サモンナイト ー生贄の花嫁ー   作:ハヤクラ派

16 / 81
今回は安産でした、
また新しい仲間が増えるよ!やったね…いや何でもないです。



第5話 アルサックの思い出

――重なる今と思い出、二つの意味とはいったい――

 

 

荒野の戦いから数日、クラレットも体調が回復し家事が出来るようになっていた

あの事件の出来事で彼女は自分の境遇がいかに不安定化を実感し、あることを決意した

 

「私たちを集めてなにか話でもあるのかい?」

 

クラレットは庭先にフラットの全員を集めてた、子供たちは家の中にいる

切り株の上にサモナイト石を置くとハヤトを近くに呼ぶ

 

「皆さんに伝えておかなきゃいけないことがあるんです。話すかどうか悩んだのですが、知らない方が危険なので伝えることにします」

「伝えるって、何を伝えるんだよ?」

「召喚術の使い方についてです」

 

その言葉を聞いて一同は動揺した。なぜなら召喚術は召喚師が使うものであって召喚師ではない

彼らがそれを使うことはできないからだ

 

「ちょっと待って、召喚術って召喚師しか使えないんじゃないの?」

「リプレの言うとおりだ。使えたら召喚師なんてもんねぇだろ」

「いえ、あるんです。使える召喚術が、皆さんにも」

 

そう答えるとハヤトに無色のサモナイト石とかわいいハンカチを手渡す

 

「ハヤト、伝えたとおりにお願いしますね」

「う、うん。期待しないでくれよ、初めてなんだから」

 

サモナイト石をハンカチでくるみ、ハヤトはサモナイト石を掲げる

 

「精神を石に集中して…、あと名前だったよな…」

 

石が次第に光始め、ハヤトの真上に光が現れる、その光はだんだん強くなっていく!

 

「よし…!【ロックマテリアル!!】」

 

彼の頭上にゲートが出現し、全長50cmほどの岩が落ちてくる!

そう、彼の【頭上】に・・・

 

「うぎゃっ!?」

「は、ハヤトォォォーーーー!?!?」

 

彼、ハヤトの生まれて初めての召喚術は人を昏倒させるに相応しい一撃だった…

 

 

「あてて…」

「どこに自分の頭上に出す人がいるんですか、どんな召喚術が出るかあらかじめ教えたじゃないですか!?」

「いや、まさか落ちてくるって思わなくって…」

 

ハヤトにはあらかじめ説明をしておいたがものの見事に失敗しでかした、

だが、それは召喚術の失敗の危険性も同時に表していたからあながち失敗でもなかった

 

「まあ、いいです。リプレ、この石見てください」

「うん…、あれ?何か書いてある…」

「先ほど誓約を交わしたロックマテリアルという召喚術です」

「あの、岩を落とすのも召喚術なのかよ?」

「はい、無属性の石は無機物を召喚できるサモナイト石なんです。比較的暴走の危険性も少ないんです。リプレ、その石を念じてみてください、ハヤトみたいに自分の上には出さないように」

「あはは、うん、やってみるね」

 

リプレが精神を集中するとサモナイト石が光始め

 

「えっと…【ロックマテリアル!】」

 

石を掲げたリプレの言葉が引き金となって誰もいない場所に岩が落ちてくる!

 

「す、すげぇ、リプレが召喚術使いやがった…」

「私もびっくり…」

 

その後、ハヤトの誓約を交わしたロックマテリアルを全員に配布した、

思いのほかにあっさりと召喚術が使えるようになった全員、そのことに疑問を抱く人物もいた

 

「クラレット、もしかして、君はかなり重要な秘密を私たちに教えたんじゃないのか?」

「…はい、このことはたぶん普通の人たちは知らないはずです」

「それを教えたってことはお前さんが聞いたっていう声のせいか?」

「皆さんが私たちを匿ってくれるのはうれしいです。ですが危険に備えて少しでも皆さんの力になれればと思いこれを教えました」

 

クラレットは教えることにも少し後悔をしていた。みんなの事だから悪いことには使わないと思うが、

それでもこの力が危険を孕んでいることが不安でもあった

 

「あの時聞いた声はもしかしたら私たちを見張ってる人がいるかもしれないと思ったんです。だから少しでもみんなの力になろうと思って、私は未だに召喚術を使おうとすると発作が出てしまうので…」

「大丈夫だよ、クラレット。みんなクラレットのやさしさに気づいてるからさ」

 

ハヤトがクラレットの手を握り、元気づけた。それを横から見てたリプレが不穏な笑顔を浮かべてる

 

「ねぇ~、イチャイチャするのはいいんだけどさ~、お庭、どうするの?」

「「あ」」

 

少しの練習、そして岩が落ちた後で庭が一部ぐちゃぐちゃになっている

 

「二人とも考えなしじゃないわよね、ちゃんと直しなさいよ!!」

「「すいませんでした!」」

 

二人して頭を下げてリプレに謝った、フラットのお母さんは健在だ

 

------------------------------

 

それから庭片づける二人だが、かなりぐちゃぐちゃなため、仕方ないので岩の破片とか使って花壇にした

とりあえず見た目は良くなったため、私はリプレの家事を手伝ってった、ハヤトはアルバとアルク川に行くそうだ

家事がひと段落した私は庭でサモナイト石で召喚したメモリーデスクに座っていた、

色々召喚したが私たちの世界のモノも幾つか混じっていたのだ。一息ついてると切り株のとこにラミがいた

 

「ラミ?」

「あ、おねえちゃん…」

「こんなところで何してるんですか?」

「おそら…、見てたの…」

 

ラミがこちらを確認して再び空を見る、雲が少なく快晴でいい天気だ、洗濯物がよく乾きそうだった

 

「今日はいい天気ですね…」

「おそら…、行きたいな…」

「え?」

「リプレママがね。言ってたの、ラミの本当のママは、おそらにいるって」

 

クラレットがその言葉を聞いたとき息を飲んだ、彼女は捨てられたそうだ。

それは召喚事故で親に捨てられたと思っていた。でも実際は親族に捨てられ親は…

最悪の予想が頭をよぎる、それを考えないようにしてラミの体を優しく抱きしめる

 

「おねえちゃん…?」

「わたしの本当のお母さんもお空の上にいるんですよ?」

「おねえちゃんも、そうなんだ…」

「顔もよく覚えてないけど…、でもこのペンダントはお母さんのなんです」

 

クラレットがペンダントを握り思った、このペンダントはサモナイト石、

この中にはある召喚獣と誓約が刻まれている、彼女に聞けばもしかしたら母の事がわかるかもしれない

 

「ラミは、お母さんの何か持ってますか?」

「・・・・・・」〈ふるふる

「…そうですか、でもきっとお母さんはお空で見てる筈ですよ。その持ち物を持ってればそこから、持ってなければきっと…」

「ママ…、おそらから見ててくれるんだね」

「はい」

 

空をジッと見つめるラミにクラレットは優しく抱いていた。

ペンダントを使えば召喚できるが、今の自分では召喚できない、

でも召喚できるようになったら母の事を聞いてみたいと彼女は心に誓うのだった

 

 

ラミとお話をしたクラレットはリプレのところに来ていた、

いま彼女は洗濯物を干しており、クラレットもすぐさまその手伝いに入った

 

「ねえクラレット、そういうえばさー」

「なんですか、リプレ?」

「ここにきて、もうすぐ1週間ぐらいになるけど、歓迎会とかしてないよね」

「歓迎会ですか!?」

「そうよ、誕生日とかそういうのでもお祝いはするし、出会って短いけどみんなで歓迎会でもしたいなぁーって」

「…確かに楽しそうですね。私もしてみたいです」

「でしょー、でも切っ掛けが無くてねぇ」

「切っ掛けですか…」

 

リプレの提案した歓迎会の事を今日の夜にでも話そうかなっと思い彼女たちの家事は進んでいった

 

------------------------------

 

そのころアルク川ではハヤトが釣りをしていた、今日はやたらマンボウが釣れる、彼は白目を向いてた

アルバはチョウチョを捕まえると言って付いていってた、召喚術の練習の時に出た虫取り網を片手に走り回ってた

 

「おーい!アルバ、ハヤト」

「なんだ、エドスじゃないか。こんなところでどうしたんだ?」

「すごくいい天気だったから、のんびり昼寝を楽しみに来てるのさ」

「エドス、昼寝ってさっき朝食食べたばっかじゃん」

「そうだぞ、食ってすぐ寝るとふと…いや、フラットじゃあ、ないよな」

 

エドスがクーラーボックスを覗くとうれしそうな表情を浮かべた

 

「お、今日はマンボウか、また腹いっぱい食えるな」

「ハヤトにいちゃん、すっげぇ釣り上手いよなぁ!」

「お、おう…」

 

普通の魚が釣りたいのに一匹も釣ったことのないハヤトはただ困惑してるだけだった

 

「ふー、しかし日差しもいい具合だし、風だって気持ちいい、どうだ?お前さんも一緒に昼寝に付き合わんか?」

「そうだなぁ…十分な量釣ったし、付き合わせてもらうか…」

「おお、それがいい」

 

ハヤトは簡単に釣り道具を片づけ、エドスの近くに横になった、

流れる風の中に甘いにおいも感じ、自分たちの世界では感じることのできない落ち着く雰囲気だ

 

「すぅ~はぁ~、いい空気だ、俺のとこじゃそうそう吸えないな…」

 

深呼吸をしながらやがて春の陽気なのか眠気が迫ってくるとハヤトの鼻に何が付く

 

「ん?なんだ…?え、これって…」

 

鼻に何かがついてそれを確認すると、それはハヤトの国の花、桜の花びらであった

 

「桜の花びら…、リィンバウムにも桜があるのか?」

「桜?」

「ああ、エドス。この花びらだよ」

「ん?おお、これはアルサックのって花だな、今がちょうど満開の季節になるんだ」

「アルサック?」

「おお、甘いにおいを出す木でな、その果実から作られる果実酒はなかなかの出来なんだぞ」

「へぇ~、果実をつけるのか、全然違うんだな、桜っていったらみんなで集まって花見とかしてたなぁ」

 

ハヤトは元の世界を思い出す、花見をしたのはつい最近だった。

ナツミがどこからかお酒を持ってきて飲酒し、それはもう恐ろしいことになったのは新しい

とりあえず、あの時はホントにひどかった……

 

「にいちゃん、どうしたんだ?遠く見つめて」

「ああ、昔のこと思い出してね。あの頃はきつかったなぁ…」

 

ハヤトの花見という言葉を聞いてエドスがぶつぶつと何かをつぶやきながら考えていた

 

「花見か…、そういえば、ここ最近そんなことしたらんなぁ。よし…、久しぶりにやるか!」

「え!?」

 

エドスの突然の花見宣言に驚きを隠せないハヤト、そんなところにガゼルがやってくる

 

「よお、なに二人だけで盛り上がってるんだよ。俺も混ぜろって」

「おお、ガゼル。お前も花見に行きたいだろう?」

「花見だぁ…?わざわざ見に行かなくてもそこらに咲いてるじゃねぇか」

「わざわざ出向くから、感動があるのさ、満開の花の下で味わう酒と料理は、格別の味になるだろうさ」

 

エドスの言葉にガゼルは少し考え込むが、すぐに答えを出して賛成するようだ

 

「そういうことだったら、俺も大いに賛成するぞ!」

「なあ、ハヤト。お前さんたちの歓迎会も兼ねるとするか」

「え、いや、居候してる身でそこまでは…」

「なぁに、これからも長い付き合いになりそうだからな。それに先日の一件の気分転換みたいなもんだ」

「あ、あぁ…」

「そうと決まったら、さっそく準備と行こう。ハヤト、帰るぞ!」

「あ、ちょっとエドス! 結構強引なんだな…、アルバー帰るぞー!」

 

------------------------------

 

全員で帰り、リプレたちにこのことを伝えると彼女らも歓迎会をしたかったそうだ。

持ってきたマンボウをリプレが調理して準備を整えてゆく、女は料理、男は外で食べる準備だ

子供たちも準備が終わり、全員が玄関に集まっていた。

 

「しかし、いきなり花見に行くことになるなんて思わなかったよ…」

「私もですよ。でもそれくらい皆さんがしてくれるのがうれしいですね」

 

クラレットは機嫌が良さそうだ。

ここ最近、結構詰めてたのがあったし、今日あたりはみんなでのんびりしたいのだろう

 

「よし、みんな。忘れ物はないな?」

「「「はーい!」」」

「料理もしっかり用意したわよ。ちょうどいっぱい釣ってくれたし」

「酒も用意してあるぜ」

「・・・・・・」

 

無言で楽しそうなエドスを見ていたハヤトは少し考えていた。

エドスは大柄な体でフラットでもかなり優しい方だ、

そんなエドスがここまで張り切るのはそうそうない。何か理由があるのだろうかと

 

「ん、どうした?ハヤト」

「いや…あまりにエドスが楽しそうだったからさ、ほら普段は結構落ち着いてるじゃないか」

「ははは、わかっちまうか?大勢で花見に繰り出すなんて、すごく久しぶりなんでな。柄にもなく、はしゃいじまってるんだよ」

「はい、わかりますよ。遠足前や旅行前の気分ですよね!」

「俺もわかるなぁ、こういう行事を準備するときは結構うきうきしたもんだよ」

「そうか、そうか!」

 

歓迎会の主賓の二人が花見を好意的に受け取ってくれたためエドスは上機嫌だった

だが、次第にハヤトだけ何かを思い出したように顔を俯いてしまった

 

「あ~、思い出した。一月前の花見の時の事…」

「ん、なんかあったのか?」

「何かあったんですか?」

「あ、覚えてないのね…、ならいいや、うん、思い出したくないし」

「「???」」

 

ハヤトが思い出したのは那岐宮市、県立公園の惨劇だった、その日は学生で集まって花見をしていた。

それだけなら問題はなかったのか、一部の学生が酒を持ってきてしまい。もちろん飲酒、

ハヤトはすぐに気づけたのだが、それを飲んだ夏美とひっついてきた春奈に襲われ服をむしられたのだ。

二人を主格とした強行は止まらず別の客にまで手に入る始末で、

ロープでぐるぐる巻きにしてようやく止まったのだ。ハヤトはそれ以来、酒は絶対に飲ませないようにしようと誓った。

ちなみにクラレットはお酒を飲んだが、気持ち悪かったそうですぐに寝て休んでたそうだ。

 

「…なんか元の世界に帰りたくなくなってきた」

「ど、どうしたんですか!?」

「うん、大人になるってつらいんだなって…」

「はあ…」

 

------------------------------

 

花見会場に来たハヤト達、アルサックの木は甘いにおいを感じさせ、

よく見ると果実のつぼみが見受けられる。

だが、花見会場を囲むようにテントが張られていた。

 

「あんなテント…昨日まであったかなぁ?」

「おいおい、これじゃあろくに花が見られねぇぜ」

「むう…、場所を開けてもらえるように頼んでくるかな」

「いや、エドス。それは無理だろう」

「どうしてなんですか?」

「テントの周りに警備の兵士がいる。あそこにいるのは、城の貴族たちだよ」

 

レイドが指を指して、そのことを指摘するとエドスは少しばかり残念そうにした

 

「今日は恐らく城に貴族たちが招待されたんだろう。アルサックは聖王国ではサイジェントしかほとんど咲いてはいないからね。これは、日を改めて出直すしかないだろう」

「せっかく準備してきたのにかよ!?俺は納得できねぇぞ。そうだろ、エドス」

「・・・・・・・」

「私だって納得したわけじゃない。しかし、どうしようもないだろう?」

「…そうだな」

「エドス!?」

 

私はエドスさんの悲しそうな顔を見て悲しかった、あんなに楽しみにしてたのに…

 

「なに、単なる思い付きで決めたことだ。こういう事情ならば、あきらめもつくよ。いろいろと準備をしてくれたみんなにはすまんがな」

 

エドスは理解のある大人の考えで自分の心を諫めた。

だが普段からフラットのために頑張ってるエドスのことを気にしてるガゼルは納得できないようだ

 

「くそっ!ここの花はあいつらの持ち物じゃねぇだろうがよ!!なんで、貴族の連中の都合で俺たちが遠慮しなくちゃならねぇんだよ…」

「ガゼルさん…」

 

貴族とは本来、私たちを守ってくれる人たちだ。だけどサイジェントじゃ私たちを縛り付ける存在である。

そんな彼らにささやかな楽しみまで奪われたガゼルさんはきっと納得ができるはずもないですよね…

 

「なあ、みんな、ちょっと待ってくれ。大事なことを忘れてないか?」

「大事なこと?」

「今日ここに来たのは俺たちの歓迎会をするためでもあったじゃないか」

「…!」

「私たちの世界じゃ、川でピクニックをするのもあんまりないんですよ?花だけじゃなくても私たちは構いませんよ。ですよねハヤト?」

「ああ、俺たちはそんなに気にしないよ。また余裕が出来たら今度、花見をすればいいじゃないか」

 

俺たちはみんなの、特にエドスの気づかいを無駄にしたくなかった、

それにせっかく準備したんだ。なら楽しまなきゃ損ってものだな。

 

「…そうね、あなた達の言うとおりだわ。お花見ができないのは残念だけど、だからと言ってさっさと帰る必要はないじゃない。せっかくだものここでお弁当を食べて、のんびりしていこうよ」

「…そうだな。俺もそれなら賛成だ」

 

貴族たちから文句を言われないぐらいに離れて川辺でみんなはお弁当を開いた

毎回思ってるがハヤトの釣ってくる魚はなんでこんなにおいしそうになるのだろう…

 

「わ~おいしそ~」

「ほーら、今日も結構釣って来てくれたんだから、一杯あるわよー!」

「…おいしそう♪」

「すっげぇ、マンボウのから揚げだぁ!」

 

フラットの食卓事情はかなり改善している、クラレットは元の世界の料理をいくつか知っておりそれを実践している。

ハヤトも趣味を兼ねて毎日釣りをしてるため、一杯釣ってくる。

メイメイさんから頂いた釣り具は疑似餌なども入っていた為、釣り餌も必要としないのである。

 

「なあ、リプレ。正直言うと俺さ、花よりリプレの弁当のほうが楽しみだったんだよ」

「え…!?べ、別にいつも通りのものしか用意できてないんだけど…」

「それで充分だよ。いつも美味しいからね」

「そ、そうかな…」

 

リプレが赤くなって照れている、ハヤト自身はそうでもないが、かなり天然ジゴロである。

それを横で見ていたクラレットは目を細くしてムッとしているようだ。

 

「ハヤト?」

「ん…!?ってなんでそんな怖い顔してるんだ」

「いえ、普通ですよ?はい、普通です。あ、エドスさんそれ飲ませてください」

 

ハヤトが「俺、なんかしたか?」と思っているが実際彼は元の世界ではかなり人気がある。

少し童顔のところが可愛いし、人付き合いもいいほうだ。さりげなく自然に手を貸してくれたりもする。

そして天然ジゴロである、向こうではクラレットがほぼ常にいたためそういう話はないが、

それでも近くにいる、クラレットはヤキモキするのは常であった。

 

「ねぇおにいちゃん」

「ん、フィズどうした?」

「あんまりお姉ちゃんの近くでそういうこと言っちゃダメよ。お姉ちゃんが可哀そうよ?」

「え、な、なに言ってるんだ!?」

「あははははは♪」

「…おねえちゃん、これおいしいよ」

「ホント!ラミ食べさせてー」

 

フィズがハヤトをからかい、またラミの近くに戻っていく。

 

「たっく…、同じ扱いは良くないけどああいうとこホント春奈にそっくりだな、なあクラレット…?」

 

クラレットは先ほどのハヤトの一言でモヤモヤしてて持ってる飲み物を気にしないで飲んでいた。

ここ、リィンバウムに飲酒制限はほとんどない、普通にガゼルたちも酒は嗜む、

つまり彼女は飲んでしまったのだ…

 

「ハヤトォ~♪このジュース甘くておいしいですよ♪」

「クラレット…ちょっと見ないうちに何飲んでるんだ!?」

「ジュースですよ!ジュース!!」

 

クラレットが顔を真っ赤にしてハヤトに詰め寄ってくる

 

「もぉ~、そうだ!ハヤトは無自覚ですよ!」

「無自覚って何が…?」

「決まってるじゃないですか、私というものがありながらずっと手を出してはくれないし。それに彩さんも言ってましたよ。「新堂君ってかっこいいよね」って!もぉー!ハヤトは私のなんですから、そんな風にほかの人に思われたくないんですよ!まあでも手を出す、なんて時と場所を考えてロマンチックにしてくれたらうれしいですけど、そこまでは望みませんよ?でもリィンバウムに来てまでフラグ乱立するって何なんですかー!リプレだけじゃなくて、メイメイさんとかフィズとかラミにも立ててるじゃないですかぁー!」

「待て待て待て!最後の二人はさすがにないぞ!」

「じゃあ、リプレはいいんですね!リプレはどう思いますか!!」

「ふぇ!?えっと、あの…」

 

クラレットのあまりの豹変ぶりにリプレもハヤトもついていけなかった。

特にハヤトは前は美味しくなくて酔い倒れてた分、甘酒風味のアルサック酒ではここまで豹変するとは思わなかった

 

「落ち着けって!悪酔いしてるだけだろ、少し冷静になれってクラレット」

「―――てください」

「えっ?」

「ギュってしてキスしてください!私のこと思ってるならそれぐらいできるはずです!!」

「おいおい、チビども近くにいるんだから自重しろよ」

 

クラレットを押しとどめながら子供たちを見るとみんなこっちをガン見してた

 

「見るな!見ないで!見ないください!」

「ハヤトォ―♪」

「顔が、顔が近いぃぃー!!!」

 

そうしてハヤト達の楽しいピクニックが進んでいくのであった

 

しばらくしてハヤトはのんびりしていた、というか気疲れしてた

クラレットはあの後も暴走して、脱ぎだすわ、歌は歌うわで大変だった。

今はハヤトに膝枕して貰いながら寝ている、両腕でハヤトを抱きしめる形で

 

「…疲れた」

「お疲れさま、なんかクラレットいつもと違ってたね」

 

リプレが苦笑しながら俺に飲み物を渡してくれる

 

「まあ、こっちに来てから随分とため込んでるみたいだったからな。たまにはハメを外したいのかもしれないな」

「ふーん、それにしては愚痴の内容がほとんどハヤトの事ばっかりだったけど?」

「うっ…」

「そういえば、ちょっと気になってたんだけど、結局のところあなた達って付き合ってるの?」

「な、なに言ってるんだ、リプレっ!?」

「だって、家事とかないときはいつも一緒にいるじゃない。アルク川にもよく一緒に行ってるし、同じ部屋だし」

 

顔が真っ赤になりながら考えていた。そういえば確かにクラレットとずっと一緒にいる気がする。

釣りにだってよく一緒に行くし、結局同じ部屋で寝泊まりもしてる。さっきの愚痴も痴話喧嘩にも見えるし

 

「で、結局のところ付き合ってるの?」

「あたしも気になる!どうなの?」

 

「フィズまで…、うん、まだ付き合ってはいないな…」

「へー、まだなんだ。じゃあ付き合いたいんだ」

「なんでさっさと告白しないのよ!」

「実はな…」

 

ハヤトはここに来る前の状況を説明した、クラスメイトに強引に進められて告白することにしたこと

実際、自分も告白するため準備をしたことを、そしてする直前にクラレットが召喚されたことを

その話をしてると、なぜかフラットのメンバーがほぼ集まっていた、ガゼルとアルバがいないな…

 

「ってわけなんだよ…」

「それは、災難だったな」

「おまけにクラレットって結構ロマンチストだからさ、ここぞって時が無くて」

「あー…、うんわかるかも、そういう雰囲気って女の子あこがれるしね」

 

何時の間にか恋愛相談室的な感じになって来てる。

こういうの気にしないで話せるって、相当馴染んで来たなと思う

肝心のクラレットは寝息をたてて随分深く眠ってるようだった、まあ起きそうならこんな話しないけど。

 

「そういえば、ガゼルたちはどこ行ったのかしら」

 

リプレが二人のことを気にし始める、確かにあの二人はどこに行ったのか…

そんなこと考えていると突然アルサックの木が生えてるほうから騒音が聞こえてく

 

「…なんか聞こえるんだけど」

「これは…」

 

俺とレイドさんが騒音を気にし始めると、

眠っているはずのクラレットが突然目を覚まして起き上がる。

 

「はっ、はやと!ひょうかんじゅつでしゅ!!」

「クラレット、よだれよだれ」

 

持ってるナフキンでよだれを拭いてあげる、まだ目がしっかり起きてなく顔が青くなっている。

完全に悪酔いしたせいで体調が悪い様だ。

 

「うっ…気持ち悪いです」

「ちょっと、大丈夫なのクラレット?」

「そ、そんなことより。みなさん、召喚術の魔力です。あっちのほうに…」

 

クラレットが指でその場所を示すとそこはアルサックの気があるほうだった、つまり・・・

 

「まさか、ガゼルたちか!?」

「おいおい、アルバもいないってことはやばいんじゃないか!」

「みんな、行こう!」

 

ハヤトとレイド、エドスが立ち上がりアルサックのほうへと走ってゆく

 

「みなさ…っ、気持ち悪い…」

「ちょっと、クラレット。あなたは休んでなさい」

「でも、召喚術なら私が行かないと…」

「わかった、肩かしてあげるからゆっくり行くわよ」

「はい…」

 

男たちのあとを女子供の皆さんはゆっくり追ってゆくのだった

 

------------------------------

 

貴族たちの花見会場に辿り着いたハヤト達は、捕まってるガゼルとアルバを見つけた

ガゼルの体が焦げているように見える、おそらく召喚術を受けたのだろう

 

「ガゼル、何やってるんだ!」

「まったく、お前たちは何をしとるかと思えば無茶しおって!」

「ハヤト、エドス、わ、わりぃ…」

「…何者だ、お前たちは!」

 

ガゼルたちを捕まえた男はこちらに敵意を持っているようだ、

ちょっと健康的ではない肌だ、だがここにいるということは貴族のようだ

 

「レイドさん、あの人は?」

「イムラン・マーン…、サイジェントの政務を取り仕切る召喚士の一人だ。どうやらこの花見会場の責任者のようだ」

「…お前はレイド!そうか、これは貴様のしくんだことか!!」

「否定したところであなたは信じないのでしょう?それより、彼らはいったい何をしたのですか」

「この薄汚い平民がどこからか入ってきて、料理を食べ散らかしたのだ!」

「たくさんあるんだから、少しぐらいいいだろ、おっさん」

「こんなにたくさんあるんだから分けてくれたっていいじゃないか」

「貴様らぁぁ~!!人様の料理を奪っておきながら何を言っている!!」

 

ハヤトはこの状況を見て思った、ああこれはガゼルたちが悪いなと…

 

「(なあ、レイドさん、どうすればいいんだ?)」

「(イムランは頭の回る人間だ、さすがに侮辱を働いた彼らをタダでは逃がしはしないだろ)」

 

そのことを聞いて、ハヤトは悩むが仕方ないと思いイムランを説得することにした

 

「あのー、イムランさん?」

「なんだ、平民の分際でこの私に口答えするつもりか?」

「二人が迷惑をかけたのは謝りますから、できれば許してやってくれませんか?」

「許すだと…?こんな平民どもになぜ情けをかけなければいけないのだ!」

「そこを、サイジェントを代表する、召喚師の一人として寛大な心で!」

 

ハヤトは普段は絶対に言わない口調でなんとか宥めようとする、

それを良く思ったのかイムランは機嫌を良くしてゆく。、

 

「そうか…、まあ平民にこれ以上を望んでも仕方あるまいな、見せしめに召喚術を食らわせたし、許してやらんでもないだろう」

 

ハヤトが(あと一歩)と心で思っていると、リプレに肩を抱かれながら、クラレットたちがこの場にやってきた。

 

「は、ハヤト、大丈夫ですか?」

「ちょっとガゼル、あんた何やったのよ!」

「なんだ、お前たちは…んっ?」

 

イムランはその場に来た、クラレットに目をやった、彼女の胸元のサモナイト石のペンダント、

通常とは違い高純度のサモナイト石で尚且つサプレスの魔力を持っている。

霊界召喚師であるイムランにとってこれほどのお宝はそうそうないだろう

 

「ほお、なかなかのサモナイト石ではないか、ちょうどいいその石で手を打とうではないか」

「えっ!?」

「ちょっとどういうこと?」

「あ…、なあクラレット、そのペンダントって」

「お、母様の形見なんです。どういう状況か大体わかってますけど…」

 

ハヤトはペンダントがクラレットの大事な物かは気づいていた

だが、それが母親の形見であるとは思わなかった。

ガゼルたちとペンダント、どっちを取るか彼は悩む

 

「……あの、イムランさん。このペンダントは渡せません」

「なに、せっかく許してやろうというこの私の慈悲を受けられんというのか!」

「これはクラレットのお母さんの形見なんです。代わりなら何かしますから、それで勘弁できませんか?」

「うむむむむっ!!」

 

親の形見だが何だか知らないが所詮は平民の持ち物と思っているイムランにとってハヤトの言動は癇に障るものだった

そして、そんな状況を見て周りの貴族たちもイムランを煽り始めていた。

 

「ど・・・どうやら私を本気で怒らせたいようだな、平民!いいだろう、妥協してやろう、貴様が一人でこの私に戦い勝つことが出来ればこの不届き者を開放してやろう、だが負ければそのペンダントは私のものだ!そのような強力なサモナイト石は私のような召喚師が扱ってこそのものだからな!」

「分かった、それでいいよ」

 

イムランの言葉にハヤトは剣を抜いて答えた、その状況を見てるフラットに緊張が走る

 

「ハヤト!相手は召喚師なんですよ!?」

「あいつはお前を見世物にしようとしてるだけなんだぞ!」

「だからと言って形見を奪われるわけにはいかないだろ、幸い命のやり取りってわけでもないんだ…、やってやる!」

 

イムランは不敵に笑い、紫色のサモナイト石を懐から取り出した

 

「マーン三兄弟・長兄のイムランが【誓約】のもとに命じる…」

 

彼の周りに魔力が集中し、霊界のゲートが開かれる!

 

「来い!魔精タケシー!!」

 

ゲートが開かれ黄色い幽霊のような丸い召喚獣が姿を現した!

 

『ゲレゲレ~~!』

 

「こ、これが召喚獣!?」

「霊界サプレスの魔精タケシーです!」

「やれっ、タケシー!ゲレサンダーだ!!」

 

突如、タケシーの体が発光し始め、ハヤトは剣を構え身構えた

 

「いけない!ハヤト、横に飛んでください!!」

「えっ、うわっ!?」

 

ハヤトがクラレットの言葉に従い横に飛ぶとバチィーンと電撃音が炸裂し彼が先ほどまでいた場所に雷が落ちてきた

 

「で、電撃だって!?」

「魔精タケシーは霊界の魔力で電撃を放つんです。気を付けて!」

「やれっ!ゲレサンダーだ!!」

『ゲレゲレ~』

 

タケシーが電撃を連発しハヤトを追い詰めてゆく、ハヤトは動き回りながらその動きを見極める

タケシーは攻撃は直線的過ぎる、そこを狙えばと思い、一気にタケシーに突っ込んだ!

 

「やぁぁーーー!!」

『ゲレゲレ~!』

 

電撃を近づくハヤトに向けて放つが、

ハヤトはその場でジャンプして回避しタケシーに唐竹の一撃を打ち込んだ!

 

「なっ、タケシー!」

『ゲ、ゲレレ~』

 

真っ二つに分かれたタケシーは光の粒に変わってゆき消えてゆく

 

「ど、どうなったんだ…?」

「大丈夫です、倒された召喚獣は元の世界に送還されるので安心してください」

 

殺してしまったわけではないのか、とハヤトは安心するが、それを見たイムランは新しいサモナイト石を取り出す

 

「…もう容赦はせん!平民風情が調子に乗り追って、イムランが【誓約】のもとに命じる…、来い、ダークレギオン!!」

「だ、ダークレギオンっ!?」

 

クラレットが召喚獣の名前に驚愕する、どうやらかなり恐ろしい召喚獣のようだ、

俺は剣を構えて、その召喚獣に備えた。ゲートが先ほどよりも大きく次第に召喚獣は姿を現した

 

「な…で、デカい!!」

 

その召喚獣はかなり大きく、アルサックの木と同じぐらいの大きさだった

はっきりってさっきのタケシーが可愛く見えるほどだ

 

「フハハハハッ!今さら後悔しようと遅いわ!金の派閥の召喚師、イムラン・マーン様にたてついた報いを思い知れぇ!!」

『GAAAAAAAA!!!』

「うわっ!?」

 

その剛腕が振り下ろされ、俺は何とかそれを避ける、その衝撃で周りの机が吹っ飛ぶが

貴族たちは歓声を上げてる、俺のことを見世物にしてるのか、くそぉ!!

 

「ハヤト!ダークレギオンは憑依を得意とする召喚獣です、見かけに惑わされないで!」

「そんなこと言っても…、こんのぉぉぉ!!」

 

振り下ろされた手に向かって剣を振り下ろすと、ダークレギオンは叫び声を上げ、少しひるんだ

それをチャンスと思い、ジャンプしてダークレギオンに突っ込む!

 

「平民がっ!ブラッドスティールだ!」

『!!!』

 

突如、ダークレギオンの体が発光し俺に何かを仕掛ける、

まるで何かにとり憑かれたように力が奪われてゆく感覚に陥る

 

「彼はいったいどうしたんだ!」

「いけません、ダークレギオンに憑依されてます、ハヤト逃げて!!」

「や、やばい…体が動かない…」

 

動けないハヤトに向かってダークレギオンの腕が振り下ろされた。

剣を盾に使って直撃は防いだが吹き飛ばされ地面に強く打ち付けられる

 

「がはっ!!」

「ハヤトっ!!」

 

クラレットはハヤトに近づこうとするが、酔いが醒めてないせいで完全に体が動かない

それを見たイムランはクラレットたちに忠告した

 

「その平民に触れれば彼の負けだぞ!」

「そんなこと言ってハヤトが死んだらどうするんですか!」

「だったら謝ればいいではないか、そしてそのペンダントをこの私に渡せばいいだろう?」

「まだ…、まだ戦えるぞ。」

 

ハヤトは剣を杖代わりに立ち上がり、クラレットを静止する

 

「こんなところで…、こんな奴に負けるか!」

 

ハヤトはポッケから緑色のサモナイト石を取り出した、それと同時に同じポッケに入ってたハンカチも取り出す

すると、サモナイト石が発光し、誓約の儀式が発動し始めた!

 

「なにっ!平民風情が召喚術だと!?」

「力を…力を貸してくれ!召喚獣!!」

 

フラットの面々もこの土壇場で岩以外の召喚術を使うとは思ってなかった、それを固唾を飲んで見守る

そして、爆発音とともに爆煙が放たれ、何かが出現した。

 

「通常とは違う召喚術だと、いったい何が…」

「な、なにが出てきたんだ…」

 

次第に煙が晴れてくる、そこにいたのは一匹の小さい召喚獣だった

大きさは1メートルにも満たないだろう、体は黒と白のまだら模様で至る所に傷跡が見える

腕を組みやたら自信満々で頭には割れているゴーグルが装着されている。

 

「あ、あれは…テテ…?」

「ねえお姉ちゃんあの召喚獣強いの?」

「…かわいい」

 

テテと呼ばれた召喚獣は周りを見ながら状況を確認している、普通の召喚獣と何か違うようだ

 

「テテは幻獣界の盟友と呼ばれる召喚獣です、ですが…」

「フハハハハッ!所詮平民だな、まさかそんな弱小召喚獣を召喚するとはな!」

「・・・!」

 

テテはイムランのその一言に反応したのか、表情が強張っている

まさか弱い召喚獣だったなんて…、このままあいつと戦ったら…

 

「おまけに傷だらけではないか、今の貴様にお似合いだな」

「はあ…はあ…」

「!?」

 

ハヤトはテテの前に出て剣を構えた、息は絶え絶えで足も笑っているがそれでもテテの前に立つ

 

「ごめん、お前を召喚しちまって、でも元の世界に戻す方法は俺は知らないんだ…」

「…」

「召喚したのは俺の責任だ、俺が守るから、今は下がっててくれ!」

「…!」

 

するとテテがハヤトの前に出てダークレギオンと対峙する

 

「お前…、戦うのか!?」

「b」

 

こちらを向いてサムズアップし、再びダークレギオンに対峙する

するとテテは手招きし、ダークレギオンを挑発した。

 

「弱小召喚獣の分際で…、やれダークレギオン!!」

「GAAAAA!!!」

「!」

 

ダークレギオンの剛腕がテテに振り下ろされるが、それを読んでいたのかジャンプし回避する

そしてすさまじいスピードで落とされた手の上を駆け上がってゆく!

 

「くっ!ブラッドスティールだ!!」

「!!!」

 

体が発光しテテをその光で包むがテテが力を入れると憑依を弾き飛ばしてダークレギオンの肩の上に乗る

 

「いまハヤトが受けたのを弾き飛ばさなかった!?」

「憑依無効…、普通のテテの持ってるような技じゃないです!」

「!」

 

爆音、テテのその小さな腕から放たれた拳はダークレギオンの顔面に繰り出された

そのあまりに不釣り合いな一撃を受け、ダークレギオンの体は大きく揺り動かされる

 

「!?!?!?」

「な、なんだとっ!?」

「す、すごい…」

「!」

 

千鳥足なダークレギオンの目の前に立ち、テテの体が発光し始めた。

光を身に纏い始めると次第にテテの威圧感が膨れ上がってゆく!

 

「…カッコいい」

「あれはチャージです、自身の力を高める技です」

「!!!」

 

轟音、その小さな体格には似つかない炸裂音とともにダークレギオンの腹にテテはぶちかます

ダークレギオンの巨体は浮き、後方のイムランに向け吹き飛んでいった

 

「ば、馬鹿者!こっちにくる…うああぁぁぁ~~~!?」

 

ダークレギオンの巨体にイムランはつぶされた。

そしてダークレギオンは送還されそこにはつぶれたイムランの姿だけが残っている

 

「は…ははは、すごいなお前」

「b」

 

テテはサムズアップしてニヤリと笑いながらこちらにサインしていた

そして、意外にも潰されたイムランが立ち上がりこちらをにらめつける

 

「貴様らぁ!かさねがさね私に恥をかかせおって、しかも平民の分際で、生意気に召喚術などを使いおって…、憎い、憎い、憎いっ!あーっ憎らしいっ!!」

「俺…いや、俺たちの勝ちだ、ガゼル達は渡してもらうぞ!」

「むむむ…!!」

「策を講じるよりも、お客様に弁解するほうが良いのではないですか?」

 

レイドの一言でイムランの怒りが収まる、自身の持つ最強の召喚獣の一択、

ダークレギオンが最弱の召喚獣の一匹、テテに負けたのである。

そんな状態で無理にこれ以上戦い召喚師としての傷口を広げることは望むことではなかった

 

「ぐぎぎぎぎ…、おい、その平民どもを開放しろ!!」

 

その言葉を受け、先ほどの光景で惚けてる兵士は気が付き、ガゼルとアルバを開放した

 

「悪かった…ハヤト」

「ごめんなさい…」

「俺のことはいいよ、まあ、俺なんかより相当腹立ててる人いるけどね…」

 

ぼろぼろのハヤトの後ろから怒気を纏ったリプレが姿を現した。

笑顔だがその表情はだれが見ても凄まじく怖い…

 

「あーなーたーたーち?」

「リ、リプレっ「母さん」!?」

「わざわざ貴族の宴会につまみ食いにお出かけになるなんて…、そんなに私のお弁当、お気に召さなかったのかしら?」

「ち、違うよ!ガゼルがオイラを無理やり引っ張って行って…!」

「あっ、てめぇ!?きたねぇぞっ!」

「いいわけしないっ!! 二人とも、つまみ食いでお腹いっぱいになってるだろうから…、今夜のご飯、いらないわよね?」

「えっ!?」

「ひ、ひでぇ…」

「いらないわよねぇ?」

「は、はいぃ…」

「ガゼルに乗せられるんじゃなかったよ…」

 

二人がリプレに引っ張られ孤児院へと引きずられてゆく…

そしてクラレットがゆっくりとこちらに近づいてくる。

 

「ハヤト、大丈夫ですか?」

「な、何とか…、こいつのおかげで」

「…」

「もう、こんな無茶しないでください!確かにこのペンダントは大事ですけど…、あなたのほうが大事なんですから」

「クラレット…」

 

クラレットの言葉に感動する…が、クラレットの様子がなんか変だった…

何かを思い出したかのように顔が真っ赤になっている

 

「く、クラレット…?」

「…ああぁぁーー!!落ち着いたら思い出しちゃっいましたー!エドスさん、ハヤトお願いしますぅぅー!!!」

「お、おう…」

 

顔に手をやりリプレを追うように孤児院へと走ってゆく、時折足がおぼつかないのはまだ酔ってるせいだろう。

 

「どうしたんだ、クラレット」

「さてね、じゃあ帰るか、ハヤト」

「あ、でも…」

「心配はいらん、あの男はああ見えても頭が回る人間だ、これ以上の恥の上塗りはしないはずさ」

「…」

 

------------------------------

 

エドスが俺を抱えてくれて、孤児院へと戻ってゆく、

俺が召喚したテテはラミとフィズの近くを歩いていた、フィズに頭を撫でられている

しかし、普通のテテとは違う強さらしい、いったい何を召喚したんだ俺は…

 

 

孤児院に戻ると、クラレットはなぜか部屋に閉じこもっており、テテのことは聞けなかった

アルバとガゼルは正座でリプレの説教をたっぷりと受けているようだ、

俺はレイドさんに傷の手当てをしてもらい、丸薬を口に含んだ…味が慣れてきてる…

テテはラミとフィズの相手をしてるようだ、どうやら実力に似合わず子供好きらしい

そういえば…、エドスはどこに行ったんだ…

 

 

夕方になり、戻らないエドスが気になり俺はテテと一緒に川原に来ていた

怪我したばっかで動かないほうがいいのだろうが、もうあまり痛みを感じないので無理してた

 

「!」

「ん、エドスか?」

 

テテが指…?を指すとそこにはアルサックの木を遠くから見るエドスがいた

 

「ああ、お前さんか…、もう傷はいいのか?」

「なんとか、しかし召喚獣はすごいな、あんなデカいのいるんだもからさ」

「ははは、まあ無事でよかったよ、チビ助もごくろうさん」

「!」

 

頭を撫でようとエドスが手を伸ばすがそれをテテは弾いた

 

「おい」

「おっと、いやいい。こいつは思ったよりもしっかりした奴なんだろうな」

「…」

 

テテはエドスから目を離し、アルサックの花を見ていた、エドスも花を見ているようだ

 

「エドスは、あの花が気に入っているんだな」

「ああ…、アルサックの花には、ちょっとした思い出があるんだ。ここに来る前、ワシは石工の見習いをしていたんだがな、そこの親方が酒好きでな、この季節には弟子を引き連れて、花見で大騒ぎしたもんだ。仕事には厳しかったが情には厚い親方、ワシらは本当にやさしくしてもらったよ、いいひとだった…」

「だった、って?」

「つまらん話だよ、酔っ払いに絡まれた弟子を庇ってな、逆上した相手の刃物で腹を刺されて…、それっきりさ」

「・・・・・・・」

「あれからずいぶんたっちまって、昔の仲間はバラバラになっちまったんだが、今のワシにはお前さんたちがいる、新しい仲間たちがいる、それを親方に見せたくなっちまってな、強引に花見に連れ出したってわけだ。ははは、そんなつまらん理由でお前さんらを引っ張りまわしたってわけだ、…すまんな」

 

エドスは思い出に浸るように語ってくれた、たぶん今のフラットのメンバーとその時のみんなが被ったのだろう

そう思うと、今のみんながどれだけ素晴らしい仲間たちか理解できた、俺たちが来て、エドスがそれを感じることが出来るたならうれしい

 

「…エドスは、親方に俺たちを紹介したかったんだろ?だったら、つまらない理由じゃないさ」

「ハヤト…」

「それに花見をやらなかったら、ガゼルがあんなことしなくてテテにも出会えなかったからな 」

「…b」

「まあ、あんな騒ぎ起こした俺たちだから親方さんも呆れてるだろうけど…」

「あっ…あははは!なぁに、大丈夫さ、さすがはワシの仲間だって、きっと高笑いしとるだろうよ!」

「あははは!」

「!」

 

夕日に映るアルサックの花を見ながら俺とエドス、そして新しい仲間のテテは笑っていた

今までで一番楽しい日だった、この仲間たちならきっとどこまでも行けると思い

もし元の世界に帰れなくてもきっと退屈しないだろうと思った、そうして騒がしい一日が終わってゆくのだった

 

 




今回は書いてて楽しかったです、はい。
クラレットが今回いい感じで暴走してて、気分良かった。
リプレは女の子~お母さん、両方出せて、楽しかった。
テテは小っちゃいがめっちゃ強い枠です、終盤まで無双やな。
あと…あとがき書いてて気が付いたんだけど… スウォンのこと忘れてた…

今なら言える、アルバすまんかった…、お前しか主人公枠に入れなかったんだ…

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。