。25日間に及ぶ長い期間での収穫祭に参加することにした珱嗄達は、その会場である『アンダーウッドの大瀑布』へとやって来ていた。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 さて、空中での移動を終え、珱嗄達は収穫祭の会場へとやってきた。アンダーウッドの地下都市、前夜祭ということでギフトゲームが行われる事はまだ無いが、出店や展示物は既に数多く出展していた。地下故に天然の自然から生み出される光とは違い、様々なギフトで生み出された人工の光がキラキラと地下を明るく照らしていた。

 螺旋状に形作られた地下都市、その深さは20m程であるが、壁沿いに造られている都市の広さで言えば、地下とは思えないほど広かった。

 

 この収穫祭の主催者は、『龍角を持つ鷲獅子(ドラコ・クライフ)連盟』。六つのコミュニティが連盟を掲げ、一つの連盟旗を立てた組織だ。

 

 

 《一本角》

 

 《二翼》

 

 《三本の尾》

 

 《四本足》

 

 《五爪》

 

 《六本傷》

 

 

 各コミュニティにはそれぞれの役割があり、それぞれがそれぞれの役割を担って補い合っている組織。この六つのコミュニティを総称して、『龍角を持つ鷲獅子(ドラコ・クライフ)』と呼ぶのだ。

 

 さて、このアンダーウッドの水樹の高さはおおよそ500m。珱嗄達はこの中腹部分、250m地点を目指していた。

 地下都市の壁沿いに造られた螺旋階段を登って、水樹の麓にある巨大な根の部分へと辿り着けば、上へ昇るエレベーターがあるので無駄に労力は使わないで済むようになっている。

 

「めんどくせ、俺帰って良い?」

「此処まで来ておいて!?」

 

 だが、珱嗄はこの時点でもう飽きていた。実際、アンダーウッドの大瀑布を目の前にした時は確かに凄いとも思ったし、地下に広げられていた広大な都市もワクワクする様な光景ではあった。が、珱嗄にとってはそれまでだ。光景は光景でしかなく、珱嗄が求める変化と展開がある訳ではないのだ。

 しかも、今日から数日はギフトゲームも無く、商業コミュニティが商売をしたり、展示物を展示したりする予定になっている。もっと血沸き肉躍るような展開はなさそうだ。

 

「もっと面白い展示物とかない?」

「……例えばどの様な物でございますか?」

「魔王とか?」

「どんな展示物でございますか!!」

「おいペストちゃん、ちょっとお前展示されてこいよ。魔王だろ」

「嫌よ!?」

 

 珱嗄の無茶苦茶な言葉に黒ウサギとペストが悲鳴を上げた。

 ちなみに今この場にいるのは、ノーネームの黒ウサギ、珱嗄、春日部、飛鳥、ペスト、ジンと、ウィル・オ・ウィスプのアーシャとジャックだ。

 

 あれ? ペストいたっけ? と思った読者は、今まで空気だったということで勘弁していただこう。一応ペストもやって来ていたのだ。

 

「ま、どうでもいいんだけどさ……つまんねー……」

 

 珱嗄がそう呟くと、全員が最後の階段を上りきった。辿り着いた水樹の麓、そこから更に上へ昇るエレベーターに乗り込んだ。備え付けのベルを二度ほど鳴らすと、水樹からエレベーターを引き上げる為に水が注がれ、その重さに比例して珱嗄達を乗せたエレベーターが上へと昇って行った。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 さて、エレベーターはものの数分で本陣へ辿り着き、珱嗄達は受付を済ませて入場する。ところで一人の女性と対面していた。頭には二本の立派な龍角、どこかサンドラに似た赤い髪を靡かせ、大胆に露出させた褐色の肌が、妖艶に彼女を飾っている。

 彼女の名前は、サラ=ドルトレイク。珱嗄の作ったアイドルグループに所属しているサンドラの、姉である。彼女は受付に座っていた少女を出店が数多く拡げられているエリアへと向かわせると、珱嗄達に向かって一つ礼をした。

 

「ようこそ。『ノーネーム』と『ウィル・オ・ウィスプ』の両コミュニティの方々。下層でも有名な両コミュニティを招くことが出来たことは、私も鼻高々だ」

「誰だよお前。通行の邪魔だ、どけ」

「あ、はい……す、すいません」

「全く……こちとら露出魔に構ってらんねぇっつーの」

「ってちょっと待ってくれ!?」

「なんだよ」

 

 珱嗄がサラを押しのけて押し通ろうとすると、サラは勢いよく顔を上げて珱嗄を止めた。珱嗄はそれに対して面倒そうに振り返る。どうやらサラは珱嗄の興味をひけなかったようだ。まぁ、赤髪はサンドラと被っているし、褐色肌もマンドラと被っている。興味を引けるかと言えば無理なのだろう。

 

「分かったぞ……さては貴方が珱嗄だな? 妹のサンドラのプロデューサーをしているという……」

「そうだけど? あ、すいませんね、サンドラは内のアイドルなんで、ストーカーはお断りです」

「実の姉なのだが!?」

「ああ……いますよね、あの子は俺の妹! とかいうコアなファン。そういうのもお断りなんですよ。現実見て下さいね」

「あ、そういう対応? 本当サンドラに聞いていた通りの男だな……」

 

 珱嗄のマイペースすぎる対応に、サラは肩を落とした。おそらく、どう言っても珱嗄には話が通じないだろうと諦めたのだ。

 

「で、そのお姉ちゃんがなにか用?」

「あーれー? さっきと言ってること違くないか?」

「サラ様、珱嗄さんはこういう人です」

「………黒ウサギも大変だな……」

「いえ、もう慣れました……」

 

 黒ウサギはそう言って、とほほと肩を落とした。

 

 


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