◇4 問題児たちが異世界から来るそうですよ?にお気楽転生者が転生《完結》 作:こいし
さて、あの会談が終わってみれば、案外あっけなくルールの改定は終了した。
結果から言えばゲーム再開は一週間後、そしてゲーム終了はその24時間後となり、その終了時までにプレイヤー側が勝利条件を達成出来なければ無条件でホスト側の勝利となる事が決定した。
また、珱嗄とペストの一対一の対談により、プレイヤー側が勝利した場合ペストは珱嗄の所有物となり、その逆も然りとなった。
そして最後に付け足しとして、珱嗄はこのゲームにおいてかなりの制限を付けられる事になった。これは珱嗄も含めて全員が承諾した。何故なら、珱嗄はこの世界においても強すぎたのだ。七桁の外門であるこの場においてその強さは反則と言っても良い。故の枷。
まず第一に、珱嗄のギフトの使用数制限。珱嗄はその身に2000京のギフトを宿す人外だ。よって、そんな馬鹿げた数のギフトを全部叩き込まれればたまった物では無い。そういう事で、珱嗄のこのゲームで使用出来るギフトの数は一つ。そしてその使用回数はたったの5回である。ギフトの選択は珱嗄自身がやっていいが、これは普通の奴にとっても少々キツイ制限だ。
第二に、珱嗄はヴェーザーとラッテン、シュトロムの行なう戦闘に参加してはいけない。ギフトが一つとはいえその実力が高すぎる事は明らか、故にペストは彼の戦闘を自分との物だけにしたのだ。もしも珱嗄がヴェーザーとラッテン達と対峙した場合、魔王側の敗北は必至だ。これも珱嗄自身が承諾した事で約束された。
珱嗄に掛けられた制限はこの二つだ。明らかに珱嗄に対する制限が過ぎるとサンドラや黒ウサギ、十六夜が反抗したのだが、魔王は断固としてそれを受け付けず、この制限は実行されることとなった。
そして現在。その会談から三日後、珱嗄は自分がどのギフトを使うかを選んでいた。
「うーん、どれがいいかね? なぁ十六夜ちゃん」
「とびきり強い奴使えば良いじゃねぇか」
「まぁそうだね。なんせ、5回も使って良いんだから」
そう、珱嗄のギフトは言ってしまえば何でも出来る。なんせ、『視線を合わせただけで相手が死ぬギフト』や『神になるギフト』や『使えば勝利が確定するギフト』や『無敵になるギフト』や『世界を崩壊させるギフト』や『星を消滅させるギフト』等々、規格外には程がある物が大量に存在している。そんな物を、なんと『5回』も使って良いのだ。
つまり、5回も相手を殺しても良い。5回も神になっても良い。5回も勝って良い。5回も無敵になっていい。5回も世界を崩壊させていい。5回も星を消滅させていい。そう、選んだギフトによっては一度でも使って欲しくない物があるのだ。魔王陣営は珱嗄に対する制限を少し甘くしすぎた。
「じゃあさ、今から挙げるギフトから一個選んでみてくれ」
「ん、ああ」
「じゃあいくよ――――」
珱嗄の挙げたギフトを下記に述べる。
・ギフトを無効化するギフト【
・視線を合わせた相手を殺すギフト【
・意図を外させるギフト【
・ギフトを奪うギフト【
・巨人になるギフト【
・一回前の攻撃をキャンセルするギフト【
・起こった事象の反対の事象を起こすギフト【
・眼鏡を掛けさせるギフト【
・戦意を失くさせるギフト【
・肉体を改造するギフト【
・病を処方するギフト【
・盥を落とすギフト【
・龍になるギフト【
・足を引っ張るギフト【
・不幸を振りまくギフト【
・対戦相手の技を使うギフト【
・ダメージを倍加するギフト【
・好きな場所に移動するギフト【
・ギフトを使わないギフト【
・文字数稼ぎのギフト【
以上、20個だ。2000京分の20個。随分と少ないが、これだけでも国の一つや二つ簡単に落とせるだろう。
「いや覚えらんねぇよ。書いて寄越せ」
「仕方ないな。その残念な脳みそでも分かる様に紙に書いて見せてやるよ」
青筋を浮かべる十六夜を放って、書面で渡した。そしてそれを見た十六夜はそこに書かれたギフトの数を見て引き攣った笑みを浮かべた。
「おいおい、どれもこれもおもしれーじゃねーか! でもよ、最後の奴とか眼鏡の奴とかネタだろオイ」
「悪いか」
「ネタ系で勝てんのかよ」
「そこに書いてあるギフトならどれを使っても勝てるけど?」
十六夜は眼鏡を掛けるだけでどうやって勝つんだよと呟きながら、ギフトに目を通して考える。どれを使えば尤も効率的に勝つ事が出来るのかを考える。
正直言えば、ギフトの無効化や奪取はかなり良いし、巨人になるのも良い。大きさはそのまま強さになる。また戦意をなくさせるのなんて勝利するには持ってこいだ。
そして、起こった事象の反対の事象を起こすギフト、なんてのは最終的に自分達が負けた際に使えば反対の事象として自分達に勝利が舞い込んでくる。なんともまぁ規格外。
「……視線………巨人………無効化………5回……」
ブツブツとつぶやく十六夜を見て、珱嗄はゆらりと笑いながら
(とりあえず、ネタ系ギフトで攻めて行こうかな……)
と、考えているのだった。