桐原静矢になったけどとりあえず最強目指す   作:田中

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能力明かしました。

 

俺は昔から強くなるにはどうするかを考えた。その考えで至ったのが生まれ持った魔力量を増やす。俗にいう《覚醒》をした。それも何度も《覚醒》をしているのだから《魔人》の中でも特異なものだろう。

そして魔力量が十分だと判断してしまった時、上がらなくなった。

次に思い至ったのが能力の強化。だから桐原静矢の能力が何であるかを考えていた。前世のインターネットでは植物の操作とステルスみたいなことを言われていた。だがそういうわけではないと思っていた。爆発するような植物を俺は知らない。なのに爆発する矢を作ることができた。自分以外の物もステルスすることなんて普通無理だ。なのにできた。

 

考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて、1つの答えを得た。桐原くんの能力は植物系とステルスの2つではない。元々1つの能力であるという答えへと至った。それが去年、【七星剣舞祭】で優勝し、理事長を降した後のことだ。

 

自分の、桐原くんの能力を理解しきってからただでさえチートな能力がよりチートな能力へと変化した。炎を扱うだけだと思っていたステラさんと同じだったのだ。ステラさんはドラゴンの力の行使の一部として炎を扱う。そして俺はーーーー

 

 

 

 

 

『本日の最終試合はこの人だ!知らない人はこの場にいない!2年【七星剣王】桐原静矢選手!そして対するは爆裂に次ぐ爆裂、桐原選手も爆発で倒せるか!3年【爆弾魔】将監駿河選手!』

 

俺は戦いの舞台へと上がり、前を見る。相手はメガネに特徴的なアゴ。どこぞのボマーを思い出す風貌をした相手だ。能力は二つ名の通り物質を爆発させる能力で、前の試合の相手は未だに意識不明らしい。

 

「去年は偶々俺が出なかったから優勝できただけだぞ下級生。例えお前が透明になろうと広範囲を爆発させることができる俺からすれば無力だ。降参するなら今のうちだ」

 

よく口の回るアゴ野郎である。確かに、原作の桐原くんならこういう相手は棄権しただろう。相性が悪い。もし、能力の本質を見極めることができていなかったなら、俺は剣を使ってこの試合を秒で終わらせただろう。この先輩は速攻で終わらせなければいけない。それだけの実力があるのだ。

 

「なら僕は胸を借りるつもりで挑ませてもらいます」

 

目を研ぎ澄ませる。いつ、どこが爆発させられるかわからないため初めからアゴ野郎を見極める。

 

ーーーLet's go ahead

 

戦いの始まりだ。俺はいつも通り【朧月】を出して植物を操り剣を生成する。ここまではいつも通り。だがここからは違う。アゴ野郎には悪いが俺の能力の実験台になってもらおう。

 

そう思った矢先にアゴ野郎が何かの粒子を飛ばしてきた。これが爆発の種であることは確定的に明らか。これが時限式だろうと遠隔操作式だろうと関係ない。

 

次の瞬間俺は消えた。いつもと同じ樹海の出現、そしてーーー光の操作による透明化を行う。

 

『おおっと!桐原選手はいきなり全開!ステルス化に樹海だ!これはすぐに終わらせるということか!?』

 

『いや、あのアゴの能力は爆発であることは周知の事実。広範囲に爆発を起こされればしずやんでもタダじゃ済まない。だからなぜ始まった瞬間に斬らなかったのかが不思議だね。しずやん程の実力なら始まりとともに終わらせることもできたよ』

 

西京先生からはそう見えるのか。確かに始まった瞬間にアゴ野郎を倒すことはできた。だが一輝くんの出所祝いに能力の披露をしなければならないからそんなつまらないことはしない。

 

ズドォォォォン!!!

 

重い音が響くとともに辺り一帯が吹き飛んだ。アゴ野郎が能力の爆発を使ったということである。そしてずっと観察して分かったことがある。やはり粒子が爆発の種であったこと、アゴ野郎は爆風に巻き込まれても無傷であること、爆発させる時は手でスイッチを押すような動作をすること。この3つだ。

この対策として俺は能力の一部を使うことにした。

 

「【時雨】」

 

『これは!?樹海が一気に吹き飛んだと思えば雨が降ってきた!?一体これはどちらの能力なのか!?』

 

『……んな!?しずやんのやつ。能力2つだけじゃ無いのか!?』

 

「雨だと!?これは一体なんだ!?」

 

アゴ野郎は目に見えて焦る。雨によって先程までの粒子は全て地に落ち、何度もスイッチを押す動作をしても爆発しない。確実に水に弱い能力だ。さて、この雨というか放出される水は俺の能力の一部。これだけで本当の能力がわかれば鋭いと思う。ネタバラシをしよう。

 

植物も光も音も気配も水も全てに共通して自然である。俺の能力は植物を操るのではなく、自然を操る。植物は自然を操る副産物だったのだ。まだ使い慣れていないから何でもはできないがいずれ極めれば自然のものなら何でも……つまり、この世のあらゆるものを操ることを可能にできるだろうと思っている。

 

「終わらせましょう先輩」

 

雨により水浸しになったアゴ野郎を見据えながら、上から雷を落として剣に電気を纏わせ、鞘に収める。

 

「【雷切】」

 

自らクロスレンジに入る距離に移動し、東堂先輩の得意とする必殺の居合いをする。斬られたアゴ野郎は感電し、その場で倒れて試合は終わった。

終わってみれば口だけの雑魚だが、実際に雨が降ってきたことに焦ることで判断力を欠いた。そして次の判断ができずやられただけだ。俺でなければ苦戦する相手であることは間違いない。そして、能力的にも七星剣舞祭に出ていてもおかしくなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【時雨】」

 

桐原君の声が聞こえて来たと思えば雨が降った。桐原君が何かをしたことは明らか。でも、何をしたのか分からない。

桐原君の能力はステルス、そして植物操作。この2つだけのはず。だけどそのどちらでもない能力が発動された。

 

『……んな!?しずやんのやつ。能力2つだけじゃ無いのか!?』

 

西京先生の実況が聞こえた時、桐原君が会場に入る前に言っていたことを思い出した。『面白いものを見せてあげよう』彼はそう言っていた。これが面白いものであることは自明の理。次に考えるべきは、これがただの水を操る能力なのかどうかだ。

 

「一輝………桐原先輩の能力は一体いくつあるの……」

 

ステラがそう言って驚くのも分かる。伐刀者は大体が1つの能力だ。僕は身体強化、ステラは炎、珠雫は水。だが、桐原君はそういったことから逸脱している。ステルスも植物も、今回の水も共通点がない。つまり、現状では全て違う能力であると言える。

 

「静矢さん…貴方は何処までも先へ行くのですね……」

 

横で座る珠雫は悔しそうに言っていた。悔しい気持ちは僕にも分かる。今はステラと拮抗した実力だけど、もし実力にこれほど差ができれば悔しい。悔しすぎる。

 

桐原君との実力差はこれだけではなかった。次に桐原君は剣を上に向けて腕を上げる。何をやっているんだと思って見ていればその剣に雷が落ちてきた。

 

「な!?」

 

雨だけでなく雷までも使い出した桐原君に思考能力が追いつかない。

一体幾つの能力を使えるというんだ。いや、違う。そうじゃない。桐原君は面白いものをと言った。力を見せびらかすような人間じゃない。少なくとも僕はそう思ってる。

これは力を見せびらかすのではなく、何かを伝えて、より強者と戦うという桐原君の目的を達成しようとしているのではないか。

桐原君は何を伝えようとしているんだ。今の僕にはまだ分からない。ただ、今のままでは桐原君と戦える土俵にすら上がっていないことは理解できた。七星剣舞祭本戦までにどうにかしないとこの壁は乗り越えられない。

 

「【雷切】」

 

東堂先輩の得意とする技を使って桐原君は試合に勝利した。桐原君はなにを伝えたいのか、予想ができない。また、差が開いたことの確認しか僕には分からなかった。

 

「お兄様、私は静矢さんの能力が複数とは思えなくなりました」

 

桐原君の能力が複数とは思えなくなった?普通は複数ある方に目がいって気付かない。たしかに確認しただけで4つの能力があるのは流石に異端すぎる。元々1つの能力と考えることもできる。でも、1つだとしても一体何だ?雷、水、植物、ステルス、共通点が全く分からない。

 

「珠雫、桐原君の能力は何だと思う?」

 

「ステルスだけが異質すぎて全く思いつかないです」

 

「そう?私はステルスの種を光学迷彩、つまり光を利用してると思ってるわよ」

 

アリスの話にパズルのピースがハマるような感覚に陥った。光学迷彩、たしかにその発想はなかった。そう考えればまだ考えられるものがある。

 

「自然環境ですか…」

 

珠雫の言うように当てはまるのは『自然環境』に関するものだ。もしそうだとしたら……

 

「もしそうなら強すぎない?」

 

ステラの言う通り、強過ぎるのだ。自然といえば他にも色々…いや、この世のもの全てを自然と言っていいだろう。もし自然を操作する能力なら、桐原君は確実に倒せない。無敵の存在だ。

 

「今までの能力は全部その一部ってことですか…」

 

珠雫の言っている通りだと思う。そして、今桐原君の伝えたいのかことがわかった。桐原君は能力と向き合えと言いたいんだ。ただ、それは僕に対してではなく、ステラに向けての方が大きいと思う。僕は魔力が少ないからそこまでの規模の能力ではない。でも、人類最高の魔力を持つステラなら能力の昇華があり得る。

 

「一輝、しばらく考えるわ。もしかしたら私も成長できるかもしれない」

 

「うん。そう言うと思ってたよ。僕は気にしないから大丈夫。ステラは能力と向き合った方がいいかもしれない」

 

僕も何かあればよかった。だけどどう頑張ったとしても身体強化から派生する望みは薄い。だから今はただ、桐原君以上の剣を身につけるしかできることはなかった。

 

 

 

 

 




仕事が落ち着いたんで投稿しますっていう作者さん結構いるけど、仕事が落ち着くことなんてあるの?って最近思う。自分は落ち着くことなどなく、睡眠時間を削って話を練って執筆してるから色々辛いです。


桐原くんの能力についてはこれ以上なくチートにしました。自然という定義を操る能力。つまり、理論的には森羅万象あらゆるものを操ることができます。しかし、桐原くんはまだ力及ばずその境地に至ってません。正直やりすぎですが、気にしないことにしました。これ以上の後付け設定は出ませんので安心してください。



ロクでなしの二次創作も割と好評だったからというのが更新遅れた本当の理由です

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