サモンナイト ー生贄の花嫁ー   作:ハヤクラ派

11 / 81
オリ話考えるの大変やわ、小話ならぼろぼろ沸くのに…
※少しばかり修正、7話当たりの時に修正したけど、うっわ…って感じでしたわ。
へタッピ時代


第1話 平凡で平和な毎日

―――平凡で退屈で平和な日常、俺たちはもう少し早くその大切さに気づくべきだった―――

 

 

『ピピピピピピピ!!!!』

 

目覚ましの音が鳴り響き一人の少年がベッドの中から目を覚ました、

いまだに幼さを残す顔つきの少年が眠そうに時計の音を消し時間を確認する。

 

「…6時30分か、      寝よう」

 

俺は今一度夢の中に帰還するべく意識を落とし始めるが…

 

「おにいちゃぁ~ん!」

 

それはいつもの様に成功しないのであった。

 

「ああ、やっぱり寝てるし、今日は早めに起きるって昨日言ってたじゃない。」

「春奈ぁ、お兄ちゃんは眠いんだ、二度寝させてくれ。」

「寝起きいつも眠そうじゃん、ほら起きた起きた」

 

グイグイと春奈に無理やり布団を剥がされてベットから引っ張り出される

さすがに春とはいえ、4月まだ少しばかり寒さが残る季節である。

 

「さっむ…わかったから着替えるから部屋から出てってくれよ」

「とかいってどうせ出てったら寝るんでしょ」

「高1にもなって妹の居る部屋で堂々と着替えるわけにはないって言ってるんだよ!」

 

俺はぶーたれる春奈の首をつまみ無理やり部屋の外へとペッと引っ張り出す。

あいつも中1になったくせにいつまでもくっつきやがって、

そう考えながら俺はYシャツを着てズボンを履く、まだ10日も着ていない学生服は少し大きめだ

 

「そういえば…、懐かしかったなぁ もうあれからちょうど10年かぁ…」

 

夢に出たずっと昔の思い出に黄昏ながら学校の準備をして部屋から出る

6時45分、早く出ることは考えていたがいささか早すぎた、春奈のせいだな。

 

「えっと、今日はなんで早く出るんだっけ…」

「部活の朝連に行くって言ってたじゃないですか、勇人」

 

俺の目の前に青紫色の髪に同じ色の瞳で少し困った顔で話しかけてくる女性が居る

彼女はクラレット、あの日家に連れて帰ったらそれはもう大変な騒ぎだったが

いろいろあって施設にも本人が入りたくないと泣き顔で俺にすがり気がついたら家の子になっていた

今の彼女の名は新堂クラレット、俺の家族だ

 

「ああ、そうだったな、ありがとなクラレット、ところで何でクラレットも早起きしてるんだ?」

「それは…今日はお母さんがお弁当を作れないそうなんで私が代わり作っておきましたよ」

「今日はクラレットのお弁当なのか、ありがとなクラレット」

「いえ、私もお弁当作るの好きですから、いいんですよ勇人」

「それでも、朝早くから作ってくれたんだろ?」

「そうですけど、ホントに好きなことしてるだけですからね?」

「ほほう、つまりそれは【お兄ちゃんの】お弁当作るのが好きってことかな、お姉ちゃん」

「な、なぁ…!」

 

春奈はいつものようにニヤニヤしながらクラレットをからかい、

クラレットの顔が真っ赤に染まり春奈を睨み付けてきた。

 

「もう!そういうのはやめてください春奈!」

「えへへ~、そんなこといいから早く朝ご飯食べよ。」

「はあ、あんまりクラレットをからかうのも大概にしろよ春奈。」

「は~い、わかってまーす、  …この鈍感何とかしないとずるずる行きそうだなぁ」

 

3人が食事を取り始め朝のテレビを見ながらのんびりと朝を過ごし始める、

親二人は共働きなためいない日も多々あるがこの歳では珍しく仲のいい兄妹だ。

 

「それでさ、新しくできた友達がね…」

「そうですか春奈 …そういえば、勇人、のんびりしてるみたいですけど時間、大丈夫なんですか?」

「え?」

 

時間を見ると時計は7時10分を指している、

勇人の顔が焦りで変化してゆく、残していた食材を急かしく腹の中に詰め込んでゆく。

 

「ごめんちゃんと食べれなくて!じゃあ行ってくる!!」

「いってらっしゃい、お気をつけて」

「行ってらっしゃーい」

 

------------------------------

 

「戸締り良し、ガスの元栓良し、お風呂タイマー良し、じゃあ春ちゃんいきましょうか。」

「おっけー。」

 

私たちが家を出て高校へと向かう中高一貫なため同じ道を歩いてゆく

当初私は学校に行くことができなかった、ほとんどの記憶を失ってるため

1年ほどかけて世の中の基礎を覚える必要があった、横断歩道の渡りかたなど基本的なことが穴だらけだったらしい

その時も勇人によく助けてもらってホントに感謝しています。

 

「そういえば、もう10年だっけ…たしか。」

「10年… なにが10年なんですか?」

「なにって、クラ姉が私たちの家に来てからじゃん、忘れたの?」

「あ…、そういえばそうでしたね、もうあれから10年ですか…」

「あんまり覚えてないけどさ、お兄ちゃんにキックかましたのは覚えてるかな」

「ふふ… そういえば、そんなことありましたね。」

「そういえば、お兄ちゃん覚えてるのかな…」

「覚えてる…?」

「明日がクラ姉の誕生日のこと、忘れっぽいけどそれ忘れてたらシャレにならないよ?」

「私は別にそういうのは…。」

「いや、私たちじゃなくてさ、ほら夏姉が…」

「あー、はい確かに…」

 

クラレットはハヤトが自分の誕生日の事を覚えててくれることを願った、

そうしないと世にも恐ろしい、幼馴染の報復が待ってるようだから…

 

学校の授業が終わり放課後、学校の校門前にいつものメンバーが集まっていた

幼馴染の橋本夏美、その友人樋口彩、そして友人の深崎籐矢

 

------------------------------

 

「それで、わすれてたんだ…ふ~ん。」

「いや、その、うん」

「夏美、もうそろそろ許してあげたら?」

「だって彩、こいつ同居してる幼馴染の誕生日忘れたんだよ、信じられないでしょ!?」

「それはそうだけど…、深崎君はどう思う?」

「間違いなく勇人が悪いな、ありえない」

「そこまで言われると、否定できないって…ところでなんで夏美はそのことに気づいたんだ?」

「そんなの春奈から聞いたに決まってるじゃない、それに何年勇人と友達やってると思ってるの?」

「そ、そうだよな…あーどうしよう…」

「誕生日って明日だったよね、確か。」

「うん、そのはずなんだ、明日の夕方に出会ったんだ。」

「そこまで覚えてるのに何で誕生日のこと忘れてるのよ!!」

 

夏美と勇人が幼馴染ということは彼女にとってクラレットも幼馴染だから、

そしてクラレットが勇人に思いを寄せていることは勇人以外全員気づいていた、

勇人は本当に鈍感大魔神なのだ。

 

「(ホント…、こんな鈍感男に恋しちゃって、クラレットは可哀想よまったく)」

「な、なあ夏美、頼みがあるんだけど…。」

「…まあ予想つくけど言ってみて」

「実はお金がもうなくて、だからお金貸してくれない?」

「仕方ないわね… 貸して上げるっていつもなら言うところなんだけど」

「ど…?」

「あたしもクラレットのプレゼントでお金ないのよねぇ、残念!」

「そんなぁ、じゃあ樋口貸してくれないか?」

「お金の貸し借りは親から禁止されてて、ごめんね新堂君」

「えっと…」

「以下同文だ、反省しろ」

「す、救いがない… どうすればいいんだよ!」

「だいたい自分が悪いんでしょ、だったら自分で何とかしなさいよ」

「頑張って新堂君!私は応援してるよ!」

「応援はしているからな、口には出さないが」

「…本当にどうしよう」

 

------------------------------

 

俺は夏美たちと別れて家へと帰宅する

元はといえば自分が悪いんだ、夏美たちのせいにするつもりはない

だけど本当にどうすればいいんだ、母さん達に頼ったら絶対にクラレットの耳に入るはずだ

仕方ない… 一番危険だが一番頼りになる人に頼るかぁ

そういう風に考え、夕御飯も終わり俺はリビングで寛いでいた

 

「あ~、良いおふろだったぁ。」

「じゃあ次は私が入ってきますね、春ちゃん。」

「んー、いってらっしゃーい。」

 

クラレットを見送りながら春奈は冷蔵庫から牛乳を取り出す。

 

「んっくんっく、ぷぁー! やっぱりこの一杯のために生きてるのよねぇ!!」

「相変わらず親父くさいな、中一のいう事じゃないぞ。」

「スタイルも【※中学生です】ってレベルだからバランスは取れてる!」

「それ夏美に言ったら絞られるぞ…」

「まあ、クラ姉には勝てないけどねぇ… ところでお兄ちゃん。」

「ん?なんだ春奈」

「クラ姉の誕生日プレゼントまだないんだって?」

 

現在考えてることをピンポイントで付かれ、お茶を飲んでいたハヤトは思わず噴き出した。

 

「ぐぶっはぁ!!??」

「汚ぁ!?」

「ゲホゲホ  なんでそのことお前が知ってるんだ!?」

「そりゃ、生まれたときからお兄ちゃんの妹やってるんだもん、それぐらい気づくよ。」

「うぐ…」

「それに、お兄ちゃんこれで誕生日忘れてるの8回目ぐらいじゃない?」

「ぐうも音もでません。」

「まあ、私もお兄ちゃん弄るのは好きだけど虐めるの好きじゃないから、いい案を教えてあげる。」

「ほ、本当か!春奈。」

「もちろん♪ じゃあ夜に私の部屋に来てねちゃんと渡すから。」

「ああ… ありがとな、じゃあ風呂入ってくるよ。」

 

そうして勇人は安心してお風呂へと向かってゆく、あることを完全に忘れて…

 

「本当に仕方のない兄なんだから…、まあクラ姉も自分からアピールしないの問題だね。」

 

お風呂場から悲鳴が聞こえるが春奈にとっては日常茶飯事、

なまじ距離が近すぎるため警戒心も皆無なお二人はこんなことばっかなのだ

 

「こんなんだから進展しないんだろうなぁ…」

 

そんなこんなで新堂家の夜は更けてゆくのであった・・・

 

夜11時過ぎ、家族がほとんど寝てるなか勇人は春奈の部屋の前にいた

 

「おーい、春奈起きてるかー?」

 

少しだけ小声で扉に話しかける勇人、そして部屋の鍵が外れて扉が開かれる

 

「はいはい、夜中にご苦労様入っていいよ。」

 

俺は春奈の部屋に入った、言動は親父臭かったりいまいち安定しないが

部屋の中は女の子らしいかった、手作りっぽい人形や家族の写真など部屋はキチンと整頓されている

まあ、何やらオカルトっぽいものもいくつか見えるが・・・

 

「しかし、こんな水晶とか何に使うんだ…?」

「気づいたら買ってたわ、たはは…。」

「もしかしてクラレットのプレゼントもこんなのなのか…?」

「いやぁ、さすがに自分の趣味を押し付けたりはしないよ、私はコレ。」

「遊園地のチケットが2枚…、クラレットと一緒にいくのか?相変わらずなかいいなぁ。」

「ふっふっふ~、誰が私が一緒に行くって言ったのかな~? これは私じゃなくて別の男性が行くものなんだから。」

 

その言葉を聞いた瞬間、俺の胸は潰れるような衝撃が走った、

クラレットが男と遊園地? それってつまり、いやそんな奴今まで…でも…

い、いや一人だけ可能性を持つやつがいた!そうかあいつか!!

 

「籐矢か!?あいつなのかクラレットと付き合おうとしてるのは!!」

「え?何言ってるのこの駄兄は?」

「あいつ、顔も性格も人付き合いも良いくせによりにもよって…!!」

「……ソォイ!!」

「がっはぁ!?」

 

春奈の華麗な延髄蹴りが決まり勇人はそのままベットにふっ飛ばされる

頭に血が上らず少しづつ落着き始めた

 

「いやいや深崎先輩じゃないって、このチケットはある条件でプレゼントするの。」

「ある条件?」

 

春奈は深刻そうな雰囲気を出して俺に話しかける

今まで春奈を見てきたがこんな雰囲気はそうそうないことだった。

 

「お兄ちゃん… ホントに大切なお願いなんだけど明日クラ姉に告白してくれない?」

「な、え!? 何言ってるんだ春奈!」勇人が顔を真っ赤にしてるが、春奈は特に気にせず話を続ける。

「んー、なんていえばいいんだろ?お兄ちゃんにとってクラ姉ってなんなの?」

「俺にとってのクラレット? そりゃ家族に決まってるじゃないか?」

「それってずっと家族だと思う?クラ姉がほかの誰かのところに行っちゃうかもしれないよ?」

「・・・・・・・・・」

 

それは春奈のおそらく今一番の願いだった、

10年も一緒にいたのだ、これからも一緒に3人で居たい。

だから間違いなく両想いである二人をくっつけたいのだ。

 

「ずっと見てきたけど二人とも結構奥手すぎて変にふわふわな状態が普通になってるんだもん、私心配だよ。」

「春奈……」

「あの時から10年一緒にいたんだよ、クラ姉の気持ちだってわかるしお兄ちゃんだって気づいてるんでしょ?」

「そりゃ…だけどクラレットが仕方なく俺のことを思ってたりしてたらちょっと怖くて…な。」

「まあ、その気持ちはわかるけどそれはないよ、クラ姉はお兄ちゃんの事大好きに決まってるじゃん。」

「それ、ホントか?」

「ホントホント、いつもお兄ちゃんの事話してるもん、お前はおかんか!ってぐらいだよ。」

「そっか、うんわかった、春奈がそう思ってくれるなら俺も頑張るよ!」

「ここまで兄姉仲心配する妹も居ないよ~? じゃあプレゼントだけど…。」

「ああ、そうだ!もともとプレゼントをもらいに来たんだよ、深刻っぽい話してて忘れそうだったよ。」

 

鈍感でうっかりな兄、その良さを知ってるのは恐らく夏姉とクラ姉、それに私ぐらいだろう。

深刻な話をしても解決策が見つかるとすぐに元気になる兄を見てて少しばかり呆れていた。

 

「とりあえずもう時間がないから手作りしかないから。」

「手作り…あんまり器用なほうじゃないんだけど。」

「まあ、多少不格好でも自分で作ったやつのほうが大事だからね、材料渡すからあとは頑張ってね。」

 

春奈からプレゼントの箱を押し付けられて部屋の外へと追い出される。

 

「ちょ、ちょっと待てよ春奈、まさか俺一人で作るのか!?」

「難しいもんじゃないんだし朝まで7時間あるから平気よ平気、じゃあ夜更かしは乙女の柔肌の天敵なのでおやすみー。」

 

俺は締め出されて鍵を閉められて完全に孤立した

まあ、結局自分のせいだから春奈を恨みはしないが…

しかし告白か、まあとりあえずまずはプレゼントを完成させないとな…

 

 

学校の昼休み、たくさんの人がクラレットの誕生日をお祝いしていた

中高一貫のこの学校では人気者だ、人付き合いは割と得意だし容姿もかなり上のほうだ

生徒会こそ所属してないがその手伝いをかなりしてるほどお人よしでもある

中学や高校の上級生からもプレゼントが渡されていた

 

------------------------------

 

「ふあ~、ああ見るとクラレットってホント人気者なんだなぁ…」

「そうよ、だからあんたが忘れたら相当憎まれてたわよ、いつも一緒にいるくせに大事にしないとかなんだ~!!って変な理屈建てられて」

「そうだよなぁ、うん、俺がほかのやつだったらそう思う」

「……何で否定しないのよ?」

「ん~、ちょっと心境の変化があってな、だから認めようと思っただけだよ。」

「ふーん心境の変化ねぇ、ところで勇人はプレゼント用意した?」

「そりゃな、春奈のおかげで徹夜しちまったよ」

「つまり手作りってこと!?やるじゃない、何々、何作ったの?」

 

夏美がニカニカしながら顔を近づけてくる

こういう時は関心と悪戯心にあふれてるからうまくスルーするのが正解だ

夏美が幼馴染なら俺も夏美の幼馴染だからだいたいはわかる。

 

「そんなの秘密に決まってるだろ、こんな人の多いところで渡せるかよ。」

「つまり… 愛の告白、ってことなのね!!」

「告白ですか!?」

 

その言葉を聞いてロマンチストアヤが席を立つ!

 

「座りなさい樋口。」

「・・・・・・・・」

 

そして静かに座った…

 

「それで告白なのよね? ね?」

「あー、それは… うーん。」

「新堂君、勇気出さなきゃダメですよ?」

「樋口、それはわかってるし、自分の気持ちも理解してるつもりなんだけど…」

「ねえ、勇人、クラレットの事は?」

「好きだ、うん、言える、言えるんだけどなぁ…」

「…まあ、あんたに任せるわ、これ以上あたしたちが言っても拗らせるだけっぽいし」

「そうだね、ところで新堂君のプレゼントってなんなの?」

「あー、明日クラレットの聞いてくれるか?ラッピングして見せられないんだ」

「えー、教えるのもダメなのー、勇人のケチー」

「夏美、あんまりしつこいのはよくないよ?」

「それもそうだね…じゃあ頑張んなさいよ勇人!」

「新堂君頑張ってね!」

 

二人に応援されて俺は決意をしっかりと固めた、

そして放課後になってクラレットを校門で待っている、

 

「そうか…お前やっと告白するのか、全く…」

 

友人の籐矢はため息交じりに勇人に答えた。

 

「なんだよ…お前もふわふわしすぎだって言うつもりなのかよ籐矢」

「当たり前だ、中学から見てるがお前らが付き合ってないの知ったの中三だぞ?」

「え!?マジで…」

「普通に考えてみろ、同じ家に住んでる、いつも一緒にいる、毎日昼ご飯一緒に食べてる、一緒に登校下校する、客観的に見てどうおもう?」

 

籐矢の質問に勇人は考えた、普通に考えてそれは恋人だろう、違ったら余程の鈍感二人組だ。

 

「……付き合ってるな」

「まあ、お前から見たら兄姉のイメージが定着しすぎなせいだな、女の子は繊細なんだ、もう少し気遣え」

「そうだけど、だいたい夏美と春奈のせいで距離感がよくわからん…」

「…あの二人も大概だな」

 

二人がくだらない話をしながら待っている、

籐矢も心配だったのだ、だから一人で待たせるんじゃなくて

一緒に待ってやって少しでも気分を軽くさせてやりたかった

そしてもうしばらくしたら学校からクラレットが走ってくるのが見えた

 

「はあ…はあ… ごめんね、勇人遅れちゃって」

「いや、そんなに急がなくても大丈夫だぜ、籐矢も一緒だったし」

「じゃあ僕は帰るからな勇人、クラレットもまた明日」

「はい、深崎さん、さようなら」

「あー…そのクラレット」

「あ、はいなんですか勇人?」

「家にそのまま帰らないで少し歩かないか?」

「わかりました。」

 

------------------------------

 

俺たちは特に場所は決めないで道を歩いていた、

小さなころから歩き回った町、昔とは少し姿を変えたが昔の名残は残っていた

つぶれた駄菓子屋、閉店したスーパー、10年で変わったものもあれば変わらないものがある。

普段気に留めないような物に気にかけつつ俺たちは丘の上の公園へと上がっていった

夕方に来ると障害物がほとんどなく、夕焼けがきれいに光り輝いていた。

 

「いい夕焼けですねぇ…。」

「…うん」

 

ただ太陽を眺めていた俺はふとクラレットのほうを見た、

彼女を見たとき俺はその姿に心が奪われかけた、

普段とは違い儚く見える、まるでこのまま消えてしまうような儚さだ…

 

「この景色を見ると思い出せそうなんです、ずっと昔に忘れてしまったなにかを…。」

 

そう話すとクラレットはペンダントを取り出す、

出会った時から常に身に着けているペンダントだ。

学校では装飾品が禁止されてるが彼女はそれでも持ち歩いていた。

 

「そのペンダントって…。」

「気づいたら身に着けていたものです、ずっと身に着けていれば何かを思い出せる気がして…。」

 

そう答えながらクラレットはこちらに泣きそうな顔を向けた。

 

「でも…、もう10年経ってしまいました。」

「……なあクラレット。」

「なんですか勇人?」

「思い出さなくてもいいんじゃないか?」

 

俺は素直にそう思っていた、もしクラレットが思い出したら

今まで一緒にいた日々が変わってしまう気がしたからだ。

 

「クラレットが記憶を思い出したらきっと変わると思うんだ。」

「変わる…?」

「夏美に馬鹿にされて、樋口に助られて、籐矢に呆れられて、そんなことがずっと続く気がしてるけど

 きっといつか終わっちまうんだなぁってたまに考えるんだ…」

「…勇人、似合わないこと考えてたんですね」

「あはは、これ話したら春奈に大笑いされたよ、だからさ変わらないものが欲しいと思ってた」

「変わらないモノですか…。」

「具体的には決まってないんだけどさ、でもきっとみんな変わっちゃうんだよな」

「そうですね…、でも変わることはきっと悪いことだけじゃないはずです。私は勇人と春ちゃんに出会えました、二人に出会ってホントによかったと思ってるんです」

 

そう彼女は語りつつ今まで見せたことないほどの笑顔を俺に向けていた

そのとき改めて気づいた、彼女は変わることを恐れてないんだと、自分の記憶が戻ることに恐怖していないんだと

だから俺も変わることにした、これからのために自分のために・・・

 

 

勇人の言葉が嬉しかった、私も幸せだったんです。私は勇人と春奈に会えてほんとに幸せで、

10年前何もわからないで泣いていた私、それを救ってくれたのはあの兄妹、

記憶が無くてもあの二人は私のナニカを救ってくれた。

自分の中で欠落していた大切なものを埋めてくれたのだそう確信をもって思える。

勇人の思ってることも理解できた、でも変わることはきっと苦しいことだけではないはずだと思う

もっと素晴らしい明日への努力だと自分は思ってる。

 

 

 

 

 

 

 

 

でも…全てが決して素晴らしいものではないのもまた真実だった・・・

 

 

「あ、あのさクラレット、その…。」

「なんですか勇人?」

 

「こんな日だったよなクラレットと出会ったの。」

「はい…、そうですね。」

「だからさ、クラレット、俺さ決めたんだ。」

「は、い…」

「聞いてほしいんだ、クラレット、俺!… クラレット?」

 

クラレットの顔に先ほどまでの笑顔が消え深刻そうな顔をし始めた

まるで絶望したような見たことないクラレットの表情に勇人はどうすればいいかわからなかった

 

「なんで…今更聞こえるの…もうあれから10年経ったのに!?なんで!?」

「クラレットどうしたんだよ!?聞こえるってないが聞こえるんだ!」

「いやぁ、勇人行きたくない、戻りたくない!!」

 

震えあがり大粒の涙を流しながら自分にすがりつくクラレットに勇人は恐怖した

クラレットの体が淡い光を放ち始めていたからだ

 

「な、なんだよこの光!?」

「助けて…勇人、私…私。」

「クラレット大丈夫だ!行かせない!絶対!!」

 

俺は力の限りクラレットを抱きしめていた普段ならきっと別のことを考えるが

今だけは彼女をどこにも行かせたくない気持ちでいっぱいだった。

 

「は―――た――い――く―な―――」

「クラレット!クラレットォ!!」

 

光が勇人とクラレット包み込む、

 

そしてそこに残っていたのは…ただ一人、新堂勇人のみだった。

 

 

「一体…一体どういうことだよ… クラレット… クラレットォォォォォ!!!」

 

 

俺は訳も分からずにクラレットの名前を叫んだ。

今までずっと一緒だった彼女が突然消えた、

そのとき俺は無意識に確信してたんだ。

 

―平凡で平和な毎日が終わりを告げたことに―

 

 




あー難産だった、なんか当初は一緒に行く予定だったんだけど(告白イベもなかった)
気が付いたらいろいろ書き足してました、厨二病全開っすね、まあSSなんてそんなもんでしょ
ちなみにもう夏美たちの活躍は次で終わりです、あとエピローグぐらいっすかね?(予定が変わらなければ)
次からは原作沿いでいろいろ改変するだけなんで気が楽です、気持ちだけな気がするけど
ちなみに今一番困ってるのはミニスの扱いですね、小説読んでねぇし、
本メンバーに組み込んでもいいんだけどさすがに幼女を酷使するのはちょっとなぁ(フィズとほとんど変わらんっしょ?)
あとラッキースケベは基本です、ギャルゲー主人公の必須スキルでしょ?サモンナイトギャルゲーだし…だよね?
じゃあ2話も見直したら落とすと思うんでよろしくー

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。