サモンナイト ー生贄の花嫁ー   作:ハヤクラ派

66 / 81
前回の執筆で力を使い果たし遅れてしまいました。
だけど一か月以内には書くことが出来た!
あと一日だったけど一か月だ!


第45話 ゲルニカの咆哮

 街を夕闇が包もうとしていた、太陽は大地へと落ち始め夜の時間が来る。

 繰り返される時間、それは決してだれにも止めることが出来ない。

 あらゆる事象を表しているようだった。

 そして目の前で行われていた戦いも、終わりを告げていた…。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

 右の眉から血を流し、右肩からバッサリと体を斬られたソル、

 大きな深手を負いながらも彼は両足でしっかりと立っていた。

 そしてその視線の先で倒れている少年を見ていた。

 

「う…ぐぅ…!」

 

 体のいたるところから血が流れ、目まで真っ赤に染まるハヤト。

 全てを出し尽くしてしまったのか、意識はあるようだが体がいう事を効かない。

 世界が輝いた瞬間、彼の力は尽き、今までの反動が彼へと流れ込んだのだ。

 

「そんな…ここまで、ここまで来たのに!」

「ミント、ハヤトに…ハヤトに何が起こったの?」

「ハヤトさんは…限界が来てしまったんです」

「限界…?」

 

 限界という言葉を効いてすぐに理解できないリプレ、

 だがよくよく考えればあの戦い方が普通なわけないのだそれ相応の反動があっても可笑しくはなかった。

 

「オーバーフローを起こすとはな、下らん末路だ」

「ソ、ソル…」

「しかしまさか覇王の剣を折るとは思わなかった。礼を言うぞ」

「何…?」

「貴様が剣を折った事で俺の楔は砕かれた。後は俺がやってやる。安心して死ね、誓約者」

 

 既に体力がソルも残っていないのか、ダークブリンガ―がたった一つだけ召喚されハヤトに向けられる。

 

 ここまで来たのに…あと一歩だったのに…!

 サモナイトソードを振るいきる事が出来ればソルを倒せたというのに…。

 

 あの時、あの時ほんの僅かに躊躇してしまった。

 もし躊躇せずにサモナイトソードを振り切ることが出来れば勝っていたのはハヤトだっただろう。

 だが実際に立っているのはソルで倒れているのはハヤトだった。その事実は決して覆ることはない。

 

「うぅ…!!!」

「あ、ラミ行っちゃだめ!」

「ラミ!」

 

 ラミがハヤトとソルの間に飛び出し手を広げてハヤトを庇おうとする。

 ソルはその光景を前に目を細くして溜息を吐いた。

 

「邪魔だ。退け」

「…(ふるふる」

「貴様らを捕まえる理由はもうなくなった、そこを退け」

「…!(ふるふる!」

「ラミ…退くんだ!殺されるぞ…!」

 

 喉に血が溜まったせいなのか、ガラガラ声でハヤトがラミを説得しようとする。

 だがラミがそこを退くことはなかった、涙を流し、手足が震えているにもかかわらず少女は意地を通しているのだ。

 

「………ふ」

 

 無言でその光景を見ていたソルは微笑を浮かべダークブリンガーをそのまま送還する。

 その光景に誰よりも驚いたのはハヤトだった、止めを刺せる最大のチャンスを見逃したこと、

 それが今までのソルとは違い過ぎる事に。

 

「失敗した時の抑止力にはなりそうだな、誓約者。その子供に感謝するんだな」

 

 夕闇の中に僅かに存在するソルの影が広がりソル自身を包み込んでゆく。

 影の悪魔による移動術、使用者の技量によっては大陸すら跨ぐ事のできる技術だ。

 

「待て、ソル!」

「儀式を止めるなら早めに動く事だな、動かなければ……貴様も失うぞ」

 

 意味深な言葉を残し、ソルは影の中へと消えてゆく。

 僅かに存在した影も消えてゆきソルは完全にその場から消えていった。

 

「……また」

 

 また負けたのか…、その感情がハヤトの中に残っていた。

 だがハヤトはある意味天狗になっていたのかもしれない。

 誓約者と言う超常の力を手に入れて並大抵の敵は一蹴出来るほどにまでなった。

 だが、自分より劣る力しか使えないソルが自分に勝利したのだ。

 これでは誓約者になった意味がなかったんじゃないか? そう考えてしまう。

 

「いや、誰も死んでないんだ。まだ取り戻せる」

 

 そう、誰も死んではいない。傷を負ったが誰も死んではいないんだ。

 まだ取り戻せる、まだ救い出せる。

 だから、立ち上がらなきゃいけない、助け出すために。

 

「行かなきゃ……?」

「(ふるふる」

 

 立ち上がろうとするハヤトにラミが必死にしがみついていた。

 

「ラミ、放してくれ。俺は行かないと…」

「その怪我でどこに行こうって言うのよ?」

「エルカ…」

「あんたがクラレットを助けようってしてるのはこの場にいる誰もが知ってるわ。だけどね、そんな怪我で行ったってやられるのは目に見えてるでしょ」

 

 ハヤトは全身血だらけでどうして生きているのか分からない状態だった。

 それを自覚すると、意識が朦朧としてしまいそのままラミの方に体を倒してしまう。

 

「怪我の手当てぐらいしてから行きなさいよ。アイツだってボロボロみたいだし」

「アイツ…?あ」

「マスタァーー!!」

 

 ぶんぶんと大きく手を振りながら駆けてくる垂耳ウサギの亜人。

 その横で細目で疲れた表情を現している少女が近づいてくる。

 

「モナティに…アカネ、そうだな。少し休んでから行く事にする」

「休む場所なんて無くなったけどね」

 

 エルカが後ろを見ると瓦礫になった孤児院があった。

 だけど、その瓦礫後にリプレを初め、仲間たちは全員生きていた。

 住む場所は失ったがハヤトは本当に守りたいものを守る事が出来たことを実感するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ------------------------------

 

「という訳なんですの」

「そうそう、アタシなんか大活躍だったんだから!」

「魔王を撃退できたのか…」

 

 服を脱いでリプレに傷の手当てを受けながらモナティ達の話を聞いていたハヤト。

 何故召喚術を使わないかというと、その理由はハヤトがオーバーフローを起こしたからだ。

 ミントの話によると、強力すぎる魔力を身に受けすぎると体調を崩し最悪死に至るほどの症例だ。

 ハヤトの場合、全身の傷口から血が吹き出る形で体内の余分過ぎる魔力を放出してるのだ。

 この傷の場合、ハヤトは召喚術による治療は一切効かない、魔力の治療では逆に傷口を広げてしまうからだ。

 

「うん、これぐらいでいいかな」

「ありがとな、リプレ」

「どういたしまして」

 

 笑顔で応えるリプレ、それに安心感をハヤトは覚えていた。

 そしてある疑問を感じていた、その事に対してハヤトが口を開く。

 

「そういえばアカネ、エルゴの守護者になったんだな。シルターンの」

「そうよ。シルターンのエルゴの守護者アカネちゃんよ!もう昔とは実力が段違いなんだから!」

「本当に強かったですのアカネさん!」

「そうかそうか………で、どうやってエルゴの守護者になったんだ?」

「………あ」

 

 アカネは失言をかましたことに気づく、ゆらりと起き上がったハヤトがアカネの前に立った。

 

「どうやって守護者になったんだ?」

「えと…その…」

「なったんだ?」

「ご」

「ご?」

「ごめんなさい~~~!!」

「ゆるさーん!」

 

 ぐわしと俺がアカネの頭を掴みギリギリと握りしめる。

 アカネが痛い痛いと叫ぶがそんな事知った事じゃない。

 こいつがシルターンのエルゴを呼び出した事は分かってるんだ。

 

「お前のせいでカイナや俺達がどんな目に逢ったか知ってるのか!」

「カイナって誰よ!? っていうかアタシが守護者にならなきゃモナティがやられてたのよ!別にいいじゃん!」

「責任転換するなぁ!」

「うぎゃぁーっ!」

 

 メキキと言った人間が鳴らしてはいけない音が鳴るが俺は知らん!

 するとモナティが困った顔で近づいてくる。

 

「あのマスター、アカネさんも反省してるしもう許してあげても…」

「いや、俺こいつが反省している言葉まだ聞いてないんだけど」

「痛い痛い痛いぃ~~!!」

「それじゃぁ口を開く事も出来ませんの!」

「あー、うんわかったよ」

「あー痛かったぁ………守護者辞めよっかな」

「ふーん、遠回しにあんなに迷惑かけたのに?」

「あ、嘘です。てかハヤトなんか度胸付いてない?」

「誓約者にでもなれば考え方だって変わるさ、それにアカネに優しい言葉をかけると調子乗るってクラレットに言われてるからな」

「助けようとしてる相手に言われてるのかぁ……訂正させないとなぁ」

 

 ハヤトがサモナイトソードの鞘を腰にかけて城の方に目をやった。

 時折感じる召喚術の魔力からエルジンたちが戦っている事に気づく。

 

「…本当に行くんですか?」

「ミント?」

「こんなに無茶をしてまだ戦わなきゃいけないんですか?」

「………」

「普通なら休んでなきゃいけないほどの怪我なんですよ!これ以上戦ったら本当に――」

「あの時」

 

 必死に止めようとするミントにハヤトは呟いた。

 こんなにも無理をし続ける、なぜそこまで戦わなければいけないかを…。

 

「オルドレイクとソルに殺されかけた時、クラレットに助けられてメイメイさんの所に飛ばされたんだ。その時言われたよ。全てを夢にして元の世界に帰ってもいいってさ…」

「それで…ハヤトさんはなんて?」

「……恥ずかしいけど俺、元の世界に帰ろうとしたんだ。でも帰れなかった、最後の最後に悩んだんだ。本当にこれでいいのかって?そしたら凄く怖くなった」

「怖いですか?」

「うん、フラットの皆やラムダたちやミニスたち、それにミントたちが殺されるかもしれないって…クラレットが魔王になるかもしれないって、それが本当に怖かったんだ…」

「ハヤト…」

「マスター…」

 

 モナティとアカネがハヤトのそばによる、どれだけの葛藤があったのだろう。

 きっと二人の覚悟とは比べ物にならないほどのモノがあったはずだ。

 

「皆との出会いを無いモノにしたくなかった、せっかく生きてるのに皆を見捨てたくなかった。だから行くんだ、俺は自分から誓約者になったんだから」

「……はい」

 

 ミントは下を向いて自分の服をギュッと握りしめた。

 理解は出来たが納得は出来なかった、それでも彼の覚悟を止める事はミントには出来なかった。

 そしてハヤトの視線がリプレに向けられる。リプレは視線の意味するところを理解していた、だけど…。

 

「……」

 

 理解はしている。納得はしている。だけど、どうしてもリプレは心配だった。

 あの戦いを間近で見たのだ。そしてハヤトが負ける姿も見てしまった。

 もしラミがハヤトを庇わなければ、きっとハヤトは殺されていただろう。その事がリプレにとって不安の種だった。

 

「なあリプレ」

「…」

 

 必ず帰ってくる。だから信じて待っていてくれ。

 きっとまたそんな事を言ってくるのだろうとリプレは思っていた。しかし…。

 

「たぶん俺達全員、全力で戦うと思う。さっきソルと戦った時と同じくらい…いやそれ以上に全力で戦うと思うんだ」

「え、えっと…つまり?」

「動けなくなると思うからミントたちと一緒に迎えに来てくれないかな?あはは」

 

 頭を掻いて笑いながらハヤトは答えた。迎えに来てくれと。

 今までにない答えにリプレは唖然としてしまう。

 迎えに来てくれ、今まで待つだけだったリプレには新しいモノだった。

 リプレはおもむろに後ろを振り返る、完全に倒壊した孤児院が映っている。

 それを見たリプレはふうっと一息ついてから口を開く。

 

「仕方ないわね。まあ待つ家も無くなっちゃったし、必ず迎えに行くわ」

「ああ、頼んだよリプレ」

「オイラ達も一緒に行くからな、兄ちゃん!」

「必ずお姉ちゃんを助けなさいよ!」

「……(こくり」

 

 リプレと子供たちからの応援を聞き届けたハヤトは視線をエルカに向ける。

 エルカの腕の中ではガウムもいる、そして後ろの方では気絶したカノンもいた。

 

「エルカ、皆の事。頼んでもいいか?」

「ふん、別にいいわよ。それより絶対にやられるんじゃないわよ。アンタはあたしを元の世界に還すって約束したんだからね!」

「そ、そんな約束したか?」

「したわよ!忘れるんじゃないわよ!」

「えぇ~」

 

 した覚えのない約束を押し付けられたハヤトだったが戸惑った表情を一瞬見せるが、

 どの道、何時かはやらなければならない事だと割り切り笑顔を浮かべてエルカに応えた。

 

「まぁ、そのうち必ず元の世界に還してやるよ。約束だエルカ」

「…ふん、まあ当然ね」

「あと、ガウム。皆の事を頼んだぞ、クロが動けない今、お前が頼りだからな」

「きゅーっ!」

 

 ラミの腕の中で眠っているクロの代わりを任されたガウムが泣き声をあげキリッと表情を固める。

 そしてハヤトは後ろで待つモナティとアカネの方へと歩み始め再び城を見据えた。

 見るだけでも嫌悪感が漂う悪魔の城、そこに居る自分の大切な存在の為に声をあげる。

 

「行くぞ!モナティ!アカネ!」

「まっかせない!」

「はいですの!」

 

 駆けだした三人は夜の夕闇へと消えていった。

 彼らの姿が見えなくなるまでリプレ達はそれをジッと見ていた。

 そしてハヤトの姿が完全に見えなくなるとミントが呟く。

 

「辛いですね……待つことしか出来ないなんて」

「そんな事ないわ」

「えっ?」

「ハヤトは私達に迎えに来てくれって頼んだのよ?これで全部終わらせるって決めたのよ。だから私はそれを信じるだけ」

「リプレ…」

「だって私は皆のお母さんだからね♪」

 

 お母さんだから信じている、話では二か月ほどしか一緒に居なかったと言っていた。

 だけど満面の笑みを浮かべ、きっとやり遂げると信じているリプレの姿を見てミントは羨ましかった。

 自分ではここまで信じきれないであろうと、きっと何処かで信じるのをやめてしまうと。

 

「いいなぁ…」

 

 小さく呟くその声はリプレの耳に届くことはなかった。

 だが、自分の手をくいくいと引く感触に気づき下に顔を向けるとそこにはラミがいた。

 

「…いっしょにおにいちゃんまとう?」

「……うん、ありがとうラミちゃん」

 

 小さな子に励まされた事は気にならなかった。

 なぜならこの少女は、いざという時の行動力は桁外れなのだから。

 自分の意思を突き通そうとする覚悟を持っている少女の言葉をないがしろには出来ない。

 ミントは先ほどとは違う顔つきでサイジェントの中央にある城に目を向ける。

 いまだ心配だったがそれでも何とかしてくれる、そう自分の心に言い聞かせる。

 

「頑張ってください、ハヤトさん」

 

 そう呟き、ミントはラミを連れてリプレの下へと歩むのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ------------------------------

 

 ――選別だ………これを持って行ってくれないか…?

 

 ――ネエ、ソル兄様…?みんなみ~んな、アタシタベタンダヨ?ネエ?褒めてくれる?

 

 ――私達の代わりに………生きて

 

 

 

「はぁ…はぁ…クソッ!」

 

 孤児院からそれほど離れていない場所で一人の男が建物の影に隠れて膝を付いていた。

 バッサリと切り裂かれた跡が体に残っているが既に治されたようで血は流れていない。

 だが完全には治っておらず痛々しい傷跡が刻み込まれていた。

 

「俺は…まだ…クッ!!」

 

 頭を抱え苦しんでいる男、ソルの精神は砕け欠けていた。

 今まで抑えに抑え込んだモノが決壊しそれがソルの心に襲い掛かる。

 罪悪感や嫌悪感など人によって害になるような衝動が彼に襲い掛かっている。

 その手に持つ折れた覇王の剣、それをジッと見つめたソルは首筋に剣を近づける。

 

「!!!!」

 

 カラーンと剣を何とか手から捨てソルは目をつむり頭に手をやった。

 このまま死にたい、全てを投げうって楽になりたい、そんな感情がソルを誘惑する。

 だが、彼がその誘惑に乗るにはまだ早すぎた…。

 

「……………まだだ」

 

 つむった瞳に映る過去の光景がソルの決意を新たにする。

 消えてしまった兄弟、壊れた妹、そして……殺してしまった守るべき■■■■。

 

「俺はまだお前たちの仇を取ってはいない、抑え込んだモノがなんだ、あと少しだ、あと少しで奴を殺せる。誓約が全て千切れた今、俺は奴を殺せる。仇を…討てるッッ!!」

 

 今感じるこの現象は副産物だ、最も幸運だったのはソルに刻まれた誓約を全て壊せた事だった。

 精神の力を形に変える覇王の剣、そしてその魔剣の兄弟と言えるサモナイトソード。

 二つの魔剣がぶつかり合い片方が破壊された、その時ハヤトの誓約者としての膨大な魔力はソルの体を貫いたのだ。

 魔剣を砕き、ソルの中に潜む悪魔たちを全て消し去った事でソルはオルドレイクの誓約から解放されたのだ。

 だがオルドレイクの誓約だけではなかった、ソルが自分自身に仕込んだ誓約すら破壊してしまったのだ。

 それは自身に命令を強制する誓約だった。

 感情を抑え、目的の為ならば非道にもなる、オルドレイクの懐に入る為にソルは敢えてその道に足を踏み入れた。

 それは嘗ての自分を否定するモノだった、危険分子になるものなら女子供であろうと彼は殺してきた。

 そして…目的の為ならば自分の妹すらソルは手にかけようとしていた。

 

「仇を討てる……いやダメだ、アイツだけは…いまだ壊れていないアイツは…」

 

 脳裏を過るのは心が死んだ…いや眠る事を選んだ少女の姿。

 条件が揃えさえすれば、彼女が目覚める事を望めば帰ってこれる。

 それを知っているからこそ、ソルは安易に復讐に走りはしない、もう後戻り出来ない彼とは違い、彼女はまだ戻れるからだ。

 

「必ず助けてやる、クラレット…お前を助けて…オルドレイクを……殺すっ!」

 

 ソルに残されたのはまだ救いが残っている妹を助け出し、そしてオルドレイクを殺す事だけだった。

 苦しむのは後で出来る、自殺することも後で出来る、なら自分がやるべきことはただ一つだ。

 影が彼の体を包み込み、影の悪魔は城へとソルを誘う、そしてソル・セルボルトの最後の戦いも始まろとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ------------------------------

 

「シロトト様!お願い申し上げます!!」

 

 領主の城の正門広場、赤と白の巫女服を纏う少女カイナが鈴を鳴らし異界の召喚術を発動させる。

 そこから現れたのは白く双頭の大狗とその上に乗る少女の姿だ。

 仙獣シロトト、シルターンのでも強力な力を誇る召喚獣、

 そしてその背に乗るのがカイナと同じ道の者の一人、ひな。

 シロトトが空を駆け足先から言霊を衝撃に変化させて悪魔の群れを吹き飛ばしてゆく。

 そして攻撃を終えたシロトトは送還されてゆきその場に悪魔は一人として残っていなかった。

 

「流石エルゴの守護者って所かしら?」

「そちらは大丈夫ですか…えぇと」

「私はミモザ、こっちはギブソンよ」

「貴方方が…、私は鬼道の巫女カイナ。シルターンのエルゴの守護者をさせてもらっております。あの…大丈夫ですか?」

「ま、まあそれなりに疲れたわよ。倒しても倒しても湧いて出てくるんだもの」

 

 ミモザの顔色はやはり優れてはいなかった。

 あれからも回復次第、沢山の召喚術を呼び出して悪魔達を蹴散らしたのだ。

 周囲の悪魔の魔力はカイナの力で浄化されており先ほどよりもスムーズに魔力を回復させていたが、

 ハヤト達とは違い服従召喚術を多用する現代の召喚師であるミモザには負担が大きかった。

 同じくギブソンも負担が大きいがこちらはサプレスがメインな為、ミモザほど体調は悪くはなかった。

 

「しかしそれほどの召喚術を何度も行使できるとは、やはり異界の召喚術だからなのか?」

「いえ、そういう訳ではないんです。私達の体の中にはエルゴの欠片があるんです。誓約者が無事な限り私達エルゴの守護者はほぼ無限に魔力を行使できるんです」

「そのおかげでボク達は召喚術をいくらでも使えるのさ。エスガルドもエネルギーの心配なしに動けるしね!」

「本当に規格外ね……これが全員ハヤトの新しい仲間なんてね」

「ああ………彼はこれからが不安だな」

「あの子が誓約者になったってことは…」

「そうだ、彼がこれから背負うべきモノがどれ程のモノか考えるだけでも辛いものがある」

 

 ギブソンは誓約者になったハヤトの身を案じていた。

 伝説の召喚師ともいえる誓約者、その名と存在がどれ程のモノかをギブソンは知っているのだ。

 これから彼を襲うであろう運命はきっと彼を苦しめてしまうと。

 

「その時は私達で手助けしてあげればいいでしょ?もっと簡単に考えなさいよギブソン」

「ふ、確かにその通りだな」

 

 少しの休憩が済み顔色が戻ったミモザ、ギブソンもまた今は考える時ではないと気持ちを切り替える。

 

「カイナ殿!やはりあの門は普通の攻撃では破れそうにないでござる!」

「先ホドカラ攻撃ヲ仕掛ケテイルガ、アレハ普通ノ門デハナイ。恐ラク悪魔ヲ憑依サセテイルノダロウ」

 

 領主の城の城門は憑依召喚により悪魔を憑依させているためか恐ろしいほどの耐久性を誇っていた。

 騎士団の攻撃や召喚師たちの召喚獣では到底破る事の出来ないほどのモノだ。

 

「カイナお姉さん、あの門を破る事出来そう?」

「私とエルジン君の全力の召喚術なら破る事は出来そうですけど、それをすれば…」

「うん、ボク達は多分戦えなくなっちゃうと思う」

「はい、龍神様を召喚するには、私では実力不足ですから…」

 

 鬼龍ミカヅチ、シルターンのエルゴの侵攻の際にハヤトとカイナを守ってくれた至竜だ。

 カイナはこれを召喚できるようにはなってはいたが、たった一人で召喚するには力不足であった。

 守護者達が至竜クラスの召喚術を行使する際、現状誓約者であるハヤトの協力が不可欠なのだ。

 

「ぜぇぜぇ!倒しても倒してもキリがねェ!」

「弱音など吐くな!蒼の派閥に我ら金の派閥の実力を見せねばならんのだ!」

「さっきからそればっかりですね兄上は…」

 

 無限に現れる悪魔の群れにマーン三兄弟も疲労困憊だった。

 そしてついに召喚獣の一部が破られ、悪魔たちが彼らに襲い掛かったのだ。

 

「うおぉっ!?」

 

 先頭にいたキムランがカルヴァドスを振るい悪魔に対抗するが数で攻める悪魔に追い詰められてゆく。

 イムランとカムランもそんなキムランを援護したかったが迫り来る悪魔の対処でそれどころではなかった。

 

「畜生!!」

 

 近距離戦闘は出来るものの、生粋の召喚師であるキムランは刀を弾き飛ばされ窮地に陥ってしまう。

 悪魔の凶器がキムランに襲い掛かる瞬間、悪魔は魔力の光弾で吹き飛ばされてしまった!……キムランもろとも。

 

「オワァァァーッッ!?!?」

「き、キムラン!」

「兄上!?」

「うにゅにゅにゅにゅにゅにゅ!!!」

 

 妙に力が抜けるような叫び声とメイトルパの魔力を宿した光弾が悪魔の群れを撃ち払ってゆく。

 だがそれでも倒れない巨大な悪魔もいた、すると閃光の様に高速で近づく人影が駆ける!

 

「いっきっまっすっのぉぉぉーーー!!」

 

 その人影はモナティだった、右手に膨大な魔力を宿したモナティの拳は悪魔に叩き付けられた。

 ドゴンッ!と言った衝撃音が響き渡り巨大な悪魔は城門に向かって吹っ飛んでゆく、

 そして城門に叩き付けられるのと同時に爆散し送還されていった。

 

「やりました!やりましたよ!マスター!!」

「あぁん!何がやりましただテメー!」

「うにゅぅぅぅ!?」

「俺ごと吹き飛ばしやがって恨みでもあんのか!あぁん!」

「痛い!痛いですのキムランさぁん!」

「おいしょっと」

「おおっ!?」

 

 体が焦げているキムランがモナティの耳を握りっていると突然軽い声と共にモナティが丸太に変化する。

 モナティを助けたのはアカネだった、しらーっとした視線をキムランに向けて口を開く。

 

「恨みあるのかってちょっと胸に手をやって考えてみなよ。恨みだらけじゃない」

「お、オメェはフラットの…それになんでハヤトのとこの召喚獣がここにいるんだ」

「そんなこと決まってるじゃない、ハヤトがここに来たからよ♪」

「な、それりゃどういう――」

「兄上!上を見てください!」

「な、なんだありゃぁ!?」

 

 キムラン達が上空を見ると巨大な隕石が次々と落下して行き悪魔の群れをドンドン押しつぶしてゆく。

 通常の召喚術では感じられないほどの圧倒的な魔力と共に悪魔の群れを蹴散らしてゆく。

 その魔力の下に視線をやると虹色の輝きを放つ魔剣を手に一人の少年が召喚術を行使していた。

 

「メテオライトフォール!!」

 

 再び彼の魔剣から剣閃が天高く放たれ空間に亀裂を生み出しそこから巨大隕石を発生させる。

 悪魔達にそれを止める術はなく次々と押しつぶされて送還されていく。

 

「お、お前は……嘘だろ!?」

「キムラン!大丈夫か?」

「そりゃ、俺の方だ!お前死んだんじゃねぇのかよ!?」

「まあ…細かい話はあとでな、今は時間が惜しいんだ。俺達は城の中に入るつもりだ。ここを任せていいか?」

「……あぁん?誰に言ってるんだ?俺はキムラン・マーンだぞ?金の派閥のマーン家の俺に任せれば問題はないぜ!」

 

 ハヤトがすぐにでもクラレットを助けたいという事はキムランにも理解出来た。

 だからここを任せると言われたなら全力で任されたという、それがキムランだ。

 そしてハヤトはそんなキムランに笑顔で応えるとすぐさま他のエルゴの守護者達と合流する。

 

「カイナ、エルジン、エスガルド、カザミネ、皆大丈夫か―――ってミモザさんにギブソンさん!?」

「聞いてはいたが本当に生きてたのかハヤト」

「まあ色々あって……ミモザさん?」

「こらぁー!!」

「うわぁっ!?」

 

 ミモザは突然ハヤトに跳びかかる、突然の行動にハヤトは避ける事も受け止める事も出来ずに抑え込まれてしまった。

 

「ハヤト貴方ね、どうしてあの時無茶したのよ!私達がどれだけ心配したかわかってるの!」

「ミモザさん…」

「出会ってほんの少しだけど、目の前で仲間が死んで普通でいられると思っていたの!?本当に…本当に…!」

「ミモザ、そこまでにするんだ」

「ギブソン…」

 

 ミモザの肩に手をかけ、ギブソンがハヤトとミモザを離れさせる。

 正直、親しい仲間より年上の人たちに心配されるのは、ハヤトにとって別の罪悪感を感じさせた。

 

「すいません…二人を心配させて」

「我々の事はいい、それより今城の中で戦っている彼らの事を助けてくれ」

「彼ら……!まさかガゼルたちが!?」

「えぇ、クラレットを救えるのは自分たちだって意気込んでてね。城の中に最初に入っていったわ。その時門が閉じちゃって連絡が付かなくなったわ」

「ガゼルさんたち…大丈夫なんですの?」

「分からない、だけど時間はかけられない」

 

 この戦いが始まってどれだけの時間が経っているかハヤトは正確に覚えてはいない。

 だがそれでも恐らくガゼルたちは危機に瀕しているいる事は理解出来た。

 ハヤトは鞘からサモナイトソードを抜き放ち、膨大な魔力を魔剣に送り込み始める。

 時間などかけてはいられない、ならば一撃で扉を破壊するだけだ!

 

「これが誓約者の力なのか!?」

「今まで感じた事ないほどの魔力だわ」

 

 蒼の召喚師の二人は戦慄する、つい最近まで普通の召喚師以下の魔力しか持っていなかった少年が、

 世界を統べるほどの力を手にしていたのだ。

 だが不思議と恐怖を感じる事はなかった、ハヤトの手に握られた魔剣から放たれる光はとても優しい光を放っているからだ。

 

「モナティ!」

「はいですの!」

 

 横に立つは小さな垂耳兎族の少女モナティ、戦う事を嫌い戦う事を否定する少女はもうここにはない。

 今ここにいるのは確かな闘志を秘めた、メイトルパのエルゴの守護者、調停者の一人モナティ。

 

「至源の時より生じて 悠久へと響き渡るこの声を聞け! 誓約者たるハヤトが汝の力を望む…」

「力を貸してくださいですの…」

 

 モナティとハヤトの魔力が混じり合い、巨大なゲートが生み出される。

 二人は互いに手を繋ぎあい、混じり合う共鳴し更なる力を呼び出す。

 

「メイトルパより出でてその身に秘めたる猛き焔の息吹を、我が前に解き放て…。剣竜と呼ばれし守護者よ……、汝の試練を乗り越えし者に――」

「来てくださいですの!ゲルニカさーん!!」

「その力を貸してくれ!剣竜ゲルニカァァッッ!!!」

 

 ―――グオオオォォォォォーーーーッッ!!!

 

 メイトルパのゲートから姿を現したのは紅き竜、

 それはかつて誓約者と共に侵略者と戦った伝説の至竜、剣竜ゲルニカだった。

 遥かな高みへと至った竜王、その巨体は近くを飛ぶメイトルパの翼竜も小さく見えるほどだ。

 

「あれは至竜なのか!?」

「剣竜ゲルニカって言ったわよね!伝説のエルゴの王に力を貸したって言う!?」

 

 ミモザはゲルニカの力に畏怖しつつ出会えた感動で目を輝かせた、

 メイトルパの召喚獣の中でもエルゴの王に力を貸した伝説の至竜ゲルニカ。

 それが今、ミモザの目の前に姿を現したのだから。

 

「剣竜ゲルニカ!【フレアボルケイノ】!!!」

 

 誓約者ハヤトの命に従いゲルニカはその大口を開き赤き焔を撃ち放つ!

 それは炎ではなく極縮に圧縮された高熱のレーザーだった。

 真っ直ぐに突き進む紅き閃光はその進路上に存在する悪魔達を消し飛ばし城門に直撃する。

 数十体の悪魔を宿す城の城門はその直撃に耐えた、だがそれは僅かな時であった。

 防がれた焔は至竜のエネルギーだ、ただの悪魔達に防ぎきれるものではない、

 案の定そのエネルギーは暴走を起こし、紅き焔は大爆発を起こして城門を跡形もなく吹き飛ばすのだった…。

 

「な、何と言う力だ…」

 

 離れた所からその光景を見ていた蒼の派閥の幹部、グラムス・バーネットは畏怖していた。

 至竜をも操るその力、それは一個人が決して持ってはいけない力だ。

 その力を持つ者を野放しにしておけば派閥に害をなすかもしれないと…。だが。

 

「あれが総帥の言っていた新たな時代の者なのか…」

 

 この任務に就く直前、人知を超える存在が姿を現すかもしれないと蒼の派閥の総帥に言われていた。

 そして同時に、それを見たとしても彼らの行動を阻害してはならない、と言われたのだ。

 グラムスは総帥の語った事がこの事だと理解した、なぜなら総帥の傍には未来を見通す逸話を持つ伝説の護衛獣がいるのだから。

 グラムスはその言葉を否定する事はなかった。

 

「魔王の力に対抗するには同じような力が必要という事か……。蒼の派閥の召喚師よ!あれは味方だ!この事態を解決する為に力を貸す異界の者だ、彼らを援護するのだ!!」

 

 グラムスの指示を聞いた派閥の者たちはゲルニカを味方と理解して行動を開始する。

 召喚師たちはゲルニカの姿に探求欲が促されるが命を賭けている現状、目の前の悪魔達を倒すことを優先する。

 

「うっわぁ~引いちゃうぐらい凄まじい召喚獣ね」

「本当に……えっと貴女は?」

「確かに見た事ない女子でござるな。その衣服、忍びでござるか?」

「ん? そうよ!アタシはアカネ、シルターンのエルゴの守護者よ!」

「私と同じシルターンのエルゴの守護者なんですか?」

「え…? あぁ、カイナってあんたの事だったんだ。もぉーハヤトってすぐに女引っ掻けるんだから、ねえカイナもそう思わない?」

「え…えっと、良く分かりません」

 

 ズガズガと物事を言うアカネにカイナは少々引きながら少し失礼な人だと思ってしまう。

 ただ、口調から善人だと理解出来た為かカイナはアカネに笑顔を向けた。

 

「とりあえず、アカネさん。これからよろしくお願いしますね」

「うんこっちこそよろしく、そっちのスニーカー侍もよろしくね♪」

「ス、スニーカー侍でござるか…」

 

 仲良くし始めるシルターンの面々から離れ、誓約者ハヤトの近くの面々もハヤトに声をかけていた。

 

「マスター!やりましたね♪」

「――――――」

「ま、マスター?どうしたんですの?マスター!」

 

 動かないハヤトにモナティが心配そうに声をかける、

 そして大きな声上げ、それに気づいた守護者達はハヤトの視線を向けるがカイナだけある事に気づき走り始めた!

 そしてハヤトを突然抱きしめてたのである。

 

「カ、カイナ殿!?」

「ちょ!?巫女なのに何大胆なことしてるのよ!」

「ちょっと黙っていてください集中できません!」

 

 アカネの一言で顔を赤くするカイナだったが、余程の事態なのかハヤトを離すことなく抱きしめる。

 ハヤトをギュッと抱きしめながら背中をさすり始め十秒ほど経つとハヤトに意識が戻り始めたのかもぞもぞと動き始めた。

 

「カ、カイナ?」

「気分はどうですか?ある程度整えましたけど」

「……ああ、だいぶ楽になったよ」

「よかった…」

 

 ハヤトを抱きしめながら安心するカイナ、そしてそんなカイナの肩をアカネが叩いた。

 

「おやおや~? カイナさんは何時まで抱きしめているのかぁ~?」

「え……、ああ!すいません!」

「いや、こっちも悪かった!」

 

 顔を真っ赤にしてカイナが離れる、ハヤトも同じように顔を赤くしてたが、それよりも体調が悪そうだった。

 

「マスター、大丈夫なんですの?」

「まだなんとかな…」

「……ハヤトさん、ひとつ忠告しておきます。次に倒れたら、もう戦えないと思っていてください」

「………」

「何があったかは知りませんが、ハヤトさんはもう限界です。数日でエルゴの力を律するのは人では無理です。私を助けてくれた時も無茶をしたと聞いてます。もしこれ以上戦えば貴方は…」

 

 その先の答えをカイナは口にすることはなかった。だがハヤトもカイナの言いたいことは理解できていた。

 誓約者の力とは世界の意思、エルゴの力そのものなのだ、エルゴより力を引き出しそれを行使する存在こそが誓約者。

 かつてのエルゴの王と呼ばれた先代の誓約者はこの力を使いこなし数多くの敵を打倒してきた。

 だがそれは魔力が豊富なリィンバウムで生きてきたからこそなのだ。

 マナと呼ばれる魔力の元に触れたことがない名も無き世界の住人であるハヤトでは、受け入れる器が完成されていても適用できてはいなかった。

 僅か2ヵ月、それだけでエルゴの力に適用できる体になる事は不可能だった。

 そして完成されていないにもかかわらずハヤトは誓約者の力を手に入れ、それを操れる魔剣を手にし、限界を超えるほどの戦いを繰り広げてしまったのだ。

 その結果、彼の体はボロボロになり強大な魔力する操るのに苦痛を伴う程であった。

 

「………」

 

 カイナによって暴走を起こしかけていた魔力は安定したもののそれは一時的なもの。

 再び戦いを行えばその先にあるのが何かであるかはハヤトに理解できていた。

 魂に刻まれるほどの恐怖がハヤトの脳裏を過ぎった……だが。

 

「ここまで来たんだ、あと少しでクラレットを助けられるんだ。だからみんなあと少し俺に力を貸してくれ!」

「「「「「「……」」」」」」

 

 ハヤトの頼みを聞いたエルゴの守護者達とカザミネは頷きハヤトと共に走り出す。

 彼は決意したのだ、ならばその仲間である自分たちが助けるのは当たり前だと全員が思っていた。

 

「ミモザさん、ギブソンさん、ここを頼みます。俺は…」

「分かってるわよ!さっさとクラレットを助けに行っちゃいなさい!」

「ここは我々に任せてくれ、君達は君達の役目を果たすんだ!」

「――はい!」

 

 大きくうなずいたハヤトは崩れた城門を乗り越えて城内部へと侵入する。

 ハヤトは確信していた。この先に彼にとって最後ともいえる戦いが待ち受けている事を。

 

「待っていてくれ、あと少しだクラレット!!」

 

 心が死んでしまった少女を助け出すべく、大きな運命を背負う事を決意した少年は悪魔の城を突き進むのだった……。

 

 

 

 




カイナとハヤトの関係性が不安定だ…。
別にホの字じゃないんですよ。アカネにからかわれてるだけですし。
ぶっちゃけ言うと出会って1日程度で惚れるわけないじゃん。
ミントはほら……ギリギリで助けたから吊り橋効果って奴で…。
あれ? じゃあカイナも同じじゃないか―――どうしよう…。

と、とりあえず次回はガゼルサイドから、ついにハヤトはクラレットと対面します。
ご感想お待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。