由比ヶ浜悠斗を含め、奉仕部員はなにかと問題を抱えている。 作:オロナイン斎藤。
由比ヶ浜悠斗の朝は早い。
朝5時に起床。ウェアに着替えて10kmランニングをして爽やかな汗を流す。
6時に帰宅してシャワーを浴び終えると同時に朝食が食卓に並ぶ。
母と挨拶を交わしてから毎朝、朝食を作ってくれる母とこの世の全ての命に感謝をして朝食をいただく。
朝食を食べ終え、あらかた学校の準備を終えると家を出る前に自家製のスムージーを飲んでから学校へと向かう。
これが由比ヶ浜悠斗のルーティーンなるものである。
ーーーなんてことはなく、俺は朝の情報番組を見ながら朝食を作っていた。どこかのバンドのマッシュヘアーの不倫報道やら球界のスターが薬物キメこんだりなど今日も画面の向こうは賑やかであったが、華やかではない話ばかりだった。
早朝ランニング?そんなことをやっていた時期が私にもありました。
「あぁ~!遅れる~!」
朝から慌ただしくママンが部屋から出てきた。一度起こしに行ったのだが、きっとまた二度寝でもしたのだろう。
「はい、これいつもの。それでこれは移動時間にでも食べて」
「ありがと~。いつもごめんね~」
そういって俺から弁当と軽食を受けとるとバッグに放り込んでバタバタと洗面台へと向かった。
(忙しいんだなぁ...)
なんてありふれたことを思いながら俺は料理を食卓へ運ぶ。メニューは白米に味噌汁、そしてハムエッグといった対して珍しくもない普通の朝ごはんである。
「お兄ちゃんおはふわぁ...」
おっと!ここでマイスウィートエンジェル結衣ちゃんがあくびをしながら登場だぁ!
今日も可愛いよ!パジャマ姿可愛いよ結衣ちゃん!
...というか着崩れちゃってブラ見えちゃってるよ結衣ちゃん。それはいろいろとまずいよ(俺が)
「おはよう。朝食できてるぞ」
あくまで俺は平静さを装っていつもの会話に努める。切り替えって大事。もうポーカーがフェイスしまくっちゃってる。
「うん、顔洗ってくる」
「いってらっさい。あ、お母さんが洗面台使ってるぞ...って聞こえてないだろうなぁ」
んんっと背伸びをしながら扉の向こうへと消えていった。
しばらくするとーーー
『ちょっとママ!顔洗えないんだけど!』
『少しくらい良いじゃない~』
『だってママの少しって長いんだもん!...ってママ!もうこんな時間だよ!遅刻しちゃうよ!』
『もう結衣ちゃんってばそんなこと言ってママをどかせようと...ってもうこんな時間!ママいってくるわね!』
こんな会話が聞こえてくる。我が親ながら相変わらずマイペースであった。というか親子してリアクションが一緒って...。
『はるくん、行ってくるわね~』
そんなこんなで由比ヶ浜家の1日が始まるのであった。
...あと、はるくんって呼ぶのは恥ずかしいのでやめてくださいお母様。
「バスの時間だから先行くね!」
「おう、気をつけろよ」
俺は学校まで自転車通学で結衣はバスで通っている。現に俺が通えているので家から学校まで自転車で行けない距離ではないのだが、女の子からすればそれなりにしんどい道のりなのだ。
結衣も最初は自転車通学だったんだが、疲れるから3日目で断念したらしい。一緒に自転車で通学した伝説の3日間だった。
本当は一緒にバス通学がしたいのだが、なんせ定期代がかかるのでママンに言っても「はるくんはバイトしてるんだから定期代は自分で出して」と言われる始末である。まぁ兄妹二人分の定期代を出すとなると出費も二倍になるのでその理屈はわからなくもないのだが。
まぁ自転車通学なんて慣れてしまえば大したことはない。
「きゃんきゃん!」
どうやら結衣が家を出た音で由比ヶ浜家の愛犬サブレが起きたらしい。俺の足元にすりよってきて飯をよこせとおっしゃっている。ったく好きなときに起きて好きなときに遊んで好きなときに寝るとか羨ましすぎんだろこいつ。人間だったらクソニートだぞ。...あぁ、犬になりたい。
『あたす以外あたすじゃないの~』
聞き覚えのある歌がテレビから流れてくる。どうやらまた同じニュースをやっているらしい。朝の情報番組ってずっと見てると一時間置きくらいにまた同じ話題やってるよな。まぁ仕方ないんだろうけど。
「ほれ、朝飯だ」
専用の器にドックフードを入れて置く。貪るように飯を食べるサブレを横目に俺は身支度を済ませた。
テレビを消して戸締まりしたあと飯を食べて満足そうに横たわっているサブレを持ち上げてゲージへ運ぶ。出かける時はゲージに入れないと、こいつは何をしでかすかわかったものではない。既に前科三犯(全て俺の部屋での犯行)。情状酌量の余地なしである。
「それじゃあ行ってくるから大人しくしてるんだぞ、サブレ」
「きゃん!」
元気よく返事したが絶対にわかっていない。犬に論語とはよく言ったものだ。なにを言っても無駄である。なにそれ、中学生の俺じゃん。やだ恥ずかしい。
他人と違うことをするのがかっこいいと思っていた時期が私にもありました。
「はぁ...行くかぁ...」
溜め息をつきながらいつも通りの時間に扉を開けた。
これが由比ヶ浜悠斗の朝である。
おまけ
由比ヶ浜家。リビングにて。
「そういえば最近体育の林先生がよく話しかけてくるんだ~」
ボケーっとしながらテレビを眺めていると、向かいのソファで寝転がりながら携帯をいじっていた結衣が何気なく言った。
「へぇ...どんな感じ?」
「んーとね、『お兄さん元気か?』とか『最近お兄さんとどうだ?』とかかなー」
(言わないって言ったのに...信用ねぇのかな俺...)
「...あれじゃね?結衣のこと好きなんじゃね?」
もしそうだとしたらぶっ殺すけど。
「いやいやそれはないでしょ!どちらかといえば私よりお兄ちゃんの話することの方が多いし...はっ!もしかして林先生ってお兄ちゃんのことーーー」
「いや、ないだろ」
そうだったらやべぇよ。既に女生徒食ってんのにノンケのフリして俺狙ってるとかやべぇだろ。正気の沙汰じゃねぇよ。
「だよねー、姫菜じゃあるまいし」
あははー、と笑う結衣だったがちょっとまて。前々からちょくちょく耳にするその姫菜ちゃんってのは何者なんだ...。
妹の交友関係に少し不安を覚える俺であった。
そんなわけで7話です。
今回は由比ヶ浜家の朝をお送りいたしました。
いかがだったでしょうか。
悠斗の朝なんて誰得なんだって感じですよね。知ってました。
由比ヶ浜ママンは情報量が少ないので完全にイメージです。仕事場ではしっかりしてるけど朝とかすごい弱そう。でも怒ったら笑顔で無言の圧力とかかけてきそうな雰囲気ある。
由比ヶ浜家って普段こんな感じなんだろうなぁという妄想回でした。こんな親子いたら喜んでお世話しちゃう。
ちなみにお父さんは出張で基本的に家にいないという設定。月2回の頻度で帰ってくるくらいなので特に出番はないかも。
次回の更新は2月22日を予定しています。
毎週月曜日更新にしようか悩んでいる今日この頃。
進級製作の進捗が思った以上にヤバい事案。
そんな感じですのでよろしくお願いします。
バレンタインなんてなかったんや...。