◇4 問題児たちが異世界から来るそうですよ?にお気楽転生者が転生《完結》 作:こいし
「失礼するのじゃ」
そんな言葉と同時に入って来たのは、友人である白夜叉。だが、ちょっとした貸しの解消の為に彼女は今、メイド服を来て一日御奉仕をしてくれることになっている。とはいえ、流石は白夜の星霊にしてサウザンドアイズの幹部、羞恥心を感じるどころか寧ろノリノリのようだ。
その手に持っているのはメイドらしく掃除用具。どうやら掃除にきたらしい。
「お掃除させて頂くぞ」
敬語であって敬語でない様なそんな言葉使い。メイドではあるものの、白夜叉としての権威というか立ち場的なものがあるのだろう。
だが、今は俺のメイド。俺だけのメイドだ。此処は譲れない。
「え? メイドならメイドらしい言葉使いを……って……ん、ま、まぁ確かに、そうじゃな……ごほん! え、と……お掃除させて頂きます……ご、ご主人様?」
おお、少し恥ずかしがっている。これはまたレアな物を見た。今日一日この表情が俺だけのものとなれば、テンションもおのずと上がって来る。ここはご主人様として何か命令をするべきかな?
「え、命令……ですか?」
ですか、の所に若干間があったな。まだ慣れてないから許すとしよう。
「メイドならご主人様の性欲処理も……へ、変態!」
普段のお前を見てる者からしたら、つくづく心外な罵倒だな。変態はお前だ。とはいえ、それは冗談。そんなことやらせるなんて、何処のエロ漫画だ。とはいえ、白夜叉に命令出来るこの絶好の機会、逃すわけにはいかないだろう。
というわけで、俺を楽しませろと命令してみた。
「楽しませるって……えーと……ハッ……」
すると、白夜叉は持っていたモップに跨り、少し屈んだ状態で此方を見る。
「魔女の○急便!」
アホか。一体どこからそんな知識を仕入れて来たのか本当に気になる所ではあるが、自信たっぷりなキラキラした瞳で此方を見られると酷く滑稽だ。結果的にだが、確かに面白い物ではあった。
俺がクスクスと笑っていると、白夜叉は味を占めたのか更に何かしようと考え出した。いや、もういいよ。
「そ、それじゃあこれならばどうj……ですか」
すると、今度はその状態のままバケツをモップの先に掛けた。
「ジ○のぬいぐるみを届ける魔女の宅○便!」
コイツは頭がおかしいのだろうか。二度目のネタは面白くなかった。というか、ジ○リに手を出すな、危ないから。あの有名なテーマパークのハハッ☆と笑うネズミに手を出す位ヤバいから。
「むぅ……これはだめk……ですか」
とりあえずこれまま行くとやばそうだから、もういいよと告げた。すると、白夜叉はしぶしぶといった様子で掃除を始めた。その手際はたどたどしく、おそらく掃除自体あの女性店員に任せているのだろうと思わせるものだった。
結果的に、掃除を終わらせたのは始めてから2時間後だった。その間俺が何をしていたのかと言えば、それを眺めていただけだ。ちょいちょいちょっかいを出すと面白い様に反応してくれるので、退屈しなかった。
「ふぅ……ご主人様のせいで少しばかり時間を食ってしまった……です」
いや、たしかに俺のせいもあるんだろうけど、大半以上は君の手際の悪さが原因だと思う。とは言わなかった。俺は大人なのだ。
「なんj……ですか、その不満そうな眼は」
まぁそれを差し引いても不満になるだろう。部屋を掃除していた筈なのに、何故か散らかっているのだから。それは指摘せずにはいられなかった。
「部屋が汚い……?……あ、え、いやそれはその……すいません……でしたです」
しゅんと肩を落としながら、それでも言い訳せずに謝るという所は、彼女の美点だろう。だが、それで許してしまえば主人としての威厳に関わる。というわけで、お仕置きはさせて貰うことにした。
「えと……お仕置き?」
何が良いだろうか? 性欲処理とかさっき言ったけど、これは今後の関係に関わるな。幾ら白夜叉に俺が変態だと思われているからといって、なんでもやっていいわけではない。
ということで、白夜叉も良くやってそうなことをやってみることにした。パンツ見せろ、たくしあげで。
「ぱ、ぱんつ!? 私のか!?」
敬語を忘れている。だが、そんな事を気に出来る様な事態では無いのだろう。白夜叉は自分が今まで黒ウサギにコスプレを強要したりしたことも考えて、断れないのだろう。うんうんと唸っている。
そして、意を決したのかメイド服の裾をぎゅっと握りしめ、真っ赤な顔を更に真っ赤に染めながら、スカートをたくしあげた。
「こ、……これで、いい、ですか? ご主人、様」
そこで、俺の思考は停止した。何故なら、白夜叉のスカートの下にはあるべきものがなかったのだ。そう、パンツが無かった。丸出しだった。何故だ。
「ど、どうした……御主人………ん? ……あ!?」
白夜叉は勢いよくスカートを抑えつけ、あわあわと慌てながら口を大きく開ける。パンツを履いてなかったことに気が付いたらしい。そして、ぐ、っと力を溜めると、
「履き忘れたのじゃぁあああああああ!!!」
そう叫びながら部屋を飛び出して行った。履き忘れた、成程それならばパンツを履いていなくても仕方ない。うん、うん………とりあえずは
御馳走様でした。
◇ ◇ ◇
その夜、ぎくしゃくした様子ではあるものの、一日メイドを務め、白夜叉は自分の拠点に帰ることになった。
俺の拠点の玄関口で、俺と白夜叉は向かい合う。
「え、えと……今日のあのことは忘れて欲しいのじゃ……如何に私といえど、恥ずかしいのでな」
忘れる気は無いけど、ウンワカッタと答えておいた。
「むぅ……忘れる気が無いな? 全く……でもまぁ、今日は楽しかったぞ。メイドというのも悪くない」
そういう白夜叉の表情は中々満足気だった。どうやらメイド業務に楽しさを見出したらしい。ならもう一回やってくれないかなぁ、と考える。
というわけで、正直にそう頼んでみた。すると、白夜叉はきょとんとした後大きく笑う。そして、悪戯っ子の様なニヒルな笑みを浮かべて月明かりを浴びながらこう言った。
「この変態ご主人様が♪」
白夜の星霊、白夜叉。月夜の光を浴びて輝くその白い髪と、金色の瞳、思わずドキッとしてしまうほど美しかった。