◇4 問題児たちが異世界から来るそうですよ?にお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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気付かぬ間の悪い予感

「……うん、まぁ大丈夫そうかね」

「ねぇ、私結構驚いてるんだけど。マスターがまともな事をしたわよ」

「私も驚愕を隠せないよ。見てくれ、この鳥肌」

「見事に健康的な白い肌ね。見せつけてるの?」

「ペストは髪がさらさらなんだからいいじゃないか。私は髪長いから手入れが大変で……」

「おい、話題がずれてるけど?」

 

 さて、珱嗄は春日部耀に少し発破をかけた後、窓から飛び降りた先でペスト達と合流した。さきほどのやり取りを見ていたようで、珱嗄らしからぬ行動に少し驚いていた。

 

「お前ら俺をどんな眼で見てんだよ。俺だっていつも滅茶苦茶やってる訳じゃないんだぜ?」

「……まぁそれもそうか」

「と言っても、だ。俺としては今回そこまで干渉しようとは思ってないんだよ。火龍誕生祭じゃあ俺が殆ど持ってったからあの三人もちょっと不満足だった様だし、この収穫祭じゃ楽しんでもらおうとね。ついでだし、お前らもお小遣いでもやろうか?」

 

 珱嗄の台詞にレティシアやペストが苦笑する。流石に最近では珱嗄の子供扱いにも慣れてきた。見た目は20歳程に見える物の、実年齢は3兆歳……子供扱いでも仕方ないと思えて来たのだ。

 それに、珱嗄は珱嗄で考えがある。友人関係、というより人間関係やコミュニケーションについては転生してきた世界で多く学んできた。リリカルなのはじゃ人とぶつかる勇気と友情を、めだかボックスでは思いを伝える言葉と愛情を学んだ。ハンターハンターは戦いの世界だったので例外だが、多くの人間と世界中を回って知り合った。それだけ学べば十分だ。

 

「それに―――」

 

 珱嗄は振り向き、窓際で空を見上げている耀と三毛猫を見た。そして一旦途切れた言葉に首を傾げるレティシアとペストに視線を戻して言葉を紡ぐ。

 

「―――友達は大切にしないと、ね」

 

 そんな事欠片も思っていないだろうと思わせる程薄っぺらい笑みを浮かべて、珱嗄は言う。ペストとレティシアは、そんな珱嗄の言葉に

 

「いつも通り、ってことか」

「相変わらず、手の平の上で転がされる感が少し気に障るけどね」

 

 苦笑してそう言ったのだった。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 さて、綺麗に終わったかと思えば、実はこの件はそうでも無く続いた。発端は春日部耀の弱音を聞いた三毛猫。彼は耀をお嬢と慕い、彼女を支えるべく彼女のそばにいるのだ。故に、彼女が弱音を吐いた事で、彼は彼女の本音を知ってしまった。そしてその本音を知った所で、どうにか出来る行動を起こせるわけでもない、故にその翌日、彼は私的に意趣返しをする事を決めた。

 

『っても、あの珱嗄ゆう男は見上げたもんや。お嬢もなんや尊敬しとるようやし、俺も骨のある奴やと思う。やから意趣返しの相手はあの十六夜ゆう奴や』

 

 三毛猫は心の中でそう決めて行動する。傍に耀の姿は無い。トコトコと歩き、十六夜達の居る場所へやってくる。やって来た場所は、風呂場だ。現在十六夜はリリやレティシアと共に入浴中だ。なんでもレティシアの髪が濡れると劇的に印象が変わるとの事で、一目見ようという話になったらしい。

 

『ケッ、オス一匹にメス二匹か、ええ御身分やの……さて』

 

 三毛猫は音を立てない様に十六夜の脱衣籠を漁る。そして見つけた。

 

『小僧がいつも頭に付け取る奴か……これでええやろ』

 

 加えたのは、十六夜のヘッドホン。十六夜の過去がどうであるかは知らないが、このヘッドホンは元の世界で親身な関係だった人物から貰った物だ。ある意味で、愛着が湧いていたのだが……三毛猫は事もあろうにそれを奪ったのだ。意趣返しにしては少し事情を知らない事がより悪い方向に展開を進めていた。

 

『……さ、バレへん内に退散や』

 

 三毛猫はヘッドホンを引き摺りながら風呂場を出て行く。十六夜がヘッドホンが無くなった事に気付いたのはその数分後。

 そして、全てを知っているのは

 

「―――本当、皆若いねぇ」

 

 十六夜のDVD第二弾を撮影しようと偶然居合わせていた、珱嗄だけ。

 

「さて、十分撮影出来たし……リリとの洗いっことかレティシアとの入浴とかだから、きっと十六夜ちゃんは大勢のロリコン達から敵意を向けられるだろうね。わはは、まぁ十六夜ちゃんにとっては望む所かな?」

 

 珱嗄はそう言って、ビデオの電源を切った。

 

 

 


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