◇4 問題児たちが異世界から来るそうですよ?にお気楽転生者が転生《完結》 作:こいし
さて、始まったこの白夜叉盗撮作戦は始まって4時間でその参加者の半数が白夜叉本人によって撃墜された。つまり、バレたのだ。白夜叉を盗撮している事が。
そして800人以上の盗撮者の半数、つまり400人の盗撮者が居た事を知れば、当然白夜叉も何処かの組織が企てて撮りに来ていると理解するだろう。その結果、白夜叉は一層警戒心を高めてしまった。
白夜叉は普段残念な程お茶らけた変態だが、その実サウザンドアイズという大きなコミュニティの幹部にして白夜の精霊なのだ。実力はペストの何倍にも上る。魔王の一人や二人、軽く圧倒して見せるだろう。
そんな彼女が本気で警戒しているのだ。そこからは数時間で残りの半数もかなり減らされてしまったのだ。
「うーん……残り60名、か」
珱嗄は呟く。数を数えるギフト【
「残りは―――」
そして残りの人材を数えた。
ノーネーム:ペスト、レティシア、リリ、春日部耀の4名。サラマンドラ:サンドラ、マンドラ、隊員11名の計13名。元ペルセウス:20名。白夜叉ファンクラブ(仮):23名。これが今残っている人材だ。
ちなみに、十六夜や黒ウサギ、久遠飛鳥、ジン・ラッセルが何故やられたのかを簡単に語ろう。
十六夜→尾行が下手クソで白夜叉に速攻でバレた。天地は砕けてもストーキングした経験は無い様だ。
飛鳥→ディーンがバカデカ過ぎて速攻でバレた。頭を使え天然お嬢様。
黒ウサギ→白夜叉が変態性を発揮して何故か居場所がバレ、後にもみくちゃにされた。
ジン→カメラを持って白夜叉の真正面から突っ込み、馬鹿みたいに簡単に終わった。
この通り、ストーキングにまったく経験が無かったので、戦闘においては異様に高い戦績を誇る十六夜も、支配のギフトで赤い巨兵を従えた飛鳥も、箱庭の貴族である黒ウサギも、それをまとめるジンも、白夜叉という格上の変態の前に敗北したのだ。
また、この他で撃墜された元ペルセウスのメンバーやファンクラブのメンバーも見つかった理由としては、その部分が一番大きい。
「うーん、戦闘しか能が無いのかアイツらは……全く」
珱嗄の呟きは的を得ていて、殆どの猛者がストーキングの技術を持っていなかった。今残っているのは元々追跡の技術を持っていた輩とその才能を今回目覚めさせた者達だ。それと、元々持っているギフトで身を隠せる実力者と言ったところか。
「さて、どうなるかな」
珱嗄はそう言って、ゆらりと笑った。
◇ ◇ ◇
「くっ……中々手ごわいな……!」
「レティシア、貴方は何枚撮った?」
「ペストか、今の所248枚だ。だが、此処に来て白夜叉の警戒心が高まっている。下手にカメラのシャッターを押そう物なら速攻でバレるぞ」
「困ったものね……私は今257枚……影からこの疫病の黒い風で身を隠して撮ってたんだけど……この手ももう通用しないかも」
レティシアとペストは今回のイベントで尤も撮影に成功している二人だ。300枚に一番近いのだが、まだまだ遠い。
「! 隠れて」
「……また一人、捕まったか……」
そういう二人の目の前ではサラマンドラの隊員が一人、白夜叉に捕まっていた。そして捕まった瞬間白夜叉によって気絶させられる。あの分では一日起きてはこないだろう。つまり、事実上このイベント失格だ。
白夜叉は捕まえた全員をこの様に処置しているのだ。
「っ! 今!」
レティシアとペストは白夜叉の意識が別に向いた瞬間、同時にシャッターを切った。そしてすぐさま場所を移動する。シャッター音で白夜叉の意識が此方に向くのですぐに場所を変えなければならないのだ。
ちなみに、シャッター音は珱嗄が敢えて消さなかった。
「……ふむ、どうやらレティシアやペストも参加しておる様じゃの……十六夜や黒ウサギ、飛鳥もおったし、サラマンドラのメンバーもちらほらと……それにあのルイオスの小僧の部下もおったの。あと、良く分からんがサウザンドアイズの下っ端もいた……ということは計画したのは……やはりあ奴か」
白夜叉はシャッター音の方へ振り向き、その気配からレティシアとペストの存在に気が付き、今までの盗撮者のメンツから珱嗄の企画だと気付いた。
何の目的でやっているのかは知らないが、こちらとしてもただ盗撮され続けてやる訳にもいかない。理由も知らずに写真を撮られるなど気分的にも良いとは言えないのだ。
「面白い。ここは元凶を叩くとするかの」
白夜叉はそう呟いて、扇子を口元に持っていく。そして愉快そうに眼を細めた後、その足を珱嗄の下へと進めて行った。
◇ ◇ ◇
「! おっと、白夜叉ちゃんがこっちに気付いたか。さて、どうしたものかねぇ……あ、そうだ」
珱嗄は意識下で会話するギフト【
「おーい、二人とも」
『! マスターか』
『何よ』
二人はいきなりの事で少し吃驚した物の、珱嗄に対して返事を返す。
「あのな、二人とももう240枚以上撮ったみたいだし、一回戻って来てくれ。んで、頼みを一つやってくれれば条件クリアにするよ」
『直ぐ行く』
『直行ね』
「じゃあよろしく」
珱嗄はゆらゆら笑って楽しげに眼を細めた。そして此処へ向かってくるレティシア達の気配と、ゆっくり近づいてくる白夜叉の気配を感じながら、その場を動かずにただただ、待つのだった。