サモンナイト ー生贄の花嫁ー   作:ハヤクラ派

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本当は二つのストーリーが入ってる話でしたけど、
完成してる方からどうぞ。

※誤字、ミント・ジュデップじゃなくて、ジュレップだそうですね。


サブイベント6 蒼の派閥

聖王都ゼラム、その街に一つの施設がある。

蒼の派閥本部、召喚師たちが召喚術を通し、世界の真理を研究している組織の総本山。

世俗に関わることは少なく、人々からは一種の畏怖の念で見られたりしていたりする。

閉鎖的な環境の為か、その実態を知るものは表には中々いないのも原因であった。

 

「へー、うーん」

 

その施設の中にある、メイトルパの研究区、多くのメイトルパの植物が生茂る中に一人の髪の短い少女がいた。

世話になった、先輩召喚師の影響なのかメイトルパの動植物に深い関心をもった少女は自分なりに研究をしている。

そんな少女に大きなもの影が迫って来た、赤銅色の鋼の巨体、機界ロレイラルの機械兵士が彼女に近づく。

 

「あら?」

「みんと殿、研究ノホウ、オツカレサマデス」

「レオルド、こんなところに何しに来たの?まあ、来る理由は決まってるわね」

 

ミントと呼ばれた女性はまるで近場の知り合いと話すようにその機械兵士、レオルドと会話をする。

レオルドはミントの知り合いの召喚師が護衛獣として召喚した召喚獣だった。

 

「でも、レオルドも変わったわね。昔はもっとこう…、無愛想だったのに」

「ソウデスカ…?確カニ、自分ガ変ワレタトイウノナラ、ソレハアノ二人ノオカゲデショウ」

「そうね、色々迷惑かけてる二人だし、これからもよろしくね。そうだ、あの子たちならこの奥でまたお昼寝してるわよ」

「マタデスカ…、マッタクあるじ殿ノ弟弟子トハオモエナイデスネ」

「どっちかと言えば、困ったいとこってところね」

 

レオルドがそのままミントの傍を通り抜け、研究区の奥に入ってゆく。

するとギャーギャーと叫び声が聞こえ始め、レオルドは戻って来た。

両肩に少年と少女を担いで戻り始める。

 

「もうちょっと眠らせてよ。今が一番いい時間帯なんだから!」

「なあ、レオルド。今日の授業は終わったんだからもういいだろ?」

「駄目デス、あるじ殿ハ、アナタタチ二人ヲ連レテコイトノゴ命令ナノデ」

「あー、絶対復習とかだな、俺出来てる方だと思うんだけどなぁ…」

「私にいたっては才能ないんだけど…、ただ魔力がデカいだけで…」

 

愚痴を垂れながら二人が連れていかれるが、レオルドは何かを思い出したのか、ミントの方を振り返った。

 

「オオソウデシタ、みんと殿。みもざ殿ガ、探シテオリマシタ、大事ナ用ダソウデス」

「ミモザ先輩が?」

「ハイ、デハ、自分ハコレデ」

「「ミント先輩、助けて~~!」」

「あはは…」

 

ヒラヒラと手を振りながら三人に見送るミント、三人が見えなくなったのを確認し、

道具を片付けて、世話になった先輩の所に足を運んだ。

 

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蒼の派閥の一室、確認を取り、この部屋に自分たちの先輩がいることがわかっていた。

 

「ミント・ジュレップです」

「はいっていいわよ~」

 

軽い口調に少し安心感を感じ、ミントが部屋に入る、

そこには眼鏡をかけた緑の服を着た女性と、金髪の青年の姿が居た。

 

「ギブソン先輩も来ていたんですか」

「ああ、事が事だからね」

「それ程の事態なんですか…?」

「ああ、ミントは知らないのね」

「仕方ないさ、あれほどの事件、派閥内でもあまり知られても困るからね」

 

ギブソンはミントが知らないことが当たり前のように話す、

かなりの事件が関わっていると理解したのかミントの顔つきも変わった。

 

「それで…、私に何か?」

「先日、派閥内で泥棒が出た事、知ってるわよね?」

「はい、それぐらいなら。確か派閥内の召喚器具の一部が盗まれたと…」

「実際それぐらいならいいんだけどねぇ、だけど真相は違うわ」

「え?」

「奪われたのは魅魔の宝玉と言う、古の時代から伝わる蒼の派閥の秘宝だよ」

 

ミントは驚く、ただの泥棒だと思ったが、その真相は蒼の派閥の秘宝を狙ったものだった。

 

「その話を聞くぐらいだから召喚師が少し少なくなったと思わない?」

「そういえば…、確かに管理地区の兵士さんも変わっていたようでしたし」

「殉職したのさ、召喚師も数多くがその情報を得るために出ている、一部の召喚師に至っては襲撃の際に死んでいる」

「…そんな」

「敵はかなりのやり手でね、数人の暗殺者とたった一人の召喚師で宝玉を奪取したのよ」

「ああ、師範たちも戦ったようだが、負傷はさせた物の取り逃がしたそうだ」

「師範…、もしかして三賢人の事ですか!?」

 

三賢人、蒼の派閥の総帥から直々にその才覚が認められ指導を受けた召喚師たちである。

ロレイラルの機械兵器を制御する、ラウル・バスク。

メイトルパの魔獣を使役する、フリップ・グライメン

そしてギブソンとミントの師範である、天使達の英知を借りる、グラムス・バーネット。

それぞれが最上級の召喚術さえを使役できる稀代の大召喚師たちであった。

つまりそれすらも出し抜いたその召喚師は彼ら以上の強さを持っているという事だろう。

 

「ええ、私達も最後の方になってしまったけど、あの男はとんでもなかったわ」

「ああ、一応話しておこう、アレは――」

 

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私たちはその日、丁度派閥に居たの、

その時、派閥内部で爆音と悲鳴が聞こえてきて、同時に召喚術を使う魔力も感じ取ったわ。

魔力を感知した現場に向かったんだけど、多数の死体とそれに気づいた召喚師たちがいたわ、

そしてその死体は動き始めていたの。

その死体を抜けて私とギブソンは派閥内部の保管庫に辿り着いて、そこで戦う師範たちとその首謀者に出会ったの…。

 

「グラムス師範!!」

「ギブソンとミモザか、気を付けろ、なかなかの手練れだぞ」

「フン!逆賊め!盗んだものを置いて縄につくのだな!」

 

師範たちに対峙するのは一人の青年だった、背中に剣を背負い、杖を構えるから見ると召喚師、

彼、ソルの周りに低級の悪魔や鬼を取りつかせたと思う兵士や暗殺者がいる。

 

「はあ…はあ…ッ、流石三賢人と謳われるほどだな、だがな――!」

 

杖が輝き召喚術が発動する、現れたのは霊体に囚われた機械兵士が砲身をこちらに向けている!

 

「ヒュプノブレイク!!」

「グラムス殿!」

「わかった!我らが身を守れ…、銀盾の天使よ!!」

 

放たれる機械兵士の砲弾を大盾を持った守護天使が召喚されその攻撃を防ぐ、

ソルは防がれるのを確認するとすぐさま周りの兵士たちに指示を出し彼らを攻撃を仕掛ける!

 

「ギャッギャァーー!!」

「クッ!鬼や悪魔を取りつかせる禁術か!黄泉の瞬きよ!!」

「行きなさい!ペトラミア!!」

 

ブラックラックとペトラミアが召喚され、屍兵や鬼兵を石化させ、吹き飛ばしているが、

それでも痛みを感じない兵のため対処しきれない状況だった。

 

「外道召喚師に利用されるとは派閥の恥だな。容赦はせんぞ!!」

 

そう高らかに宣言をしたフリップが召喚術を行使する、

今まで召喚したのとは比べ物にならないほどの魔力が彼の体からあふれ出る。

 

「最上級クラスか…!?」

「群れ集え、屍を食らう地中たち―――!【キャリオネイラ】!!」

 

現れたのは拳大の甲虫の魔獣、ゲートから無尽蔵に姿を現し対象に食らいつき液状化させ食らってゆく!

 

「久々に見たけど…、相変わらずキッツ…」

「言ってる場合かミモザ!アシストで力を底上げるぞ!」

「はいはい」

 

軽口を叩きながら二人はフリップに魔力を送り、そのキャリオネイラの力を上げる。

魔力を食らい拳大からバスケットボールほどの大きさに膨れ上がった魔獣はソルに殺到する!

 

「防御…、いや、蹴散らす!!」

 

取り出したのは二つの石、赤と黒の石を同時に掲げ魔力を込める。

 

「同時に召喚だと!?馬鹿なそのようなことが」

「考え方を変えればすぐに導き出せる答えだ、古い考えに縛られるお前達じゃ導き出せないだろうな!【ウィンゲイル】【狐火の巫女】!!!」

 

現れたのは狐の名残を持つ妖怪の巫女、そして大型の送風機を装着した機械兵士。

狐火の巫女は浄火の火を生み出し、それをウィンゲイルはダブリーザーと呼ばれる送風機で膨れ上がらせ近づくキャリオネイラを焼き払ってゆく!

魔獣と言う属性の為なのか、浄火の狐火はキャリオネイラを飲み込み瞬く間に還していった。

 

「むぅ…、なんという!」

「そろそろか…、来たか!」

「なに!?」

「沈んでいく…?」

 

ソルの体が影に沈み始める、影の悪魔を使った憑依召喚、本部に居る父親が彼を呼び込もうと影の悪魔を操りソルを影へと誘う。

 

「行かせるものか!高らかに歌え、聖なる凱歌―――!!【ステラ・クワイプ】!」

 

現れた光を放つ天使の聖歌隊、唱和する聖なる調べがソルを飲み込もうとしていた悪魔を撃退させる!

 

「そんなものまで…、なら決めるだけだ!!」

 

ソルは黒のサモナイト石を掲げ、魔力を高めてゆく!

現れたのはゲートから腕だけを出現させた巨大な機械兵士の手、それがグラムスに向けて突っ込んでくる。

それを防ぐため、ラウルは召喚術を行使する!

 

「コマンド・オン――!!【ヘキサ・フラクラル】!」

 

巨大な機械兵器で三対の機械腕を広げ、六角形の力場を前方めがけて投射する。

プラズマ放電と共に拡大、増殖し蜜蜂の巣穴のような光壁を織りなして、ソルの召喚獣の攻撃を正面から防ぐ!

 

「今だ、ギブソン、ミモザ!!」

「「はい!」」

 

二人がそれぞれ魔力を高め、ソルに向かって召喚術を放つ、

正面に現れた魔天兵べリアル、そして頭上に出現したペンタ君がソルに攻撃を仕掛ける!

 

「べリアル、赤夜の断罪!!」

「行きなさい、ペンタ君ボム!!」

「ッ!」

 

召喚術を維持するソルは赤色に輝く矢を放ったべリアルの攻撃を背中の剣を抜き正面から防ぐ、

そして頭上からふる、ペンタ君の僅かなタイムラグを利用し、先ほど防いだ矢の魔力をそのまま防御に回した!

膨大な爆発音が響き渡り、状況を把握しきれない蒼の派閥の面々は粉塵が晴れるのを待つ。

 

「もしもの時にと渡されていたが…、これを抜くことになるとはな」

「なんなの…アレ」

「あれは…魔剣か!?」

 

純白の魔剣が霊界サプレスの魔力を滾らせる、

目視できるほどの魔力を剣に浮かべ、その魔力は魔剣に吸い込まれていった。

 

「さっきの攻撃がサプレスの物じゃなければお前たちの勝ちだったかもしれないがな…、だがこれで終わりだ!!」

「来るか!ヘキサ・フレクラル!!」

 

ソルは剣を通し膨大な魔力をあふれ出す、それら全てが魔剣に取り込まれ、魔剣に外付けされているサモナイト石に魔力が注ぎ込まれる!

 

「裁きを下す偉大なる死霊の王よ、古の誓約の元、セルボルトの名の元にソルが命じる―――」

「セルボルトだと!まさか奴は無色の派閥か!?」

「まさかっ!」

「来たれ!重き業から目を逸らす罪人に鉄槌を――、【砂棺の王】!!!」

 

剣を振るい空間に亀裂を作るソル、亀裂から大量の死霊と共に圧倒的な威圧感を持つ召喚獣が顕現する。

 

「砂棺の王…、話に聞く、セルボルト家の秘伝召喚獣か!」

「奴の切り札という事だな、ラウル。防御ならお前の専門だ!」

 

フリップがラウルに魔力を送り、ヘキサ・フレクラルの出力を高める。

そしてソルもそれに合わせたのか砂棺の王に指示を与えた。

 

「やれ!砂棺の王よ!!霊王の裁きを下せ!!」

 

振るわれた杖から膨大な魔力と共に死霊達が彼らに襲い掛かる、

物理的な防御ならヘキサ・フレクラルの方が上だったが、死霊たち精神体はすり抜けて彼らに襲い掛かった!

 

「ロティエルを召喚する!ミモザ!」

「ええ!」

 

ギブソンは紫色のサモナイト石に魔力を高め、ミモザのアシストでその力をさらに高めた、

現れたのは金色の羽を持つ天使、スペルバリアと呼ばれる魔導壁を展開して死霊たちの攻撃を防いだ!

ギブソンたちに憑りつけない死霊はソルの元へと戻り、ソルの姿は死霊で覆いつくされ目視できなくなる。

 

「良し、いいぞ、ギブソン。砂棺の王は最上級召喚獣だ。魔剣で補助をしても限度があるはずだ、死霊どもが消えたら一斉攻撃だ!」

「はい、グラムス様!」

 

戦いは完全に蒼の派閥側が優勢だった、砂棺の王という切り札を引かれ押されるソル。

三賢人と呼ばれる、派閥屈指の召喚師と若き派閥の召喚師二人、その5人に対し良く戦ったと称賛できるものだ。

 

「――――名においてソルが命じる」

 

確かに砂棺の王はセルボルト家の切り札だった、

しかしそれはあくまで【セルボルト】だけに区切られる、ソルが持つ切り札はそれだけではない。

そして死霊が天使の聖歌により浄化されていく中、膨大なエネルギーをラウルは感じ取った。

 

「機界ロレイラルの魔力!?まさか何か召喚しているのか!」

「なにっ!?」

 

戸惑うフリップとラウル、その瞬間黒い死霊たちが切り裂かれ一つの閃光が彼らを襲った!

 

「【バベル・キャノン】!!!」

 

---------------------------------

 

「そこでお終い、私は意識を失ってね。気が付いたら派閥のベッドの上って訳」

「ラウル様のヘキサ・フレクラルが破られたという事はそれを超える召喚獣という事だ、私が最後に見たのは影の中に沈んでいく力尽きた侵入者の姿だけだったがな」

「……」

 

絶句、とまではいかないが、言葉は出なかった。

たった一人で派閥屈指の召喚師5人を手玉に取った男、そして派閥の秘宝を盗んだそうだ。

ミントはなぜそのことを二人が自分に話したか、気になっていた。

 

「あの、どうして二人は私なんかにそんな重要なことを…」

「なんかって言うほどじゃないわよ。あなたは派閥でも結構将来性のある召喚師なんだから、そうねぇ、ミントには私達の補佐をしてほしいのよ」

「補佐ですか?」

「ええ、今回の事件で敵が無色の派閥ってことがわかったからね。少しでも戦力の増強を図りたいって上からの指示よ」

「敵の行方の調査は順調に進んでいる、ただ派閥の秘宝が盗まれたとあってはあまり表だって動くわけにはいかないんだ」

「そうですか…」

 

蒼の派閥は閉鎖的で外の繋がりは薄い方だろう、騎士団などにも疎まれているといってもいい、

そんな彼らの持つ危険物を盗まれたと表沙汰になれば派閥の運営が非常に危ういものになるという危険性を孕んでいた。

つまり彼らは自分の持つ戦力の身で無色の派閥から派閥の秘宝を奪い返さなければならなかった。

 

「まあ、ミントの思ってることはわかるわ、でもね」

「仕方ない事ですから、それで私がミモザ先輩の目にかなったという事なんですね」

「ええそうね、あなた以外にも何人か、今回はグラムス様の指揮の元だから結構連れていく予定よ」

「……」

「ミモザの推薦だが、拒否してもかまわない。将来性のある召喚師を無駄に失うわけにはいかないからな」

「ちょっと危険かもしれないけど、その方が結構いろいろ学べる…、ってそんな気楽には行かないわよね」

 

ミントは考える、確かにそれほど危険な任務かも知れない、

話してくれたという事は自分の実力を信用してくれているという事になる。

普段から世話になってくれた先輩にミントはお礼がしたかった、だからその任務を受けることにした。

 

「いえ、私も手伝わせてください、きっと役に立てます」

「そう?それならよかったわ、だけど無茶はしないでね」

「はい!」

「じゃあ、私達は準備がある、二日後には出発だからミントも準備をしといてくれ」

 

ギブソンとミモザが席を立ち、任務の準備をしようと部屋から離れようとする。

 

「あの、一つ聞いてもいいですか?」

「ん?なに」

「何処に行くか聞いてないんですけど」

「ああ、そうだったわね、ごめんね~、えっと…」

 

思い出そうと考えるミモザに溜息を少し付きギブソンがその質問に答えた。

 

「紡績都市サイジェント。聖王国の果てだよ」




出せる設定があれば出す、なぜなら出したいから。
ミント登場、あと三賢人の皆さん、いい称号持ってるなこいつら。
ちなみにあのまま戦ってたらソルは負けてました、
5対1とかムリゲー乙、魔剣ブーストかかってても勝てんわ!
………先生は別よ。

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