◇4 問題児たちが異世界から来るそうですよ?にお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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真っ白なギフトカード

 さて、サウザンドアイズ、ひいては白夜叉という人物はとんでもなく重要人物だったりする。黒ウサギやその仲間は白夜叉との付き合い故に、その気さくさと少しの変態性を持っている事を知っている。

 だがそれ以上に彼女は魔王という肩書き通りの実力と格を持ち合わせている。それこそ、魔王並の強敵一人や二人、圧倒して倒してしまう位の。

 

「さて、まずは自己紹介をしておこうかの。いろいろと遠回りしたが、私はサウザンドアイズの幹部、白夜叉だ。この東の外門では並ぶもののいない最強のホストである」

 

 最強を強調して言う白夜叉。珱嗄は正直その言葉を聞いて、自分の実力を誇示したい子供かと心の中で突っ込み、どうでもよさげに寝っ転がった。

 

「おい待てコラ。おんし、私の言葉を聞いて何故寝っ転がる。というか人の支店の中で寝っ転がるってどういう了見だ? 全く、先程の事といい、おんし随分と自由じゃな!」

「おいおいお嬢ちゃん。冗談はそのとろけた脳みそだけにしとけよ。全く、俺にとって強さなんて鼻で笑い飛ばす物だ」

「ほお……随分と自信が有る様じゃなぁおんし。まぁこの私にギフトの発動を悟らせなかったその手腕は認めてやろう。じゃが、ギフトだけで通用するほど、箱庭は甘い場所では無いぞ?」

 

 白夜叉の目が細くなり、何やらカードを取り出して光を放つ。

 

「どうやら、おんしとは違ってそこの三人は私と勝負がしたそうじゃ。その意気や良し、じゃが一つ問うてやろう。おんしらが望むのは挑戦か? もしくは―――決闘か?」

 

 その言葉と同時に景色が変わる。白夜叉の名の通り、その景色は『白夜』。シャッターの遅いカメラで撮った星空の様にぐーっと伸びた星が薄暗い空を飾り、白夜叉の容姿をそのまま景色にした様な白と黒の混ざり合った世界。

 

「こ、これは!?」

「落ちつけ。ここは私の持つゲーム盤の一つだ」

「これが唯のゲーム盤!?」

 

 十六夜の慌て様に白夜叉が説明をするが、それに対し飛鳥が更に驚愕した。

 そして白夜叉は未だ地べたに寝っ転がる珱嗄に視線をやる。珱嗄も眠そうに白夜叉に視線を合わせた。

 

「どうだ小僧。驚いたか?」

「いや別にこれ位は珍しい物でも無いだろう」

「は?」

「俺も出来るし、なんなら俺の知り合いも出来たぜ」

 

 珱嗄にとってそれは別に珍しい物では無い。教室空間を作りあげた奴もいたし、ゲーム盤が凄い位の物なら特に気にするほどでもないだろう。

 

「ふむ……おんしのギフトがどのような物か気にはなるが、まずはこの三人の要望を聞くとしよう。それで、どうする? 挑戦か、決闘か」

 

 白夜叉は十六夜達に聞く。すると、耀と飛鳥は驚いたままであったが、十六夜がいきなり笑いだした。

 

「ははははは! まいった。こんなに凄いモン見せられちゃあ仕方ねえ。今回は大人しく為されてやるよ、白夜叉」

「ふむ、よかろう。それでは始めようか。おんし達には、アレの相手をしてもらおう」

 

 そう言って白夜叉が扇子で差した先、そこからはなんと――――

 

「………あれ?」

 

 ―――何も来なかった。

 

「お-よしよし、なんだお前何食ったらそんなでかくなるんだ?」

 

 と一瞬の沈黙の後に響いたそんな珱嗄の声。全員がそちらを見ると、そこには白夜叉が呼んだ者、グリフォンが珱嗄に弄りまくられていた。

 

『ちょ……やめろ貴様! 痛い! 羽を毟るな!』

 

 グリフォンは悲痛の声を上げる。すると白夜叉はそんな珱嗄の方へ全力で駆けだし、跳んだ。

 

「自由すぎじゃおのれえええええええええ!!!」

 

 白夜叉はそう叫んで、珱嗄の背中に跳び蹴りを入れるのだった。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 その後、動物相手という事でグリフォンの相手をしたのは春日部耀。試練の内容は特にこれといった面白さもないので割愛するが、取り敢えず試練には合格したという結果だけを述べておこう。

 

「さて、まぁ鑑定して欲しいという事だし……祝いだ、受け取れ」

 

 ぱんっと手を叩く白夜叉。試練も合格という結果に終わったので、元々の目的であるギフトの鑑定をする事にしたのだ。

 

「まさかギフトカード!?」

「何それ? 御中元?」

「御歳暮?」

「お年玉?」

「……カードゲームみたいなもんだろどうせ。十六夜ちゃん俺のと交換しようぜ、俺青いカードの方がいいや」

「違います!! ギフトカード! ギフトを収納しておける上に、各々のギフトネームも分かる超高価な恩恵でございます!」

 

 ボケる三人と素の珱嗄に突っ込む黒ウサギ。

 ギフトカードとは、顕現しているギフトを収納しておける恩恵をカードの形にした物。持てばギフトの名前も分かる上に、収納したギフトは出し入れ可能という珍しい恩恵。本名はラプラスの紙片だ。

 

「なるほど……」

 

 珱嗄達はそれぞれが受け取ったカードを見る。そこには確かにギフトネームが示されていた。

 

 春日部耀は【生命の目録(ゲノム・ツリー)

 

 久遠飛鳥は【威光(いこう)

 

 逆廻十六夜は【正体不明(コード・アンノウン)

 

 である。

 

「ふーん、なら俺のはレアケースな訳だ……」

「アンノウンじゃと……? ギフトカード、ラプラスの紙片でも判別できんとは……」

 

 今までにない事例。十六夜のギフトは判別できなかったらしい。

 

「珱嗄さんのはどうなんですか?」

「ん? 見せてやるよ。読めればいいけど」

「どれどれ……ええ!? 読めない!」

 

 黒ウサギの声に、珱嗄はカードの表を全員に見える様に掲げた。そこには一面真っ白なカードがあり、文字など何処にもなかった。

 

「ギフトが表示されない? また……この小僧以上におかしな例を引っ張り出しおって……」

「……ま、読めないならいいさ」

 

 珱嗄はぼそっとそう言って立ち上がる。

 実際、ギフトカードにはちゃんと珱嗄のギフトが『全て』表示されている。但し、その数が多すぎて、ギフトネームが重なり合い、カード一面が真っ白に見えるほどに文字が表示されているのだ。分かりやすく言うのなら、ノートに文字を書き過ぎて真っ黒に塗り潰してしまったのと同じ事。

 

「わはは、これなら全部ひっくるめて【恩恵の創作(クリエイション・ビネフェット)】とでも名付けるかな」

 

 珱嗄はそう言って、ゆらりと笑うのだった。

 

 


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