サモンナイト ー生贄の花嫁ー   作:ハヤクラ派

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短いぞー、大体原作5話とスウォンのサブイベが同じ枠なんで短くなっちゃいました。
今回は大ボスの登場です、圧倒的とはいかないが大苦戦必須。


第8話 過去からの刺客

――過去は既に終わった事象、決して過去からは人は逃げ出せない――

 

ユエルがフラットに顔を見せるようになって3日ほど経った。

狩人たちはガルフの異変のことを伝え、森には平和が戻ったと聞く、

自分のやった事は間違いじゃなかったんだと思っていたハヤトは今…

 

「う~ん…」

 

ノート片手に格闘していた。

 

「ハヤト、ユエル、書けたよ!」

「お、おう」

 

ユエルが元気そうに俺に書いた紙を見せるが一向に読めない。

理由を合えて言うなら…、クラレットだ。

知りたいことは聞けば教えてくれるし読めない文字は読んでくれる。

基本的にクラレットは優しすぎる、そのせいで頼り過ぎてるのは実感していた。

 

「とは言っても…、流石に読めないのはなぁ…」

「だから基本的な計算とかにしてるんじゃないですか。お買い物とかできるように」

「そうだけどさ、その…」

「ハヤト!ユエルまた覚えたよっ!」

「ああ、うん」

 

ユエルは物覚えがとてもいい、少し常識がズレたとかはあるがあくまで少しだ。

文字も湯水のように覚えてゆく、常識的な範疇だが、しかし文字自体読めないハヤトはそれができない。

 

「ユエルは頭が良いなぁ~」

「えへへ♪」

「……、いまフラットで一番頭悪いのハヤトですからね」

「うぐっ!」

 

ムスッとしたクラレットの容赦ない一言が心をえぐる、

確かにそうだけどまだ半月ほどなんだぞ…、そういえば…

 

「そういえば、気になってたけどクラレットはどうして10年も前の言葉をしっかり覚えていたんだ?」

「そうですね、記憶が戻った時に一気に鮮明になったからですね。そのとき学んだことはしっかり思い出したんですよ、実際ハヤトと違って私にはリィンバウムの言葉と日本の言葉は違う言葉に聞こえますし」

「えっ!?、もしかしてクラレットは使い分けてたのか!?」

「ふふ~ん、驚きました?」

 

大きな胸を揺らし自信満々なクラレット。

正直驚いた、普通に外国の言葉を話してたってことなのか、

あれ、待てよ。なら召喚術で文字も覚えられるようにできないのか…?

 

「なあ…」

「もしかして、召喚術で文字も覚えられないか~なんて考えているんじゃないでしょうね?」

「うっ…」

「そういうことした召喚師は確かにいましたよ。でもその結果…、召喚獣はくるくるぱ~になったらしいです」

 

クラレットは指をくるくる回しながら答える。

くるくるぱ~は流石に簡便だよな…、真面目に勉強するか…

 

「ハヤト!ユエルね…」

「わかった!わかったからそれ以上、心いじめないで!」

 

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勉強が一段落して庭に腰を落ち着けるとそこにはアルバとジンガ、ウィゼル師範が居た。

アルバはジンガの話を聞いて目をキラキラさせているようだ、

師範は…、なんか考え事をしてるのか目を閉じて休んでいる。

ジンガは俺に気付いたのか、声をかけてきた。

 

「おっ、アニキじゃん」

「二人で何の話をしてるんだ?」

「ジンガから修行の旅の話を聞かせてもらったんだよ」

「ジンガの旅の理由って修行だったんだな」

 

ジンガは手に力を入れながら力説し始めた。

 

「ああ、俺っちは聖王国の王都、ゼラムからぐるっと回りながらサイジェントに来たんだぜ。旅の目的はここから西を支配する帝国で、強い奴らを探して戦うことだ。アニキと戦ったのもそのためなんだぜ」

「修行って、どんなことをしてたんだ?」

「酒場で船乗りを相手に大暴れしたとか山賊退治で大暴れしたとからしいよ!」

 

ジンガが先ほど聞いた話を俺に伝えてくれる、

大暴れしかしてないじゃないか…

 

「井の中の蛙大海を知らずだな」

 

目を瞑っていたウィゼル師範の目が開きジンガを見つめながら答えた。

 

「井の中の…?なんだそりゃ」

「聖王国という井戸にいたお前はまだ外の世界を理解しきれていないと事だ。山賊如きに暴れた程度で強くなれるわけなかろう」

「そりゃそうだけどよ…」

「だが…、この言葉には続きがある。されど空の深さを知る。精々この小僧と一緒にまずは自分の事を知ることじゃな」

 

そう伝えると師範はフラットから出てゆく、アルバに挨拶し、そのままフラットを後にした。

 

「んっ?…?」

「あ~、まあ強さの意味を知るってことと同じじゃないかジンガ?」

「ああそういうことか!じゃあまずはクロに一撃入れることだな!」

「オイラ、絶対無理だと思う」

 

少なくともあのクロに一撃入れるのはしばらく無理だろう、クロも本気じゃないだろうし…

だけど回りくどい言い方をしてるけどやっぱり師範は教えるのは一流なんだなぁ。

 

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それから少し時間がたち昼食を食べ終わった後、釣りに出かける時間ができたので行こうとしたが。

 

「昨日の夜中、雨降ったでしょ?そのせいで川が増水してるから行かないほうがいいわよ?」

 

そうリプレの一言で諦め、自主訓練をしているとふと気が付いたことがあった。

 

「そういえば…、あの爪ってどうなったんだろ」

 

ハヤトの気になったのはあの爪だった、もう1週間以上も前の話だが、

クラレットを暴走させたあの爪の行方が気になり始めたのだ。

もし誰かが持ち去っていたのだとすれば知らないうちにクラレットに近づいてしまう、

そこにまだ残っているのなら処分するべきだとハヤトは考えていた。

 

「確か、森の近くの荒野だったよな、行くかな…」

 

誰を連れていくか迷ったがクラレットは絶対に連れていけない、

次にあの暴走が起こったらたぶん助けられないかもしれないからだ。

レイドさんもエドスも仕事、他のメンバーを連れて行ったらもしオプテュスが来たとき対処できないだろうし…

やっぱりアイツの力を借りるかぁ

 

「クロ、居るか?」

 

クロを呼び出すとラミやフィズと一緒にクロが出てくる、

ってユエルはどうしたんだ?

 

「あれ?二人だけなのか」

「ユエルならもう森に帰ったわよ」

「ばいばいって…」

 

ユエルは森に帰ったのか…、今思えばユエルを連れてってもよかったな、

ああ見えてかなり強いし。

 

「!」

「ああ、ごめんクロ、頼みがあるんだけど荒野の儀式後まで一緒に来てくれないか?」

「?」

 

クロは聞いたことない単語が出て悩んでいるようだ、

そうだ、あの時はまだクロを召喚してなかったんだっけ…

 

「儀式後って…、お兄ちゃんもしかしてあそこに行くの!?」

「うん、そうだけど…」

「危ないわよ!またオプテュスとかに襲われたら…、それに…」

「暴走ならクラレットがいなければ、たぶん大丈夫だよ。それに危険に備えてのクロだろ?」

「b」

 

フィズに向かってサムズアップをするクロ、

それを確認してフィズは少しばかり安心したようだ。

こっちを見るとクロは頼りないやつを見る目でこっちを見ていた。

…いいんだ、うん。危ないから頼むんだから、頼れる男になるのはその後だ。

 

「…きをつけてね?」

「確認するだけだから平気だよ、じゃあクロ行こうか」

「!」

 

クロを連れて俺は荒野へと向かう道を歩いてゆく、

昔の戦争で空いた穴の方から出るのが近いんだったよな。

後ろを振り返るとラミとフィズが手を振っていたから俺も振り返しながら先に進んでいった。

 

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クロと荒野を進んでいく、いつもなら先頭を歩くクロだが今回は俺の横だ。

 

「ムイムイ?」

「ああ、今回行く場所は儀式後の場所らしくてデッカイ大穴が開いてるんだ」

「ムム?」

「前にクラレットがリィンバウムに初めて来た場所だからその場所を調べるって目的で向かったんだけどその時、悪魔の竜の爪っぽいのを拾ったたんだ。だけどその時バノッサが現れて俺たちはフィズを人質に取られて何もできなかったんだ。だけどクラレットの魔力が暴走して何とかなったってことがあったんだよ」

「ムイ!?」

「クラレットならもう大丈夫だよ。多分その爪に近づかなければ暴走しないと思う」

「ムムイ?」

「うん、その爪はそこに置きっぱなしなんだ、誰かが持って行ってるなら確認したいし、もしあるならどうにかして処分したいって思ってる」

「…」

「ところでさ…、普通に話せるな」

「ムイ」

 

クロが儀式後の事を聞いてきたので、話したがなぜかクロの言葉が俺にはわかるんだ。

他の人は何言ってるかわからないらしいんだけど、なぜか俺にはわかるそうだ。

クラレットも大体の意思疎通は出来るが言葉がしっかりわかる理由は知らないそうだ。

そんな事を考えているとクロが何かに気づいたか、その場に立ち止まる。

 

「!」

「どうしたんだクロ…、あれ?」

 

誰か向こうから歩いてくる、その姿に俺は驚いた、

赤い鎧を身に纏って巨大な大剣を背負った剣士だ。

剣士は俺たちの姿を確認すると目を鋭くさせた、この感じは…師範の時と同じ!?

 

「お前は召喚師か?この先に何の用だ」

「えっと…、俺はこの先の大穴の確認に行こうと思って…」

 

すると剣士の手が剣に伸び始め…

 

「!!」

「あっだ!?」

「…なに?」

 

クロは俺の足を思いっきり踏みつける、いきなりの出来事で悲鳴を上げてしまった。

 

「何するんだよ!」

「…(ぷい」

 

俺が怒鳴るとぷいっと顔を合わせようとしない、

どことなく不機嫌のようだ、俺は何もやってないだろ…

 

「…すまない、勘違いのようだったな」

「勘違い?」

「いや、こちらの話だ。その召喚獣は君のか?」

「あ~、一応そうなんですけど、見ての通りまだ認められてなくて…」

 

頭を掻きながら男に認められてない事を伝える、

すると男はクロと俺を再度見直す。

 

「…そうか、街の召喚師とは違うようだな。勘違いのお詫びだが大穴付近は先日の雨でぬかるんでいる、足元には気を付けることだ」

「はい、気を付けます、ありがとうございます」

「では、機会があればまた会おう」

 

そう男は言うとサイジェントの方に進んでいった。

一瞬だが男から師範が訓練の時に出す殺気のようなものを感じた。

もしかして召喚師に恨みがある人だったのかもしれない…

 

「ムイ!」

「な、なんだよ…、ってさっき俺の足思いっきり踏んずけただろ!」

「ムムイムイ!!」

「あの人が敵…、いやオプテュスならともかく見知らぬ相手…に…?」

 

違和感が頭をよぎる、そうだ。トードスの一件と言い、クラレットが前にここで聞いた声と言い、

誰かに狙われているのは事実だ、クロはそのことに気づいてたんだ。

なのに俺は能天気な考えで行動しすぎていたようだな…

 

「クロ、悪かったよ。そうだよな、誰かに狙われているのは間違いないのに」

「…」

 

クロは無言で先に進んでいく、俺はまだまだな主だなっと思いながら俺もそれに付いていく。

 

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俺たちが大穴が見える付近に進んでいくと誰かいた。

一応さっきのことも会ったため俺たちは物陰に隠れていた。

茶色の髪でパーカーのような服を着てマフラーの様なものを首に巻いている、

腰には長剣と折り畳み式ポシェットのようなものを付けていた。

 

「…先客がいたのか、いや待てよ。まさかアイツが…」

「…」

 

俺とクロはそれぞれその男に危険を感じた、こんな何もないところにいる。

正確にはここは巨大な儀式後だ、つまりここにいるってことは…

 

「召喚師…」

「ああ、そうだ。そろそろ来ると思っていたがやっぱり来たな」

「!?」

 

男は物陰に隠れているにも拘わらずその男はこっちを見ないで問いに答えた。

男は一回りしこちらを向いた、その茶色の瞳は鋭く何も寄せ付けないような威圧感があった。

 

「お前は誰なんだ、なんで俺たちの事に気づいた?」

「コイツの能力だ」

 

男の足元にはテレビのようなモニターが置かれていた、

それが何か見ていたがやがて淡い光に包まれ送還されてゆく。

召喚獣にあんなのがあったのか…

 

「テレビ―という召喚獣だ、戦闘では使いにくいが監視や偵察に便利だからな、多用している」

「お前がクラレットをこの世界に召喚した張本人なのか!」

 

俺は一番聞きたかった事を直接聞くことにした、この男がここにいて俺たちを知っている。

それだけでも聞く価値があった、だが俺が聞いたのはそれ以上の答えだった。

 

「そうだ、俺がクラレットを召喚した」

「ッ!?」

「!」

「何を驚いてるんだ、お前の知りたかったことだろ?」

「なんで…、なんでクラレットを呼んだんだ!クラレットはただ俺たちの世界にいただけなんだぞ!」

「召喚獣は全て自分たちの世界にいるだけだ。召喚獣の選び好みなんてできるわけないだろ、あの女を召喚したのは失敗だ」

「…失敗?」

「そうだ、本来は別のを召喚するはずだった、だが現れたのはあの女、クラレットだった、そういう事だ」

 

失敗、だがそれならそれでいいはずだ。これ以上こっちに関わらない事だから、

だがこの男はそれとは違うことを考えている、そんな予感が頭をよぎった。

 

「お前は何を企んでいるんだ、クラレットをどうする気だ」

 

男を睨みながら剣を抜く、いきなり剣を抜くのは良くないと思うが、

こいつ相手にそんな余裕がなぜか出なかった。

 

「…本来の役目を果たして貰うだけだ、宿命にその命を捧げてもらう」

「!?」

 

本来の役目?それに宿命に命を捧げるって…、つまりクラレットを…

 

「お前はクラレットを…!」

「…、どうやら邪魔な奴らが来たようだな」

「へへへ、待ってたぜ、お前が完全に一人になる時をよぉ」

 

後ろを振り返るとそこにいたのは見覚えのある顔、

確かオプテュスのメンバーの一人だった。

 

「オプテュス…、こりもせず、まだ俺達を狙ってるのか!?」

「当たりめぇだろ!?お前が来てからずっとバノッサの兄貴の機嫌は悪くなるばかりだ、おかげで俺たちは迷惑しっぱなしさ…、どうしてくれんだッ!」

「そんなのお前らの勝手だろ!俺たちの責任じゃない!」

 

俺が叫ぶと男はビビる様子を見せる、それはそうだ、

本気を出してないとはいえバノッサとやりあったんだから多少は怖気づくよな。

 

「へッ…、そんな口きいてもいいのかよ?二人と1匹でこの人数を相手できるのかよ!」

 

物陰に隠れていたのか8人以上のメンバーが出てくる、

俺一人にこの人数をぶつけるのか…

 

「…」

 

クロは無言でオプテュスと男を見ている、

どっちを相手にすればいいか決めかねているようだ。

 

「おい」

「なんだ、俺たちのやることに文句でもあるのかァ!」

「二人と言ったなそれは俺も入っているという事でいいんだな」

「当たり前だ!!まとめてぶちのめせえェッ!!」

 

オプテュスが武器を持ちこちらに突撃してくる、

恐らく一気に決める気だろう、俺は召喚術を使おうと石に力を籠めようとしたとき

 

「だったらいい、殺すだけだ」

「ッ!?」

 

その一言を聞いた瞬間全身に途轍もない悪寒が走った、

心臓に剣を突き立てられているような恐ろしい恐怖、体が恐怖で動かなくなる…

 

「ムイィッ!!!」

 

叫び声を上げながらクロが俺に体当たりした、

その瞬間、俺の居たところを何かが通ってゆく、そしてそれを確認した。

 

「巨大な…ドリルッ!?」

「な、なんだよこれ…ギャアァァッッ!?!?」

 

ドリルの引き裂かれオプテュスのメンバーが弾き飛ばされてゆく、

あれは召喚術で間違いない…、息を吸うようにあんな威力の召喚術を出せるなんて…。

 

「チッ、少し外したか。一人も殺せないとはな」

 

男の一言で正気が戻る、一人も殺せない…、

つまりまだオプテュスは生きている…!?

 

「クロ、時間を稼げ!!聖母プラーマ来てくれ!!」

「!!」

 

クロが男に向かって直進してゆく、

だがそれを予期していたのか長剣に手を伸ばしすぐさま抜き放つ!

クロはそれを避け男の懐に入り込みボディブローで吹き飛ばそうとするが、

男は左手でクロの拳を受け止める、衝撃が伝わったのか顔は歪むが直ぐに剣を手放し石を取り出す。

 

「来い…、ベズソウ!!」

「!」

 

現れたのは機械兵器、ビームソーと呼ばれる武装を展開しクロを切り裂こうとするが

クロはバックステップしてその攻撃を回避する。

そしてオプテュスのメンバーを治療していたハヤトの横に立つ。

 

「ムイ!」

「もう少しだ、立てるやつは早くここからいなくなれ!!」

「ヒィィーッ!やべぇ、こいつらやべぇ!!」

 

治療を終えた連中から恐怖でその場を去ってゆく。

 

「邪魔だ、ドリトル!」

「!」

 

召喚獣ドリトルのドリルラッシュが俺たち二人を貫こうとするが、

クロは俺を抱えその場から飛び、距離を取る、

殆どのメンバーが居なくなったのを確認した俺は剣を再び抜き放つ。

 

「どういうことだ…、どうして殺そうとするんだ!」

「襲われる相手だぞ?なぜ殺してはダメなんだ」

 

平行線だ、この男の一言で確信した。価値観が違うとかじゃない、

こいつは【殺し馴れてる】そう確信した。

師範から覚悟は聞いていたが、そういう相手はいるのはわかっていた。

逃げるのは簡単だろう、だが逃げたらきっとクラレットは…

 

「まあいい、アイツらの代わりに、お前を消すだけだ、クラレットに戻って貰う為にな」

「戻る…?」

 

男は片手のサモナイト石に魔力を籠める、先ほどの黒い魔力ではなく今度は赤色だ。

赤色はシルターン…、まさかこいつ2属性使えるのか!?

 

「来い、鬼神将ゴウセツ!!」

「ッ!力を貸してくれ、鬼神将ガイエン!!」

 

互いに鬼神将を召喚しそれぞれが力の限り剣を繰り出す!

しかし、地力の違いなのかハヤトのガイエンはゴウセツに手も足も出ず打ち抜かれた!

 

「ガ、ガイエン!」

「ろくに魔力も使えないお前に負けるか、そのまま放て!鬼神斬!!」

 

ガイエンを打ち破ったゴウセツがそのままこちらに突っ込んでくる、

クロはそれを見通していたのかゴウセツに魔力を集中していたソルに肉薄していた!

 

「チッ!」

 

クロがそのまま男の顔面を打ち抜こうとするが、首を傾け攻撃を回避する。

男は開いてる手で剣を抜き放ちクロを切り裂こうとするがクロはぶつかる瞬間剣を殴りギリギリで回避する。

 

「防いでくれ!アーマーチャンプ!!」

 

ゴウセツの刀を防ぐアーマーチャンプ、ハヤトは慣れない魔力を力の限り籠める!

アーマーチャンプの鉄の体に刀が食い込みひび割れてゆく、

アーマーチャンプが砕けるときゴウセツの魔力も切れたのか同時に送還されていった。

 

「クロ、フレイムナイト!!」

「!!」

 

フレイムナイトを召喚してクロに憑依させる、

炎のような熱を宿したクロは男に迫ってゆく。

 

「様子見で碌な石を持ってこなかったのが祟ったか、ダークブリンガー!!」

 

突っ込んでゆくクロの眼前に黒色の武具を出現させクロに打ち放つ!

だがクロには命中せず前方に突き刺さり黒い霧を発生させた。

クロはそれに一瞬戸惑う、だがクロの霧の中から剣が飛び出しクロを突き刺した!

 

「?!」

「クロッ!」

「油断したな、召喚師が後方にいるだけだと思うな」

 

突き刺さった剣を抜きクロを男は蹴り飛ばす、

そのままクロは俺の居る方に転がり、男が剣をしまう、

そして今度は紫の石を取り出した。

 

「三つめ!?」

「来いプチデビル!ヘルズスパイク!!」

「!?」

 

子悪魔が召喚されクロの眼前にやりが出現する、槍は放たれクロを突き刺そうとする!

俺はクロを助ける召喚術を考えた…、だめだ間に合わない!!

クロを助けるために俺はクロを抱きかかえる!

 

「ぐううぅぅっっ!!」

「!」

 

槍は俺の手足に刺さり激痛が走る、痛みを我慢して聖母プラーマを呼び出そうとするが男が追撃を仕掛ける!

 

「終わりだ、フレイムナイト!」

 

現れたのはフレイムナイト、俺を支えてきた憑依召喚獣だ、だが憑依としてではなく確かに実体化している。

フレイムナイトは火炎放射器をこちらに向け、膨大な炎を打ち放った!

 

「うわあぁぁぁーーー!!」

「!!」

 

炎が俺達を飲み込もうとする瞬間、クロは右腕で地面に思いっきり拳を打ち込み凄まじい衝撃を生み出す

その衝撃でフレイムナイトの炎は吹き飛ばされ、同時に飛ばされた土砂でフレイムナイトは吹き飛ばされた。

 

「くっ、規格外なテテだな」

「クロ、大丈夫か!?」

「…!」

 

クロの拳は砕けていた、恐らく拳を砕けるのを覚悟して今の一撃を生んだのだろう、

だがそれは同時にそこまでしないと勝てない相手であることを現していた。

トードスのような小細工をする相手でもない、

ユエルやガレフの様に本能で戦うような相手でもない、

イムランのような召喚師というわけでもない、

バノッサのような力任せの戦いでもない、

こいつは…、この男は本当の意味で強すぎる…

 

「聖母プラーマ、頼むクロを治してくれ!」

「…まともな召喚獣を持ってくるべきだったな、予備用じゃ殺しきれないか」

 

プラーマで傷は何とかなったがクロの右手はまだ治りきってはいなかった、

おまけにアイツは予備用の石だけで戦ってるようだ、つまり手加減に近い…

だが逆に考えれば今倒せれば本気を相手せずに済むという事だ!

 

「クロ、一つだけアイツを倒すことが出来る方法があるんだ…、乗ってくれるか?」

「…b!」

 

少し考えた様だが左手でサムズアップをする、俺はクロの突っ込む隙を作りだす!

 

「降り注げ!ガイアマテリアル!!」

 

三つの隕石が男の頭上に召喚され振り注ぐ、それを男は回避しながら召喚術を使い始める。

だがそれをさせまいとクロはダッシュして一気に接近する。

 

「近づかせるか、ビビアロイド!」

 

出されたのは丸形の機械、それは飛行してクロに接近する。

毒ガスやビームを放ちクロに攻撃するがクロはそれを顧みず突っ込んでくる!

 

「なにっ!?」

「!!!」

 

爆音と共に左手が地面に突き刺さり衝撃が再び生まれる、

至近距離で受けた男は吹き飛ばされるが、体勢を立て直し召喚石を握る、

しかし、そのチャンスをハヤトは逃さなかった!

 

「はああぁぁぁ!!!」

「……シッ!」

 

ハヤトはクロがサムズアップするときに理解したのだ、同じ手を使うと

クロが衝撃を生み出した瞬間一気に近づき剣で一気に決めようとしたのだ。

 

「「!!」」

 

互いの剣がぶつかり合い力勝負になると思われた、

だが男はすぐに剣を緩めて力を流して召喚術で決めようとしたのだ。

 

 

 

――それが彼の作戦だとも知らずに

 

 

 

「回れ希望のダイス、ギャンブルヒット!!!」

「な、なんだと!?」

 

男の表情は驚愕を表した、ハヤトは剣を手放し剣と共に握ってた召喚石を使ったのだ。

希望のダイス、回復と攻撃を選択できる無属性の召喚術、

普通の召喚術とは違い魔力の差で威力が上限することはないがこの召喚術は特別だ。

この召喚術は出したダイスの目によって威力が増減するのだ。

そしてハヤトが出したダイスの目は…。

 

【6】

 

「ッ!!」

「うわぁっ!?」

 

瞬間ダイスが破裂し中から星屑が男に襲い掛かる!

ダイスの衝撃にハヤトは巻き込まれ吹き飛ばされクロの横に転がり落ちた、

男は直撃を食らったようで、粉塵が上がり何が起こったのかよくわからなくなっていた。

 

「き、決まった…、絶対に予想できない一撃が入った…」

「…」

 

互いにもうボロボロだった、クロは両手がもう使えず、

ハヤトは魔力切れもありいつも以上に疲れを感じていた。

だが勝てたのだ、自分よりも圧倒的に実力が上の相手に…

しかしこの程度で倒せるのだったらクラレットは怯えたりはしない…

 

「流石に危なかった…、今の一撃は予想外だったぞ」

「そんな…!?」

 

ダイスの攻撃を受けたはずなのに男は立っていた。

多少傷は負っているようだがそれだけの様だ、

疲労しているようだが、今の一撃はこの男には効いていなかった。

 

「これで…、終わりだな。パラ・ダリオ…」

 

男は魔力の消耗を避けるため、状態異常だけを発動させる、

ろくに動けないハヤト達をパラ・ダリオの魔障が飲み込み浸食させた。

魔障が晴れたとき、そこには指一本も動かせないハヤト達の姿が現れた。

 

「ど、どうやって…」

「幻実防御という技がある、召喚術を防ぐ技だ。もっともお前が知っておいても意味はないがな」

 

男は剣を抜き構えた、そしてハヤトに振り下そうとする。

 

「…く、クラレット」

「今までクラレットを守ってくれて礼を言う、終わりだ」

 

最後に男はそうつぶやく、そして剣を振り下ろした。

 

 

だが剣はハヤトのもとには届かず横から割り込まれた大剣で防がれた!

 

「無事か、少年」

「あ、あなたは…」

「…まさかお前が割り込むとはな、サイジェント騎士団団長【断頭台】のラムダ」

「元だ」

 

ラムダは大剣を振り男を弾き飛ばす、男は体勢を立て直して石を握った。

それにしても…この人が断頭台、レイドさんの尊敬する人…

 

「どうして…、ここに?」

「何、不良が逃げていくのを見てな、捕まえて聞き出しここまで来た。流石に先ほど話した少年が次の日には死体というのは目覚めが悪いからな」

「そうだったんですか」

 

男はラムダをにらめ付けながら石を握り始める、だが魔力がたまり始めるが男は石を使うのをやめた。

 

「チッ、さっきの幻実防御で魔力を使いすぎたか…、まあいい、流石にお前と今戦うのは得策ではないからな」

 

男は召喚術で飛行機械を召喚しそれに飛び乗る、ラムダさんは俺達を庇っているためか追撃はしなかった。

 

「ま…まて、お前は一体誰なんだ!!」

 

最後の力を振り絞り痺れる体で大声を張り上げる、こいつの正体だけでも聞き出さないと…

男はこちらを振り返り、そして答えた。

 

「ソル。ソル・セルボルトだ。クラレットに伝えておけ、自分の存在する理由を忘れるなと…」

 

そう言い残すとソルは飛行機械で風を切り裂きながら空へ消えていった…

 

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それから体が動くようになってからラムダさんに支えられながらサイジェントに戻った。

クロは俺の腕の中で寝ているようだ。俺の代わりに前線で戦ったせいでほとんどボロボロだ。

正直な話クロが負ける姿が想像もつかなかったが今、目の前のクロを見ると考えが甘かったことを実感した。

ラムダさんは何も喋ろうとはしなかった、俺たちの様子を見て気遣ってくれたんだろう。

考え事をしていたらいつの間にか孤児院付近に来ていた。

 

「あ、ここまででいいです。ラムダさんありがとうございます」

「気にするな、しかしあのような男がサイジェントの付近にいるとはな。それにあのクレーター…、少年、ハヤトと言ったな?君はあれが何か知っているのか?」

「あれは…、ごめんなさい。言えません」

 

ラムダさんはこちらを見て少し考えているようだが、笑みを浮かべた。

 

「君が喋りたくないなら、それでいい。そのクラレットと言う人を大切にするんだな」

 

そういうとラムダさんは繁華街の方へと消えていった、

たぶん俺たちの事を気遣って深く聞いてこなかったんだな…、いい人だ。

 

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「いったい何があったんですか…?」

「………」

 

孤児院に帰ると全員に心配をかけてしまった。

あのクロがボロボロでハヤトも傷は治してあるが服の様子からボロボロなのだ。

ラミやフィズに心配をかけてしまったし、ガゼルたちには怒られた。

そしてクラレットは…

 

「どうしても話せないんですか?」

「…実はオプテュスに襲われたんだ?」

「あいつらに襲われたのか?」

「でもよアニキ、クロがいるならそんな奴ら楽勝だろ?」

「そうだけどさ、実ははぐれ召喚獣が割り込んできてクロが俺をかばってボロボロになったんだよ…、ごめん迷惑かけて」

 

出来る限り違和感がないように嘘をついた、

あのソルという男の事をきっとクラレットは知っている、心配をかけたくない一存だった。

 

「そうか…、しかし次からは気を付けてくれ、街の外は危険だからな」

「はい…」

「・・・・・・」

 

その日はそれで解散だった、ジンガに治療をしてもらい服はリプレに直してもらうことになった。

もちろんリプレにも説教を言われたよ、直してもらう手前しっかりと反省した。

クロに会いに行くと子供たちに介護されているクロがいた。

 

「…」

「クロ、今日は悪かったな」

「…(ぷい」

 

ムスッとしたクロが俺の顔を見たら顔を背けた。

そりゃ無茶したって思うけど一蓮托生で戦ったんだから少しぐらい…

 

「…きらわれちゃった?」

「…(ふるふる」

「よかった…」

「ホントに確認するだけだって言ったのにあんなにボロボロになって、心配したじゃない!」

「兄ちゃんばっかり無茶したら姉ちゃんが悲しむぞ」

「フィズ、ごめんな。アルバもその通りだよ、なんでこうトラブルに巻き込まれるのか…」

「…でも、ぶじでよかった」

「うん、次からはなるべく一人で行動しないよ。みんなと一緒に行く」

 

子供たちに謝る、特にフィズとラミは家を出た時に話したこともあって念入りに謝っといた。

そのまま部屋に帰ると寝間着を着て、少し怒ってるクラレットの姿が居た。

 

「待ってましたよ。さあ、教えてください」

 

何時もの優しい目ではなく真面目な目をしたクラレットが俺に問いかけた、

そりゃわかるよな。ずっと子供のころから一緒だったんだから、だけど俺は…

 

「…言えない、クラレットでも今回ばかりは言えないよ」

「どうしてなんですか…、私じゃダメなんですか?」

「違う、クラレットだから言えないんだ。クラレットだって俺にまだこの世界に居た頃の自分の事を話してないだろ?」

「それは…」

「それと同じだよ、別に疑ってるわけじゃない、クラレットを信じてるから、大切だから言わないんだ」

「……」

 

クラレットが俺に近づき胸に顔をくっつけた、いつも近くで感じる彼女の温かさを直に感じる。

 

「クラレット…」

 

俺は彼女の肩に手を乗せて優しく離し彼女の顔を見つめた。

辛そうで悲しそうな目をしたクラレットの顔をしっかりと見つめる。

 

「俺はクラレットの隠していることが気にならないって言ったら嘘になる。だけどそれを無理に聞きたいとは思わないよ。だって無理に聞き出したらきっとつらくなると思うから…」

「…なら約束してください、本当につらいことを一人で抱え込まないで、辛かったら私に話してください」

「俺からも約束してくれ、クラレットも一人で何もかも抱え込まないでくれ」

「…」

「クラレットが俺を助けたいように、俺もクラレットを助けたいんだ。みんな、みんな同じ気持ちのはずだ、だって俺達は家族だろ?」

「…そう、ですね。ハヤトも私も抱え込みすぎかもしれませんね」

 

そうするとクラレットは再び俺の胸に顔をくっつける。

 

「少しだけ、もう少しだけ、こうさせてください…」

「満足するまでいつまでもそうしてていいよ」

 

クラレットを抱きながら俺は考え始めた、

あのソル・セルボルトという男、きっとまた何時か俺たちの前に現れる。

そのとき俺はクラレットを守り切れるのか、それが不安だった…

だけど今はこの暖かさに身を任せたいと思った、クラレットの事が大好きだから…

 

 




原作じゃオプテュス戦だけどバノッサのいないオプテュスとか雑魚なんだよ!(強者の余裕
登場したのはソル・セルボルト、クラレットの兄で設定では次男です。

ハヤトとの戦いでは予備用の召喚石しか持ってきてませんでした。
常に最強石を持ち歩く危険は踏みません。
ハヤトとは実は偶然でありテレビ―で周辺確認したとき見つけたので始末することに。

最後のシーンはもっと長々と話そうかと思ったけどこの二人、
心ほとんど通じ合ってる設定なためあんまり長くてもあれだよ、野暮だ。

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