こっちのほうが遅くできました。
このイベって原作だと好感度高い、リプレルート限定なんですけど、
うちのハヤトも高いって言ったら高いけどクラレットの方が高いんでクラレット仕様です。
「どこに行ったのかしら……」
「あれ、リプレ。どうかしたのか?」
アキュートとの一件から二日ほど経った日、俺の傷が癒えて動き始めた頃、
広間で何かを探しているリプレの姿が見えた。
リプレは全部知っていたようだった、レイドの事も俺達があの日何をしようとしてたのかも大体わかっていたらしい。
まあ、そしたらボロボロになって俺が帰って来たもんだから説教をすることに、というかレイドも並んで怒られていた、
フラットのお母さんは最強だな…、そんなリプレが難しい顔をして悩んでいた。
「え、あぁ、ハヤト。子供たち見なかった?」
「朝にアルバを見て、ラミと少し遊んで、フィズにからかわれて…」
「結構会ってるのね…」
「まあ、同じ屋根の下に住んでるんだからな、家族だし。そういえばガゼルを見てないな…」
「ガゼルはたまに居なくなるから気にしなくていいのよ、それでね。おやつの時間なのに、三人とも戻ってこないのよ…」
「そうなのか…」
頭に浮かぶのはバノッサの姿…、今のアイツだったら子供を人質にして――。
いや、クラレットの話じゃ、あの状態から二日少し復帰するのは少しきついらしいからないか。
それに今のバノッサだったらそんなの関係なしに俺に勝てるはずだし…。
「リプレ、俺。師範の所に用事があるし、外に出るついでに子供達さがしとくよ」
「そう?じゃあお願いね。…ところで何の用事なの?」
「え、ああ。また剣折っちゃって…」
「良く折るわね…、3回目?」
「2回だったかな、1回は無くした」
「無茶し過ぎよ、じゃあ気を付けてね」
「ああ、行ってくるよ」
リプレの見送りを受け、俺は街へと出て行った。
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その頃、クラレットは部屋で色々考えていた。
あの水晶、恐らく特別な高純度のサモナイト石であるはず、
そして悪魔を限定で召喚していたところと見ると悪魔に連なる代物…。
考えて、考えて……。きゅ~~。
「んっ!?」
お腹が鳴って恥ずかしくなってクラレットは少し顔を赤くしながら周りを見る。
誰もいない、と安心して時間を見ると既に3時を過ぎていた。
おやつの時間というのはわかっていたのでもう残ってないかもしれないけど、
御相席に預かろうと広間に移動するが…。
「誰もいない…?」
広間には誰もいなかった、いやそれだけじゃない。
孤児院全体がまるで静かだった、ガゼルさんはどこかに行き、ハヤトも今日は出掛けると言っていた。
モナティとエルカはユエルの所に今日は行くと言っており、スウォンも森だ、
エドスさんとジンガは仕事、レイドさんもラムダさんの所に行っている。
「子供たちとリプレがいない?」
少し気になりみんなを探す、子供部屋、屋根裏、厨房…、
何処にもいなく不安が募り始め、今度は庭を見るとそこには。
「ねえ、クロ。子供たち見なかった?」
「……」
「そう、もう。どこ行っちゃったのかしら?」
「リプレ」
「え、あ、クラレット。どうしたの」
「見当たらなかったんで心配しちゃって、何かあったんですか?」
「うん、実はね…」
リプレはクラレットに子供たちが居なくなったのを伝えた、
確かにそれは問題ですね、と思い彼女は行動に移すことにした。
「私も、探してきましょうか?ハヤトの場合はついでという事でしたし、それに探す人が多ければきっと早く見つかりますよ」
「だったら私も行くよ、あの子たちの行きそうな場所なら、私の方が詳しいし」
「そうですね…、じゃあクロ。お留守番お願いしますね」
「!」
クロに留守番を任せてリプレとクラレットは街中へと出て行った、
クロは留守番という名目で今日はホントにのんびりできると安心して屋根の上でゴロゴロすることにした。
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「いませんでしたねぇ…、3人ともどこに行ったんでしょうか…」
「川原とか、あの子たちの行きそうな場所は全部回ったつもりだけど」
二人は今、市民公園を歩いている。ここも一応遊ぶ場所なのだが、子供たちはここには来ないはずだ。
だけどもしかしたらという考えもあり、二人はここまで足を運んでいた。
「街の外は無いでしょうか?モナティたちを追ったとか」
「それはないと思うわ、ほら、前にフィズが貴方たちについていって捕まったことがあったでしょう?あの時にきつく言い聞かせたから…」
「…ああ、あの時の事ですか」
意識を失い魔力を暴走させた事件、自分の中にある異物に気づかないクラレットではないが、
それに気づかされた事件だった、あの時は何かの意思が無理に不安定な自分を揺さぶったせいで起きたが、
今はそうそう暴走させることはない、そんな事件だった。
「今思うと、本当に迷惑をかけてました…」
「みんな気にしてないわよ、でも、もしかしてまたバノッサに捕まったんじゃ…」
「それはあり得ませんよ、ハヤトにも話してますけど、バノッサさんはきっと無理な召喚術の負荷で今は動けないと思いますし」
「召喚術…ね」
リプレが心配そうな顔をして俯いている。
話の流れを変えるために子供たちを探すことを優先しないと…。
「リプレ、今度は子供たちの行かなそうな場所を探しましょう、もしかしたらそこにいるかもしれませんよ?」
「そう、ね」
リプレを連れて工場区までやってくる、前に散らばってた武器の残骸は既に片付けられているようだった。
子供たちの姿は見えない、もう残ってるところなんて…、あそこしかないですよね。
「やっぱり、危険なのよね」
「えっ?」
「バノッサの召喚術の事」
あの召喚術…、練度は大したことはないけど、出てくる悪魔が危険すぎる、
低級悪魔を死体に憑依させる屍兵、人の魔力や体力を直接攻撃する幽火、
そしてあの屍人巨人の悪魔、一つのサモナイト石であそこまで出来るのは危険ですね…。
「…そうですね、対処できない訳でもないですけど、やっぱり危険ですね」
「ごめんね」
「リプレ?」
「私だってせっかく召喚術が使えるのに役に立てなくて…、それにこんな大変な時にクラレットに迷惑かけちゃって、私がしっかり子供たちを見ていれば、迷惑かけなかったのに…」
「……」
「ク、クラレット?」
私はリプレに近寄って抱きしめる、抱きしめて改めてわかる、
リプレは普通の少女です、私の様な強力な召喚術が使えるわけでもなく、
ハヤトの様に多彩な戦いができるわけでもない。
家族を守ろうとする普通の少女…、だから私は…。
「私は、リプレが羨ましいです」
「私が、羨ましい?」
「リプレの様に普通に生まれたかった、普通に生まれて幸せに育って、結婚して、子供たちに囲まれて、ゆっくりと老いて死んでゆく…、そんな生き方を私はしたいんです」
「クラレット…」
「だから何ですかね。私はリプレと一緒に家の事をしてる時が一番幸せなんです。本当に楽しいんです」
この世界に戻ってきて一番楽しかったことはリプレと一緒に家の事をやってる時だと自分は思う、
まるで元の世界で家族と幸せに暮らしてくる事を思い出しますから…。
「だから、リプレは役立たずでも迷惑をかけてるわけでもないんです。私達全員を支えてくれてるのはリプレなんですから、リプレが私たちを待っててくれるから私たちは前に、外に出れるんですよ?」
「そう、だよね…、ごめんね。クラレットの…、みんなの気持ちを理解できなくて」
「そんなことないですよ。みんなの事を思って悩んでくれたんですよね。私は…、そんなリプレが大好きですよ」
「うん…、ありがとう。クラレット」
リプレから離れて手を繋いで子供たちを探しに行く、
きっとリプレは何時も誰かと一緒に居るから泣き言が言えないんですよね。
大丈夫ですよ、辛かったらみんなにその事を伝えても…、
だって、そんなリプレがみんな大好きなんですから。
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上流階級区にやって来た私達、でも流石にここには…。
―きゅーっ!!
「今の…、ガウムの声じゃない?」
「ええ、確かにガウムの」
同時に犬の鳴き声も聞こえてくる、もしかしてガウムがどこかの貴族の犬と遊んでる?
など変なことを考えていると。
―あっち行けよっ!行けったら!
―きゃああ~っ!
次に聞こえてきたのはフィズとアルバの声、
私たちはその声のするほう、屋敷の庭に駆け込んでいった。
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「このクソガキども、勝手に人様の屋敷に入ったうえに…、この美しい花園を荒らしやがって!」
「ひっ…」
屋敷に入るとキムランさんが怒りの形相で子供たちを怒っていた、
周りにはメイトルパから召喚された番犬が唸っている、
ラミに至っては怖がり過ぎて腰を抜かしてガウムと人形を抱きしめていた。
「な、なんだよ…、こんなにあるんだから分けてくれたっていいじゃんか!」
「そーよっ!金持ちのくせに、ケチくさいこと言わないでよねっ!!」
「反省もせずに、開き直りやがるかよ、そういう態度のガキはちっとばかし怖い目にあってもらうぜ!」
手をポキポキ鳴らしながらキムランさんが子供たちに近づいてゆく、
…なんとなーく、どういう状況かわかったんですけど…。
「あのリプレ、どうし」
「待ちなさいっ!」
「えっ!?え~…」
リプレがキムランさんと子供たちの間に割り込んでゆく、
子供の事、大優勢なのはいいんですけどちゃんとわかっているんですか!?
「リプレママ…」
「うちの子供たちに手を出したら私が承知しないからっ!!」
「あァん?そうか、お前が保護者って訳か…、言っとくが、悪いのは人んちの花を盗もうとしたこいつらだぜ?」
「えっ!?」
何かしでかしているとは思ってましたけど…、
まさかガゼルさんみたいな事するなんて…。
「本当なんですか?」
「う、うん…」
「どうしてそんなことしたの!?」
「………」
フィズもアルバも理由を話そうとはしてくれない、
私は素直なこの子たちが理由を話さないのはきっと何かあると思った、
とりあえず、今はリプレを落ち着けないと…。
「落ち着いて、リプレ。叱るのは後でいいですよね」
「そうね…」
怒ってるような悲しんでるような顔、
リプレを信じてた子供たちの行動のせいでちょっと余裕がなくなってるようですね。
「あの、子供たちには私達からよく言って聞かせますから、今回は許してもらえないでしょうか?」
「いいや、許すわけにはいかねぇ…、この花園の花は、俺が愛情をたっぷり込めて育てた物なんだ!」
「……え?」
キムランさんが…、この花たちを育てた…?
「え?」
リプレも突然の回答に驚いて何も言葉が出なくなったようだ。
「キムランさんがこの花を育てたんですか?」
「あッ!?」
「…ふふ」
「わ、笑いやがったなッ!」
「そ、そういうのじゃないです、ただ」
「あははははははっ!」
「に、似合わなーい!」
「きゅーっ!」
私が弁解しようとするが、子供たちが笑ってしまい、それもかなわなくなり始める…、
……というか、この子たちは…!
「許さねぇ…、この俺のささやかな趣味を笑いやがって!お前ら、絶対いき「いい加減にしなさい!」…あァ?」
「ぎゃっ!?」
「ふぎゅ!?」
クラレットが怒り、二人に拳骨を入れる、
悪いことをしたら叱る、妹を持つ身としてそこはとてもしっかりしている。
だからこそキムランの花を盗もうとし、挙句その趣味を笑った子供たちに叱り始めたのだ。
「二人とも人の家に勝手に忍び込んで、挙句その趣味を笑うなんて何を考えてるんですか!」
「だ、だって…」
「だってじゃありません!!」
「ひぅっ!」
普段はとても優しい姉が突然怒ったことにフィズは混乱していた、
クラレットの怒りの沸点はかなり高いほうだ、自分の事を弄られてもそれをあまり追及したりしない。
だけど、他人の趣味や行動を蔑ろにする不快な発言や行動は彼女の最も嫌う行為であったのだ。
「アルバ、もしラミちゃんの人形が似合わないって言われて笑われたらどう思います?」
「…嫌だ」
「それと同じことをあなたはしたんですよ。人の庭に勝手に入って挙句その趣味を馬鹿にしたんです。そんなの許せませんよ!」
「はい…」
――ぐるるるっ!
クラレットの元に番犬の召喚獣が迫ってくる、
自分たちの縄張りに許可無き者が入り込んで怒りを露わにしながら近づ、
「なんですか!大事な話をしてるんです!どっか行きなさい!」
――キャゥン!?
魔力を込めたクラレットの怒号に怯え、番犬たちはそそくさとその場から逃げていった。
「それと…」
「きゅーっ!!!」
魔力を込めた手でガウムの首を鷲掴みにして逃がさない様に拘束する。
「ガウム、あなたもこの子たちに着いていたんですよね、どうして止めなかったんですか?」
「…きゅーっ、きゅーっ」
「きゅーきゅー言ってても駄目です、許しませんよ!クロに言い付けますから」
「きゅーっ!?」
ガウムとクロの上下関係は特に決まってないが、ガウムはクロを苦手としている、
ぶっちゃけた話、あんな体格だがクロは捕食者の目をしてるせいであった、普通のテテより眼光が鋭すぎるのである。
クラレットが子供たちに説教を初めてしまい、挙句番犬まで追い払ってしまい、キムランは困惑状態だった。
「おい、赤い嬢ちゃん」
「え、えっと、何?」
「何とかしろよ、俺はあんなのどうすればいいか…」
「そ、そんなこと私にだってわからないわよ。貴方、前にクラレットと戦ったんでしょ、だったら止めてよ」
「馬鹿言え!あんなおっかないのを止められるか、召喚術使っても余裕で消し飛ばしそうだぞ」
「キムランさん」
「おわっ!?…お、おう、なんだ?」
何やら凄く反省している、アルバとフィズを後ろにつれ、ガウムを鷲掴みにしているクラレットがキムランに頭を下げた、
ぶっちゃけた話、かなり奇怪な図だったが、キムランもマーンの召喚師、そこは耐える。
「この子たちがご迷惑をかけて本当にすいませんでした」
「いや、俺も大人げなかったな、うん」
「キムランさん、本当にありがとうございます」
「お、おお。気にしてないからいいぜ」
口は悪いが誰でも結構気さくなキムランだが、先ほどのクラレットの行為のせいでどこか一歩引いていた、
だけど、キムランにはどうしても聞きたいことがあったのだ。
「なあ、一つ聞いてもいいか?」
「私に答えられるものだったら」
「なんでよ、その…、俺の趣味の事で怒ってくれたんだ?」
「…?」
キムランの趣味、他の貴族の連中に内緒で花を育ててることだった。
似合わないのは自分でもわかってるし、笑われるのも仕方がないと理解している。
だが、そのことを厳しく叱ってくれたクラレットの考えが今までの誰とも違うので聞いてみたかったのだ。
「ああ、そういう事ですね。私も花が好きですから」
「…それだけなのか?」
「それだけですよ?」
首を傾げながら何を言ってるんですか?とそんな感じでクラレットは答えた。
彼女にとって花を育てるのに似合う似合わないは関係ないのだ、
花が好きだから育てる、ただそれだけだった。
「そうか……、おい、坊主」
「…なんだよ」
「お前ら、なんの花が欲しいんだ?」
「……ん」
不貞腐れながらアルバは指をさす、カーネーションの様なその花を見てキムランは頭を抱えるが、
少し待ってろと言って屋敷に戻り、すぐに出て来た、その手には袋の様な物を持っている。
「さっきも言ったが、あれは俺が愛情を込めて育てた花だ、やれねぇ」
「うん」
「欲しいんだったら自分たちで育てるんだな…、まあそこの嬢ちゃんがいれば大丈夫だろ」
「で、でも今日じゃないと!」
「アルバ」
「…ありがと」
何か理由があるのかアルバが渋々とその袋を受け取った、
たぶん、種か何かだと思う。
「キムランさん、本当にご迷惑をお掛けしてすいませんでした。こんな物までもらってしまって」
「まあ、アニキの奴が助けられたらしいしよ、そのお礼だと思ってくれや」
「それでは私たちはこれで…、行きましょう、リプレ」
「そうね」
二人が子供たちを連れて屋敷から離れようとするが、
なにかやっぱり気になるのかキムランがもう一度声をかける。
「最後にもう一度聞きたいことがあるんだけどいいか?」
「なんですか?」
「どうして俺に警戒しなかったんだ、お前の素振りは最初以外、警戒してねぇみたいだっただろ」
クラレットは最初は警戒してたが花辺りの話から警戒しなくなっていたことにキムランは気づいていた。
仮にも戦った同士でそれは無警戒過ぎるだろ、と思いキムランは聞いてみたかったのだ。
「…だって」
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クラレットたちが帰ったあと、キムランが花園の整理をしていた。
無造作に子供たちに荒らされたその花園を直してゆく、意外に几帳面な男だ。
「…あ~、くっそ」
別に荒らされた花たちの事で苛立ってるわけではなかった、
キムランは口は悪いが言ったことの義理は通す男だ、その性格のせいか警備部隊長としては信頼されている。
彼が苛立っていた原因は。
――お花が好きな人に悪い人がいるわけないじゃないですか
「反則だろ、あんなのよォ」
溜息を吐きながらクラレットの最後の笑顔を思い出してしまった。
自分の好きな花の様に可憐な笑顔、先ほどの怒る姿もこれでは魅力に見えてしまう。
「…いや待てよ、そういやアイツ」
クラレットと前に戦った時の事を思い出す、幻実防御や召喚術の腕は素晴らしいものだった、
そして自分と同じサプレスの使い手、おまけに可愛い姪っ子と同じメイトルパ。なんだよ、自分にピッタリじゃねぇか!
「ならさっそく…」
「早速、なんですか、兄さん」
「うおっ!?ってカムランかよ、おどかすな!」
煌びやかな衣装を纏っているカムラン・マーン、ちょうど工場の視察から帰って来たところだった。
いつもよりも妙に上機嫌な兄が気になり声をかけてきたのだ。
「随分うれしそうですが、何かあったんですか?」
「おう、運命の人ってやつだ!」
「……言ってる意味が分からないんですが」
「あァん?仕方ねぇな、説明してやるから耳かっぽじってよく聞けよ!」
キムランが意気揚々と先ほどあった話を語る、
これほど女性関係で心躍ったのは今までなかった、これは運命の人だ!とカムランに語るが、
対するカムランは、溜息交じりに聞いていた。
「てなわけよ、俺の趣味を笑わねぇでおまけに召喚術の実力もたけぇ、これは決まりだろ?」
「…あの、もしかしてお忘れになってると思うのですけど、彼女の恋人らしき男性はどうなってるんですか?」
「なん…だと…!?」
有頂天だったキムランは一気に転落する、
思えば今までクラレットの横には必ずガキンチョみたいな顔の男がいた、
剣の腕も高く、しかも召喚術を使える男、そして仲がいい、兄妹っぽくない。決まりだった。
「……、野郎付きじゃねぇかよ…はぁ」
「ご愁傷さまです」
余計な野郎がいたせいで、芽生えた恋心は一瞬で枯れ果ててしまった、
まあ、その男がいたおかげでクラレットと出会えたのをキムランは知らなかったのだが、
結局の話、その男がいなければキムランが葛藤することはなかったのであった。
ちなみに名も無き世界の結構な男がキムランと同じ葛藤を抱えているのは誰も知れない…。
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「で…、どうしてあんなことしたの?」
「………」
私達は孤児院へと子供たちと一緒に帰って来ていた、
家に帰ると、ハヤトとガゼルさんが帰宅しており、ハヤトはみんなが帰って来たことに安心してるようでした、
対してガゼルさんは何処か困った顔をしてるみたいで何かあるようです。
ちなみにガウムはクロに渡しておきました、キューキューいってましたけど知りません。
「黙ってちゃわからないでしょ!?」
「リプレ、落ち着けよ」
「でもハヤト、この子たち人の家に入って泥棒をしようとしてたのよ!」
「そりゃ、最初に聞いたとき驚いたけど、子供たちが普段そういう事しないって一番知ってるのはリプレだろ?信じなきゃ」
「…うん」
ハヤトはうまくリプレをなだめ屈んでアルバ達と目線を同じにする。
「なあ、どうして人の家にはいったりしたんだ?」
「どうしても花が欲しかったんだ」
「花だったら、川原にも咲いてるじゃないか」
「ダメなの…」
「あそこにしか咲いてなかったんだもん、あたし達の欲しかったカネルの花は」
カネルの花…、知らない花ですけど、
もしかしてさっき貰った袋に入ってるのってあの花の種?
「そんな理由で、無茶して…、クラレットや私がどれだけ心配したのかわかってるの!?」
ただ花が欲しい、でもきっと理由があると思うけど…、
子供たちを助ける言葉が見つからずにいると、ガゼルさんが前に出てきてくれた。
「おい、リプレ、もう許してやれよ。チビたちがカネルの花にこだわったのは、俺のせいなんだ」
「ガゼルのせいなのか…?」
「どういうことなんですか、ガゼルさん」
「なあ、リプレ、今日がどういう日だかお前、忘れてるだろ?」
「えっ?」
今日が何の日か…、ここに来てまだ一月ちょっとの私とハヤトにはわからない質問だった、
対するリプレも今日が何の日か思い出せないようだった。
「今日はな、お前がここの玄関に捨てられてた日なんだぜ」
「…!!」
「じゃあリプレが…」
「ここに来た日」
私と同じ、見つけてもらった日が誕生日…、
私はハヤトに出会ったその日が誕生日だった、リプレも同じだったんですね。
「ガゼルに教えてもらったんだよ」
「きょうが、リプレママのおたんじょうびで」
「カネルの花が、ママの誕生日の花だって」
「そう、だったんですね」
子供たちがあんな無茶をしたのはたぶん今日そのことを聞いたからなんですね。
どうしても今日の内にカネルの花をリプレ渡したかった、だからキムランさんの所に行ったんですね。
「まあ、そういうこった、だから叱るなら、まずは俺を叱ってくれ」
「……叱れないよ」
リプレの瞳から涙が零れる、その姿に子供たちが心配するが、
きっとリプレは嬉しくて少しだけ辛いんですよね。
自分の事をこんなに思ってもらえる事が、そんな自分の為に無茶をしてしまった子供たちが。
「叱れるわけ、ないよ…」
「ごめんなさい」
「もう、あんなこと、絶対にしないって約束するから」
「だから、なかないで…、リプレママ」
「みんな…」
リプレが子供たち全員を抱きしめて泣きながら笑顔になる。
「うん…、ありがとうね…、みんな…」
ガゼルさんもハヤトも優しそうにリプレたちを見ている、
やっぱりみんな、リプレの事が大好きなんですよね。
そういえば……。
「……あ」
「どうしたんだ、クラレット?」
「そういえば、私、ここに来る日、誕生日だったんですよね…」
「…そうだな」
「春ちゃんやお母さんがきっと誕生日の準備してくれてたのに…」
「大丈夫だよ」
「え?」
「帰ってやり直せばいいんだ、だから今は頑張ろうな」
「…はい」
そして、その日。私たちはささやかだけどリプレの誕生日会をした。
きっと、リプレにとって心残る日になってくれたと思います。
私もいつか家に帰って、やれなかった誕生日を祝いたい、そう思いました。
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次の日、孤児院の庭で小さい花壇が作られた、
質素だがしっかりとした作りをした花壇、そこに子供たちとリプレが集まってた。
「つぎのおたんじょうびまでにまにあうかな…」
「もう、平気だって、それよりも間に合うどころか何回も咲くかもよ?」
「あたしたち頑張って世話するからね!」
「だからリプレ母さんも楽しみにしててね」
「うん、楽しみにしてるね」
庭に埋められたのはカネルの花の種、
きっと次の誕生日には子供たちの手から大好きな母に渡されるだろう。
カネルの花は育ちにくいがきっと育つだろう、
その花には子供たちの母への愛が込められているのだから。
キムラン失恋の話(笑)まあ、そんな事は置いといて、
今回の話で原作見てて思ったのは主人公鬼畜過ぎだろ。
人の趣味大笑いして、挙句返り討ちにして逃げ出す。これはひどい。
そんなこんなでこんな話になりました。
カネルの花ってカーネイションっぽい花だそうです。
リプレの花に相応しいな。
次回から小説シリーズに入るんで少しばかり間が空くかもしれませんけど、
よろしくお願いします。
それが終わったらついに最終章ですよ、ガンバロー。