◇4 問題児たちが異世界から来るそうですよ?にお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

30 / 107
本格的な売り出し

「いらっしゃい。本日開店、美少女アイドル四人組の初回売り出しグッズ販売! どうぞ見てって下さいなー!」

「こ、これ! このキーホルダー一種類ずつ下さい!」

「この異世界少年温泉日記買います! ブロマイドを!!!」

「うへへへっへ、幼女萌えぇぇ……はぁはぁ……!」

 

 さて、アイドルユニットが正式に結成されてから数日。珱嗄はその類稀な技術と器用さを利用して四人の美少女達のグッズを一人で大量に生産し、遂に売店を開いた。サウザンドアイズの協力の下店を開く場所や宣伝は万全で、事前に握手会や本人達による挨拶も行なった故に、売店は開店前から大量の行列を作り、開店直後から売り上げは鰻登り。

 その勢いは留まる事を知らず、店の在庫を食いつくす程だ。そして非常に意外な事だが、一番の人気商品は十六夜のお風呂シーンの入ったDVDだった。ブロマイド欲しさに何度も何度も買いに来る客が居て、更にこのDVDを捨てるとブロマイドが手元から焼失するという事もあって、ちゃんと家に持って帰るシステムになっていた。

 

 また、このDVDを捨てるには10回以上早送り無しで一から最後まで繰り返し見る事が条件になっており、それはちゃんとDVDの裏面に表記されている。現在、ブロマイドをコンプリートした物はいない。

 

「ふぅ……随分とまぁロリコンの多い世界と予想していたが、予想以上だ」

 

 そんな売店を一人で切り盛りしているのは勿論珱嗄だ。プロデューサーとして、こういうアイドルの売り出しは彼の仕事だ。現在も四人一緒にレッスンを続けているのだから、お披露目の時に備えて知名度を上げておかねばならない。

 また、この売店に来るのは男性ばかりではない。十六夜のDVDを求めてやってくるゲイやオネェ、そして腐のつく女性達もまた、客の中にいるのだ。

 

「さて、随分客足も落ち付いて来たし、一息つけるな」

 

 珱嗄はそう言って椅子に座る。店自体は珱嗄が即席で作った木造建築だが、そのクオリティは流石と言うか、かなり高い。それなりに広いのでかなり多くのグッズが店先に並んでいる。

 

「あのー」

「ん?」

 

 そこへ話し掛けてきたのは一人の男。全体的に黄色でまとめられたファッションで、チョーカーを付けていた。

 

「なんだ?」

「このグッズなんですが、いくらですかね?」

「ああ、それか……それは」

 

 男が持ってきたのはあまり人気が無かった商品。とはいえ、他の商品と比べて、だからそこそこ売れてはいるのだが。

 それはレティシア大人バージョンの水着をカードにした物で、中々セクシーな仕上がりになっている。

 

「それは―――円だ」

「ん、じゃあこれ」

「毎度。それにしてもルイオス君、君も好きだねぇ」

「なっ!?」

 

 珱嗄の言葉に男は一歩下がって驚いた顔をした。その視線が珱嗄と合った時、顔色を青褪めさせる。そして珱嗄が代金と引き換えに渡したカードをひらりとレジに落とした。

 

「ば、化け物!」

「誰が化け物だコラ」

「い、いや……悪い。で、でもなんでお前がこんな店を!?」

「お前から貰い受けたレティシアを含め、白夜叉や魔王、北のフロアマスターを起用してアイドルにしたんだよ。で、これはその売店」

「な、なるほど……ん? ってことはこのカードは!?」

「レティシアちゃんだぜ?」

「嘘だろ、アイツはこんなに色気は無かった筈だ!」

 

 男の正体は元ペルセウスのリーダー、ルイオスだった。どうやらふと寄った店先に並んでいたレティシアのカードに興味を示したようだ。この男は色欲だけは高いのだ。

 

「ま、リボンを外せばこんな姿に大変身ってわけだよ」

「マジかよクソ………ちょっと惜しかったな」

「ははは、今更何言ってんだよ。アイツはもう俺の物だ」

「分かってるよ」

 

 ルイオスは珱嗄の目の前に落ちたカードを拾い上げ、胸ポケットに入れて店の出口へと歩く。珱嗄はそんなルイオスの背を面白そうに見ながら笑った。

 

「またのご利用をお待ちしております」

 

 ルイオスは背中から降りかかった言葉に対し、少しだけ動きを止め、無言で出て行った。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「いらっしゃい」

「おい珱嗄。お前マジでこれ売ってんのかよ」

「マジだよ。一番人気の目玉商品だ」

 

 次にやって来たのは十六夜だった。入ってすぐの所に置いてある自分がパッケージの表紙になっているDVDを取ってレジに座る珱嗄を睨みつけ、そう言った。

 珱嗄の返しに肩を落とすが、気を取り直して珱嗄に歩み寄る。

 

「お前俺の事を無断で利用して金を稼いだんだから売上少し寄越せよ」

「まぁ最初からそのつもりだったから別に良いけど。そのDVDの売上の半分でいいか?」

「ん、じゃあそれで」

「まぁ閉店時間まで後少し、まだまだ客足が途絶えた訳でもないからそのDVDももう少し売れるだろ。そしたらその売り上げをお前に渡すさ」

「おう」

 

 十六夜はそう返事をして店を回り始めた。周囲にはグッズを見ている客がちらほらと見え、DVDに近づく客を見ると少し鼓動が勢いづくが、止める事はしない。もはや大量に売り払われた後、止めた所で意味は無い。

 

「にしても……このキーホルダーとかカードとかよくもまぁ作ったもんだぜ……」

「俺のギフトがまだ2000京有った時に作ったんだよ。大量生産は楽だったぜまだまだ一杯ある」

「まったく無駄な事にギフトを無駄使いするな本当」

「それが俺だぜ」

 

 珱嗄はそう言ってゆらりと笑う。

 そしてその後、しばらく客の相手をしつつ十六夜と雑談をしていると閉店時間はすぐにやってきた。珱嗄と十六夜は早々に店仕舞いを終え、帰路に付くのだった。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。