由比ヶ浜悠斗を含め、奉仕部員はなにかと問題を抱えている。   作:オロナイン斎藤。

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由比ヶ浜悠斗はそれなりに割りきっている。

 

放課後、俺は平塚の静ちゃんに命じられてしまったので休みにも関わらず社畜よろしく職員室に向かっていた。

 

今思えば帰ると言ってそこら辺のゲーセンで暇つぶしして時間になったら戻ってくればよかった。ちなみに図書室は退屈だし陽が当たらなくて寒いから却下。某ソーシャルゲーム(仮)の村上さん家の娘さんみたいな可愛い文学少女がいてくれれば寒くても行くんですけどね。むしろ毎日通いつめて一挙一動観察して通報されるまである。

 

そんなこんな考えているうちに目的の場所へ到着。

 

さきほど緊張した面持ちの新入生が職員室から出てきたのを見ても、やはり職員室というのは人を寄せ付けない要塞のようで近寄りがたい雰囲気がある。

 

しかしそこで教師を上手く取り入れたとしたら、アットホームな場所へと一気に変化する。劇的ビフォーアフターである。さらにいえば教師陣と仲良くなっておくというのは後々有利に働く......主に成績的な面で。

 

それに職員室というのは夏に冷房がガンガン効いており冬は暖房で寒さを凌げる快適空間なので、俺の高校生活で授業以外の時間の三分の一を捧げているまである。古典の立石先生は食べ物くれるしなにかと至れり尽くせりだ。

 

ところで話は180度変わるわけだが最近になって将来は教師になるというのもアリだと思えてきた。

 

でもそれはあくまで興味本位であって目標というわけではない。教職なんて取ろうと思えばいつだって取れる、なんて言ったら平塚先生にぶん殴られるだろうなぁ...。

 

ただ俺みたいなのが担任になったらと思うとゾッとするし、即日退学するまである。

 

...まぁそんな戯言はさておき俺はスチール製のドアをノックして中へと入った。

 

「失礼します。三年の由比ヶ浜です。平塚先生はいらっしゃいますでしょうか」

 

「平塚先生なら第二応接室よ」

 

偶然目の前を通りかかった公民担当の皆川先生がすぐに答えた。

 

「そうですか、ありがとうございます。失礼します」

 

礼を言って職員室を後にする。滞在時間わずか七秒。退室するときに煎餅を食べていた立石先生が悲しそうな顔をしていたのが視界に入ってしまった...あとで伺うとしよう。

 

第二応接室は同じフロアなので少し歩くと見えてくる。

 

平塚先生はいつもノックなしで部室に入ってくるので、ここは俺もノックなしで突入ーーーしようとしたのだが...やべぇ間違えた。ここ生徒指導室だ。

 

しかし気づいたときには手遅れで無慈悲にも扉は開かれた(手動)。

 

ノックもせずにドアを開けたので当然ながら怒られると思っていたのだが、そこではまったくもって予想外な事態が起こっていた。

 

それはーーー

 

「...ほう。生徒指導室ってそういった指導もされてるんですね。知りませんでした。勉強になります」

 

二人の男女が抱き合っていたのだった。それはもうすぐにでもおっぱじめるんじゃねぇかってほどに激しく抱き合っていた。

 

にしても予想外の事態にも関わらず饒舌かつ冷静だったことに自分でも驚いた。一周回ってなんとやらというやつだろうか。というかそれ以前に鍵をちゃんと閉めた方がいいと思うんですよねぇ...。

 

目の前で呆然としている二人にピントを合わせると体育教師の林と名前はわからないけれど上履きの色からして二年生の女子生徒。

 

生徒と教師、禁断の恋ってやつか。こういうのって本当にあるんだな。こんなイベントが起こるのはギャルゲーだけだと思ってた時期が私にもありました。

 

「こ、これは...」

 

状況を理解したのか、我に返った林の顔は真っ青だった。

 

そんなんなるならなきゃいいのに...でもやってはいけないことをやりたくなる気持ちはとてもよくわかります。「押すなよ?絶対に押すなよ?」って言われると押したくなるのと同じ原理ですね。違うか。違うな。

 

「...言いませんよ。別に興味ないですし。それにお見受けしたところ、モラルは欠けていたものの一方的ではなく両者合意のもとで行っていたようですし...さすがに違法性があるのなら通報しますけど」

 

この言葉を聞いてホッとしたのか林は膝から崩れ落ちる。それを見た女生徒は林に駆け寄ってから、俺に何回も頭を下げた。

 

こんな真面目そうな子がどうして...と少しガッカリしながら生徒指導室を後にしようとしたのだが、あることを思い出して林に詰め寄った。

 

「そういえば先生って二年生の担当でしたよね?」

 

「そ、そうだが...」

 

「自分には二学年に可愛い妹がいるんですけど、もし妹に手だしたら...ぶち殺しますんでその時はよろしくです」

 

さすがに手を出すことはないとは思うけど、一応釘を刺しておく。念には念を、というやつである。

 

「は、はいぃ...」

 

魂を抜かれたようにへたりこんでいる林を横目に俺は生徒指導室を後にした。

 

 





そんなわけで第2話でした。
予定より早く更新できました。いかがだったでしょうか。

最近は寒すぎて外に出るのが億劫です。寒すぎて松岡修造を持ち歩きたいまである。


次回はようやく八幡が出てくるかと思います。
更新予定は3日後です。多分。







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