あっという間に深夜、遅れてすいませんでした。
―理想を追い求め、その犠牲をいとわない心、犠牲のない理想を求める心、それは決して交わらない―
死の眠りから数日、完全に治った様で安心し、フラットにも再び平和が戻っていた。
病を治した立役者、ハヤトは広間でのんびりしていたのだった。
「なあ、知っているか?」
「何の話だガゼル?」
のんびりしていると、ガゼルが俺に話しかけてくる。
特にからかう雰囲気でもないようだが…。
「ハヤト、街の連中がお前の事を噂してるらしいぜ」
「俺の事…、なんでなんだ?」
「スラムに召喚術を使う人間がやってきて、城の三兄弟を痛い目にあわせてるって、な。ちょっとした英雄扱いだぜ」
「そうなのか…ん~」
困った…、そんな気は全くなかったんだけど、
やっぱり南スラムの死の眠りを治したり、三兄弟を全員相手してたことが不味かったのか…。
いやでもなぁ、そうしないと色々不味いことになってたし…。
「暴動とか、伝染病とかよ、ろくでもないことが続いてたからな、俺たちの武勇伝なんかがもてはやされてるんだろうな」
少し調子付いてるけど、ガゼルの奴。それが厄介ごとを招くって知ってるのか…。
まあ、そうしなくても厄介ごとは向こうから来るんだけどな…。
「でも、あまり有名になるのは問題ですね…」
クラレットが厨房から出てきて、お茶を用意してくれる。
シオンさんのお店でもらった品物だ、う~ん、やっぱり緑茶は落ち着く。
「無色の事もありますし、有名になればなるほど目をつけられてしまいますから、それにハヤトの召喚術の事が知られればやっぱり蒼の派閥も動くかもしれませんし」
「そうか…、俺の召喚術って普通じゃなかったな」
「というより、普通の人は召喚術なんか使えませんよ」
「でもさ、その召喚術のお陰でアニキは今まで勝ってきたんだよな!」
召喚術のお陰…、うん。なかったらイムラン辺りで負けたよな。
クロも召喚できなかっただろうし。
「バノッサとオプテュス、マーン三兄弟に騎士団、そしてアキュートか。考えてみりゃ、この街の殆どの連中とやりあってるな」
「ガゼルさん…、アキュートには関わってないんですけど…」
「そうだったかぁ?でもよ、ありゃお前たちが抜け出したせいもあるだろ」
「それはそうですけど…」
みんなの話を聞きながら緑茶を飲んでのんびりする…。はぁ、うまい!
そんな風に考えていると、玄関の方からモナティが出てきた、足元にはガウムもいる。
「マスター、マスター、お客さんですのーっ!」
「お客さん、俺に?」
誰だろ…、アカネなら普通に入ってくるし、騎士団辺り包囲されるよな…。
「どんな人なんだ?、モナティ」
「はいっ、とってもきれいなお姉さんですの!」
「きれいなお姉さんだぁ?」
「……へえ」
ゾクッっとする、いやいや俺は何もしてないぞ!
表情は変わらないけどこプレッシャー、クラレットから感じるんだけど…。
「も、モナティ、こちらの方にご案内してあげなさい?」
「?、はいですのー」
変な口調になったことを気にしないでモナティが再び玄関に戻ってゆく。
クラレットは俺の傍に近寄って来た、怖いんだけど…。
「よかったですね、貴方のファンですよ…」
「ほ、本当に心当たりないんだからやめてくれ…」
ビクビク震えてるとその人物が入ってくる、
金色の髪のショートヘアの女性だ、大人びた雰囲気を持つ美人さんだ。
「…あなた大丈夫?、すごく顔青いけど」
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少しして落ち着いた俺はその女性と話すことになった。
クラレットはこの女性を知っているらしく、俺が怪我をしたときに治療してくれた人らしい、
そして、アキュートのメンバーの一人の様だ。
「まさか、あの時の子が噂の少年になるなんてね…、改めて紹介するわ、私はセシル、そしてこっちが…」
セシルさんの後ろに一人の男性が立っている、頭を下げながら前に出た。
たしか、暴動の時に俺たちに話した人だったよな…。
「ペルゴと申します。今日は貴方にご相談があってまいりました」
「俺に…?」
俺に相談って何の話なんだ?
そんな風に考えているとガゼルが話に割り込んでくる。
「ケッ!お前達の相談なんか聞く耳もたねえぜ」
「私たちが用があるのは貴方じゃなくて、彼よ。思い上がらないで」
「なっ…!?」
冷たい声を出して、ガゼルを下がらせるセシルさん、
その発言が気になったのか次はクラレットが口を開いた。
「それって…、つまりハヤトの力が必要なんですか?」
「ええ、ご相談というのは他でもありません、貴方のその力を、我々の為に役立ててほしいのです」
俺の力、既存の召喚術とまるで違う召喚、その力をこの人たちは欲してるのか?
「つまり…、どういう事なんですか?」
「言葉通りの意味よ、貴方の召喚術の力が、私たちには必要なの」
「…召喚術の力が必要、違いますよね?」
「どういう事かしら?」
どこか怒っているクラレット、彼女はセシルさんに向かってさらに口を開く。
「あなた方欲しいのは召喚術じゃなくて、【ハヤト】なんじゃないですか?」
「……」
「クラレット、それっていったいどういう事なんだ?」
「ハヤト、朝、ガゼルさんが言いましたけど、貴方はこの街の人たちに知られ過ぎているんです。突然現れた召喚師でもない召喚術を使う平民、おまけに三兄弟を倒し、森の怪物を倒し、そしてスラムの抗争を止めた…、これだけでこの街に与えている影響は凄まじいんです。セシルさん、貴方はハヤトを欲しいんじゃないんですか?」
「……ええ、そうよ。召喚術は建前、ホントは貴方と言う影響力がある人物が欲しいのよ」
観念したのかセシルさんが白状してくれた、確かに俺のやってきたことを考えれば、
それは当然かもしれない、そんな存在を革命を成そうとするアキュートは欲しがるだろう。
「事情があるのです、先日の暴動は、我々にしても不本意な結末としか言えぬものでした。わかっていたとはいえ、街の人々の反応は我々の想像以上に消極的なものだったのです」
「人々の心に刻み込まれた先入観のせいよ」
「先入観?」
「召喚師には勝てない、召喚には逆らえない、そう思い込むことで、自分を納得させ、妥協しているのですよ。フラットの皆さんにもあるんじゃないですか?」
「まあ…、確かにな」
「…ケッ」
エドスとガゼルがその言葉に反応する、
ずっとサイジェントで暮らしてきた身としてはやはり何か思うところがあるのだろう。
「だから、私たちは方法を変えることにした、人々の思い込みを消し去るために…、マーン三兄弟の長兄を暗殺します」
「え?!な…」
イムランを殺すってことなのか!?
だけどそんなことをすれば…。
「そんなことを…!!」
「ハヤト、待ってください…」
クラレットが反論しようとする俺を抑える、何か考えがあるのかもしれない…。
「できるのかよ、そんなことがっ!?」
「その為の方法も計画も用意してあります。ただし、まだ完ぺきではありません、足りない要素があるのです」
「それが…、俺ってことなのか?」
二人は頷く、確かに召喚師には召喚術で対抗しなきゃいけない、
それ以外だと戦いにくかったりするのは実際そうだ。
「三兄弟を負かした貴方が参加するなら、その影響力は絶大です、人々の先入観を完全に破壊できるはずです。我々に力を貸していただけませんか?」
「………」
言葉がうまく見つからない、そこまでの存在に自分がなっているとは思わなかった、
断るべきなのはわかっているんだが…。
「随分と身勝手な話だな」
「レイドさん?」
今まで黙っていたレイドが怒りを込めて言葉を発した、
そういえば前にラムダさんと色々話したらしいって。
「お前たちが何をしようと構わないがな…、他人をそれに巻き込むのは許さんぞ!!」
「私たちはただ…」
「暴動や暗殺で行われる変革が、人々を幸せにできるはずがない、そんなものは、人々に不安と混乱を洗えるだけではないか!?」
「……レイドさん、私は協力してもいいと思います」
「なっ!?」
クラレットが信じられない事をいう、協力する、
つまりイムランを暗殺するってことなのか!?
「クラレット、なんで!?」
俺の方を見ず、セシルさんとペルゴさんの方を見てクラレットは答えた。
「私でもいいですよね?ハヤトほどではありませんけど、私も召喚術は使えますし、召喚術だけなら彼以上と思ってくれてもかまいません」
「え、ええ…」
「確かに、彼女でも問題はありませんが」
「よかった…」
微笑みながら安心するそぶりを見せるクラレット、
なんか…、いつもと違う気がする…、なんだ?
「クラレット、君はわかっているのか!?彼らに手を貸すことがどれだけ危険なことかを!それを成し遂げればどれだけの人が不幸になる可能性があるかわかっているのか!?」
「ならば…、お前は何をしてきた?」
玄関の入り口を向くと、そこには赤い鎧を着た剣士が立っていた、
サイジェント騎士団、元団長、ラムダだ。
髪で隠している隻眼がうっすらと見えるが、その眼光はすさまじかった。
「…!!」
「人々の犠牲を否定するお前は、その為に何をしてきたのだ?」
「ラムダ様…」
「セシルよ、俺はお前にこんなくだらん交渉を頼んだ覚えはないぞ」
「ラムダ様、これは私の独断によるものです、セシル殿をとがめるのは間違いです」
ペルゴさんがラムダさんを説得しようとする、
ペルゴさんが俺を誘い来るように考えたのか、クラレットはなんか少し焦ってる感じがするな。
「…、まあいい、部下が騒がせたことは詫びておこう、今の話は無かったことにしてもらいたい」
「ま、待ってください!私は貴方達の協力がしたいんです!」
「お前は…、何を企んでいる?」
「………」
クラレットの口が閉じる、やっぱり何か考えがあってアキュートに入ろうとしてるのか?
「無色の派閥…、聞いたことありますか?」
「無色…、名は知っている」
「私はその派閥に狙われているんです。でもフラットで匿ってもらいましたけど、ここは有名になり過ぎました、それでさらに実力のある貴方達の方に移ろうと思ったんです」
「無色に狙われているお前を抱え込めといいことか?割に合わんな」
「代わりに私の召喚術を教えます、それにイムランさんとなら一対一でも勝ったことはあります」
クラレットが必死に説得する様子を俺は見ていた、
どこか他人事のように見ていた、やっぱりなんか…。
「…、わかった。戦力にはなるだろう、ただし怪しい動きを見せれば切り捨てることを頭に入れておくのだな」
「……はい」
「おい、待てよクラレット!ホントにそいつらに着いていくつもりなのか!?」
その言葉を聞いて、ガゼルが声を張り上げる。
「皆さんには…、良くしてもらいました。本当にフラットは幸せな所でした…、だからこれ以上巻き込みたくないんです…」
「姐さん!アニキはどうするんだよ。アニキは精一杯、姐さんの為に頑張って来たんだぞ!!」
「ジンガ…!クラレットの決めた事なんだ、だから…」
「アニキ…、だけどよ」
クラレットは俺に近づき手を握る、ギュッと強く握って何かを込めているようだ。
薄っすらと手に魔力が込められている、これはきっと…。
「本当に…、いいんだな?」
「はい、いいんです、信じてますから」
そういって手を放してアキュートの人たちに付いてゆく。
そしてラムダさんがこっちを見て再び口を開いた。
「今の姿こそ異常なのだ」
「…!」
「奴らが現れる前から、ここは街だったわ、豊かではなかったけど平和な町だった、それは貴方達も知ってるでしょう?」
「むぅ…」
「まあ…な」
「昔の姿に戻るだけさ、もっとも、混乱は起きるだろうがな」
「結局のところは人々に苦しみを与えるだけじゃないか…」
その言葉を聞いて、レイドさんが呟く、だけどそれをラムダさんが否定した。
「自らの手で騎士を捨てたお前にはわかるまい、今もなお、逃げ続けているお前にはな…」
そういうとアキュートの人たちが孤児院から出てゆく、
その中にいる、クラレットを俺は見えなくなるまでずっと見ていた…。
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居なくなったクラレット、それに一番動揺したのはリプレだった。
普段から一緒に居た分、やはりいきなり居なくなるのは堪えるのだろう。
「どうしてクラレットが…」
「俺達じゃ…、頼りねぇのかよ!!」
「んー…やっぱりそうなのかな…」
「なんでそんなに気楽なんだよ、お前は!クラレットが出て行っちまったんだぞ!!」
特に動揺もせず考えている俺にガゼルが怒鳴る、だけど事情を知ってる俺は軽く伝えた。
「いやだって…、たぶん。わざとアキュートに潜入したんだと思うんだけど」
「わざと…?どういうことだよ」
「クラレットとみんなと一緒にこれからを乗り越えようと約束したばっかりなんだよ。だからこの行動はおかしいんだ、たぶん…、わざと。感だけど」
「感かよ!」
「だがな、ガゼル。この二人の事を考えれば確かにそれは言えるだろ?」
「そりゃ、そうだけどよ…」
俺はクラレットの考えていたと思うことをみんなに伝えた。
たぶんクラレットが突然アキュートに乗り込もうとしたのかを。
「クラレットも常々言ってたけど、街を急速に発展し過ぎて召喚師に頼り過ぎているって言ってたんだ。そんな中で領主や召喚師を消してもすぐに次の召喚師が現れる」
「…金の派閥だったか、ハヤト」
「ええ、レイドさん。そうです。金の派閥ってところに所属してるから、居なくなってもきっと別の人が来る。だから何も変わらない、むしろもっとひどい弾圧が始まるかもしれない」
「そうか…」
「暗殺と言っても内容がわからないからたぶんクラレットは自分でわざとアキュートに入り込んでそれを阻止しようとしてるんだ」
それを聞くとリプレがホッとした様子で安心していた。
「じゃあクラレットはここから出て行ったわけじゃないのね」
「とは言っても…、ある程度内容を予測しないとクラレットを救出することもままならないんだけどな…」
問題は暗殺を阻止した後のクラレットだ、どうやって救出するかが問題だ…。
「ラムダはお前さんの力をアテにしてなかったようだな。もっとも、それは彼らだけで計画を実行する自信があるという事なんだろうが…」
「つまり、彼らだけでも何とかできる状況の場所ってことなんだよなぁ…」
「だが、あの自信、相当大胆かもしれんぞ?」
「レイドさんはどう思いますか?」
話をレイドさんに振るがレイドさんは悩んでいるようで暗い顔をしている。
一応、話は聞いているようだけど…。
そういえばラムダさんはどうして、レイドさんが騎士を捨てたことを責めるんだろう。
多くの騎士が去ってその中の一人にすぎないはずのレイドさん、
きっと二人の間に何かあったんだろう、結局そこで解散することになり、各々が次の行動を考えることになった。
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街に出た俺はいろんな場所を見て回ることにした、
大体、イムランが関わりそうなところを考えている、
桜…、アルサックはどうだろう、あの時の兵士も少なかったし。
特に考えも纏まらず俺は結局アルサックのが咲いてあった場所に来た。
「来たのはいいけど…」
殆ど散ってしまっていた、まあ当然と言えば当然だろう。
あの時が旬なんだ、一月近く経っている今、咲いてる方がおかしいってもんだな。
こりゃ外れだなぁって思いながら周りを見ると見知った人物が居た。
「あれ?アカネじゃないか」
「ん?ハヤトじゃない、こんな所で何やってるのよ?」
「それはこっちのセリフなんだけど…、アカネこそこんなところで何やってるんだ?」
「ん?まあ、ここに来るとね少し思い出すんだぁ、シルターンの事」
「ああ…、そっか」
シルターンはちょっと日本見たいな所があるって言ってたな、
たぶん桜もあるんだな、それでアルサックを見て思い出したんだろう。
「これってさ、元々シルターンの桜なんだよね、それをこっちに呼び出して勝手に名前を変えてさ、でも結局見た目は変わらないから見てると思い出すんだ…」
「アカネってさ…、やっぱり元の世界に帰りたいのか?」
「そりゃ、帰りたいわよ。確かにクラレットに会って今は結構楽しいけど、それでも二人だっていつか元の世界に帰るんでしょ?だったらアタシも帰りたいって思うわよ」
「そっか…、そうだよな。みんなやっぱり帰りたいよな…」
元の世界、きっとはぐれ召喚獣のみんなが帰りたがっているんだろうな…、
でも、俺は少しこの世界を好いていっている、ここが俺の居場所だって…。
「ところでホントにこんなところで何やってたの?」
「ああ、実はな…」
アカネにアキュートのイムラン暗殺の事を話した、口話軽いけどそんなに重い話はぺらぺらしないと思うし。
アカネは聞いているが、ふ~ん、といった感じでまさに他人事だ。
流石にクラレットが乗り込んだことを話したら焦ったみたいだけど。
「アカネだったら、どうやってイムランを暗殺しようと思う?」
「うーん…、暗殺の基本はやっぱ、相手が一人でいる時を狙うってことかな、誰がやったのか解らなくなるし。偽物の証拠でも置けばお家騒動みたいに他の連中に擦り付けられるしね」
「結構えぐい事考えるんだな…」
「普通よ普通、でも、お城の中じゃそれもなかなか難しいかもねぇ、やっぱり家の方かなぁ…」
その後は俺は調べてみると言ってその場を後にする、アカネも暇ができ次第、孤児院に来てくてるそうだ。
俺は少しだけ残っているアルサックの花を見ながらその場を後にした。
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イムランの家、確か上級階級区ってところだったはずだよなぁ…。
そう思いながら道を歩いているとまた見知った顔の人にであう。
「お前か、ハヤト」
「ローカスさん!」
一人歩いているローカスさん、確かトキツバタを採りに行く時に会ったきりだったよな。
「聞いたぞ、死の眠りを片っ端から治療したそうだな、薬なしにそこまでやるとは思わなかったぞ」
「あれは…、運が良かっただけですよ、俺一人じゃきっと何もできませんでしたし、それにローカスさんも、俺達とは別に薬を探していてくれていたんですよね」
「薬を探したのは自分達が眠り病にかかった時の為だ。…まあ余った分なら、あの子供らにくれてやってもよかったがな」
「ローカスさん…」
「子供だったらの話だぞ、見殺しにしたら、後味が悪いからな…」
色々愚直過ぎるけど、やっぱりローカスさんはいい人なんだな…。
「そういえば、さっきだがアキュートの連中にクラレットが付いてたが、あれはどういうことだ?」
「ああ、実は…」
ローカスさんに、クラレットのやろうとしてることを話す、
アキュートが行うことは確かに火種としては最高のものかもしれない、
でも今まで以上の犠牲を生むかもしれないその行いを俺たちは容認できなかった。
クラレットはその為に囮になってアキュートの行動を阻止しようとしてることを。
「あの三兄弟が街を変えた原因だというなら、奴らを消してしまえば町は元に戻る、お前の話を聞くまでそう思っていたが…、その可能性があるなんてな…」
「はい、たとえ暗殺に成功しても…」
「変わってしまった街は、元には戻らない…」
「ローカスさん…」
「もう、どうしようもないのか?」
悲愴な顔を浮かべる、ローカスさん。
この人もやり方はいいとは言えないけどこの街を救おうとしていた人だ。
そんな人が納得する答えを出せるかはわからないが俺なりの答えを伝えることにした。
「俺の世界って、リィンバウムよりもずっと発展してるんです。平和で少なくとも俺の周りじゃ争いなんてありませんでした」
「つまりこの世界はダメってことか」
「いえ、そんなんじゃないです。この世界はまだまだ変わる、俺の世界だってこういうのを乗り越えて今があるんです。確か…、二、三百年ぐらい前でしたけど」
「そんなにか…」
「だから元には戻らない、でももっといい方向に変えていけるはずなんです。悪い部分を切り離して直してそれで…、あー、駄目だ。うまく説明できない」
言葉がこれ以上だせない、こういうのはクラレット専門だからきついなぁ…。
だが俺の思いが伝わったのかローカスさんはいい顔をし始めた。
「そうか…、まあ方法が見つからないのはアレだけどな、前例があるって知れただけでも良かったぜ」
「今度クラレットに聞いてみますよ。何か案はないかって」
「あんまり頼りすぎると、見捨てられるぞ」
「…善処します」
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ローカスさんと話した後、俺はイムランの屋敷があると思われる区間に来ていた。
ローカスさんは自分なりにイムランの行動を調べてくれると言ってくれていた。
ただし、あくまで調べるだけだそうだ…、うん。優しい人だ。
そして俺がイムランの屋敷を探していると見知った顔を見つけた。
「あ、マスターですのっ!」
「モナティ?なんでこんな所にいるんだ?」
「レビットだけじゃないわよ」
「よお、珍しいところであったな」
そこに居たのはモナティにエルカ、そしてガゼル。
この組み合わせは中々新鮮だ、しかもなんでこんなところに居るのだろうか…。
「ところで三人はなんでこんなところにいるんだ?」
「ラムダが何をやらかすつもりかはわからねぇが、狙いがイムランってことはわかってるからな。ここで三兄弟の動きを見張ってりゃ、何かがわかるんじゃないかと思ってよ…」
「モナティ達はご案内ですの」
「こいつが屋敷の場所を教えろってうるさいのよ、おまけにレビットまでついてくるし」
「そんなこと言わないでくださいですの…」
「フン…」
「ガゼルはサイジェントに住んでるのに屋敷の場所を知らなかったのか?」
「お前なぁ、誰が好き好んでこんな厄介な所に来るんだよ」
少し困り顔でガゼルは答えた、
まあ、確かにスラムの住人がこんな貴族だらけのとこにいたら面倒なことになるよな。
「それで何かわかったのか?」
「はいわかったですのっ!次男のキムランさんはお花が大好きですの♪」
「えっ?キムランが…?」
あの顔で…、お花好き…、に、似合わない。
「でしょ~!笑顔で花の世話をしてる姿を見た時にはもう、あはははははっ!」
「気味の悪さより、笑いが出ちまったぜ、あれを見たときはな」
「もう、二人ともそんなこと言っちゃダメなんですの!」
「いや…だってモナティ、あのキムランが…!」
やばい、想像してきた。あのゴツイ顔で土いじりとか想像がつかない、
つかないけどイメージすると面白すぎるだろ!
「ま、まあそっちはそっちで任せたぞ、ガゼル」
「ああ、でもな、わかったとしても、問題はレイドだぜ…、クラレットもこの街を考えて動いてるが、レイドの奴が動かないことにはな…」
「そうだな…」
決断するのはレイドさんだよな。
クラレットがすでに動いてるのはまあ、仕方がないとして。
レイドさんがどういう答えを出すのかがやっぱり気になるな…。
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孤児院の道を歩いていると、ウィゼル師範が見えた。
恐らく孤児院からの帰りなのだろう、挨拶もあるので声をかける。
「師範、帰りですか?」
「ああ……、何を悩んでいるのだ?」
「やっぱりわかりますよね…、実は…」
俺はウィゼル師範にレイドさんの事を伝える、
筋違いかも知れないが年長者である師範なら何かヒントをくれるかと思ったんだ。
だけど師範は…。
「知らん」
「え!?いや、何かあるんじゃ」
「今生、今まで誰にも仕えたことはない、ワシはレイドではないからな、それで答えが出せるはずもあるまい」
「・・・・・・・」
そりゃそうだよな、師範はレイドさんじゃないんだ。
人に答えを求めてもダメだよな…、クラレットがいてくれたら…。
「まあ、あえて言うなら同じだな」
「同じ?」
「クラレットがお主に自分の事を隠すのはなぜだ?レイドも同じだ、周りの事を考えて自分のことを言わないだけだ」
「周りの事を…」
「何時も通りでいいんだ、お前はな。そうやって自分の信じた考えを進めばいいだけだ」
そういうとウィゼル師範が街へと消えてゆく、
そうだよな…、俺はいつも通りでいいんだよな、ならやることは決まってるな。
そう思いなおし、俺はレイドさんに会う為に孤児院に向かう。
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「レイド…?そういえば、見てないわね」
「そっか…」
孤児院に戻り、リプレにレイドの事を聞くが彼女は知らないそうだ、
だけど外には言っていないみたいで、どこかにいるのは間違いない。
探そうと振り向くと、クロではなく人形を抱いているラミがいる。
「…レイドならうえにいったよ?」
「本当か、ラミ」
「…(こくん」
「そっか、ありがとな」
「…げんきなかったみたいだから、げんきにしてあげて」
「ああ、励ましてくるよ」
ラミを撫でると、目を瞑りながらラミは安心してくれた。
その後、天井裏に向かうと目を瞑りながら悩んでいるレイドさんを見つけた。
「レイドさん」
「ハヤトか、何か用か?」
暗い表情だが、俺が何を聞こうとしてるのかはわかってくれているようだ。
覚悟を決めて、レイドさんにそのことを問いただした。
「前にラムダさんが騎士団を追放されて居なくなった騎士達の一人って言ってましたよね」
「ああ…」
「なら、どうしてラムダさんにそのことを伝えないんですか?」
「……」
「ラムダさんはレイドさんが騎士を辞めてしまったことを強く責めてた、そしてレイドさんはそのことを指摘されるたびに、胸を痛めている…、お願いです。教えてください、レイドさん!」
俺が知りたかったのはレイドさんがホントにラムダさんが居なくなって辞めてしまったのかだ。
ラムダさんのあの感じ、もしかしてみんなには言ってない何かがあるんじゃないかと思った。
本当ならそういう事は聞くもんじゃないけど、今ここで流したらきっと後悔する、そう思ったから聞くことにした。
「責められても、仕方がないからだよ…、ラムダ先輩が騎士団を追放される切っ掛けを作ってしまったのは、私なのだからね」
ラムダさんが追放される切っ掛けを作ったのがレイドさん!?
戸惑う俺を見ながらレイドさんは続きを語ってくれた。
「あの時はまだ、人々は領主様のやり方に強い反発を持っていた、いくつもの暴動が続き、そのたびに私たち騎士は鎮圧に出向いた」
…もしかして、イリアスさんが人々を守るのが騎士って言ってたのはこういうことがあったせいなのかも知れないな。
「そんなある日、暴徒によって繁華街の北部に火が放たれたんだ、暴徒から領主を守るのが先か、無関係な市民を家事から守るのが先か…、私は悩んだ。そして、私は市民を守ることを選んだ。守るべき持ち場を放棄してしまったんだ」
立場を犠牲にして市民を守る、騎士としてはきっと正しいのだろう、だけど組織としては…。
「召喚師たちの力で暴動は食い止められたが、私は責任を問われた、その時、ラムダ先輩が私を庇ったんだ
―レイドが街に向かったのは、私がそうしろと命じたからです
「先輩は暴徒との戦いで片目を失っていたのに、その原因を作った私を庇ったんだよ…、それを理由に、全ての責任を背負って騎士団から追放されたんだ」
「………」
「追放の日、ラムダ先輩は私たちに言ったよ、領主様の目を覚ましてくれ、と…。でも、私はその期待には応えられなかった。日増しに召喚師の力が強くなる中、罪悪感で私は狂いそうだった、そして…、逃げてしまったんだ!ラムダ先輩との約束を破って、騎士の誇りを捨てて逃げたんだ!!だから…、ラムダ先輩が私を責めるのは当然のことなんだよ…、私は、卑怯者なんだ」
「レイドさん…」
叫ぶように自分の中で溜めこんだことを語ってくれたレイドさん。
自分で抱え自分で解決しようとし続けて、そして苦しさから逃げ出してしまった。
だけど、悪い事なんかじゃない、レイドさんは必死になって正そうとした。
でも、足りなかった。ただそれだけなんだ、それに…
「まだ、終わってないですよ」
「それは、どういう…」
「まだ、ラムダさんの願いを何とかしようとしてる人がいます」
それはイリアスさんの事だ、あの人は言っていた、騎士は人を守るものだと。
確かに今は現状維持の状態かも知れない、でもあの人の中にはラムダさんの言葉が残ってる。
だから、イリアスさんは騎士団に残ってあの人なりに人を助けようとしている。
「それに領主の目を覚ますのは別に中だけではないはずです。ラムダさんもやり方は理解されないかもしれませんけど、あの人はあの人なりに領主の目を覚まさせようとしてます。レイドさんはこのまま逃げるんですか!色んな人が自分なりのやり方で今を変えようとしてるのに、それに甘えていいんですか!!」
「ハヤト…、私は」
「確かにラムダさんの言葉は大事かもしれません、でもその言葉に縛られてちゃ、きっと…、きっと何も変わらないんです」
縛られてちゃ何も変わらない、きっとそれは俺にも言えることだ。
だから俺は伝える、自分の何かを変えることは自分一人じゃなくてもいいという事を…。
---------------------------------
その日、クラレットは帰ってこなかった。
まだイムランが暗殺されたという話は聞いていない、
だからたぶんまだ無事なのだろう。
そしてレイドさんもいまだ悩んでいた、きっとすぐには答えは出ない、
その答えも本当に正しいのかわからない、それでもあの人は考えてくれていた。
そして次の日の朝、俺が朝の訓練をしている横で、レイドさんが姿を現してくれた。
「レイドさん…」
「ハヤト、私はやっとわかったよ。私はあの時、確かに逃げてしまった、あの人の願いを裏切ってしまい責められることは仕方がない、しかし、ここから先はもう逃げない、自分が正しいと思ったことを、やり遂げたいと思ったんだ!逃げたくはないんだ!!」
「…レイド」
自然と呼び方が変わった、何となく俺達の間にあった溝がなくなった感じがしたから。
「ラムダ先輩は、あの時と同じことしようしてるんだ、全ての汚名を自分たちで背負う事で、人々を救おうとしている、私はそれは間違っていると思う、何かを犠牲にすることで得られる幸福なんて何の価値もない!それを私は、あの人に伝えなくてはならないと思うんだ…」
「……」
「力を、貸してほしい!過ちの繰り返させないための力を、みんなに貸してほしいんだ!!」
「ああ、当然だ、アキュートを止めよう、過ちを繰り返させないために!!」
俺とレイドは握手して誓いを立てた、必ず誰かが犠牲になる平和を生ませないために。
---------------------------------
広間にはフラットのメンバーが勢ぞろいしていた、
ここに居ないのはリプレと子供たちぐらいだろう。
「さて、問題はあいつらがどういう計画を立てているかだな」
「クラレットの力がなくても平気って感じだったって聞いてるし、召喚術は関係ないみたいだよね」
エドスの言葉で始まりアカネがそれに答える、
だけど、計画を変える可能性があるからなぁ。
「今日の朝、ローカスの奴が来てよ、イムランは今、鉱山の視察で街を留守にしてるらしいぜ」
「帰るのはお昼頃って言ってましたですの」
「鉱山へはどうやって行くんだ?」
「召喚鉄道を使うんだ、つまり鉄道沿いに何かを仕掛けてる可能性が一番高いだろう」
「間違いなく、アイツらはそれを狙ってくると思うなぁ、街の外だったら、余計な邪魔も入らないし」
アカネの言葉に全員が頷いた。
「でも、どうやって鉄道を使ってるイムランを暗殺するんだ?」
「そりゃ、忍び込んで鉄道の視察で疲れてるイムランの首をね、簡単でしょ」
「アンタ…、えげつないわね」
「普通よ普通!」
「しかし、ラムダ先輩はその方法を取らないだろう、あくまでアキュートがやったという事を残して置かないといけないはずだ」
確かに、誰にも知られない暗殺は出来るかもしれないけど、
今回はアキュートがやったという事を残して置かないといけないからな…。
「じゃあレイド、線路のどこかに罠を仕掛けてるってことだよな」
「ああ、クラレットの事だ、何か我々に分かる合図をしてくれているはずだ、それに…」
レイドさんの視線がスウォンの横に座ってるユエルに移る、
自分に視線が集まったことに気付いてユエルが自信満々になる。
「うん!ユエルに任せて!クラレットの匂いならすぐにわかるよ!」
「じゃあ、時間もない、線路沿いに探そう!」
俺達は孤児院を出て線路に向かった、
クラレットがきっと待っててくれるはずだ、急がないといけない。
---------------------------------
私、クラレットは今、アキュートと行動を共にしています。
なぜアキュートと行動を共にしたのかは、イムランさんの暗殺を阻止するためです。
もちろん、アキュートの思想を理解するという目的もありましたけど。
やっぱり入って1,2日程度の私には自由は許されてませんでした。
でも、私もいろいろと仕掛けを仕込んで、今この場に立っています。
「しかし、やっぱりすげぇな、召喚術ってのはよ」
「でも、そんな力のせいで格差が出来るのはちょっとね…」
「何の言葉もありません…」
鉄道付近の峠で上の方で私は召喚術を使い、鉄道を引く召喚獣を昏睡させ、
そして出てくる兵士たちを召喚術によって無力化させていた。
わざと大きな音を出すことでハヤト達に気づいてもらう様にしている。
「よし、行くぞ」
ラムダさんの一言でアキュートのメンバーは動き始める、
幹部の人たちはもちろんだが、協力者の市民たちも訓練を受けた様子で動き出す。
たぶん、オプテュスの人たちよりも強い…。
そして列車を包囲し、中から一人の男が姿を現した。
「ななな、何事だっ!?」
焦ったようするで取り囲むアキュートのメンバーを確認したイムランさん、
その周りには無事だった兵士たちもついていた。
「久しぶりだな、イムラン・マーン」
「お前は、ラムダ…」
「貴様の命を、貰うぞ!」
「お、お前たち、私を守るのだ!!」
「は、はっ!!」
兵士たちがラムダさんと戦うが、まさに鎧袖一触、
剣を振るラムダさんの一撃にほとんどの兵士たちが地面に倒れていった。
「……シンドウの名の元」
ハヤト達はギリギリ間に合わないかもしれない…、
なら少しでも、時間を……っ!?
背中に何か突起物を付けられていることに気づく、
後ろを確認するとスタウトさんが私にナイフを突きつけていた。
「おっと、怪しい真似はするんじゃないぞ?流石に女を刺し殺すのは気が引けるんでな」
「…そういう油断で危なくなったこととかないんですか?」
「…ったく、中々度胸のある嬢ちゃんじゃねぇか、こういう状況じゃもうちょっと淑やかにいたほうがいいぜ」
「そういう人は私の周りには居なかったので…、あと召喚術を貴方は良く知っておいた方がいいですよ」
「……ッ!?」
突然、スタウトの足元が崩れかけ、スタウトはクラレットに手を出さず、その場を跳んだ。
するとスタウトの足元から穴を掘って出てきたプ二ムが顔を出す。
「なに!?」
「シンドウの名の元に、クラレットが汝の力を望む…」
離れながら詠唱を始めるクラレット、それを阻止しようとアキュートのメンバーも動くが、
何処に隠れてたのか、クラレットの召喚獣たちが姿を現し、
アキュートのメンバーを混乱させてゆく、クラレットはイムランの横まで来ることが出来た。
「お前は!?」
「速く、ここから逃げてください!行って、タマス!!」
現れた巨大な召喚獣、人の数倍の大きさを誇る獣は口から黒い息を吐き出す、
その息は勢いはさることながらアキュートのメンバーの視界を奪った。
「なぜ私を助ける、貴様も奴らの仲間ではないのか!?」
「勘違いしないでください!ここであなたが死んだらもっとろくでもない事になるんです。今まで以上の圧政と支配で街は恐ろしいことになるかもしれないんです。そんなの黙ってみてるなんて私にはできません!」
「ッ!」
「くっ、やはりタマスじゃ…」
クラレットがタマスに目を向けるとバラバラになり送還されていくのが見えた。
黒い息からアキュートの幹部、ラムダにセシル、ぺルゴとスタウトが姿を現す。
「スタウト、あの子を見てるんじゃなかったの?」
「そういうつもりだったんだがな、以外に度胸あってよ。足元をすくわれたってところだ」
「やはり、最初からそう言うつもりだったか、無色の話も偽りだったか?」
「あれは嘘なんかじゃないです。狙われている事もフラットが幸せだったという事も…」
「ならどうして敵対するのかしら、彼らに迷惑はかけたくないんでしょ?」
「迷惑をかけるのと一緒に背負うのは違います。私達はみんなで戦うって決めたんです!」
クラレットは無詠唱でタケシーを召喚し、ラムダに向かって放つ!
「ゲレサンダー!!」
放たれた、電撃はラムダに一直線に飛ぶが、スタウトの放ったナイフとぶつかり、
その場で放電しながら無力化される。
「悪いが大将はすぐには取らせないぜ」
「ならっ、アクアトルネ――」
「させないわよ!」
足元を蹴りながら跳んでくるセシルさんに驚いた私は瞬時に杖を胸の位置まで下す。
それが功を成した、セシルさんの蹴りが私の杖とぶつかり、その衝撃で後ろの列車に激突した。
「かはっ!?」
「おっかねぇ一撃叩き込むじゃねぇか、セシル」
「相手は召喚師なのよ、これでも手加減した方よ」
「さて、イムラン・マーン、改めて貴様の命をもらう!」
「ひっ、ひいいっ!!」
ラムダさんがイムランさんに近づき剣を突きつける、
召喚術を使おうとするが、ダメージが大きくうまく魔力が練れない…、
そして、イムランさんに剣が届くその瞬間。
「ペトラミア!!」
ラムダさんに向かって光が迫ってくる、それを瞬時に回避して下がるが。
「む!」
「ラムダ様、手が!?」
ラムダさんの手が石化し始めて、セシルさんがストラを使い石化の浸食を防ぐ、
あれを解除するには時間経過を待つか召喚術で治療するしかない…。
そしてペトラミアを使える召喚師を私は知っていた。
「クラレット!!」
私が振り向くと、そこには私の待ち望んでいた人が現れた。
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俺達が現場にたどり着くと、そこには攻撃を食らったのか、
蹲っているクラレットの姿が見えた、それにイムランがラムダさんにやられるところだった。
すぐさま先日拝借したぺトラミアを使って、ラムダさんを石化させようとするが、
気づかれたのかすぐさま回避されて左腕の一部しか石化できなかった。
「お前さんたちどうやってこの場所に気付いたんだ?」
「あの子の召喚獣の黒い息が出てからそう時間は経ってないはずです」
「うちには鼻が効く奴がいるんでな」
「えへへ」
ハヤトたちはユエルの嗅覚を使い途中まで行方を追うことができた、
最終的にはタマスの黒い息で場所を特定したのだった。
そんな中、レイドさんがラムダさんに近づく。
「やめるんだ、ラムダ」
「レイド…、あくまで邪魔をするというのか?」
「そいつを殺したところで、街が元に戻るわけじゃない、貴方にはわかっているはずだ!」
「………」
無言になるラムダさん、その状況をレイドさんに任せて俺はクラレットに近寄った。
「大丈夫か、クラレット」
「は、はい…、ッ!」
「来てくれ、リプシ―!」
リプシ―を召喚して、クラレットの傷を癒し始める。
外傷はそんなにないけど胸を抑えてるからたぶん中にダメージが入ってるんだな。
やがてリプシ―はこれ以上回復出来ないと理解したのか送還されていった。
「どうだ?」
「まだ、痛みは残ってますけど、大丈夫です」
クラレットを庇いながら剣に手をかけてアキュートのメンバーを見る、
他のメンバーはそうでもないようだが幹部らしきあの三人は別だ、
特にラムダさんは別格だった、片手が石化してるのに隙がほとんどない。
アキュートのメンバーを見ているとイムランが声を張り上げた。
「なんなんだ…、お前ら、一体、なんのつもりだあぁ!?」
「…自分のやってることが全部正しいと思うなよ」
「なに!?」
「こんなことになったのは全部お前たちのせいだろ!自分たちの好きなように街を作り変えて、それで辛い思いをしてる奴がいるんだからな、自分たちがやってることを全部正しいと思うなよ!!」
正直、イムランは嫌いだ。自分のやってることを当然と思ってるから洒落にならない。
ラムダさんにこういうことをさせる原因になったのもこいつらのせいだ。
「落ち着きなよハヤト、それとオジサン。早く逃げないとラムダじゃなくて、このハヤトに切り殺されるよ?」
「ぐぐぐぅ…!」
「今すぐその顔面ぶん殴りたいけど、今お前が殺される訳にはいかないんだ、さっさとどっかに行け!」
「くうぅぅぅっ…、憎い、憎い、憎いっ!覚えておけよっ!平民どもめぇぇっ!」
イムランが捨て台詞を言い放ち、起き上がった兵士たちを連れて街へと向かってゆく、
俺はそんなイムランに意識を向けないでアキュートを見ていた。
そんな中セシルさんが一歩前に出て声を張り上げる。
「私達の邪魔をするというなら、ラムダ様の知己であろうと容赦はしない!」
「そいつはこっちの台詞だぜ!レイドがお前らを…、この街をどれだけ心配してるのか、腕ずくでも教えてやる!!」
ガゼルとセシルさんの声が切っ掛けでフラットとアキュートの戦いが始まる、
迫ってくるアキュートのメンバーを俺達は迎え撃つ。
戦いはこちらが有利と思われたが中には騎士崩れも交じっており苦戦を強いられた。
「ユエル、突っ込まないで!狙い撃ちされます!」
「う、うん!」
「!」
ユエルとクロが戦場を走り回り2対1の状況を作ろうと戦っている、
スウォンも後ろから矢を放って相手の行動を阻害していた。
他のメンバーも必死に戦っている、トードスやオプテュスとの戦いを乗り越えたフラットはそう簡単には負けない地力を持ち合わせている。
「来てくれ、ライザー!ゴレム!」
俺は宙に浮くロボットの召喚獣と小さなロボットを召喚するライザーにゴレム、
先日誓約を交わしてくれた新しい仲間たちだ。
「二人ともクラレットがまだ回復しきってないんだ、ここを頼むぞ!」
『『!!!』』
それぞれ、機械音を鳴り響かせクラレットの周りで待機し始めた。
俺はその様子を確認してアキュートのメンバーに突っ込む!
「来てくれ…、鬼神将ガイエン!!」
召喚したのは俺の攻撃手段で最も多用するガイエン、
最近は召喚術も上手く使えるようになり息をするように召喚出来た。
そのまま振り下ろされる衝撃に巻き込まれアキュートの兵が吹き飛んでゆく。
「よし、スライムポッド!!」
そのまま壺を召喚し、その中から飛び出るスライムがアキュートの兵をドンドン捕まえてゆく。
「よし、このまま…」
「ハヤト、あぶねぇ!」
「くっ!?」
ガゼルの叫ぶ声を聞きすぐに防御態勢に入る、
すると死角からナイフが飛んできて俺の手を掠めて血が飛び出す。
完全に意識の外だった、ガゼルの声が無かったら今ので終わってた。
「惜しいな、こいつが声を出さなきゃこれで終わってたんだけどな」
「そうやすやすとやらせはしないぜ!」
ガゼルがスタウトさんの前に立つが相手が悪い、
するとユエルがスタウトの後ろに立ってけん制し始めた。
「ウウゥゥゥゥ!!お前…、ユエルに悪い事させようとした奴と同じ匂いがする!!」
「…まあ、もう廃業した身だけど匂いは中々抜けねぇもんだな」
「ハヤト、お前は先に行け、ここは俺達で抑える!」
「だけど…」
「あのラムダってやつに一発食らわせてやれ!」
ガゼルの決心を理解して俺はラムダさんの方に向かう、
ガゼルは俺の顔を見ず、スタウトさんを睨んでいた。
「流石にはぐれ召喚獣といっぱしの盗賊相手じゃキツイもんがあるな」
「けっ、調子付きやがって。俺達を相手にしてもどうにでもなるとか思ってんだろ?だけどなぁ…」
ガゼルが懐から無色のサモナイト石を取り出し掲げた、
石に魔力が流れ光をともし始める。
後ろにいたユエルも同じように緑のサモナイト石にガゼルと同じように掲げた!
「おいおいおい!?お前らも召喚師なのかよ!?」
「行くぜ!ロックマテリアル!」
「来てぇ!セイレーヌ、アクアトルネード!!」
スタウトの上空から岩石が降って来て潰そうとするが、
スタウトはそれをかわす、しかしユエルの呼んだセイレーヌのアクアトルネードに吹っ飛ばされた。
「こいつは!? …思った以上にきつそうだなおい」
スタウトはナイフと片手剣を握り二人に突っ込んでゆく、
ガゼルとユエルも全力でスタウトを迎え撃った。
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ハヤトがラムダの元に向かってる時、戦場を駆け巡っていたクロは動けないでいた。
「小さいですが…、隙がありませんね」
ぺルゴが槍を構えクロに狙いを定めている、
クロもどうにかして動こうとするが、動きを読まれているような気がしてた。
「…」
このまま時間をかければ間違いなく自分が不利だと思ったクロは跳躍してぺルゴに迫る!
「はっ!」
「!!」
ぺルゴが槍で黒を突くと思われたがそのまま防御態勢に入る、
クロの攻撃が槍の柄にぶつかり衝撃が走るがそれを地面に流し耐える、
すぐさまぺルゴが槍を使いクロを切り裂こうとするがクロは空中で回転してそれを避ける。
そのまま近くに迫れた利点を生かし体当たりで吹っ飛ばそうと考えるが、
流れるように槍を防御にまわし体当たりを防ぎ、少し下がるがそのまま槍を構えなおす。
「「……」」
互いに再び無言になり、最初の段階に戻ってしまった。
クロはこの状況を何とかする手が思いつかなかった、
なぜなら小さいゆえに掻きまわすのが得意なのだが、
カウンタータイプのような待ち受ける相手は少々苦手なのだ。
だが、幹部の一人を釘付けに出来れば儲けもんだと考えなおし、
クロは再び僅かな隙を読むようにぺルゴに挑んだ。
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「おらあぁっ!」
「セイッ!!」
ジンガの拳とセシルの蹴りがぶつかり互いに吹っ飛ばされる、
だが、セシルはストラで足を強化しそのままジンガに跳び蹴りの追撃を放った!
「うぐっ!?」
ジンガは更に吹き飛ばされ、地面に叩き付けられるが、
すぐに体を起こしてセシルに挑む、技術とストラのパワーならセシルが上だが、
力と体力ならジンガの方がまだまだ高いのだ。
「あなた、どんな体してるのよ!」
「俺っちは打たれ強いからな、その程度じゃやられやしねぇよ!」
そのままセシルに拳を突き出すが、かわされ腹部に蹴りが放たれる。
それをジンガが耐えセシルに攻撃を食らわせるがセシルはこれを防いだ、
しかしセシルの顔に苦痛の表情が浮かぶ、ジンガが腹部に一撃を食らった時よりも辛そうだ。
セシルが困惑するが実はジンガの方がダメージは大きかった、
単純に衝撃の痛みに非常になれているだけなのだ。
ハヤトと一緒に修行するときほとんどの相手があのクロだ。
その剛腕を顔や腹部など至る所で受けているジンガにとってセシルの蹴りはそれなりの痛みだった。
だがセシルのストラの蹴りは確実にクロよりダメージは高い、
しかしセシルがそれに気づくのは初見では難しかった。
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俺はラムダさんの元に走る、この戦いを終わらせるためにあの人を止める。
レイドに任せたい気持ちはあるけど、俺だってあの人を止めたいんだ!
「ラムダさん!!」
「来るか、少年!」
ラムダさんに剣を振り下ろすがそれは防がれる。
受け流すように動かされ、反撃してきた!
「ッ!?」
「ハァッ!」
剛剣とも入れる一撃を防ぐが体が宙に浮き弾き飛ばされる、
直ぐに体勢を整え召喚術を使うためにサモナイト石を取り出した。
遠距離攻撃は中々さえてくれないはずだ、ならこれだ!
「フレイムナイト!」
フレイムナイトが俺に憑依して力を高める、足に魔力を集中し一気に攻め入る!
「…!」
待ち構えたラムダさんはその攻撃を正面から受け止める、
だけど今、ラムダさんは片腕が石化してる筈だ、これなら…っ!?
しかし、ラムダさんは俺の攻撃を耐えると恐るべきスピードで剣を振り攻め入ってくる!
「な、なんで耐えれるんだ!?」
「相手との実力差を理解しきれないようだな」
「ならこれで!!」
サモナイト石を取り出し、召喚術を使うとするが、ラムダさんは凄まじい脚力で跳び、
一気に距離を詰める、俺はすぐに石を手放して剣で防御した!
余りの一撃に剣が弾き飛ばされるが、跳んで少し体勢を崩す一瞬を狙い蹴りを入れる!
その蹴りを石化してる手で防ぎもう片方の剣で俺を切り裂こうとするが、
そのまま蹴り飛び俺はすぐに距離を取った。
「アーマーチャンプ!!」
「……鉄巨人か」
現れた二つの盾を持つ鉄巨人、それで視界を塞ぐ。
そのまま手にした赤いサモナイト石、切り札のガイエンで一気に勝負を決める!
真・鬼神斬、あの技ならラムダさんを倒せる!
「来てくれ、ガイエン!!ッ!?」
意思に魔力を送りガイエンを呼び出そうとするが、
普段から訓練で感じている殺気を感じ、反射的に横に飛ぶ。
その瞬間、アーマーチャンプは縦に真っ二つに切り裂かれ、
その衝撃が先ほど立っていた自分の位置まで走っていた。
「アーマーチャンプを…一撃で?!」
「はっ!!」
虚を突かれ完全にラムダさんから意識を外してしまった俺にラムダさんの斬撃が襲う!
肩からバッサリと切り裂かれ、その場を転がるがそのまま体勢を立て直して体を起こす。
すぐさまプラーマの石を取り出すが、胸を踏まれ、そのまま地面の押し付けられた!
「ぐぅ!?」
「終わりの様だな、少年」
強い…、強すぎる!
接近戦じゃ勝ち目なんて殆どない、離れることも出来ないし、
これが本当の剣豪の強さ、イムランやバノッサなんかとレベルが違い過ぎる。
一人じゃ勝てない…、みんなの力を借りないと…。
このままではいけないと思い石に魔力を通そうとするが、ラムダさんは俺の腕を突き刺そうとする。
しかしそこにレイドが割り込んで来てラムダさんを弾き飛ばす!
「無事か、ハヤト!!」
「無事じゃないよ、思いっきり切られた」
「口が聞けてるうちはまだ大丈夫だな、はあっ!!」
「むっ!?」
レイドの剣がラムダさんを襲う、不完全な状態のラムダさんだったら今なら倒せる!
俺は体を起こし、プラーマを呼ぶ前に黒いサモナイト石に魔力を通す、
今はレイドを助ける時だ!
「来てくれ、フレイムナイト!!」
フレイムナイトがレイドに憑依しその力を高める、
そのおかげかラムダと互角になったレイド、二人の剣劇が繰り広げられる。
ラムダがレイドの虚を突こうとするがレイドがそれを看破してさらなる一撃を食らわせようとする。
レイドさんの思いとラムダさんの悲願、それがぶつかり合いまじかでその衝撃を俺は感じ取っていた。
しかし、そんな二人の戦いは決着はつかなかった。
プラーマで傷を癒していると、その場にセシルさんが現れてラムダさんに声をかける。
「ラムダ様、騎士団がこっちに向かってきてるそうです!」
それを聞き、ラムダが下がり剣を下す、レイドも同じように剣を下した。
「やってくれたな、レイド…」
「ラムダ、貴方の方法では人々は救えない。今ある人々の幸せを、犠牲にして得られる平和には、何の価値もないんだ!!」
レイドが自分の考えをラムダさんに伝えようと声を張り上げる。
騎士団から逃げ出し、その果てに出した答えをラムダさんに伝える。
「ならば、お前はどうしろと言うのだ。犠牲を作ることなしに街の人々を救うことができるのなら、それを俺に証明してみろ!?」
「……」
レイドの思いを聞いたラムダさん、だけどその言葉に答えを求めて来た。
かつて自分が出せなかった答えをレイドに求めるように、叫ぶ。
「俺も昔は、お前と同じだった。理想を持ったものが力を合わせたなら、不可能はないと思っていた、だがな、理想を現実にするためには、絶対にないかが犠牲になるのだ」
「確かに…、そうなのかもしれない…。でも、それでも私は、目の前で誰かが犠牲になるのを黙っては見てられないんだ!」
かつて、その道を進もうとしたラムダ、そして今、道に気付いたレイド。
二人はそれぞれの言葉を納得ができなかった。だから決着を付けるしかないのか…。
「どう話をしたところで無意味の様だな、レイドよ、いずれ改めて、お前とは決着を着けよう」
そう言い残すとアキュートのメンバーを連れてラムダさんが離れてゆく。
「ラムダ…」
自分の思いが伝わり切らず、悲痛な表情をレイドは浮かべている。
「レイド、みんなを連れてここを離れよう。騎士団が来たら俺達も危ない」
「…そうだな」
そうしてイムラン暗殺を俺達は何とか食い止めることができた。
ラムダさんの剣を受けて分かったことがある、あれは諦めてるような空虚な剣じゃない。
本当に信念の籠った剣だった、あれが本当の騎士なんだな…。
---------------------------------
「お疲れ、クラレット」
「いえ、そんな…」
あの後、俺達はフラットに戻り、休むことになった。
リプレは俺の服を見て、また怒ってくれる、まあ思いっきり切られたからなぁ…。
クラレットはまだダメージが残ってるようだ、無理にストラや召喚術で治すと危ないようだ。
ベットで寝ながら俺達はそれぞれ居なかった時の事を話し合っていた。
「そっか…、セシルさんはお医者さんがメインでペルゴさんはコックさんだったのか…」
「ええ、アジトの場所まで教えてくれたのに…、悪いことをしました」
「それで、あのスタウトって人は?妙にユエルが敵意もってたけど…」
「あの人の事は、わかりません。悪い人じゃないんですけど」
「そっか…」
クラレットの手をそっと握る、今回は仕方ないけどやっぱり心配だった。
俺もだけどクラレットも無茶をよくするよなぁ。
「ハヤト?」
「今回は許すけど、あんまり無茶しないでくれよ。やっぱり心配だったんだから」
「ごめんなさい、次からはハヤトも誘いますね」
「そういう意味じゃ…、いや同じ意味か?ん?」
「ふふ」
うん、間に合って良かった。やっぱりクラレットの笑顔を見ると安心できる。
でも、ラムダさんと戦ってわかった気がする…。
「ラムダさんは…」
「え?」
「ラムダさんは、自分のしようとしてることをきっとわかってるはずだ。犠牲だって自分の罪にして背負うつもりなんだ…、俺は…、少しだけあの人が羨ましいよ」
「…ハヤト」
「俺にもラムダさんの様な強さと覚悟があれば、今もこうやって悩んでないのにさ…」
「……あなたが何をまだ隠してるのかは聞きません、でも」
「うん、自分じゃ勝手に動かないさ、その時が来るまでには答えを出すよ」
「それでいいです、今はそれで…」
クラレットと話しながら俺は二人の事を思い出す。
理想の為に犠牲をいとわないラムダさんと、犠牲を作らないという理想を望むレイド、
二人の元騎士の信じる者はどちらも正しいのだろう。
でも、俺はラムダの信念を受け入れることはできない。
自分が生み出す犠牲を知り、その重みを背負う覚悟なんて今の俺にはない…。
俺は、目の前の少女を守ることで精一杯だから。
だから…、今ここに居る家族を失わせない、それが俺の信念だ。
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今回はラムダ弱体モードですけど、それでもハヤト君じゃ勝てないんですよ。
レイドならたぶん勝てる、二人って同じくらいらしいので。
ペルゴも元騎士崩れだったんだな(ラムダの元部下)
まあ、影の薄さはすごいからちょっと強キャラ風に書きました。
OP見直して思ったけどやっぱりアルサックの花って桜だよ、
同じだもん花の形、そう思ったアカネの話でした。
次、終わったらミニス編ですか、ちょっとリプレイベ割り込んでおくか