桐原静矢になったけどとりあえず最強目指す   作:田中

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準備をしました。

ステラさんを理事長に引き渡した後、理事長室の隣の部屋で雑務……データの整理を行なわされる俺。俺のことを良く思っていないやつからは理事長の犬とまで言われている。そういうプレイはあまり好きではない。俺は虐められるより虐める方が……と、雑念が入ったせいでミスった。とにかく春休み期間中はずっとこんな感じで仕事を回される。理事長は鬼だ。だがそれも今日までである。明日は入学式だから春休みは終わる。ここまで学校が恋しいのは俺くらいではなかろうか。ちなみに、理事長は隣の理事長室で俺のまとめた入学者のデータに目を通している。100以上の新入生のデータを全てまとめてしまうのは中々に骨が折れる。

データを整理すること数時間、放送で一輝くんが呼ばれた。何をやらかしとんねん!と思うがこれが原作開始の合図だろう。おそらく一輝くんは部屋に戻るとステラさんの下着姿を見ることになり、それが原因で呼ばれたのだろう。原作通りである。今回は俺には関係がないため残りのデータ整理に取り掛かる。

後少しで終わるなーと思えば大声で叫ぶ男女の声が聞こえてきて、その後すぐにこの部屋に理事長が入ってきた。絶対に面倒だし面白そうだからって逃げてきたな。

 

「桐原、順調か?」

 

逃げてきて何言うとんねんこの人。おっと、関西弁が出たな。順調なのは当たり前だ。昼飯も食べずにずっと入学者のデータ整理してればそりゃ順調だろう。入学手続きを受けに来る人が今も来ているため増えたりもするが少なくとも今日までには終わるペースである。

 

「余裕です」

 

俺の言葉に満足した理事長はパソコンの画面を見て抜けがないか確認している。抜けがないように確認しながらしているのでないと思うがもしあって見つけられればしばかれるんだろうな。

急に火災報知器が作動した音が聞こえてきた。十中八九ステラさんだろう。時期に収束するだろう。

 

「桐原、模擬戦の審判とかしてくれないか?」

 

なぜ俺が?と露骨に嫌そうな顔をするが理事長は澄まし顔で………いや、少し怖い顔をして『やれ』と言ってくる。こわい。このひとちょーこわい。

 

「やるのは構いませんが誰と誰のですか?」

 

「惚けなくてもいい。どうせ黒鉄とヴァーミリオンであることは知ってるだろう。そもそも部屋割りをこうするよう打診したのはお前だ。こうなることも織り込み済みだろう?」

 

原作通りにしたかっただけだが、結果的にこうなることを知っているから織り込み済みと言って良いのだろうか。ここで審判に抜擢されるとは思わなかった。本来なら寧音さんと観戦しようと思ったのだが仕方ない。ここも俺が折れて引き受けるしかないだろう。

 

「分かりました。生徒にやらせることじゃないと思いますがやりましょう。それで、幻想形態で戦闘不能になったら負けでいいですよね?」

 

これが模擬戦においてのオーソドックスなルールである。七星剣舞祭とは違い常に幻想形態で戦うのが模擬戦。致命傷を受けても死ぬことはないが精神へのダメージで意識を刈り取れる。外傷を与えないですむ決闘方法だ。

 

「それで問題ない。ではいくぞ桐原」

 

「……わかりました」

 

データの整理を途中で止め、横に置いてあるタブレット型のPCを持って理事長について、部屋から理事長室に入る。理事長室に入れば、火災対策の水が地面に撒かれていることからステラさんが火を出していたことがわかる。理事長室が凄い水浸しだ。これを掃除する人がかわいそうだ。俺と理事長の前には体を濡らした制服姿の男女、一輝くんとステラさんが立っている。制服が黒いから透けブラはしていない。なんとも残念だ。

 

「そういえば、君達はルームメイトだ。今日からな。私に文句言わず言うなら桐原に言ってくれ。桐原が1年生の部屋割りを考えたからな」

 

「どうしてAランクのステラさんが落第騎士である僕とルームメイトなんですか?」

 

「桐原、答えてやれ」

 

「それは、ステラさんの能力に合う新入生がいなかったからかな。流石10年に1人の天才と言われるだけあるよ。で、困った僕は真逆の10年に1人の劣等生の黒鉄君をルームメイトにすれば刺激があるんじゃないかと思ってね」

 

「だ、男女が同室なんて間違いがあったらどうするんですか」

 

「ほう、どんな間違いが起きるのかね?」

 

理事長、それはセクハラです。てか男女を同じ部屋にしなければ能力が同じくらいの者同士を同室にすることができないのだ。だから男女混合で部屋割りを作るのがベストというわけである。

 

「君たち以外にも男女でペアになる者はいる。嫌なら退学してくれても結構」

 

理事長は容赦がない。流石サディスト。相手が嫌がることを平然と言う。

 

「同じ部屋で生活するなら3つ条件があるわ…話しかけないこと!目を開けないこと!息しないこと!」

「最低限息させてよ!」

「嫌よ!私の匂いを嗅ぐつもりでしょ変態!」

「口で息するから!」

「私の吐いた息を味わうつもりでしょ変態!」

 

なんだこの茶番。ステラさんの発想が変態そのものである。話の収拾がつかないことに理事長はため息を吐く。

 

「ではこうしよう。模擬戦をやって、勝ったほうが部屋のルールを決めるんだ」

 

「それは公平でいいですね」

 

「言って悪いけど、私はAランクよ。勝てると思っているの?」

 

「そのための努力はしてきたつもりだよ」

 

一輝くんの言葉にステラさんの顔が曇る。相手の努力という言葉が嫌なのだろう。

 

「いいわ。でも負けた方は一生服従!どんな命令でも犬のように従う下僕になるの!」

 

しぶしぶだか一輝くんもこの模擬戦を承諾した。正直こんな条件で模擬戦できることに羨ましく思う。俺が一輝くんなら容赦なく叩き潰して下僕にするだろう。そしてあんなことやこんなことを……。

 

「そうか。なら1時間後に第三闘技場で模擬戦を行う。審判は桐原にやってもらう。絶対に行けよ」

 

理事長からの脅しがとても怖いです。言われなくても頼まれた仕事は絶対にやり遂げる性格だからするのだが、度々脅されるのが怖い。

 

「桐原先輩よろしくお願いします」

 

「まあ部屋割りを作ったの僕だしやることはやるよ」

 

こうして、1時間後に模擬戦を行われることになった。原作通りなら一輝くんが勝って終わるため、俺にとっては流しイベントである。あー、俺も戦いたい。

 

 

 

 

 

一応審判をすることになったため早めに闘技場へときた。俺が来た時にはすでに数人観客席に座っている。その中で最も目を引くのは東堂さんだ。おそらく黒鉄の剣とステラさんの実力を見れるから来たのだろう。審判という仕事がなければ俺も観客席で見ていたと思う。俺の視線に気づいたのか微笑みで挨拶してきた。お辞儀することで挨拶を済ませ、手に持ったタブレットを天井に付けられている4つのモニターに同期させる。模擬戦をするときでも選手の情報は開示しないといけない決まりがあるためこの作業は重要である。

 

「ちゃんとやっているようだな」

 

理事長が観客席から俺を見下ろす。できることなら理事長もこちらに降りてきて手伝って欲しい。そもそも審判するのは初めてというわけではないが、この作業は久し振りなのだからミスがあるかもしれない。だから確認くらいはして欲しいものだ。

 

「大丈夫だ。方法はあっている」

 

確認してくれていたみたいだ。流石理事長。俺の思考を読んで行動してくれる。と、模擬戦するための準備は無事に終了した。まだ15分くらい余裕がある。余裕はあるのだが一輝くんが来た。15分も早く来るなんて大人っぽい対応だ。一輝くんと俺の仲だが良くはなく、とても気まずい。理事長が変わってから関わっていないが、変わる前はイジメのようなことをしていたからどう接していいかわからない。

 

「勝てると思ってるのかい?」

 

前と同じような憎まれ口を叩いてしまう。一輝くんに対してはこのやり方が慣れてしまっているため仕方がないと思う。

 

「勝てる勝てないじゃないんだ。僕は七星剣武祭で優勝しなくちゃならない。優勝すれば、能力値が低くても卒業させてくれると、理事長が言ったから。ステラさんは七星剣舞祭に出場して勝ち上がるだろうから。だから勝つんだ」

 

「そうかい。能力値が低いのも大変だね」

 

生まれの才能でここまで追い込まれるとは本当に可哀想な奴だ。剣の腕は俺と張り合えるようになる……もしかしたら俺より上になるかもしれない。それ程の腕になれるのに七星剣舞祭で優勝しないと卒業できないとは不憫な主人公である。

 

「………」

 

「なんだよ。その意外なものを見る目は」

 

「いや、桐原くんが本当の意味で同情するのは初めて見たから。なんていうか意外だなって」

 

「僕がいる時点で、黒鉄くんは優勝できないから同情もしてしまうよ」

 

「それは、戦ってみないとわからないよ」

 

一輝くんが好戦的な目で見てくるんだけど、これって誘われてる?やれるならやりたいが少なくとも今日は無理だろう。たしか今日は一輝くんが一刀修羅使って倒れるはず。

 

「いつでも挑戦するといいよ。前の理事長は消えたから模擬戦なら受け付けるよ」

 

「それはとても魅力的だから今度お願いしてみようかな。今回はステラさんとの勝負を楽しみたい」

 

圧倒的なランク差でも試合を楽しむとは、ただの戦闘狂、倉敷蔵人くんと同類じゃないか。

 

「待たせたみたいね」

 

ステラさんが到着した。よし、時間ほぼぴったりだ。

 

「それじゃあ模擬戦を始めるから、真ん中に移動して」

 

俺の言葉に2人とも従い、闘技場の中心にいってくれた。タブレットを操作して試合開始の合図を出すことのできる画面にする。

 

「噂を聞いたわ。アンタ、能力値が足りなくて実践の授業を受けることすら出来なかったそうね。魔導騎士を目指すのなんて諦めた方が身のためなんじゃないの」

 

「そうかもしれないね。でも、この試合を辞める気は無いよ」

 

「努力すれば才能に勝てると思う口かしら。あなたも」

 

「そうありたいとは思ってるよ」

 

「……まるでこっちが努力してないみたいに」

 

「え?」

 

2人が話しているから黙って室温の管理を一応してたけど早くしてほしい。こうしている間にも入学手続きを終えた生徒が増えて俺の仕事も増えているのだ。さっさとやれ。

 

「なんでもないわ。桐原先輩を待たせるのも悪いし早く始めましょう」

 

「そうだね」

 

「会話は終わりでいいかな。じゃあ、これから模擬戦を始める。わかってると思うけど固有霊装は幻想形態で展開してね」

 

そう言いながら照明を切り替える。せっかく客がいるのだから楽しんでもらうよう演出もしなくちゃいけない。これがエンタメデュエル!

 

「きてくれ【陰鉄】」

 

「傅きなさい【妃竜の罪剣】」

 

二人とも自身の固有霊装を展開したため、開始の合図を鳴らす。

 

ーーーLet's Go Ahead

 




ノロウイルスかかってました。穴という穴から液体が出てくる苦行は二度と味わいたく無いです。
今更だけど桐原くんとの試合をジャンケンで決着にしても完全掌握使われてる時点で桐原くんに勝ち目は無いていうことに気づいてしまった。桐原くんの勝ち筋は、さっさと矢も消して1発脳天にぶちこむ以外になかった。

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