サモンナイト ー生贄の花嫁ー   作:ハヤクラ派

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喘息が落ち着いてきたので必死にカキカキ…
戦闘シーンってか一番扱いにくいのジンガだよ。
あとウィゼル師範、サブ予定なのにレギュラー化してる…(予定外)


第6話 力も強さも持っていない少年

――力と強さ、その二つを違いはいったい何なのだろうか…――

 

 

「ん~!疲れたー、午後から何するかなぁ…」

 

ハヤトが毎日ボロボロになりつつもそれに馴れてきた。

強くなっているかと言われるとよくわからないと、自分は答えるだろう

何せ比較対象があの巨体を殴り飛ばすクロと気づいたら攻撃を飛ばしてる来る師範なのだ。

師事を受けているこの二人が桁外れすぎてよくわからないとしか言えないのだ。

そんなことを考えているとアルバが嬉しそうに何かを持ちながら近づいてきた。

 

「兄ちゃん、兄ちゃん!」

「あれ、なんだかうれしそうだな」

「へへへ…、じゃあーん!!」

 

アルバは手につかんだものをハヤトに見せる、それはとても大きな蝶々だ。

 

「ずいぶん大きな蝶々だな、どこで捕まえたんだ?」

「川原で捕まえたんだ!すごいだろ!」

「ああ、すごくきれいな羽をしてるな」

 

異世界でもこういう細かいところか変わらないのかっと思い蝶々を見ていると思い出した。

前にもよく虫取りに出かけたことがあったなぁ、中学ぐらいでやめた記憶がある、

まあ、昆虫採集なんて、男受けしかほとんどしないし、家には女の子二人いたからなぁ…

 

「兄ちゃんにやるよ!」

 

アルバは俺に蝶々を喜びながら渡してくるが俺は受け取れなかった。

 

「ありがとな、でもこいつは逃がそうか」

「えー!?」

「捕まってるより、空を気持ちよさそうに飛んでるほうが蝶々は綺麗だと思うんだ」

「…そうかも」

「それにさ、女の子が多いフラットに虫を飼い始めたら、「かわいそう」とか結構言ってくるぞ、これ経験談な」

「そうなのか、じゃあ川原に戻してくる!」

 

そう元気よく言うとアルバが川原に向かって走ってゆく、その姿を俺は後ろから見守っていた

 

「転ぶなよ~」

 

アルバを気遣うため一言声をかけた、するとアルバはこっちを向いて手を振っている、

後ろ向いて走ると危ないって、…あ、こけた。

 

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アルバを見届けたあと俺はちょっと前のことを思い出した、イムランのことだ。

イムランが自分のことを【金の派閥】と言っていた、金の派閥って何のことなんだ?

もしかしたらクラレットならそのことを知ってると思い彼女を探すことにした。

 

 

そのころクラレットは庭でリプレと一緒に洗濯物を干していた。

他の人よりは随分できるクラレットも横にいるリプレにはかなわない、

そういえば…、リプレはいつもこんなに働いて大丈夫なのかな…?

 

「んっ?どうしたのクラレット」

「あの、そんなに働いてて肩、こったりとかしないんですか?」

「あのねぇ…、私はそんな年じゃないんですけどぉ!?」

 

リプレはムスッとしながらクラレットに詰め寄る、クラレットは焦りながらも答えた。

 

「そ、そういうことじゃなくて、ただ単に気になったというか…あの、ごめんなさい…」

 

素直に謝るクラレットを見て、ため息交じりでリプレが話した。

 

「…って、こんなことで詰め寄っても仕方ないわよね、本当にそのとおりよ。あーあ、まだ17歳だってゆうのに…」

「あ、年下だったんですか」

「え、クラレットって今何歳なの?」

「最近詳しく知ったんですけど、たぶん18歳だと思います」

「ちなみにハヤトは?」

「えっと…、16歳です」

 

ハヤトの年齢を聞いたリプレは、ああやっぱり、といった顔をしている

 

「やっぱり、年下だったんだ。でももっと下だと思ってた」

「ハヤトは童顔ですからね」

「そうそう!可愛い顔してるわよね、あと身長低いし」

「悪かったな、身長低くて童顔でさ」

 

二人で姦しく話をしてると物陰からハヤトが姿を現した。

今度はハヤトがムスッとしている、彼にとってその二つはコンプレックスなのだ。

 

「あ、ハヤト…、あはは」

「そりゃ、年齢より身長低いさ、前から数えたほうが早いし、しかも童顔だし…」

「で、でも私は身長低いほうが好きですよ!顔見るとき同じ目線ですから」

「そ、そうか…?」

 

二人が顔を赤くして話をしてるのをリプレが見て手「またやってる」と心の中で思った

 

「はいはい、洗濯物も終わりだからクラレットとお買い物行って来て!」

「ちょ、何怒ってるんだよ?」

「怒ってない、呆れてるの、もう!」

 

花見以来二人は所かまわずイチャイチャしてるのだ、

そのうえ自分達は自覚なしだからたちが悪い。

そんなリプレに追い出され、広間に来ると子供たちとクロにウィゼルがそこにいた。

 

「ん?お前さんたちか、どうした?」

「いや、これから買い物に行こうと思って、師範は?」

「急ぐ理由もないのでな、少しのんびりしてるところだ。こやつとも話がしたいしのう」

「…」

 

ウィゼルの目線の先には子供たちに弄られるクロの姿が見えた、

クロがここに来てから人気者でほとんど子供たちと遊んでる姿が見える

重いものを運ぶ時も軽く持ち上げてくれるし、リプレは大助かりだ。

 

「若造、お前さんよりこの家に貢献しとるのではないか?」

「いや、俺は訓練で忙しくて、その前は釣りとかよく行ってましたから!」

「ハヤト、準備できましたよ」

 

ウィゼルと話をしてるとクラレットが準備ができたと声をかけてくる、

ハヤトは自分の武器を持ち、玄関へと向かってゆく。

 

「じゃあ行ってきますんで、ごゆっくり」

 

そう一声かけて、ハヤトとクラレットは商店街へと向かって行った。

 

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二人が商店街で買い物をしているとハヤトは先ほど考えていたことをクラレットに尋ねることにした。

 

「なあ、クラレット」

「どうしたんですか?」

「イムランが言っていた【金の派閥】って何のことなんだ?」

「派閥ですか…、そうですね。教えておきましょうか」

 

買い物はそれで一区切りしたのか、商店街から少し離れて繁華街のベンチに二人は座った。

 

「派閥でしたよね?」

「ああ、イムランは自分を金の派閥って言ってたよな、派閥ってほかにもあるのか?」

「ほかにもありますけど、基本的には金の派閥と蒼の派閥ですね」

「蒼…?」

「はい、金の派閥は召喚術を利益目的で行使する人たちです。召喚鉄道、召喚船、土木作業、そういうのを生業とする人たちです」

「じゃあ、蒼の派閥は?」

「蒼の派閥は召喚術で世界の心理、在り方などを調べる組織です、こちらは国際的なものですかね」

「なるほど…、金に蒼かぁ、それってどんな召喚師も所属してるのか?」

「ほとんどの召喚師はそれのどちらかに所属してます。ですが家伝などのその家だけに伝わるなどの秘術を持つ召喚師は組織に属さないこともあるんです」

「じゃあ、クラレットもそっち側ってことなんだ」

「そうですね…、そういうのを一括りに外道召喚師と呼ばれるんです」

「外道? なんでまた」

「派閥の監視下に入ってないですからね。召喚術の力は個人でもってはいけないものなんです」

「そっか…、あんまり使わないようにしないとな、目をつけられたらたまったもんじゃないし」

「そうですよ、たださえ全部の属性使えるんですから、解剖でもされちゃいますよ」

「…それは勘弁だよ」

 

疑問を聞いたハヤトは苦笑しつつも少しほっとした。

どうやらバレなきゃ平気らしい、イムランもそこまで気にしたりはしないだろう。

むしろ気をつけなきゃいけないのは蒼の方かもしれない、

元の世界でも一番厄介なのは警察だ。この世界での自分たちは犯罪者に近い位置にある、

もし、派閥に見つかれば自分もそしてクラレットもどうなるかは予想がつくだろう、

そんなことを少しばかり考えてると視線の先に人だかりができてることに気付いた。

 

「…なんだろう、あの人だかりは…」

「確かにそうですね、なにかあったのでしょうか?」

 

俺とクラレットが気にしてると人だかりの奥に見覚えのある姿が見えた、

あれは確かオプテュスのメンバーのはずだ。

 

「あれは…、クラレット!ちょっとここで待っていてくれ!」

「ハ、ハヤト!?」

 

クラレットにその場で待ってもらい、俺は人だかりの間を進んでゆく、

その先ではオプテュスの連中が鉢巻を付けた赤毛の少年に絡まれていた。

……あれ?なんでオプテュスが絡まれてるんだ。

 

「いてててっ…!このガキ、手を離しやがれっ!!」

「アンタが謝る方が先だろ?」

「てめぇ、俺たちが何者だかわかってて言ってんのかっ!?」

「そんなこと関係ねえよ、人を突き飛ばしといて謝りもせずに行こうってほうが悪い!ほら、そこのジイさんに謝れよ?」

「ぼ、坊や…、もういい、やめとくれ」

「あァ?良くないだろ、悪いのはこいつらなんだぜ」

 

状況はよくわからないが、どうやら少年がオプテュスにちょっかい出された老人を助けたらしい

そこまではよかったが少年が老人に謝罪をオプテュスに求めてるそうだ。

どっちが悪いと言えば当然オプテュスだがオプテュスの連中のことを考えると、

ここで問題を起こせば老人もこの街に住めなくなる、そう思い俺はその中に関わることにした。

 

「さあ、謝れッ!!」

「このガキ…、みんな、やっちまえ!!」

「やめろっ!!」

「お前は…、また俺たちの邪魔をする気かっ!?」

「子供相手によってたかって、恥ずかしいとは思わ」

「ぎゃあっ!」

 

俺がオプテュスと話をしてると横から悲鳴が聞こえる、

そっちを見ると少年がオプテュスの一人を殴り倒した後のようだった。

 

「…え!?」

「なーんだ、大口たたいていた割には、弱いじゃんか、さあ!次はだれだ!」

「こいつ…舐めやがって!!」

 

オプテュスの残りのメンバーがハヤトと少年を囲み始める、

ハヤトは困惑しつつ少年は笑みを浮かべている、そんな中に人影から一人の女性が姿を現した。

 

「ハヤト、大丈夫ですか!」

「クラレット!? 今こっちに来ちゃダメだ!」

「お…お前は…!」

 

オプテュスの連中がクラレットを確認すると顔が青くなってゆく、

そして一目散にその場から逃げ出していった!

 

「ば、化け物女だぁぁーーー!!」

「え…あ、あの…?」

「なんだよ、ビビッて逃げちまった」

 

オプテュスがクラレットを見て逃げ出す…?

ああ、そっか、クラレットの暴走にまともに被害にあったのはオプテュスだったな

まあとにかくへこんでるクラレットを励まさないとな。

 

「クラレット、元気出せよ」

「私は大丈夫です、それより!厄介ごとに首を突っ込まないでください!」

「ええっ!?」

「遠くから見てていきなり突っかかるですからびっくりしましたよ!」

「ああ、うん、ごめん」

 

俺たちが言い合いを始めるころには人だかりもなくなり

その場には少年とクラレットと俺しかいなくなった、老人の姿も見られない

どうやらあのごたごたで逃げ出したようだ、まあ当初の目的も大丈夫だな。

 

「へへへ、助けてもらっちまったみたいだな」

「俺が助けたって訳じゃないけど、余計なお世話だったかな?」

「私はもう関わりたくないです。結構傷つきましたし」

「まあ、気にすんなって!どんな奴でもアンタたちの心意気はうれしかったぜ!」

 

少年はよくわかっていないようで、クラレットのことは気にしてないようだ。

しかし、オプテュスに関わったのは少しまずかったかもしれない、

あいつらは特にバノッサは一度かかわるとかなりしつこい性格をしてるからな。

 

「けど、こいつらを敵に回したのはまずい、早いとこ、立ち去った方がいいな」

「なんでだ?俺っち、これから宿を探さなくちゃならねぇんだけど…」

「とにかく、説明は後でしますからここから離れましょう、人が多いところでは周りに迷惑がかかるかもしれませんし」

「…わかった」

 

俺たちは少年を連れて場所を移動することにした、

オプテュスが手を出しにくく、安心して現状を説明できる場所、

その場所を探しながらその繁華街を後にするのであった。

 

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「で…、ほいほいとあのガキを連れて来ちまったって訳かよ?」

「…」

「仕方ないだろう、ほっとくわけにもいかないし…、ってクロなんでそんな呆れ顔なんだよ!」

「そりゃ、お前らの考えなしの行動に呆れてるんだろ?」

「私も入ってるんですね…、まあハヤトの行動を止めなかったことには自覚ありますけど」

 

ガゼルとクロにあきられつつ俺たちは孤児院に戻っていた、

元からそんな場所なんて孤児院かメイメイさんの店ぐらいしかないことはわかっていた。

そんなことを考え反省していると広間からリプレが姿を現す、どうやら少年と話していたらしい

 

「…で、あいつは?」

「今、ご飯食べてるよ、よっぽどお腹がすいてたのねぇ…、もうすごい食べっぷり」

「ちゃんとメシの代金、もらっとけよ」

「あ、ああ…」

 

ガゼルに責められ、仕方なく広間に向かうと、かなりの量を食べている少年の姿があった

その横には師範の姿が見える、どうやらまだ帰っていなかったようだ。

 

「えへへ、悪いな、メシまでごちそうになっちゃてさ、そういえば、自己紹介がまだだったよな、俺っちの名前はジンガ、武者修行の旅をして、東から来たんだ、アンタたちの名前は?」

「ああ、俺はハヤトだ」

「クラレットと言います」

「ハヤトにクラレットか…、なあ、迷惑ついでっていったらなんだけどよ、ここに泊めてくれねぇかな?」

「「え!?」」

「えへへ、本当いうとさ、俺っちあんまり、金持ってなくて、なあ頼むよ。そうじでも何でもするからさぁ」

「どうしますか、ハヤト…」

「う~ん…」

 

ジンガの頼みに悩んでいると俺たちだったが、それをよしとしないガゼルが割り込んできた。

 

「ちょ~っと待ったぁ!おいチビ、お前にゃ遠慮ってものがないのかよ、金がないのは、こっちだって同じなんだ、みりゃわかるだろ!?」

「ガゼル…、言ってて空しくならないか?」

「…と、とにかくっ、そういうことだから、さっさと出てけっ!!」

「ガゼルさん、相手はまだ子供なんですから」

「そうよ、何もそこまで言わなくたって…」

 

ガゼルがジンガを追い出そうと騒いで、それをクラレットとリプレが宥めようとしている

確かにフラットに余裕があると聞かれれば余裕はないだろう、

だけどここで追い出すのも…

するとジンガがリプレの方を見て何かに気付いたようだ。

 

「……ねえちゃん、ちょっとそこに座ってくれよ」

「え?」

「おいっ、人の話を聞いてんのかっ!?」

「わかってるって!だからちょっとだけ待ってろよ」

「こ、これでいいの?」

 

リプレがジンガに勧められ椅子に座わる、そしてジンガがリプレの後ろに周り肩に手を置いた

 

「目を閉じて、息を楽にして… ハアァァァ…!」

 

ジンガが力を籠めると手から青白い光は漏れて淡い光を放ち始めた

 

「え!?」

「あの光は…確か…」

 

光が収まりジンガがリプレから手を放し、ふぅ~っとため息を吐いている

リプレは肩を動かし、自分に何が起こったか確認してるようだ。

 

「…あれ?あれっあれれ!?」

「リプレ?どうしたんですか」

「えっと…肩こりが…、治っちゃった…」

「な、何しやがった、お前っ!?」

「ほう、【ストラ】か」

 

お茶を飲んで様子を見ていた師範が口を開けた、どうやらジンガの力を知っているようだ。

 

「師範は今の力を知ってるんですか?」

「ああ、ストラというシルターンの気功術の一つだ」

「気功術…」

「自身の身体能力を強化したり、先ほどのように他者の治癒力を高め治療を行ったりする技だ」

「じゃあ、それを覚えればもっと強く…」

「無理だな」

「な、何で!?」

「ストラは一朝一夕で覚えられるものではない、数か月の訓練を行いやっと手の届く技だ、お前さんにはそんな時間はないだろ」

「…はい」

 

どうやらすぐに習得できる力じゃないようだ、覚えれば楽になれると思ったんだけどなぁ…

 

「うまいメシを作ってれたお礼さ、金の代わりにならないだろうけど、勘弁してくれよな」

「そんなことないって!ありがとう、すごく楽になったよ」

「じゃあ、俺っちはもう行くよ、そんじゃあな!」

 

ジンガは俺たちの間を抜けて孤児院から出ていこうとする、それを見てクラレットが呟いた

 

「でも、今から宿を探すのは大変でしょう、お金もないって言ってましたし…」

「ねえ、ガゼル…」

「ダメだダメだっ!俺は断固、反対だっ!」

「いいじゃないですか、泊めてあげましょうよ」

「お前が言える立場なのかよ!」

「私はガゼルさんと違って、家事の手伝いしてますし、子供たちの面倒見てますから。それにリプレは最近肩こりに悩んでたんですよ、それぐらいお礼するのは当然だと思います」

「そうよ、そうよ!」

「ぐぎぎぎ…」

 

家を動かす女子二人組に言いくるまれて、ガゼルは何も口が出せないようだ

女子が二人いるとどう足掻いても言いくるまれるんだよなぁ…

 

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とりあえずジンガが泊まることが許され、少し時間がたった。

俺はクラレットとアルク川に釣りに出かける、今日は黄金魚が釣れた、俺は普通の魚が釣りたい。

孤児院に戻りリプレに魚を渡しジンガの様子を見ようと孤児院を周るがジンガの姿が見えなかった。

 

「ジンガの奴、何処に行ったんだ?」

「はい…、あのガゼルさん知りませんか?」

「あいつだったら、外に出て行ったぜ」

「「…まさか!?」」

 

二人してガゼルの方を向くがガゼルは俺は無実だと主張し始めた

 

「おいおい、言っとくが俺は無実だぞ!?何だか知らねえけど「宿代を作ってくる」とか言ってたから仕事でも探しに行ったんじゃねぇのか?」

「そんな、まだオプテュスが探してるかもしれないのに…」

「あのハチマキ小僧だったら、繁華街にいると思うわよ」

 

近くにいたフィズが俺たちの疑問に答える、というかハチマキ小僧って…

 

「ホントなんですか?」

「うん、この町で一番賑やかな所を教えてくれって言われたから、あたし、教えてあげたもん」

「…まずいぞ、連れ戻してこないと!」

 

ジンガとオプテュスが争ったのは繁華街だったはずだ、

じゃあジンガを探すために間違いなく繁華街周辺を探すはずだ。

 

「おいおい、慌てるようなことかよ?」

「ジンガがオプテュスと喧嘩をしてたのは繁華街なんだよ!」

「いっ!?」

「連中のことだ。間違いなく仕返しに来るに決まってる!」

「あのガキ…、そこまで面倒かけさせるかぁっ!?」

 

俺とガゼルが飛び出るように孤児院を出発しようとするが、

クラレットもそれについていこうとする。

 

「ハヤト、私も行きます!」

「いや、クラレットはここに残っててくれ、バノッサが出てきたらクラレットが危ない」

「でも…」

「大丈夫、クロォー!ちょっと来てくれー!」

 

クロの名前を呼ぶと子供部屋からクロが姿を現す、

それに続きラミとアルバも部屋から顔を出した。

 

「…」

「クロ、実はジンガがオプテュスの連中に襲われるかもしれないんだ、力を貸してくれ」

「……」

 

クロは俺の頼みを聞くと、何やら悩んでいるようだ。

他の召喚獣と違いこいつはホントに俺の頼みをすぐに聞いてくれない。

 

「おにいちゃん…たすけてあげて?」

「オイラからも頼むよ、クロ」

「私からもお願いします、ハヤトを助けてあげてくれませんか?」

「…b」

 

みんなの頼みを聞いてクロは仕方なく俺の頼みを聞いてくれるようだ。

正直クロは俺よりもかなり強い、こいつ一人でオプテュスを蹴散らせるぐらいだ。

 

「よしガゼル、行こう!」

「おう!」

「!」

 

俺たち3人は繁華街に向けて走ってゆく、それを子供たちとクラレットが後ろから見守るのだった。

 

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俺たちが繁華街に着くとジンガを探し始めることにするが、

ジンガは目立つところにいたのですぐに見つかった、なにやら看板を背負ってるようだ

 

「ありゃりゃ、そんなに慌ててどうかしたのかい?」

「どうもこうも…」

「!」

「な、なんだこりゃ!?」

 

クロとガゼルが看板を確認すると驚愕を現している、

俺はまだ文字が読めないせいで何が書いてあるかわからない、というかクロは文字読めるのか…

 

「おうガキっ!こんな看板出して、どうする気だっ!?」

「どうするって…書いてあるだろ?賭け試合だよ。俺っちに挑戦して勝てば賞金がもらえる」

「な…」

「手っ取り早く稼ぐにはこれが一番なんだ。修行にもなるし、いいことづくめだろ」

「ううっ…頭が痛くなってきた」

 

ガゼルが頭を抱えてる、俺も頭を抱えたくなるよ、

オプテュスのことは話したはずなのに危機感がなさすぎる…

 

「心配すんなよ、これでも今まで、負け知らずなんだから」

「そういう問題じゃなくてな…」

「…」

 

俺がジンガを説得しようとするとクロが俺たちの間に割り込んでジンガを睨み始めた

やがてジンガを挑発するように腕をくいくいとし始める。

 

「なんだ、俺っちとやる気なのかチビ助?」

「ちょ、ちょっと待てってクロ!まさかお前めんどくさいからぶっ飛ばして連れて帰ろうなんて思ってるんじゃないだろうな!?」

「b」

「「b」じゃなくて、さすがにマズいぞ」

「なんだよ、俺っちがこんなチビ助より弱いっていうのか?」

「いやクロは…」

「ほォ、賭け試合ねェ、なかなか楽しい商売を考えたじゃねェか、はぐれ野郎?」

 

俺が後ろを振り向くと、そこには今一番会いたくない人物が立っていた

 

「バノッサ…」

「!」

「なんだ、女はいねぇのかよ、チッせっかく吹っ飛ばしたお礼に来てやったのによォ」

「仕返しって、元々お前たちがクラレットを追い詰めたせいだろ!」

「うるせェ!はぐれ野郎、俺様がせっかく許してやろうとしたら吹っ飛ばしやがってよォ!」

「…!」

「なんだ、このチビ助は?」

「クロは俺たちの仲間だ」

「ふん、はぐれははぐれ通し仲がいいってことだな、まあいい賭け試合ってのをさせてもらおうじゃねェか」

 

バノッサが腰に付けた二つの剣を抜き放つ、俺も腰に手をやり剣を握った

 

「ハヤト、周りの連中は任せろ!」

「!」

 

ガゼルとクロも周りのオプテュスに向かって構えた。

 

「おいおい、戦う相手はそっちじゃねぇぞ、俺っちだ」

「チッ、うるせェ!クソガキ、手前は黙ってろ、行くぞはぐれ野郎ォ!!」

 

バノッサが二刀の剣を振り下ろしてくる、

それを受け流しながらハヤトはバノッサの横に立ち蹴りを入れてバノッサを吹き飛ばした。

 

「ガッ!?なんだとォ!」

「……?」

 

ハヤトに違和感が浮かんでいた、バノッサと戦ったのは確かに一回だ、

だがあの時のバノッサの剣は明らかに速かった、だが今のバノッサの剣はそれほど速くはなかった

 

「もしかして…、師範とクロとの訓練が…」

「なにごちゃごちゃ言ってやがる!!」

 

バノッサが剣を今度は片手で振り下ろしハヤトがそれを避けるともう一本の剣でハヤトを攻撃した、

ハヤトがその剣を受け止めるがバノッサの怪力に徐々に押され始める!

 

「くっ…なんて力だ」

「オラァ!!」

 

空いた手でハヤトに攻撃を加えるがハヤトはバックステップしバノッサと距離をとる

そしてポッケからサモナイト石を握りしめた。

 

「力を貸してくれ…、フレイムナイト!!」

 

その言葉を聞き届け、空間がゆがみフレイムナイトが姿を現す、

そしてハヤトの体と一体化し、ハヤトの体の芯に熱がこもり始めた!

 

「その力…、召喚術か!?」

「行くぞ、バノッサ!!」

 

バノッサに一気に突っ込み、フレイムナイトの力で強化された一撃を叩き込む!

しかしバノッサはその力を受け流そうとせず正面から防ぎ切った!

 

「なっ!?」

「舐めんじャねェぞ、はぐれ野郎!召喚術が使えた程度で勝てると思ってるのかよォ!!」

 

バノッサが力任せに俺を弾き飛ばし、剣を振り回しながら攻撃を仕掛けてくる、

本気になったのか先ほどよりも速く自分を確実に切り裂く攻撃を高速で仕掛けてきた!

 

「うっ!?来てくれ、アーマーチャンプ!!」

 

すぐさまハヤトはアーマーチャンプを召喚する、目の前に現れた鉄巨人にバノッサは怯むことなく切り付けるが

すぐさま防御用と悟ったのかアーマーチャンプを乗り越えハヤトに迫ってくる!

 

「…落ち着け、師範より遅いしクロより重くない…いける!」

 

突っ込んでくるバノッサにこちらも突っ込み、交差する

その瞬間ハヤトはバノッサの腕を切り付け剣を一つバノッサは落とした。

 

「ッ!? はぐれ野郎…テメェよくもやりやがったな!」

「そっちこそ、召喚術使ってるのにチート気味た強さしやがって…」

「まあいい、テメェを半殺しにでもしてあの女から召喚術を聞き出せばその力も俺様のもんだ」

「そんなことはさせない、今ここでお前を倒す!」

 

バノッサは抑えている腕を離し落ちている剣を握りしめこっちをにらめ付けている

痛みは感じていないようだ、間違いなく本気になったはずだ…

俺も剣を握りしめ、頭の中で召喚術を使うことを考える、

しかし、二人が再び剣の打ち合いをすることは無かった。

 

「バ、バノッサさん!!」

「チッ、どうした!」

「あのチビ助がやべぇ!!」

 

俺はバノッサから目を離しガゼルの方を向くとそこにはオプテュスのメンバーを

物のように掴んで振り回しているクロの姿が見えた、あいつ、質量とかどうなってるんだ…

 

「!!!」

 

クロは砲弾投げのように男をバノッサに向けて投げ飛ばす、それをバノッサがよけ、俺を睨らむ

 

「覚えとけよ、はぐれ野郎!次会った時はぶった切ってやる!おめえら!引くぞ!!」

 

バノッサの掛け声でたださえ引き気味だったオプテュスのメンバーが北スラムのほうに逃げ出していった

 

「ふう…、危なかった…」

「待てぇぇぇっ!挑戦料、払えぇ~っ!!」

「ああ、なんだかもういいや」

 

俺はその場に座り込み休み始めると、横に何時の間にかいたクロにポンポンと慰められていた…

 

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俺たちは繁華街で問題を起こしたため逃げ出すように南スラムに戻っていた、ジンガ以外さすがに疲れてるようだ。

 

「もう金はいいからどっかへ消えちまえよ…」

 

ガゼルが悪態をついた言い方をするが俺もさすがに少しはそう思っていた、

クラレットとリプレに怒られた方がまだましだと思うほど今回は疲れた…

 

「そうはいくか、受けた恩はきっちりと返すのが通りだからな、それに…」

 

ジンガが何やら獲物を見つけたような笑みを浮かべながらこちらを見ている

 

「こんなに強いやつを前にして、戦わないのは格闘家の名折れだぜ!」

「…え、俺!?」

「ああ、横目で見てたけどあんたすげぇな!あんな速い剣をさばけるし、そのうえ不思議な力も使う相手は初めてだ、何としてでも勝負してもらうぜ!!」

「…あ~、どうしても、勝負したいのか?」

「ああ!強いやつと戦ってこその修行の旅だからな!」

「…わかった」

「おいおい、本気かよハヤト!?」

「といっても今じゃないし、さすがに真剣を使うわけにもいかないから、孤児院に戻ってからでいいか?」

「俺っちは真剣でも構わねぇぜ!」

「一応、俺には師範がいるんだ、だからその人の前で戦いたいんだよ。悪い所とか指摘してくれるかもしれないし」

「そういうことなら、わかったいいぞ」

 

勝負しないということ聞かなそうだし、さすがに真剣で戦うわけにもいかない、

俺はジンガとの勝負をどうするか悩みながら孤児院へと戻るのっていった

 

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「いいぞ、他者との戦いもいい訓練だ」

 

師範からはその一言だった、曰く実戦を超える訓練は無いそうだ。

だがさすがにここでは子供の目もあるため刃を潰した剣を使うことにした。

それって、子供がいなかったら真剣使わせる気だったのか…

 

「呆れた…、そんな理由で戦おうってわけ?」

「男って単純ね~」

「けんか…よくないよ?」

 

フラットの女の子たちにはとても不評のようだ、もとから争いは嫌いな人たちだからな

そしてその中で特に争いが嫌いそうなクラレットは…

 

「どうして呼び戻すだけでこんな状況になってるんですか!!」

「だってさ、ジンガが戦わないといけないって…」

「もう!ハヤトは周りに流されすぎです!もし大けがしたらどうするんですか!」

「うーあー」

「聞いてるんですか、ハヤト!!」

「は、はい!」

 

クラレットがハヤトに説教をしていると、それを止めるためレイドが近づいてきた。

 

「クラレット、そこまでにしてあげなさい」

「レイドさん…」

「確かに少々問題があったかもしれないが彼はしっかりジンガを連れ戻したじゃないか、それに勝負といっても訓練のようなものだ。私やウィゼルもいる、間違いは起こらないさ」

「…そうですね、ハヤト。やりすぎには気を付けてくださいね」

「ああ、わかったよ、レイドさんありがとう」

「しっかりな」

 

ハヤトは待っているジンガの正面に立ち、剣を構えた。

 

「待たせたな、ジンガ」

「まあ、ちょっと無理いって戦ってもらうんだ。少しぐらいは待つぜ」

「勝負はお互いの攻撃が一撃入ったら負けだ、急所は狙うなよ」

「おう!」

「はい!」

 

ハヤトはジンガを見て考えていた、ジンガは武器を持ってないおそらく素手で戦うんだろう。

なら武器を持っている自分が有利だと思っていた。

 

「はじめ!」

「おっしゃぁぁーー!!」

「!?」

 

叫び声と共に恐ろしいスピードでジンガが迫ってきた、まさかジンガがここまで速いとはハヤトは思っていなかった。

そして、ジンガの拳がハヤトの腹部をすさまじい勢いで貫いたのだった!

 

「ガッ!?」

「ハヤト!!」

 

クラレットがまともに攻撃を受けたハヤトに咄嗟に名前を叫ぶ、ジンガは攻撃が完全に入った瞬間勝利を確信してた。

ハヤトはそのまま倒れ掛かるが、宙に浮いた足に力を入れ咄嗟に態勢を立て直す、その光景にジンガは驚愕した。

そしてハヤトは構えていた剣に力を籠め、ジンガの頭部に思いっきり打ち込んだ!

そのあまりの一撃にジンガの体は一回転して地面に崩れ落ちた、そしてしばし静寂が続いた。

 

「ぐっ…ゴホゴホ」

 

危なかった…、もし普段からクロに殴られてなかったら今の一撃で意識が飛んでいた。

師範が言っていたのはこういうことだったのか、むしろクロの行動がここまで助かるなんて…

 

「勝者、ジンガ!」

「「「「え!?」」」」

 

ハヤト達はウィゼルの結果に驚いていた、むせているが意識のあるハヤト。

倒れて気絶しているジンガ、どうしてハヤトが負けになるのかわからなかった。

 

「あの、なんでハヤトの負けなんですか?」

「先に攻撃を当てたのはその小僧だ、だから小僧の勝ちだ」

「でも…」

「【二の太刀要らず】という言葉がシルターンにある」

「・・・・・・・」

「もしこれが実戦で小僧が拳に武器を持っていればその時点で若造の負けだ。相手の力量を探り切れなかったことが敗因だ」

 

ウィゼルの言葉は説得力があった、ハヤトは慎重すぎたのだ。

自身が大怪我を負った事が原因で相手を観察しすぎる癖が付いてしまった

故に我武者羅に突っ込んでくる相手にどうしても後手になってしまう悪癖が付いてしまったのだ。

 

「相手の行動が終わってから動いてはすべて遅すぎる、わかるな?」

「はい…」

「…!」

 

クロがハヤトの足を軽く蹴っていた、なんとなくハヤトはヘコんでんじゃねーよ、と言ってる気がした。

ハヤトの師になったばかりのウィゼルとクロはハヤトの悪い癖にすぐ気づいた。

ウィゼルは攻撃を見極める目をクロは攻撃を受けても耐えきれる心構えを教えてたのだ。

二人は基本、会話などはしないが自分が教えることは大体通じ合っていた。

 

「もう日も暮れるからな、ワシはそろそろ帰るぞ、その小僧のことは頼んだぞ」

「あ、はい、ありがとうございました!」

「…ばいばい、おじいちゃん…」

 

ウィゼルがフラットのメンバーに見送られながらその場を後にしていった。

 

「で、こいつはどうするんだよ?」

「確かに根本的には何も解決してないな」

 

ガゼルとレイドはため息を吐いた、結局対決しただけでジンガの扱いをどうするか決まってなかったのだ。

というか、ジンガがハヤトの攻撃を受けてからピクリとも動いていないのだ。

 

「ねえ、これ大丈夫なの?ピクリとも動かないんだけど…」

「あ~、思いっきり振り抜いたからなぁ…」

「手加減しなかったの!?」

「おい、リプレ、そいつは間違いだぜ。そのガキとハヤトは真剣に戦ったんだ。手加減なんてその二人が考えるかよ。ガキの一撃だって手加減してるようには見えなかっただろ?」

「まあ、確かにそうだけど…」

 

リプレの言葉にガゼルが言葉を返した、実際戦ったわけではなかったが、

男と男の勝負は真剣勝負、そこに手加減という言葉はガゼルには浮かんでいなかった。

実際ハヤトとジンガはお互い一瞬だったが全力を出して戦っていたのも事実だ。

 

「う~ん…」

「お、目を覚ましたぜ」

 

頭を抱えながらジンガが目を覚ました、

目をパチパチさせながら自分の起こったことを確認してるようだ。

 

「…くっ、くくくっ…、あははははははっ!」

「もしかして、当たり所が悪かったんじゃ…」

「え!?」

 

クラレットがジンガの様子を見てハヤトの方を見てつぶやく、

ハヤト自身まさかこんなことになるとは思わなった。

 

「あははは…、あー、負けた負けた!俺っちの負けだぁ!!」

「いや、おめえ負けてねぇぞ?」

「あっ?」

「最初に攻撃を当てたのはジンガだからな、だからジンガの勝ちだ」

「そうなのか!? ん~ん?」

 

勝ったのはジンガだがその勝利にシンガが納得して内容だ、

実際にジンガは気絶していた、だからどうしても勝利を確信できなかった。

 

「いやっ!まだまだ俺っちは修行不足ってのが、よ~くわかった!」

「それはお互い様だな、ジンガ。俺もまだまだ修行不足だ」

「だから俺っちをここに置いてくれッ!」

「ええっ!?」

「俺っちも修行不足、アンタだって修行不足なんだろ?お互い実力が拮抗してるんだ。一緒に修行すればすっごい強くなれるはずだぜ!」

「いや…それはどうなんだ…?」

 

ジンガの強引な言葉に思わず納得しかけたがすぐにそれはどうなんだとハヤトは悩む。

 

「いいじゃないですか、ハヤトが見てあげれば」

「ク、クラレット…」

「ジンガさんが言い出したら聞かない人だってのはわかってますから、もし断っても毎日来ると思いますよ?」

「頼むよ、ちゃんと働くし、迷惑もかけないからさ!」

「…えっと」

「!」

 

クロまで俺に押し付けるつもりだ、まあ悪いやつじゃないし。

このままほおっておいたらまたオプテュスにちょっかい出されそうだしな…

 

「わかったよ、じゃあこれからよろしくな、ジンガ」

「ホントかっ!?ありがとっ!ハヤトのアニキ!!」

 

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新しくフラットにメンバーにジンガが加わった、

純粋に強さを求めるジンガ、そのまっすぐな瞳が、俺にはまぶしく見えた、

あんな風に迷いも不安もなく夢に向かって走ったことは自分にあったのだろうか…

そんなことを考えながら夜、俺は外に足を運んで少し考え込んでいた。

 

「アニキ、ちょっといいか?」

「ああ、ジンガか?」

 

外でぼーっとしてる俺にジンガが話しかけてきた、昼間のような勢いはない様だ。

 

「どうしたんだ、こんな夜に?」

「なあ、アニキは剣を握ってまだ2週間もたってないってホントなのか?」

「…ああ、がっかりしたか?」

「そんなことないよ、ホントに驚いた、感心した」

「え?」

「俺っちもここまで強くなるのに随分時間をかけたんだ、それが今日はあのザマだったからな、アニキがなんでそんなに強いかちょっと気になったんだ」

「……強くないさ」

 

俺は強くない、クロにだって弄ばれるし、師範にだって全然だ。

今日のバノッサだって途中で終わらなかったらきっと負けてたかもしれない。

 

「強くなろうとしてるけど、俺は強くないよ。怖いんだ、戦うのが…」

「怖いのに戦ってるのか?」

「俺さ、実ははぐれ召喚獣なんだ」

「は、はぐれ召喚獣だって!?」

 

ジンガが驚愕している、それはそうだ、一般的に召喚獣は怪物の類だ。

 

「喧嘩だって全然起こらない世界に生まれて、ずっとそこで過ごしてきたんだ、そしたらいきなりこっちの世界に来ることになって、大切な人を失いそうになって…、それで怖いんだよ。もし戦いで負けたら失いそうだから」

「それって、あのクラレットって姐さんの事か?」

「うん、元々こっちの出身で今は誰かに狙われてるそうなんだ、だから俺はそれからクラレットを守るために戦ってるんだ」

「…すごいよ、アニキ」

「すごい?」

 

ジンガの言葉の意味が良く分からなかった、俺自体すごいと思ったことはない、

確かに必死にやってきたが、満足な結果を出してきたとは言えないからだ。

だけど、ジンガは何か気づいたように感激していた。

 

「俺っちの師匠がさ、【力と強さは違う】って言ってたんだ。なんのことか、俺っちにはわかんなくてさずうっと無視をしてた、でも…へへ、アニキの話を聞いたらなんとなくわかってきたんだよ。きっとアニキみたいな人のことをいうんじゃないかって!」

「力と…強さ…、俺は強さも力もないけど、確かに欲しいな。クラレットを守れる強さが」

「俺っちにも協力させてくれよ!これも修行のうちってことさ!」

「…ありがとうジンガ、改めてよろしくな!」

「おうっ!!」

 

ジンガの言葉を聞いて少しばかり迷っていた自分にはっきりとした目的が出来た。

クラレットとフラットのみんなを守り、必ず元の世界に帰ること、それが俺の今の目標だ

 

そのためにも今は少しでも強くならないと、力も強さも俺は持っていないのだから…




いやぁ…書きましたねぇ、まだ原作4話なのは涙目だが
今回書いてて一番悩んだのはウィゼル師範の口調ですよ。

色々悩んだけど、とりあえずハヤトのことは若造と呼ぶことにもとがお若い人だし。
口調もハヤトやクラレットなどの大人メンツは3の口調、
リプレや子供たちには1の口調で分けて行こうと思います。
クロとウィゼルは仲良くありません、クロが毛嫌いしてるだけです(理解はしてる)

今回の戦闘でハヤトが強く見えるかもしれないが実際は弱いです、
あくまで召喚獣のサポートがあったおかげです、ジンガは殴られ馴れしてたため。

次はスウォンか…、空気なんだよな。彼

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