本編では入れれる訳がないんですよー。
時は遡り、ここは港町ファナン。
聖王都で荷揚げされていた荷物が対応しきれなくなり、
近場の港町であるファナンが対応し、貿易港として発展したのがこの町だ。
その町の中心に大きな建物が立てられていた。
ほんの数年前は無かったその建物はいたるところが金色で出来ており、
非常に派手な建物だ、名前も金の派閥本部であり通りの建物だろう。
「じゃあ、これはお願いしますね」
「はい、ご苦労様です」
部下である派閥員がいなくなる、椅子に座っていたのは物腰が柔らかそうな人物だ。
その名はファミィ・マーン。金の派閥の議長、つまり一番偉い人だ。
ふうっと息を吐いたファミィは書類に再び目をやる、文字を書こうと筆に手をやるが、それを邪魔するものがいた。
『おい、ファミィ』
「あら、ガルマちゃん。どうしたのかしら?」
『どうしただと?お前が言ったんだろうが、ミニスがサイジェントに行ったかもしれないからもしもの時は何とかしろと』
「そうだったかしら?」
『お前は…! はぁ、まあいい』
サモナイト石の向こう、霊界サプレスでガルマザリアはため息を吐いた、
だが、彼女の立場を考えればこれぐらいの事をガルマザリアは気にしなかった。
既に優秀過ぎて議長という立場に収まってしまった彼女は自分の本音を言い合える相手はいないのだ。
それこそ、界を挟んだ友人同士である自分ぐらいしかいないだろう。
そう思い、ガルマザリアは対応をいつもの様に気にしないようにした。
『それでだが……、少し厄介なことになったぞ』
「…どんなことかしら?」
『実はだな…』
ガルマザリアはサイジェントで起きた事件の全容をファミィに話した。
ミニスとギブンの召喚石が狙われ、ミニスを助けるために戦ったハヤトの事、
そしてセルボルト家が関わっている事を、何よりクラレットの事の全てをファミィに伝えたのだ。
本来、クラレットの事は話すべきではないのかもしれないが、ガルマザリアはファミィを信頼している。
派閥の事を考えながら情を決して忘れないであろう人物を、それに何より…。
『というわけだが、わかってるなファミィ』
「ええ、分かってるわ、いつも通り。私が間違いを起こしたら問答無用で首を刎ねちゃいなさい」
『相変わらずだな、だから気に入っているんだが』
自分自身が間違いを犯せば始末していいとファミィは笑いながら答えた。
それが二人が十数年続けている誓約であり契約、ガルマザリアがファミィに力を貸す表面上の理由だ。
「でも、セルボルトね……、思い出すわ」
『そうだな、お前と誓約を交わしたのもあの事件が切っ掛けだったからな』
かつて、自分が【相棒】と共に戦った先代の聖王暗殺事件の実行犯、
彼女の仇敵であり、今だ若き二人の召喚師の助力が無ければ殺されたであろう。
当時の実力では敵わなく、派閥の兵が持つ召喚石を奪い取り召喚したのが彼女だった。
同じ霊界サプレスの召喚石、半ばやけで召喚したのは普通の召喚獣ではなかった。
悪魔を従える、大悪魔の一角、魔臣ガルマザリア。おとぎ話に出るほどの大悪魔だった。
そんな彼女は他の悪魔たちとは決定的な違いがあった、それがファミィとガルマザリアを繋いだのだ。
「うふふ、でも思い出すわね。あの時のあなたとの誓約」
『忘れろ…』
「だって貴女ったら…」
――貴様の歓喜なる感情を寄越せ、それなら誓約を交わしてやる!
「まさか悪魔の貴女が幸せの感情を好むなんてねぇ~♪」
『忘れろと言ってるだろ!この若作りが!!』
ガルマザリアが他の悪魔と決定的に違うのはその食すものにあった。
悪魔や天使は人の感情を食しそれをエネルギーに変えることが出来る。
ある程度の偏食はあるものの基本は負の感情、正の感情で分かれているものだ。
だが世の中には偏食を超えた悪食、ゲテモノ食いがいる、それが彼女だった。
負の感情を食しても満足感がない、いわゆる普通と言った感覚だ、
だがそんな彼女が出会ったのが歓喜、つまり幸せの感情、正の感情だった。
それを知った彼女は貪るようにそれを食い始めた、しかしここで問題があったのだ、
悪魔として召喚されるする連中は殆どが負の感情の塊だ、彼女はそれが我慢できなかった。
噂に聞く魔王の一角はかつて天使で自分と同じ偏食家で幸せから絶望に落ちた感情を好むそうだ。
なら自分も天使になればいいと一時期思ったがそう易々なれるものではなかった。
――意地汚い悪魔が!好みの良し悪しで種族を捨てるとは恥を知りなさい!!
あの駄天使が邪魔をしてきたのだ、心底あんな分からず屋と同じ種族になるなんて御免だ。
駄天使とは何度も殺し合い続けたが運が悪かったのか片方が召喚されるときに巻き込まれたのだ。
そこで出会ったのがセルボルト家、ツェリーヌ・セルボルトだった。
――あなた達が私の護衛獣ですか?
幼いながら強力なサプレスの魔力を持つ少女に私は歓喜した、幼いなら感情の起伏は激しいはず!
早速、私は彼女の護衛獣になった。だが誤算だったのは横にいる駄天使だった。
――あなたの目論見は分かってますよ、この悪食悪魔が!
そして奴もツェリーヌの護衛獣になってしまった、正直誤算だった。
だが私の予想は正しく、少女の感情は激しく、美味いものを良く食わせてくれた。
あの駄天使がこっちを見てしかめっ面をしてたのは少々むかついたがな。
それから何年の月日が経ち、ツェリーヌは死に、逆らうエルエルも杖に石ごと封印された。
解除する条件はセルボルトの血統による魔力のみだそうだ。
ツェリーヌに頼まれたクラレットも異界で幸せそうに暮らしてる姿を見ることが出来た。
たとえ私を感じることがなくとも幸せならば約束を守れているなと思えたからだ、
だがここで問題が発生した、セルボルトと誓約を交わしてるせいで碌な感情を食えないのだ。
アイツらに歓喜といった感情があってもそれは妙にずれている代物だ、
簡単に言えば、牛丼にマヨネーズをトグロ巻きにするようなモノだ、正直マズい。
それはともかく、牛丼を食ってみたいと思った……、ホントにともかくだったな。
そんな中、多重誓約実験と呼ばれる儀式が研究されていた。
これは多数のサモナイト石で同じ召喚獣に誓約を交わすことのできる新技術だった。
一つの召喚石を本体にし、他の召喚石に繋げる事により、
たとえ石を紛失しようと盗まれようとその石のパスを切り、使用不可に出来る。
本体のサモナイト石があれば秘伝召喚術すら、奪われる危険が無い状態で使用できるのだ。
私はこの実験で複製されたサモナイト石の一つでファミィと誓約を交わした。
初期の実験の産物だった為か通常の誓約ではなく、ただパスを繋ぐものだったが。
そして、ファミィの手に渡ってからはファミィの護衛獣として力を貸すことになった。
今でこそファミィは落ち着いているが、昔はよく二人で暴れまわったものだ……。
そういえばゴタゴタでエルエルの杖も回収したが当然解除なんぞ出来るわけがなかった、
私は気にするなと言い、そこらの質に入れたのだが……、
どういうわけかクラレットの手に戻っていた。くそっ。
『というわけだ……』
「なるほどねぇ、そのハヤト君をこっちに連れてきたのは貴女なのねガルマちゃん」
『サモナイト石の影を置いただけだ、だが消える前にクラレットとパスがつながってよかったと思っている』
「じゃあ、遠回しにミニスちゃんを助けたのは貴女なのね」
『偶然だ、偶然、仮に私だというのならファミィに頼みたいことがある』
「私に…?」
『ああ…』
ガルマザリアは語った、サイジェントの治政が上手くいっていない事を、
クラレットがそれに悩み何とか解決しようとしてることを話した。
最初は楽しく聞いていたが、仕事の事になるとファミィの雰囲気も変わり真面目に聞き始めた。
そして、ガルマザリアの話が終わった。
「なるほどねぇ…、あの子たちは今回がそういうの初めてだけど上手くいってなかったのね」
『ああ、流石に酷過ぎるわけでもないが、領主の自立性や一部の貴族がナントカだそうだ』
「そこらへんもっと詳しく教えてほしいんだけど…」
『知るか、私はただの召喚獣だぞ』
「そうねぇ…、もうすぐそのクラレットさんの手紙が届くのよね」
『ああ、ミニスと一緒にな』
ミニスの話を聞いた、ファミィは少し俯いて、辛そうな表情を浮かべる。
心を許す、唯一の悪友にその想いを話し始めた。
ファミィは派閥と家庭の両方を取れなかった、それは彼女が優秀過ぎたから。
鍛え抜かれた召喚師としての力、並みの召喚師を超える膨大な魔力、
そして組織を動かすその手腕、派閥の幹部たちはそんなファミィを議長の座へと座らせてしまった。
そして、ファミィは家族の事より仕事を優先せざる負えなかったのだ。
それは遠回しにミニスを助ける事へと繋がっている。
「私はダメな母親ですよね。大切な…、愛しい子をしっかりと掴めない」
『ファミィ…』
「ミニスちゃんが戻ってきたら、どう接してあげれば、いいか…」
『私の見た限り、ミニスはとても大きく成長してるはずだ』
「え…?」
『恐怖を知り、人の心を知り、己を知り、恋を知った。短い間で大きく成長を遂げたはずだ。そして何よりお前の子がお前と同じモノを乗り越えられないはずがないだろ?』
「そうね…、ありがとう。ガルマちゃん」
自他問わず厳しい態度を取らざる得ない、それが自分の娘であっても、
それほど彼女は厳しかった、自分に厳しすぎたのだ。
その理由を知るガルマザリアにとってファミィとクラレットが少し被って見えていた。
だが何より違うのが…。
――ファミィは一人で立たなければいけないという事か…。
かつて、立場の問題で愛するものを諦めなければいけなかったファミィを思い出した、
しかし、彼女の中には愛する子が既にいたのだ、今のファミィの地位はそれを守る為のモノだった。
誰からも子が責められない為に、必死になってミニスの居場所を作って来たのだ。
それにシルヴァーナを召喚してしまった時は本当に彼女は焦っていた、
私を召喚して、家まで飛んでゆけと懇願する程だったのだ。
そしてその後、ミニスとのすれ違いが始まると、苦しむように私の前で心の内を吐き続けた。
自他問わず厳しいと言われるが本当の意味で自分に厳しすぎる、
せめて人並みの苦しさだけでも私に吐いてもらえればな、そう思もう。
人の負の感情を食らうのは悪魔の本分、何よりファミィの負の感情は不快でなかった。
大切な者の為に苦しみながら進む、彼女の想いが籠ってるから…。
「ところで、ガルマちゃん?」
『ん?』
「恋を知るって……、どういうこと?」
『それは…ウククク! あの天然タラシがお前の娘を落としたという事だ!』
「あらあら、ミニスちゃんも恋を知るお年頃って事ね。そこら辺から切り込んでみましょうか」
『手加減してやれよ? なによりハヤトの為にな』
「……一夫多妻ってどう思う?」
『私は別にいいと思うが、クラレットが許すはずがないだろ』
「残念ねぇ~」
再び調子が戻り始めたファミィは書類に視線をやり、筆を取った。
ガルマザリアもクラレットの様子を見る為、パスを入れ替える為、気配がしなくなった。
先ほどの雰囲気が一新し、ファミィは再び金の派閥の議長に戻ったのだ。
ここ数年、何度もガルマザリアはファミィを助けていた、それがガルマザリアの誓約だったのだ。
――私を友人として助けること、いいわね!
あの時の自信満々の誓約を思い出し、クククッとガルマザリアは笑っていた、
魔王に近い大悪魔に対してそう言い放ったのだ、それだけでファミィの護衛獣をするには十分だった。
ちなみに、帰って来たミニスにファミィはハヤトの事を根掘り葉掘り聞きだし、
いずれ家に連れてこようと心の中で決めていたそうだ。
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同時刻、深い霧の森、迷霧の森で一人の青年が歩いていた。
名はソル・セルボルト、ハヤトたちとの戦いのせいで先ほどまで逃亡中だったのだ。
関わった人物は殆ど始末し、自分の後が残らない様にしたが、
魔力のその全てを失っており、影の悪魔による転移術は勿論召喚術も使用できなかった。
「はぁ…はぁ…」
不眠不休で活動し続けたせいで体力も限界に近かった、だが一定の成果はあった。
その成果を考えれば、たとえ秘伝召喚術を手に入れなくてもお釣りがくるほどだ。
そして無色の派閥の砦が見えてくる、そこに彼は足を進めたのだった。
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「よう、随分と辛そうじゃねェか?」
「バノッサか…、何の用だ、俺は父上の所に行かなければならないんだがな」
ソルの前に兄にあたるバノッサが立ちふさがった、
正直な話こんな奴に関わりたくなが、バノッサはソルの姿を見て調子付いた。
「はッ! 普段偉そうな態度を取ってるくせによ。結局お前もはぐれ野郎に負けてるじゃねェか」
「基本全敗のお前に言われたくもないがな」
「なんだとッ!?」
「何度でも言ってやる、一度も勝ったことのない男に言われたくもないと言ったんだ」
「テメェ…、言ってくれるじゃねぇか!」
懐から魅魔の宝玉をバノッサが取り出し魔力を注ぎ込み始める。
ソルも剣に手をやり、攻撃に備え始める。
「道具を使った召喚術で俺に勝てると思ってるのか? バノッサ」
「使えるものは何でも使えって言ったのはお前だろ?」
「違いない」
「ちょ、ちょっと何をしてるんですか二人とも!?」
奥からカノンが姿を現した、傍から見ればバノッサがソルに止めをさそうとしてる様にも見えた、
カノンはバノッサとソルの間に割り込んで二人をなだめた。
「退けカノン、邪魔だ」
「退けって…、そんなボロボロでよく言えますよね。ソルさんは」
「……チッ! おいカノン、そいつの傷の手当てをしてやんな」
興が冷めたのかバノッサは魅魔の宝玉を仕舞い、姿を消してしまった。
「さあ、ソルさん。手当てしますから行きますよ」
「…ああ、そうだな。少し休んでから行くか」
「そうですよ。そんなボロボロなんですから…手を貸しますよ」
「………ッ」
「ソルさん…?」
「なんでもない、頼んだぞカノン」
ソルは呪詛に操られかけていたことに気づいた、父を優先で行動してたのだ、
魔力が切れ欠けてたせいだと思い、まずは体力と魔力の回復に専念することにした。
そしてカノンに支えられながらソルは医務室へと向かって行った。
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「うむ…、これが全てか?」
「はい、父上」
次の日、ソルはオルドレイクに謁見していた。
カノンの治療を受けたが減った魔力は回復しない、
一日ほど体を休め、休みながら今回あったことを資料にまとめてオルドレイクに提出したのだ。
今回の戦いで得た成果は予想以上に多かった、特にあの男の。
「しかし、このクラレットと共に来たという召喚獣…、色々と規格外のようだな」
「はい、鬼神将を憑依しその力を行使したのは予想以上でした」
資料にはハヤトが鬼神将を憑依したことが書かれていた。
人の身に余る力を持つ鬼神将、サプレスで言えば大悪魔を体に降ろしたと言っても過言ではない、
無色で研究されている魔人形に近い物が在るが、
その力そのものを行使できるかは全くの別だった。
魔人形はあくまで器を作りそれを誓約で縛り傀儡として操る秘術だ。
多少ならば悪魔の力を行使できるが、制御を行う分、幾分か型落ちしてしまう。
だが、ハヤトの行った憑依召喚はそうではなかった。
「ソルよ。お前の鬼神将の技が一方的に敗れたと記述されているが…」
「はい。鬼神将ゴウセツ、最大の技に当たる鬼神烈破斬が一方的にやられました。私も深い手傷を負った所存です」
「そうか…、それで使えそうか?」
「いえ、それが…」
魔王召喚、元々魔王を召喚するだけなら膨大な魔力と触媒があれば可能だ。
だが、その分かなりの力をそがれた魔王が召喚されるケースが多々あった。
魔王が自身の力を十全に引き出すための魂殻。
つまり器を用意出来ればいいという結論に達した。
その為に用意されたのがクラレットに当たる、彼女はその為の器として最適な物だった。
そこに現れたのがハヤトだ、彼は鬼神、つまりサプレスで言う大悪魔に匹敵する存在を取り込み生存していた。
これがサプレスなら魔王の力を取り込み、尚且つそれを自在に行使できるという事になる。
だがソルはそれを否定したのだ。
「確かに器としてのできならばクラレットに匹敵するものはあるでしょう。ですがその必要はもうないのです」
「すると?」
「クラレットが魔臣ガルマザリアを召喚しました。つまり彼女は既にサプレスの魔力と完全な融合を果たしているという事です」
「そうか!ついにこの時が来たという事か…、クククッ」
目的の達成がまじかとなり笑うオルドレイクをソルはじっと見つめていた。
長年の野望が目の前に来ている、それはつまり自分たちの役目が終わることを意味していた。
「手段は分かっているな、ソルよ」
「はっ、派閥としては貴重なサンプルの消失になりますが、やはりあの召喚獣を目の前で始末するのが確実でしょう。クラレットは奴に依存してるといえます。要を失えば自分から壊れていくでしょう」
「魅魔の宝玉の方はどうだ?」
「バノッサとの融和はかなり進んでいます。サプレスのエルゴとゲートを開く十分な鍵になってくれるでしょう」
「うむ」
計画達成は目前まで迫っていた、ゲートを開くカギの一つ、魅魔の宝玉はバノッサとの融和を果たしていた。
そしてエルゴを取り込み、贄としてのサプレスの力を受ける器として
完全な存在と言えるクラレットの手の内に呼び込むのは時間の問題だった。
あとは時間の問題だろう、次は最初から全力で叩けば問題などなかった。
そしてソルの目的も近づき始めていた。
あと少しだ…、最初で最後の…。
魔王召喚において召喚された魔王に誓約を刻むのは並みの召喚師では無理だろう。
それこそ破戒の総帥と呼ばれたオルドレイクで無ければ不可能に近かった。
魔剣での補助、サプレスのエルゴの動力、魅魔の宝玉という鍵。
三つの力を使い、ギリギリ誓約を刻めるか刻めないかというぐらいだ。
前回の時は魅魔の宝玉が無くゲートも不安定だった、二つでは足りなかったのだ。
あの時に成功していればこのような手間はかからなかったものの…。
当初の魔王の贄はソルだった。結果的にソルだけが贄として残ったと言ってもいいだろう。
ソルは魔王の力を利用してオルドレイクを始末するのが目的だった、
だが結局の所、召喚されたのはクラレットでサプレスのエルゴは彼女に取り込まれてしまった。
余計な手間が増えてしまい、ソルの計画は大きく外れてしまった。
だが今回は違う、奴が儀式に集中すれば呪詛も誤作動を起こすはず、そこで始末すれば…。
心の中でそう決意する、それに反応して呪詛が体の中で蠢くがそんなもので彼は狼狽えたりしない。
「もうすぐだ…、もうすぐ我が祖、ゼノビスの望んだ悲願が達成される!この偽りで塗り固められた世界を破壊し、真なる理想郷が、ついに!!」」
「………そう、もうすぐだ」
呟くようにソルはいずれ来る最後の時を思案した。
自分の最後の目的を果たす、その為に彼は塗りつぶしたのだ自分の■■を、
そして今、一人の青年は改めて心に刻む、世界と引き換えにこの目の前の男を必ず始末すると。
これでサブイベは一応全部書いたかな?
ファミィさんとガルマザリアはかつての相棒同士です。
バルレルが護衛獣出来るんだからガルマザリアも十分できるよな?
一応ガルマザリアは本体はクラレットがずっと持ってる為、誓約の上書きはされなかったという事です、ファミィとはパスをつないでるだけ。
正直真の名を持つ者しか召喚できない設定だと、ガルマザリアのような固有名の召喚獣はどうしてもしっくりこないというか、電話の子機みたいな設定で何とか納得しようかと思って個人設定で書きました。
無色の派閥は…、何というかいつもどおりやな。