サモンナイト ー生贄の花嫁ー   作:ハヤクラ派

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今回は色々考えて書いてました。
ローカスの夜話見たら、こいつ良い奴じゃん!!(号泣)
何とか救済するところです。
この二人だったらこういう選択肢もありじゃないかなぁって感じで書きました。


第10話 召喚師VS召喚師

――守られる立場の者は他人を守ろうとした時、頼るか頼らないかの選択を迫られる――

 

オプテュスとの戦いから数日、平和な日々が続いていた。

街で見かけても必要以上に関わってくることはなかった。

とりあえず安心したクラレットは今日もフラットの家事をしていた。

 

「あの…、ガゼルさん?とても暇そうですね」

「あー…、クラレットかぁ?」

「やることないんだったら出かけたらどうですか?」

「ケッ、冗談じゃねぇ。こんな物騒な日に外で遊んでられるかよ」

「……リプレ~!ガゼルさんがぐーたらしてるんで…」

「ちげぇって!理由があんだよ理由が!」

 

ガゼルさんが言うには今日は税金を納める期限の日らしい、

当然だがフラットも一応払っている、多少ごまかしているらしいですけど…

ガゼルさんは今は活動してないですけど少し前まで盗賊を随分としてたそうです。

街には回収の兵士で溢れているのでガゼルさんはどうやら外に出たくないようですけど…

 

「それは言い訳ですよ。はい、これを」

「…なんだよこれ?」

「窓拭き、お願いしますね。勿論屋上もです。今日は外に出られないんですからお仕事いっぱいありますよ♪」

 

どうやらガゼルさんは暇みたいですね。普段何してるかわかりませんけど、

エドスさんも人が増えてきたので椅子の修理をしてるそうですし、

ハヤトも今日は久々の休みで釣りに子供たちといってますし。

ふふ、ガゼルさんにはいっぱい頑張ってもらわないと。

 

「いや…、俺はやる気ねぇんだって…」

「ちょっとガゼル!暇なら少しはお手伝いしなさいよ!」

 

広間にフィズが入ってくる、

どうやらあの子はハヤトたちと出かけなかったようだ。

 

「うるせぇなぁ…、馴れてない俺なんかがしたってたいして良くなんねぇって」

「ちょっと待ちなさいよ!」

 

ガゼルさんがフィズの頭を押さえながら広間を出ていこうとする…、

ですがそうはいきませんよ!!

 

「シンドウの名のもと…クラレットが汝の力を…」

「お、お前何やってるんだよ!」

「プニム!ポワソ!ペコ!」

 

現れたのは3匹の召喚獣、耳の長いプニム、帽子を被った精霊ポワソ、

そしてハート模様の付いた聖霊ペコ、ユニット召喚と呼ばれる魔力を消費しにくい召喚獣たち

今それがガゼルの周りに召喚される!

 

「おい、クラレット。こいつらで何をするんだよ!」

「逃げればその子たちが大騒ぎし続けます。どうします…?」

 

この子たちではガゼルを抑えることはできないだろう、

だが可愛い容姿で尚且つ味方であるこの子たちは攻撃できない

ちなみにガゼルは意外に静かな場所を好んだりする。

 

「…わかったよ、やればいいんだろやれば!!」

「♪」

 

ちなみに窓拭きだけではなくトイレ掃除、風呂掃除、洗濯物などやらされて散々だったそうだ。

 

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ハヤトたちはアルク川に居た、流石に徴税の兵士もアルク川にはいないようだ。

今現在アルク川にはハヤトにラミ、アルバと護衛のクロに川に来ていたスウォンが居る。

 

「…おさかなさんつれないね」

「そうだな、今日は不調だ…」

 

今日は魚が全然つれない、別に全く釣れない訳じゃないんだけど

釣れてもニャン魚とかだ、普通の魚は相変わらず釣れない、

もしかして普通の魚いないんじゃないかと思ったが、

クロがこの前、横で木の棒で釣り竿作って普通に釣ってたからな…

ってアイツあんな容姿なのに釣りまでするんだよなぁ…

 

「どうしたの?」

「ああ、ちょっと考え事してただけだよ」

 

ラミが考え事をしている俺を気にかけてくれる、いいこやぁ…

そういえばアルバの様子がおかしいんだよな。

 

「なあ、ラミ。アルバの様子がおかしいんだけどなんかしらないか?」

「きょう、レイドおじさんとけんかしてたよ…」

「アルバと…レイドさんが!?」

 

あの二人が喧嘩…!?

だけど喧嘩なんて…、いや確かこの前、レイドさんの剣術道場に行くって喜んでたな。

もしかして道場で何かあったのか…?

 

「ラミ、ちょっとここに居ててくれ、クロ―!釣り替わってくれ!」

「…!」

 

クロが渋々としながら俺のロッドを受け取る、

クロがラミに抱かれながら釣りを始めた、ラミとクロがお話しし始めてるが会話できるのか…

いや、今はそんな事よりアルバの事だな。

 

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しばらく川岸を歩くと川に石を投げているアルバの姿が見えた。

なんか不貞腐れてるっていうか自暴自棄みたいな感じがするな…。

 

「おーい、アルバー!」

「…ハヤト兄ちゃん」

 

こっちを向くアルバ、目が赤くなっているということは泣いてたんだな、

フラットで泣けばリプレに心配されるからなぁ。

 

「どうしたんだアルバ、泣いてるのか?」

「泣いてなんか…、ないやいっ!」

「そっか」

 

俺はアルバの横に座る、アルバも俺の横に座った。

 

「聞いたぞ、レイドさんと喧嘩したんだって?」

「違うよ、オイラはただ…」

「ただ?」

「道場に…行きたくないだけだよ…」

「…うん、そうなのか。アルバは頑張り屋だからな、道場に行きたくない理由があるんだろ?」

 

俺はアルバの頭を撫でる、少し硬い髪の毛の感触だが柔らかいも感じる、

アルバはそんな俺の顔をみて少し唖然としてるようだ。

 

「怒らないの?レイドみたいに」

「怒ったりしないさ、俺はレイドさんじゃないし、アルバは悪いことしてないんだろ?」

「オイラ、そんなことしてないよ、あいつらが!」

「あいつら?」

「あ……、ねえ兄ちゃん、誰にも言わないって約束する?」

「ああ、男の約束だ!」

「絶対だよ!」

 

話を聞くと、どうやらアルバは虐められているようだ。

理由はレイドさんがアルバをひいきしている、

勿論レイドさんはそんなことしないだろう、ただの嫌がらせだな。

だけどアルバはそんなのに馴れてないからどうすればいいかわからないはずだ。

難しい話だな…、いじめ対策なんて…いやそういえば…

 

「オイラ、ひいきなんかされてないんだよっ!道場ではレイドの事ちゃんと先生って呼ぶし、練習だってきちんとしてるよ!」

「……うん」

「…ねえ、兄ちゃん、どうしたらいいの?おいら、剣術習うのをやめたくないよ…、でもいじめられるのは…、いやだよう…」

 

俺はアルバの頭を撫でながらあることを思い出した。

ずっと昔の昔話、俺の中で彼女が出した初めての勇気。

 

「俺はいじめられた事もないし、いじめた事もない。でもそれを克服した人なら知ってるよ、クラレットだ」

「姉ちゃんが!?」

「ああ、俺たちの世界じゃクラレットの様な髪の色は珍しいんだ、おまけに名前もな、クラレットが保護されてから一般常識を覚えて1年ぐらいかな、俺の小学校に来たばかりのころだよ、ちょうどアルバと同じくらいの年齢だったな…」

 

俺はアルバの顔は見ず空を見ながらあの日の事を思い出した。

 

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「新堂クラレットです。よろしくお願いします」

 

5月の下旬、まだ春の陽気が残っているその日に彼女はやって来た。

普通の人とは違い青紫色の髪と瞳、整った容姿の少女がそこに居た。

その様子を見て生徒たちは少しばかり動揺してるようだ。

 

「知っている人もいるかもしれないが、新堂の兄妹だ、少しばかり容姿がみんなと違うかもしれないが仲良くするように」

 

はーい、と生徒たちが返事をする、その中で妙にウキウキしている人物が一人。

 

「じゃあクラレットさんは…」

「はいはいはーい!!あたしの横が開いてまーす!」

「空いてますじゃなくて俺を弾いたんだろ…」

「そうか…、まあ面倒見がいい人の方がいいからな、橋本。彼女にいろいろ教えてやってくれ、じゃああの席の方に」

「は、はい」

 

クラレットが小走りで席に移動する、

その席は元々勇人の席だったが隣の人物に追い出されていた。

勇人はその更に横の窓側の席に移動している。

 

「よろしくね、あたしは夏美、橋本夏美だよ!」

「新堂クラレットです。橋本さんこれから…」

「あ~そういうのいいよ、会った事あるしさ、勇人の家の窓から外見てたでしょ?」

「あ…はい」

「だからさ初対面じゃないのよね、あたしの事は夏美でいいからさ、よろしくねクラレット!」

「うん、夏美、よろしく」

 

それからクラレットは夏美と共に行動することが多くなった。

勿論勇人とも一緒にいるが、学校では基本夏美だった、

夏美自身クラスでも人気だったがクラレットは別だった…

 

「…………」

「どうしたのクラレット?」

「あ、夏美…」

「今日お弁当は?また一緒に食べよう♪」

「あ、うん。今日、急いでてお弁当忘れてきちゃって…」

「え!?そうなんだ、勇人ー!」

 

夏美の一声で勇人が来た、元々近くの席でこれからご飯を食べようとしていた。

 

「どうしたんだよ夏美?」

「クラレットがお弁当忘れてきちゃったみたいなのよ、だからさあんたのお弁当譲んなさい!」

「えぇ~、でも俺母さんと一緒に…」

「あ、あの!」

 

突然クラレットが勇人の言葉を遮る、

その表情は何処かおびえているようである。

 

「…わかったよ、ほら一緒に食べようぜ」

「あたしのお弁当も分けてあげるからさ、それなら勇人も食べられるっしょ」

「…ありがとうございます」

 

 

お弁当を食べ終え、その日の学校が終わったあと。

クラレットはいつの間にかいなくなっていた、

こういう時、大体クラレットがいる場所はわかっている。

勇人はその場所に向けて歩いていた。

 

だどりついた公園、一人の少女がブランコを揺らしながら俯いていた。

年に似合わず考え事をよくする少女、クラレットがそこに居た。

 

「こんなとこにいた、何してんだ?」

「あ、勇人…」

「なあ、最近様子が変だけどさ、何かあったのか、もしかして学校がつらいのか?」

「……あの」

 

クラレットは話した、自分がいじめられていることを、

そんな表面的なことではないが髪の事を言われる、お弁当を捨てられたのもそのせいらしい。

クラレットはこの一年ずっと家にいたといっても間違いない人付き合いはいまだ馴れてないのだ。

そのせいでどうしても引っ込み思案になってしまい、それもあっていじめが増長してるのだ。

 

「私はみんなと仲良くしたいんですけど…、どうすれば」

「辛かったら学校行かなくてもいいんだぞ?母さんたちに頼めば…」

「でも、私は学校が行きたいんです!勇人と一緒に居たいんです…」

 

その言葉に少しばかり勇人は照れるが真面目な問題だった。

どうすればいいか悩んでると公園の外から一人の少女がやって来た。

 

「お兄ちゃ~ん、お姉ちゃ~ん!ご飯出来てるよ~!!」

 

奥からやってきたのは二人の妹の春奈だ、二人はよくこの公園にいるのでそれを予測して向かいに来たのだ。

 

「…どうしたのお姉ちゃん?」

「ううん、なんでも…」

「友達と喧嘩したらしくてさ、馴れてないから上手く謝れないんだってさ」

「えっ!?そうなの!」

 

なるべくオブラートに勇人が説明する、

この少女に真実を伝えると必ずといってもいいが正面から突っ込むのは目に見えていた。

 

「んー!んん~~!ん~?」

 

唸りながら頭を抱えて春奈は考えているようだが、如何せん幼稚園児そこまで頭は良くない。

 

「は、春ちゃん?」

「わかんないけど…、お話すればいいんじゃないかな?」

「お話し…」

「うん!お姉ちゃんが頑張ればきっと仲良くなれるよ!」

「……うん!」

 

春奈が「ご飯が冷めるよー」と言いながら家へと駆けてゆく。

そんな姿を見ながら二人は歩いていく、

そしてクラレットはハヤトを見てこう言い放った。

 

「私…、頑張ります!」

 

それから数日、何があったかは知らないけどクラレットに友達が増えていたのは気づいた。

その中には夏美の姿も見える、うん。やっぱり夏美は人付き合いがいいなぁ。

その横で楽しそうに笑うクラレットの姿があった、

そんな姿を横目で見ながら頑張ったんだなって理解したんだ。

 

 

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「あの時、クラレットがどうやって仲直りしたのかは聞いてないからわからないけど、でもクラレットは頑張ったんだ。それは間違いないよ」

「姉ちゃん…、頑張ったんだ…」

「だからアルバも頑張ればきっと伝わるはずだ、真剣に剣術を習いたいんだろ?」

「うん、オイラ、騎士になりたいんだ!!」

「だったらアルバ、本当の勇気を出すんだよ」

「本当の勇気…?」

「何も勇気は戦う事じゃない、相手に自分の思いを伝えるのも勇気なんだ、クラレットも勇気を出してみんなと仲良くなったんだよ、だから勇気を出して伝えればきっとみんなもわかってくれるはずだ」

 

アルバは少し不安になりながら考えてたが顔を上げてこっちをしっかりと見る。

その目は強い思いに満ち溢れていた。

 

「…うん!オイラ、勇気を出して頑張ってみるよっ!」

「ああ、頑張れアルバ!」

 

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アルバを連れてラミと所へ戻ると音楽が聞こえてきた、

何処か聞いたことある音だった、その音がどこから来るか見ると、

スウォンがラミの近くで演奏してる姿が見えた。

…なんかクロの奴、普通の魚釣ってるんだが。

 

「スウォン、いい曲だな」

「あ、ハヤト、それにアルバも、元気になったみたいだね」

「心配かけてごめん、スウォン兄ちゃん、ところで今日はユエル居ないの?」

 

元気になったアルバはユエルの事をスウォンに聞く、

するとスウォンは苦笑しながら答え始めた。

 

「今日は徴税の為に兵士がそこらへんにいるんで連れてきてないんですよ、幾分か前に租税強奪事件が起きたそうでそれ以来どうにも街を巡回する兵士が多くなってしまって、今日は家でおとなしくさせてますよ」

「ああそっか、ユエル一応はぐれ召喚獣だからな…」

「はい、狩人のみんなとは仲良くしてるんですけどさすがに街の兵士は…」

 

ユエルは一応立ち位置ははぐれ召喚獣だ、だから街中にいると捕まるかもしれないからな。

 

「話に聞くと召喚獣をペットにする貴族もいるそうです、もしそんなのに捕まったりすれば…」

「そうだよな、せっかく自由になったのにな…」

 

正確にはあの首輪を外すのが一番だけど、あれを外すのは不可能だそうだ。

特別な儀式か誓約をした召喚師が誓約を解除するしかないのだが…

召喚師は無理だよな、そこから逃げて来たんだし。

 

「ラミ、帰るぞー。あれ?」

 

アルバがラミの顔を覗くと人形を抱きしめて寝ているようだ、

スウォンの曲を聞いて寝てしまったようだ。

 

「スウォンの曲を聞いて寝ちゃったみたいだな、スウォン。その楽器って何て名前なんだ?」

「ハルモニウスっていうんですよ」

 

見せてくれる楽器を覗くとハーモニカに似ているみたいだ、

だけど細部が違う気がするな…、ちょっとうろ覚えだけど。

 

「初めて獲物をしとめた時に、父さんからお礼にもらったんです。あまり上手には演奏できないんですけど」

「そんなことか、ラミの顔見てみろよ。幸せそうに寝てるんだからきっといい演奏だったんだよ」

「そうですか?」

「ああ、フィズたちにも聞かせてやってくれよ。きっと喜ぶぞ、なあアルバ?」

「うん、オイラも聞いてみたい!」

「それじゃあ、今はもう少しだけ…」

 

スウォンの演奏を少し聞いて俺達は孤児院に帰り始めた、

ラミは俺がおんぶして、クロは釣り道具を持ちながら歩いている、

孤児院が見えてくるとなぜか屋根の修理をしているガゼルの姿が見えたのだった…

 

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午後、ご飯を食べ終えた俺は少し暇だった、

家事はクラレットやリプレ、捕まったガゼルがほとんど終わらせていたのだ、

今日は買い物もないようで少しばかりのんびりした午後だった。

俺は庭で装備の調整をしていた、何せオプテュスとの戦いでまた剣を折ったのだ、

ソルとの戦いの時も剣を手放してしまったため実際2回無くしている。

今回用意してもらったこの剣、ウィゼル師範の持ってきた剣なのだが…

 

「切れ味…、良すぎるだろ…」

 

問題はその切れ味だったのだ、

石の台座の上に丸太を置いて魔力を籠めて切ってみたら台座ごと切り裂いてしまったのだ。

ちなみにロックマテリアルの岩を切ったら普通に切れた、この剣は強力すぎる…

だがわざわざ師範が持ってきた武器なので蔑ろにできないためうまく使えるか調整してるところだ。

 

「魔力を籠めなきゃいいんだろうけど、癖になってるからなぁ…」

 

そんなふうに剣を振りながら考えているとジンガが玄関の方から出てきた。

 

「なあ、アニキ。ヒマかい?」

「そりゃ、暇って言ったらヒマだけどさ」

「だったら、俺っちと一緒に市民広場までいかないか?」

「市民広場?なんでなんだ」

「なんかは知らないけど、この街の騎士たちが集まってるんだ」

 

ジンガは面白そうなものを見つけたように話している、

おい、まさかと思うんだが…

 

「まさかとは思うけど、お前、騎士に勝負を挑むつもりじゃないだろうな!?」

「あはは、まかさぁ!顔を見るだけだよ、戦ったりしないって!」

「普段の行動を考えると不安で仕方ないんだけど…」

 

しかしこのまま放って置いたら一人で行きそうだしな…

 

「本当に戦わないって約束できるか?」

「あ、馬鹿にしてるな、騎士とケンカしたらどうなるぐらい、俺っちでもわかるさ」

「どうなるんだ…?」

「俺っちが勝つ!」

「………」

 

ダメだ、このまま放って置いたらやばいことになる、

一緒に行くしかないか…。

 

「仕方ない、一緒に行くぞ」

「そうこなくっちゃ!」

 

 

市民広場に着いた俺はまず広場を見ることにした、ちなみに今回はジンガと二人で来ている、

流石にクロは今回はお休みだ、最近戦い続けだったし問題はないだろう、

広場には多くの兵士たちが並んでいた、奥の方ではどこかで見た少女が騎士に指示を出している。

 

「あれは…、サイサリスって子だったかな」

「アニキ、アイツ知ってるのか?」

「ああ、ちょっと前に…」

 

ジンガに出会った時のことを話そうとするとサイサリスの声が俺の耳に届いた。

 

「罪人たちの点呼は完了しましたか?」

「はッ、完了しました!」

 

その言葉に違和感を感じた、並んでいる人たちはどう見ても在任には見えないのだ。

 

「罪人…?あの人たちが」

「なあ、アニキ、あの人たち本当に罪人なのかなぁ、見るからによぼよぼの爺さんとか女子供も並んでるぜ?」

 

ジンガも同じことを考えているみたいだ、すると背後から気配を感じて後ろを振り返ると一人の男性が立っていた。

 

「…罪人ですよ?」

「え?」

「彼らは税金を払えなかった罪で、捕まった人たちなのです」

「なんだよそりゃ!?」

「あの人たちはどうなるんだ?」

 

俺の問いかけに男性は少し溜息を吐きながら答えてくれた。

 

「この広場で見せしめにされた後、足りない分を労働奉仕で払うことになります、男は鉱山、女は工場の一番過酷な場所で働かされますね」

「殺されないだけマシかもしれないけど…、あんな老人や子供まで…」

「仕方ないんですよ、そう領主が決めたのですから、ふむ、正確には領主を利用して召喚師たちが決めたんでしたか」

「なんでみんな、そんな無茶に従ってんだ!?」

 

男性の発言に理不尽を抱きジンガが叫ぶ、

この街では召喚師の言葉は絶対のものだ、それをジンガは理解しても理不尽を感じざる得ないのだろう。

 

「落ち着けってジンガ、召喚術の怖さは俺達が良く知ってるだろ?力を持たない人たちじゃ黙ってるしかないんだ…」

「だけどよ、アニキ…」

「そうですが…、全員が全員そうしてるわけでもないようですね?」

「え?」

 

男性が見る方向に一人の男が兵士を跳ね除け動き出すのが見えた、長く赤い髪を持っている男だ。

 

「もう我慢できん!俺たちが、いったい何をしたって言うんだ!?働けば働くほどに高くなる税金なんて、払えるわけあるまい!!」

 

その男に目をやり近く兵士にサイサリスは尋ねた。

 

「…あの者は?」

「はッ、義賊を気取っていた盗人の頭目です」

「…はあ、そうですか」

 

サイサリスが男の近くに向かう、

義務的な行動もあるようだが何処か隙がないように動いている、

幼い也をしていてもかなりの心得があるようだ。

 

「人の富を盗んだこと…、それがあなたの罪ではありませんか?」

「ハッ、だったら貴様らの親玉も同然だろう?市民から税金を力で奪っている、立派な盗人様だろが!?」

 

叫んだ男はサイサリスが手を上げると複数人の兵士に取り押さえられてしまう。

 

「こいつッ!口を慎めッ!!」

「…殺せよ、殺さなきゃ、俺の口は止まらんぞ!!」

「ほざいたなッ!」

「待ちなさい、感情に任せてはイリアス様に対する不義です。この者にはしかるべき罰が与えられます」

 

遠くから見ていた俺はどうするか悩んでいた、ジンガは突っ込もうとしてるが微妙なとこだ。

サイサリスとは少し話していたがイリアスさんに忠誠を誓ってるみたいだからこれ以上酷くはならないと思うけど…

 

「悩んでいるようですね、大丈夫ですよ。あなたが行かなくても」

「え?」

「ぎゃあっ!?」

 

突如、男を抑えていた兵士たちが弾き飛ばされる、

そこには赤い鎧を着て大剣を背負った兵士が立っていた。

 

「呆れたものだな、都合の悪いことを力で押さえつけるとは、それが市民を守るべきものとしての姿か!?」

「ラムダだ!【アキュート】のボスのラムダだぞっ!!」

 

ラムダと呼ばれた男性、その人はには見覚えがあった、

儀式後でソルと戦い、殺される寸前に助けてくれた人だった。たしか…

 

「サイジェント騎士団、元団長の…、ラムダさんだったっけ…」

「?、アニキはあの人を知ってるのか、アニキ!あのオッサンが!?」

 

俺たちの後ろにいた男性はラムダの横に立っていた、

その横には金髪の女性、肌の黒いスキンヘッドの男性も立っている。

 

「罪なき人々よ!さあ、今こそ立ち上がるのです!!」

「貴方たちの生きる権利は、貴方たち自身の力で守りなさい!!」

「俺たちアキュートは戦う者たちの味方だ!召喚師の手先になった領主を許すなっ!!」

 

アキュートのメンバーがそれぞれ捕まっている人、それを見ている人たちに声を届ける。

勿論、騎士団もそれをただ見逃すはずがなかった、サイサリスは弓を取り出し矢を構える。

 

「反乱分子…、凝りもせずに、追い払いなさい!!」

 

市民と騎士団、そしてアキュートの人たちで戦いが始まった、

特にアキュートのメンバーは恐ろしいほどの使い手たちだった、

ラムダさんの剛剣だけではなく、他のメンバーの攻撃も全てが洗練されている。

 

「ひゃー、すっげぇ!あのオッサンたちは、反乱分子だったのかよ」

「感心してる場合じゃないぞ、ジンガ逃げるぞ!!」

「いいじゃんか、ついでに暴れていこうぜ」

「あのサイサリスに俺は目をつけられてるんだ!見つかる前に帰るぞ!!」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ、アニキ~!」

 

アホな事を言うジンガを放って置いて俺は孤児院へと駆けだしていく、

流石にオプテュスの抗争が終わってすぐに厄介ごとを持ち込むのはまずい、

そんなことを考えながら俺は孤児院へと戻っていくのだった。

 

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玄関に入ると椅子をいくつか抱えているエドスがいた。

 

「いったい何があった?急に街の方が騒がしくなったようだが」

「暴動が起きたんだよ!」

「暴動!?」

「詳しいことは中で話すよ、ジンガ。みんなを広間に集めてくれないか?」

「わかったぜアニキ」

 

広間に集まったフラットのみんな、リプレの姿は見えない。

どうやら子供たちの相手をしてくれているようだ。

スウォンも森に戻ってしまったようだな。

集まったのを確認すると俺は公園で起きたことをみんなに話した。

 

「…というわけなんだよ」

「その義賊の男の話は、ワシも知っとるぞ。たしかローカスという名前だったかな、貴族の屋敷から財宝を強奪しては、人々に配っていたって話だ」

 

あの男の人は義賊だったのか…、

確かに生活は辛いかも知れないけど人から盗むのはなぁ…

 

「へえ、気前いいなぁ」

「ケッ!単に善意の押し売りをしてるだけじゃねぇか、そういうのを、偽善者ってんだよ」

 

ガゼルがどこか不貞腐れているようだ、

まあ自分も前は盗みをしてたのが理由だろうな。

 

「とりあえず今はそのローカスさんの事は置いときましょう、それより暴動を扇動していた人たちが気になります…」

「ああ…、クラレットには教えたよな、儀式後で俺を助けてくれた剣士がリーダーだったんだ、確かアキュートのラムダって言う名前だったかな…」

「ラムダだって!?」

 

ラムダという名前が出てレイドさんが突然叫んだ。

ラムダさんが元々サイジェント騎士団の団長だって話は聞いてるからそれが関係してるのか…

 

「レイドさんはラムダさんという方をご存じなんですか?」

「ああ、よく知っている。私が騎士団にいた時の先輩だよ」

「やっぱりそうだったのか…」

「なんだよハヤト、お前は知っていたのか?」

「前に城の前で騎士団長のイリアスさんに会ったときに少し聞いたんだよ。その時に元騎士団長って聞いたよ」

「………」

 

レイドさんは俺たちの話を聞いて少しばかり悩んでいるようだ。

クラレットがそんなレイドさんに口を開けた。

 

「…いいんですか?レイドさん、騎士団と戦っているのは、貴方の先輩なんですよね」

「…行ったところでどうしろと言うんだ、先輩であるラムダと共に戦えというのか?後輩である騎士たちを敵に回して、戦えと君は言うのか!?」

「あ…、ち、違うんです」

「おい、レイド、落ち着けよっ!」

 

クラレットの一言が原因になったのかレイドさんの口が荒げた、

ガゼルがなだめるがまさかレイドさんがここまで感情を露わにするなんて…。

 

「…すまない、君に当たってしまって。正直、私は今、自分がどうしたらいいかわからないんだよ、どうするべきなのか…、わからないんだ…」

「…私も出すぎたことを言ってすいません」

 

少し暗くなるがエドスがそんなレイドさんに声をかける。

 

「ラムダは、お前さんにとって大切な先輩だったようだな」

「ああ…、ラムダという人ほど、騎士の名がふさわしい人間はいなかった。剣技に優れ、高潔な心を持ったあの人に私はあこがれていたんだ」

「俺も直に助けられたけど、なんか頼もしい感じがすごかったです」

「でもよ、そんなすげぇ奴が、どうして騎士をやめちまったんだ?」

 

ガゼルのその一言に再び口をレイドさんは閉じるが俺たちの様子を見て再び口を開く。

 

「やめさせられたんだ」

「えっ!?」

「召喚師たちにとって、あの人は邪魔な存在だったからね。ある任務の失敗の責任を取って退役させられてしまったんだよ」

「そんな…、酷い」

「ラムダがいなくなったことで、召喚師たちはますます力を強めた、絶望した騎士は次々と城を去っていった、私も、その一人さ」

「でも、どうしてラムダさんは…」

「あの人が立ち上がった理由は良く分かる、召喚師に頼るあまり、民衆の事を考えなくなった領主とそれを止められなかった我々の事を、あの人は許せないんだろう」

 

そう言うとレイドさんは席を立ち自分の部屋に戻っていった。

召喚師たちってあのイムランとかいう連中だよな。

イリアスさんたちが今は騎士団長だったけどあの人は押しに弱そうだったし、

やっぱりラムダさんが騎士団長をやめさせられたのもこの街が悪くなっていった原因だったのか…

 

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レイドさんの話を聞いた後、それぞれがまた解散になった、

俺は剣を握り装備の点検をしている。

正直な話、レイドさんがラムダさんに会いに行った方がいいのだが、

騎士団と事を荒げるとフラットに迷惑がかかるかもしれないからそのことは言わなかった。

本当に悩んでるならきっと自分で動いてくれるだろうと思うからだ。

 

「えっと…、サモナイト石は…あれ、どこにいった?」

「はい、これですよね、部屋に置いてありましたよ?」

「ああ、ありがとう。クラレ…ット?」

 

横を見るとクラレット手製のサモナイト石を入れるポーチを手渡してくれるクラレットが俺の横にいた。

ってなんでこんなところにいるんだ?!

 

「な、なんでクラレットがここにいるんだ!?しかもフル装備で」

「なんでと言われましても、行くんですよね?」

「いや、行くって…?」

「言い逃れしなくてもわかってますよ、ラムダさんに会いに行くんですよね」

「あ~…」

 

バレてるなぁ、さすがにここまでわかりやすすぎたか、

そう俺はラムダさんに会いに行こうと思っている。

ラムダさんが何をしたくて暴動を扇動しているか聞きたかったのだ。

正直な話レイドさんのあの表情を見ていて辛かった、

もし聞くことが出来ればレイドさんの負担が軽くなるかもしれなかったからだ。

 

「そうだけど…」

「私も行きます。ハヤト一人だと心配ですから」

「だけど今回はフラットとは関係ないんだ、もし反乱分子と勘違いされて捕まったら何も言えないんだぞ?」

「だからこそ、私が行くべきなんです。私なら召喚術も使えますし、召喚術に対する対策もあります。もちろん逃げる手も…、だから連れて行ってください」

 

真剣な目をして俺に懇願するクラレット、

そういえば前は勝手に一人と一匹で行って心配かけたんだよな、

だったら…

 

「わかった、行こう。クラレット」

「はい!」

 

俺は差し出されたクラレットの手を握り、走り始めた、

孤児院を出るとき視界の端で何かがこちらを見ていることには気が付いてなかった。

 

「…」

 

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アキュートの動きを調べながら移動していると工場区に辿り着いた、

今ここでは騎士団とアキュートが戦いを始める直前の様だった。

 

「考えましたね、アキュートの人たちは」

「え?」

「この工場区は道が狭いですから物量で押すこともできません、それに強力な召喚術を広範囲に撃てば工場に被害が出ますからそれも考えているんでしょう」

「じゃあアキュートには勝機があるってことなのか?」

 

クラレットは俺の問いかけを首を振る形で答えた。

 

「間違いなく負けることを前提に戦ってます」

「なんだって!?」

「あんな兵士が集まってるところで反乱を起こしてもたかが知れてます、それに時間がたてば…!?」

 

突然、爆音が響き渡り工場の一区が吹き飛ばされる、

そこから巨大な召喚獣が姿を現していた、そしてその召喚獣に見覚えがあったのだ。

 

「あれは…、ダークレギオン!?」

「間違いありません!イムランさんが来てるんです!」

 

ダークレギオンの居る方向に俺たちは走り始めた、

そしてクラレットは走り始めながら先ほどの言葉を続ける。

 

「先ほどの続きですが、時間がたてば召喚師が来るのは予測してました、恐らく召喚師を誘い出す作戦なのかもしれません」

「そのために、街の人を犠牲にしたっていうのか!?」

「あるいは…、危機感を煽るためなんじゃないでしょうか…」

「危機感…?」

「話はあとです、出ます!」

 

俺とクラレットが路地裏から飛び出すと、

そこにはダークレギオンを引き連れたイムランがいた。

護衛の兵士は居ないようだが厳つい男が一人近くにいる。

 

「ええいっ!何をもたもたしてるんだっ!さっさと始末しろ!」

「そうカッカするなよな兄貴、胃に悪ぃぜ?」

 

あれはイムランと…、もう一人はイムランの弟なのか?

義兄弟や弟弟子って可能性もあるけど…。

そう考えて様子を見ているとクラレットが飛び出してゆく!?

ちょ、ちょっとなんで飛び出してるんだ!

 

「やめてください!」

「あァん?なんだお前は、見かけは召喚師みてェだがよ」

「お、お前は!?」

「これ以上、人を襲えば死人が出るかもしれません、お願いします。もうやめてください!」

「く、クラレット!なんでいきなり飛び出してるんだ!?」

「後ろを…見てください」

 

後ろを向くとまだアルバやフィズより少し大きい位の男の子が母親を抱えながら逃げている、

恐らく暴動に巻き込まれてここまで来てしまったのだろう…

 

「貴様は、あの時の平民!!」

「やっぱり覚えてたんだ…」

「あの時の事を思い出すと…、きぃぃ~っ!憎い、憎い、憎いっ!!」

「落ち着けよ、兄貴。ホントに胃に穴が開くぜ」

 

厳つい男はこっちを見る、まるで面白そうなものを見つけたような目つきだ。

クラレットの方に目を映らせると驚いた顔をした後、俺と同じ時の目つきになった。

 

「兄貴に聞いてたが面白そうな連中だな、俺はキムラン・マーン、オメエも召喚師なら家名ぐらいあるだろぉ?」

「…クラレット・シンドウです」

「なるほど、兄貴の言っていたとおり高純度のサモナイト石を付けてるようだな」

 

そういえばイムランもサモナイト石を狙っていたな…

そう考えながらイムランの方を見るとこちらを睨みつけて行動を移そうとしている。

 

「ええい!何を呑気に話してるのだ!行けぇ!ダークレギオン、今ならあのテテもおらん!」

『GAAAAAA!!』

 

ダークレギオンが雄たけびを上げるとその腕を俺たちの振り下ろしてくる!

俺は咄嗟にクラレットを抱え後方に飛んだ。

 

「クラレット、ここは任せてくれ!」

「はい!」

 

魔力強化を意識的に発動させ、高速でダークレギオンの腕に跳躍する。

そして無色のサモナイト石を取り出し魔力を籠める!

 

「来たれ、古の光将の武具!シャインセイバー!!」

 

シャインセイバーを発動させながら再び跳躍する!

ダークレギオンが憑依で動きを止めようとするが意識を保ち無理やり弾く。

そしてシャインセイバーがダークレギオンの体に突き刺さる!

 

『GAAAA!?!?』

「これで、どうだぁぁーー!!」

 

そのまま剣を抜き放ちダークレギオンの頭上に振り落とす!

ダークレギオンの動きがゆっくりと止まってゆき力尽きたのか送還されていった…

 

「な、なんだとっ!?私のダークレギオンを…」

「ほう、やるじゃねぇか、兄貴のダークレギオンを一方的に倒すとはな」

「生憎、怖いお師匠さんが付いてくれていたおかげでね」

 

実際に自分は恵まれている、魔力の操作はクラレット、痛みの耐性はクロ

剣術や敵の動きを見るのは師範、これほどの好環境でそうそう負けるわけがない。

 

「またしても、平民がァ!!」

「だから落ち着けよ、ダークレギオンは所詮憑依専門、その巨体だけが取り柄だろ」

 

そうキムランがイムランに言い放つと刀を抜きこっちに近づいてくる、

片手には刀、もう片方はサモナイト石…、まさか!?

 

「俺と、同じ?」

「そういうこった、オメェと俺は同じタイプのようだな、そして兄貴と嬢ちゃんも同じタイプか、ここは2対2ってことでどうだ?」

「おい!何を勝手に…」

「戦うしかないのなら…、ハヤトは?」

「それしかないならやるだけだろ!」

「…ふんっ!まあいい、平民どもに威光を見せつけるために見せしめも必要だからな」

 

俺とクラレットは武器を構え、キムランも睨みながら笑い同じように武器を構えた、イムランも観念したのかサモナイト石を構える。

そしてキムランがハヤトに向けて突っ込んでくる!

 

「おらァ!!」

「くっ、速い!」

 

ハヤトはキムランの攻撃を防ぐが一撃が速く防いだ瞬間に後方にすぐに下がられる、

すると後方のイムラン、下がり始めたキムランのサモナイト石は輝いていた。

すぐにハヤトも召喚術を使おうとするが召喚スピードが完全に違っていた。

 

「「――誓約の名の下に…」」

「ハヤト、下がって!!」

「クラレット!?」

 

突然ハヤトの正面に飛び出したクラレットが杖を正面に構える、

イムランの子悪魔の召喚獣から炎が、キムランはタケシーの電撃を放つ!

その二つが当たる瞬間、クラレットは何かを展開して召喚術を相殺した。

 

「なに!?」

「今のは、幻実防御か…?」

「練習の成果が出たようですね、よかった…」

 

少し溜息を吐きながらクラレットがサモナイト石を取り出す、

緑色のサモナイト石が光を放ち召喚に応じる!

 

「――誓約の名の元に、クラレットが汝の力を望む、おいで、スライムポッド!!」

「ちっ、下がれ兄貴!!」

 

現れたのは壺、そこから緑の液体が飛び出しキムランたちを包もうとするが、

感づかれたのかすぐに下がられかわされてしまった、だが俺も召喚術を行使する!

 

「力を貸してくれ、鬼神将ガイエン!!」

 

現れたのは鬼神将、その一撃がキムランに襲い掛かるが、

 

「舐めんじゃねぇ!来やがれ、反魔の水晶!!」

 

現れた水晶を盾にして、ガイエンの攻撃を防ぐ、

ガイエンは見かけの割に魔力が少ないせいで威嚇しか役立たない、

それも俺のせいなんだが例の真・鬼神斬は消耗が激しすぎて一発しか撃てない技だ。

 

キムランはそのまま俺に突っ込んでくる、俺は召喚術を行使してそれに対抗した。

 

「来い、フレイムナイト!!」

「ちっ、憑依召喚かぁ!?」

 

正面から攻撃に対抗するが、召喚師なのに相当鍛えてるのか実力が拮抗していた。

イムランの方もクラレットが抑えてるようだ、髑髏がローブを守ったような召喚獣がクラレットに襲い掛かるが、

クラレットが召喚術や幻実防御とやらを使い巧みに対抗してゆく。

向こうは大丈夫のようだな…、なら俺は!!

 

一気に踏み込んでキムランの腕を狙うがそれを防がれる、

その瞬間、蹴りが飛んでくるがそれを避け開いている手でキムランの顔面を殴り飛ばした!

 

「ぐっ!?やりやがったなぁ!!」

 

顔面を殴られるのはそうそうない経験のはずだが怯まずにキムランが怒声を上げる、

召喚石が光り輝き今まで以上の召喚術を行使し始める!

 

「――誓約の名の元に、キムラン・マーンがその力を望む…、来やがれ!ホーンテッド船長!!」

 

現れたのは海賊帽を被った骸骨の剣士、人よりも巨体で二刀を携えてハヤトに襲い掛かる!

 

「二刀流はやり馴れてるんだ…、行くぞ!!」

 

繰り出された剣撃をハヤトは跳躍してかわす、

頭上から剣を振り下ろすが、止められすぐさま剣が迫ってくる、

それを必死に回避して召喚術を使う、選ぶのはタケシー。

 

「来てくれ、タケシー!!」

『ゲレゲレ~』

 

タケシーが電撃をキムランとホーンテッド船長に繰り出すが船長は防ぎ、

キムランは直撃したのに対して効いていないようだ。

 

「へっ、かみなりには慣れてるんでなぁ!」

「かみなり慣れってなんだよ!?」

 

思わず突っ込みを入れるがその間に船長が迫ってくる、

ハヤトは使いたくない召喚石を握った、

緑色のサモナイト石でハヤトが初めて召喚した召喚獣、そうクロだ。

 

「来てくれ…、ん!?」

 

サモナイト石に魔力を通すが僅かな違和感が体を通る、

石からクロが戦っている気配が漂っていた。

クロの奴、戦っているのか!?

もしかしたら俺達を追ってこの付近までみんなが来たのか?

だとしたらこのまま時間をかければマズいかもしれない…!

 

「ハヤト!」

 

クラレットの声が聞こえる、すぐにその方向に体を動かし彼女の横に立つ、

クラレットはイムランと対峙していたはずだ、じゃあなんでここに?

 

「クラレット、イムランは?」

「タケシーで倒しました、痺れてますよ」

 

自慢するように微笑する、イムランの方を見ると倒れているようだ、

時折、憎いとか聞こえるところを見るとまだまだ元気そうだ。

 

「嬢ちゃんは兄貴以上の召喚師ってことか、さすがに油断できねぇな」

「いえ、お腹が痛くなったみたいで蹲ってるところを撃ちました」

「……え?」

 

イムランは持病持ちなのか、ってかクラレット結構容赦ないなぁ…

 

「だからあれほどイラつくなって言ってんのによ、まあいい、行け!ホーンテッド船長!!」

 

再びこちらに向けて船長が突っ込んでくる、

その剣を横薙ぎし二人同時に切ろうとするがクラレットを抱えて後ろに飛ぶ、

クラレットはそのまま召喚術を行使し始めた。

 

「シンドウの名の元、クラレットが汝の力を望む…、来て、プチデビル!」

 

現れた、召喚獣はプチデビル、三又の槍を振りかざし船長を上空から突き刺そうとする。

クラレットの魔力を通して強化されたプチデビルは船長の行動を止める、その隙を逃さない!!

 

「だりゃあああぁぁぁーー!!!」

「!??!?」

 

動きが止まっている船長を胴切りしその体を崩した、

カタカタと音を立てながらサプレスへと送還されていった…

 

「馬鹿な!?ホーンテッド船長までやられるだと!」

「終わりだ、キムラン!降参しろ!」

「降参だと…、俺はキムラン・マーンだぞ、降参なんてするかぁぁ!」

 

キムランは召喚術を行使しながら突っ込んでくる、

クラレットも後方から援護するように召喚術を行使し始めた!

 

「消えちまえ!ダークブリンガー!!」

「ハヤト、突っ込んでください!シャインセイバー!!」

 

キムランが俺にはなったダークブリンガーがクラレットのシャインセイバーに正確に撃ち落されてゆく、

そしてキムランが俺に向けて刀を振り下ろそうとするが、

俺はキムランの手を握り顔面擦れ擦れで刀を止めた!

 

「な、なんだとっ!?」

「終わりだ、キムラン。だりゃっ!!」

 

剣の側面でキムランの顔面を思いっきり吹き飛ばした、

ちょうどイムランの横に倒れるようにキムランが倒れた。

 

「ふう…、何とか勝ったな」

「ハヤト、先ほどどうしてクロを召喚しなかったんですか?」

「さっき、クロの召喚石を握ったら戦ってる気配みたいなのを感じたんだ、もしかしたら俺達を追って近くまで来てるのかもしれない」

「そんな…」

 

みんなに迷惑をかけないために二人で来たのに、

もしかしたらそのせいで迷惑をかけたのかもしれない…

すぐにみんなを探さないと!

 

「ハヤト、ラムダさんとみんなを探しに行きましょう!」

「ああ、そうだな」

 

二人が動き始めようとしたとき、キムランが目を覚ました、

その表情はまるで勝利を確信してるようだ。

 

「ったく…、たった二人で俺達を倒すなんてな、だがもう手遅れだぜ」

「それは、どういう事なんですか!?」

「後ろを見てみな、終わりだぜ!」

「そこまでです!」

 

後ろを振り返るとそこにはサイジェント騎士団がいた、

正面にはサイサリス、そして騎士団長のイリアスさんがいる。

マズい…、こんな路地裏じゃろくに逃げ切れないかもしれない…

 

「まさか、両面作戦とは思いませんでした。やはりあなた達はラムダとつながっていたのですね」

「君たちを捕縛するのは少し引けるが、召喚師に手を出したことには変わりないからね。彼らを捕縛しろ!」

 

騎士たちがハヤトたちを取り囲むように動き始める。

サイサリスは弓を構え、クラレットを狙っている、

召喚師であるクラレットに危機感を抱くのは当たり前の事だろう。

 

「くそっ…」

「……ハヤト、無詠唱で召喚術を使います、牽制ほどにしかなりませんから私を抱えて一気に抜けてください」

「わかった…、やるぞっ」

 

小声で作戦を練る俺とクラレット、

そんな俺たちにイリアスさんが声をかけてきた。

 

「君たちと先輩が繋がっている可能性はあったけど、まさかレイド先輩まで繋がってるなんてね」

「レイドさんがここにきてるんですか!?」

「最近、北スラムで抗争らしき動きがあったようですけど、やはり貴方たちでしたか、南スラムのフラット、調べは付いています、貴方たちを捕縛したのちに彼らにもそれ相応の対応をさせてもらいます」

 

迂闊だった…、オプテュスの戦いは相当派手だった、

実際、俺やクラレットが召喚術を使い過ぎたせいだ、

そのせいで目をつけられていたのか…。

それだけじゃない、今回、レイドさんが俺達を追ってなのかここに来てしまってる。

そのせいで確実にフラットのみんなが目をつけられた…!くそっ!!

 

「ハヤト、今はここを抜け出るのが先決です」

「そうだよな…」

 

クラレットの一言でとりあえず今を乗り越える覚悟は出来た…

タイミングを合わせて、今はこの場を何とかする!

 

「さあ、覚悟してもらいます。捕らえなさい!!」

 

サイサリスが腕を上げ、騎士たちが動き始める一瞬、

ハヤトたちと騎士たちの間に数本の棒のようなものが突き刺さる!

 

「「!?」」

 

驚くのも束の間に棒から煙が大量に出始め、周囲を煙幕で覆う。

催涙性なのか強烈な煙のせいで騎士たちはまともに行動できなくなる、

当然、クラレットの召喚術も発動は出来なかった。

 

「ゲホゲホッ、なんですか。これは!?」

「包囲を崩すな、煙が晴れるまで待て!」

 

イリアスの指示で騎士たちは煙が晴れるのを待つ…

しかし煙が晴れるとそこにには二人の姿は影も形もなかった。

 

「そんな…、いったいどこに!?」

「…流石、先輩の仲間たちですね、周囲を警戒、同時に捜索に入りなさい!」

「はっ!」

 

騎士たちがそれぞれ行動し、散らばってゆく。

マーンの兄弟も、負傷したためか治療を優先してるようだ。

その姿を見ながら考え事をしているイリアスにサイサリスが近づいた。

 

「先回りしなくてもよろしいのですか?彼らはフラット、場所はわからずとも南スラムのどこかに潜伏してるはずですが?」

「もうすぐ日も沈む、捜索は明日にしよう。召喚師の皆さんの話も聞かなければならないからな」

「…わかりました、それでは」

 

納得できないようだが割り切ってサイサリスが捜索に入る、

イリアスは逃げ出したあの二人の事が気になり始めていた。

まだ根拠もないが、この街を変えるような気がしてたからだ…

 

---------------------------------

 

一方、サイジェント騎士団から逃げだしたハヤトたちはかなり遠くまで来ていた。

煙のせいで場所はわからないが、自分たちを連れだした人がいることはわかっていた。

 

「よーし、ここまで来れば…、ってかアンタたち何してたの!?」

「えっと…、だれ?」

 

俺が煙で痛い目を薄っすらと開くとオレンジの服を着た少女が前に居る。

中々目立つ格好をしてるが動きやすそうだ。

クラレットを横目で見るとなんか驚いてるな。

 

「あ、アカネ!?なんでこんなところに」

「決まってるじゃん、なんか面白そうなこと起きてたみたいだからちょっと覗いてたのよね」

「お、面白そうなことって…」

「まあまあ、そしたらアンタたちが召喚師を正面から倒してるし、ビックリしたら次は騎士たちに囲まれて、これりゃやばい!って思ってね。煙幕を出して連れ出したってわけよ」

 

どうやらこのアカネって女の子はクラレットの知り合いなのか。

なんかこっち見てるけどなんだ?

 

「もしかして、アンタがハヤト?」

「ああ、えっとアカネさんだったよな、ありがとう助かったよ」

「さん付けはいいよ、そんなに堅苦しくなくても、しかしあんた見たいのがねぇ~、クラレットのこ…」

「わ~~~!!!」

 

突然クラレットがアカネの口を押える、

顔が真っ赤だし、クラレットどうしたんだ?

 

「あ、アカネ!何を言おうとしてたんですか!!」

「ぷはっ!そんなの決まってるじゃん、お姉さんだからねぇ~」

「お姉さんって…同い年じゃないですか、それに自分だっていないですよね!」

「いないって、あたしは忙しくてそれでころじゃないの!」

「しょっちゅうお仕事サボってるくせに何言ってるんですか、シオンさんが溜息はいてましたよ?」

「うぐ…、それ言われると…」

 

二人して姦しい話をしてるけど今の状況解ってるのかな…。

 

「なあ、クラレット。そろそろ帰らないと不味いんじゃないか?」

「あ!そうでしたよね、レイドさんたちのこと気になるし」

「それってガゼルの事でしょ?それならさっさと帰ってたよ」

「ホントか!?」

「なんで嘘言わなきゃいけないのよ、赤い鎧の人と話しててね、なんだろうなぁって見てたら頭剥げてる人には睨まれるし、ビックリしたわよもう」

「睨まれるぐらい見てたんですか…」

 

話がまた戻り始めてる…、ホントにまずいな

日も暮れてきたし、これ以上はやばいぞ…。

 

「アカネって言ったけ?」

「そうよ、せくしぃ~くのいちのアカネちゃんよ!」

「え、くのいち?」

「あ…」

 

アカネの額から汗が出始めて明後日の方向を向いている。

 

「なあ、アカネってさ…」

「い、今のは聞かなかったことにして!お願い!」

「まあ、助けてもらったしいいけどさ」

「やっぱりそういうのだったんですね」

 

クラレットの一言を聞いてアカネが唖然とした顔でクラレットを見た。

 

「…あれ、気づいてたの?」

「まあ、シオンさんが殆ど隙なしでしたし、シルターン風の店構えだったんでたぶんそうじゃないかなぁーって」

「あ、あははは、なんだ気づいたんだよかったー、あたしさ、くのいちのせいであんまり友達出来ないんだよねぇ、だからかぁ、お師匠がクラレットと友人になっても何も言わなかったの」

「ふふ…」

 

安心したように笑顔になるアカネ、そしてアカネはクラレットに別れを告げ走ってゆく。

 

「じゃあ、あんまり遅くなるとお師匠にどやされるからもう行くね!」

「今日はありがとうございます、アカネ!」

「ありがとうなぁー」

「ハヤト!アンタ、クラレットの恋人なんだから守ってあげなさいよ!!」

「え…、はぁ!?」

「な、ななな…!アカネーーー!!!」

「あははは♪」

 

笑いながらアカネが街に消えていった、

残された俺たちの間には少し変な空気が流れ始めた。

クラレットの顔をうまく直視できない…、チラッと見るとクラレットの頬が赤いようだ。

 

「あ、あのさ…」

「なんですか?」

「そのさ…、えっと…、手を繋ごうか」

「………」

 

差し出した手をジッとクラレットが見つめていた、

少し踏み込み過ぎたのか…、いやでも傍からは恋人って思われてるしこのぐらい…

 

「えっと…」

「あ、はい!」

「うわっ!?」

 

声をかけると突然、手を握られる、

普段から近くにいるけど実際に手を握ってもらうのはそんなにない。

戦闘中に少しあるけどそんな集中してる時に感じられないからな、

クラレットの手は少し冷たくて柔らかい、でも豆があるようだった。

 

「豆…、あるんだな」

「あ…、いやでしたか?」

「ううん、クラレットのがんばってる証だろ?嫌なんかじゃないさ!」

「……ありがと」

 

クラレットの手を握りながら俺たちは孤児院へと足を進める、

急ぐべきなのだがこうやって歩くことを考えてしまっていた。

色々話したいのに手を握りこうやって歩いていると元の世界の事を思い出す。

まああの時も手なんか繋いで歩いたりしてなかったけど…

 

既に日が落ちてきて周りの家に明かりが灯る。

互いに手を握りながら歩いていると孤児院が見えて来た。、

遠目から見た感じじゃ、何か問題があるようには見えないから二人して安心する。

 

「よかったですね、問題がなくて」

「ああ、とりあえずレイドさんたちの話を聞かないとな…」

 

真面目な話をするが次第に歩みが遅くなる、

もし着いたらまた手を離さなくちゃいけないし…。

 

「手…、なんですけど」

「手?」

「これからも少しでいいんですけど、よく握ってくれませんか?」

 

ぎゅっと手を握る力が強くなる、クラレットの手を見ると前にプレゼントしたミサンガがまだあった。

今までもチラリとみることはあったが流石に手を握ると実感を感じる。

 

「まだ、着けててくれたんだな…、それ」

「そりゃ、自然に千切れれば願いが叶うんですから」

「願いってなんなんだ、元の世界に帰ることか?」

「それは…、秘密です♪」

 

こちらを向いて笑顔になるクラレット、

その笑顔はとても安心する感じがして顔が熱くなる、

戦いの後では何時も辛そうにするクラレットだが今回は笑顔になってくれた。

そこらへんはアカネに感謝だな…、

 

そして俺たちは手を握りながら孤児院の玄関へと目を向けた…、

しかし玄関を見た瞬間、俺たちは恐怖することになってしまった…、なぜなら。

 

 

 

 

リプレが立っていた。   笑顔で。




ローカス救済エンドはつまり、ローカス超空気化EDだったんだよ!!
ΩΩΩ<<<ナ、ナンダッテェェェーーー!!!

それは置いといて今回の勝負はハヤトVSキムランです、
一応バノッサよりは強いですけど正直クラレットが後衛にいると途端無理げーっすね。
ちなみに幻実防御はMPを消費して敵の攻撃を防ぐのですが、
当たる瞬間に発動させ消費を最小限にしたりできる設定です。(高等技術
クラレットは一応これの練習を積んでいるため行使できました。
勿論普通の結界もはれます。

あ、ちなみにレイドたちは本編ルート通ってます。

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