由比ヶ浜悠斗を含め、奉仕部員はなにかと問題を抱えている。   作:オロナイン斎藤。

3 / 21
由比ヶ浜悠斗は常にしょうもないことを考えている。

 

「失礼しまーす」

 

なんやかんやあったもののようやく第二応接室へと到着した。

 

「おう由比ヶ浜か、どうかしたか?」

 

「どうもこうも先生が雑務やらなんやら言ったんじゃないですか...」

 

「ああ、そういえばそうだったな」

 

ははは、と平塚先生は悪びれもせずに大量に煙草が盛られた灰皿に煙草を押しつけた。どんだけ吸ってんだよ...。

 

「...ったく、これだから年増は」

 

「なんか言ったか?由比ヶ浜」

 

「いえなんでもないです」

 

地獄耳だなオイ。そういえば地獄耳を地獄イヤーって言い換えるとなんか厄年感がでるよね。クソどうでもいい。

 

「先生忙しそうなんで俺帰っていいですか?」

 

「却下だ。まだ私の話は終わっていない」

 

「ですよね」

 

向かいに座っていた男子生徒が言葉を発したが即封殺されていた。ていうかこの子すごい目が腐ってるんですけど。この歳にしてなにがあったの?

 

「それでだ、君にはあれを頼みたいんだが」

 

そう言って平塚先生は窓際のテーブルに綺麗に積まれている書類を指差した。

 

「...これまたとんでもない量ですね」

 

その書類は広辞苑三冊ほどの厚みがあった。できれば見間違えであって欲しかったのだが、どうやら現実らしい。

 

「いやー、面目ない。自分の仕事が終わってないのに追加で仕事を引き受けてしまってな。ほら、私って若手だから!」

 

若手と言ってもあんたもうアラサーだろ。でたな!この妖怪イキオクレ!...と、殺されかねないからここまでにしておこう。

 

「若手ってあんたもうーーー」

 

「ふんっ!」

 

俺の心中を代弁するように目の腐った男子生徒が言葉を発していたが、言い終える前に先生に殴られていた。近年稀に見る鉄拳制裁である。女性に年齢の話はNGだぜ、少年。

 

「でもこの量はほんと洒落にならないので半分だけでもいいですかね」

 

雪ノ下がいれば話は違うだろうけど、さすがに一人じゃ無理がある。どう考えても下校時刻にまでは終わらない。

 

「ああ、半分だけでも十分に助かる。残りの半分はこの新入部員に任せるとしよう」

 

「「は?」」

 

先生の鉄拳制裁により、うずくまっていた男子生徒と俺の声が見事に揃った。

 

「ほれ、参考資料だ」

 

そう言って先生は手に持っているレポート用紙を俺に渡す。タイトルには「高校生活を振り返って 2年F組 比企谷 八幡」と書かれていた。

 

あー、学年が上がる度に書かされるしょうもないやつか。というか名字これなんて読むの?ヒキタニ?

 

まぁ名字がどうこうってのは置いとくとして最初の一文の『青春とは嘘であり、悪である』ってなんだよ。インパクト強すぎだろ。

 

「あの...音読は勘弁してください。さすがに二回もやられると精神的にちょっとあれなんで」

 

腹をさすりながらヒキタニ君(仮)がなんとか言葉を紡いでいた。

 

「ああ、悪い」

 

無意識のうちに声に出ていたようだ。それより二回も、ということは平塚先生に音読されたってことか。可哀想に。

 

俺は参考資料とやらの続きを読み進めていき...それの文末には『リア充爆発しろ』という壮大な言葉で締め括られていた。感想としては非常にユニークで素晴らしいレポートだと思いました。まる。

 

「...うん、採用で」

 

一通りこのレポートを読んで先生がこいつを奉仕部に入部させる理由がわかった気がする。それに依頼という形ではなく、入部という形をとるのは初めてだ。つまり極度の難あり。長期的なスパンでの更生が必要ということだろう。

 

それは暗に部員である俺も雪ノ下も難があるということを差しているのだが。

 

...まぁ俺も今年で卒業だし、俺がいなくなったら部員が雪ノ下だけになってしまうのでそういった面での入部もあるのだろう。多分。

 

俺卒業したら雪ノ下は悲しくて泣いちゃうだろうなぁ...いやねぇな。あいつは一人でもやっていけるタイプの人間だわ。

 

「よし、決まりだな。比企谷、君にはこれから奉仕部での活動を命じる」

 

「あ、でも一応雪ノ下にも確認しないとですよ」

 

「うむ。まぁそれは明日でいいだろう。私からの依頼という形にすれば雪ノ下は断らない...はずだ」

 

どうして少し間があったのかはさておき、入部三年目にして俺を含めて三人目の部員である。おめでとう俺。

 

「はじめまして...だよな?奉仕部部長の由比ヶ浜だ。よろしく頼む」

 

「俺に拒否権ってないんですかね...」

 

「ないな」

 

平塚先生が間髪入れずに答えた。

 

「...だそうだ。静ちゃんがこうなったらもう人の話聞かないから諦めた方がいい」

 

「さいですか...」

 

比企谷が二割増しで濁った目でどこか遠くを見ていた。ちなみに名字は「ヒキタニ」ではなく、「ヒキガヤ」と読むらしい。

 

どこかで聞いたような気がしなくもなかったが、思い出せそうにもないので諦めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





そんなわけで悠斗と八幡のファーストコンタクト回でした。
いかがだったでしょうか。

初めて会うことをファーストコンタクトっていうと意識高い系みたいでなんかいい感じだけど、横文字使えばかっこいいみたいな考えがもう既にあれですね。それある!


次回は悠斗と八幡のぬるぬるっとした会話の予定です。
残念なことに次回もまだ結衣ちゃんもいろはすも出てきません。
早く「お兄ちゃん!」って呼ばれたい。
あざと可愛らしく「せんぱぁい」って呼ばれたい。

更新予定はあてにならないので気にしない方針でいきましょう。あくまで予定は明日です。多分。





▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。