焦らずのんびり行きたいと思っています。
目を覚ましてから今いる場所の確認をしていなかったことに気づき探索すると、どこか見覚えのある風景であることに気づいた。前の世界で小学生のころに通っていた施設そのもの…ところどころ記憶とは違う場所もあるが、大体記憶通りの「学校」であった。
今からあの子たちを教育する場所という意味ではなるほどと思えるが疑問も生じる。
なぜ小学校?
数年前まで大学生で高等学校の公民の教員免許は持っている。中学校は大学在学中に取り壊しが決定した際に訪問した。しかし小学校とはほとんど接点はない。
まあ、今のあの子たちは本来の大きさから小さくなってデジタルなモンスターでいうところの幼年期のような見た目だ。そういった認識が施設に影響しているのかもしれないとあたりを付けてあの子たちがいた教室に戻る。
さて、ひとしきり自分のパラダイスを堪能し夢かどうかを確認した後、目の前で好きに浮遊し騒いでいるようなセプテントリオンたちの数を確認する。
体色は青紫色で、金魚のしっぽを付け根から切り落としたような形状をしているセプテントリオン。
金色のリングの外周にグリーンの水晶と桃色の水晶が合わさるように生えているセプテントリオン。
体色は橙色であり、ボールのところどころにとげを付けたような形状のセプテントリオン。
ミノムシのような形状に、頭にあたる部分が紫色で目と口と思われる穴が開いている全身が白いセプテントリオン。
大部分が紫だが、地面に接している部分がてらてらと光っている。形状は大きな球に小さな玉を連結したような腕をくっつけた形状をしているセプテントリオン。
円錐の底面を上にして、とがった部分や角ばった部分を削って全体的になめらかな形状になっているクリーム色をしたセプテントリオン。
計六体………あれ?
セプテントリオンとはラテン語で『北斗
足りない……。一体足りない。
様々な色の短冊を縦に束ねてアイスクリーム・コーンを作り、アイスが乗る部分にショッキングピンクでかろうじて半円形に見える物体が煮立っている、そんな見た目のセプテントリオン。
「嘘…でしょう?」
全身から力が抜けていくのがわかった。セプテントリオン全員の教育を願ったはずなのに…。
なんだこの仕打ちは…。
ポラリス、恨むからね!
しばらく目の前の現実に打ちひしがれているとベネトナシュが目の前まで来て独楽のような動きを緩慢にし続けた。ほかのセプテントリオンたちも私の様子に気づいたのかどんどんと自分の周りに集まってくる。意味のない動きのはずなのに自分には彼らが自分を慰めているように感じた。
そうだよね。君たちには私しかいないんだからこんなところで打ちひしがれてネガティブになっている場合じゃないよね。…よし!
「ありがとうね。」
私の目的はこの子たちを強くして、一方的な虐殺を回避すること。そのためにもぱっぱと教育しなきゃね。でもその前に…。
「ごめんね。ポラリスのとこから引き離して」
ポラリスは言ってしまえばこの子たちの親だ。その親元から引き離したのなら私の願いが原因なのだから謝るのが筋というものだろう。でも、
「君たちを一方的に殺させはしないから」
せめてそれだけは約束しよう。自分の身勝手な願いでもそれだけはさせないとこの子たちに誓おう。
一応、身勝手な願いの贖罪は済んだし教育に入りますか。
「じゃぁ…メラク、ちょっとこっちに来てくれるかな?」
全員が私に向かって勢いよく体当たりをし始めた。
「ちょ、ちょっと待って。順番に順番に。えっと、メラクだけこっちに来てくれるかな?」
そういうとセプテントリオンたちは顔を見合わせるような動きをした。
「えっと…もしかして、名前が、ない?」
ポラリス、コノヤローーーー!!
自分の子供には名前をちゃんと付けろよ全く!
はぁ、仕方ないなメラクをそばに寄せてっと
「今日から君はメラクだからね」
「ΨΩΨ%%!?」
ん?なんかすっごい驚いているみたいだけどまぁいいか。ほかの子たちにも同じように名づけを行ってから教育に入ろう。名前はないとすっごい不便だからね。
全員に名前を付けていたらだいぶ遅い時間になってしまった。しまった、気絶とか落ち込んだりとか自分のことに時間を割きすぎた。教育は明日に回すとしましょうか。
「これから君たちは全員が兄弟、姉妹で私が父親だよ。みんな仲良くしようね」
そんな言葉を最後にセプテントリオンたちとの最初のふれあい1日目は終了した。
天の視点 神の剣
私たちはセプテントリオンという神の剣である。誕生と同時に創造主とは別の場所に転移させられた。
なぜだ?
いや私たちは剣として創造されたのだ。常に創造主のおそばにいないといけないわけではない。必要な時に使ってくださればよいのだ。いや、そもそもただの武器がこんなことを考えるのはおかしなことだ。ゆえこの仕打ちも甘んじて受け入れよう。力が弱くなっても仕方ない。体が小さくなっても仕方ない。父のもとに送られても…………父?
私たちに父はいないはずだが?しかし目の前にいるヒトは父に違いないと本能的に知っている。
であればこのヒトは私たちの父で間違いないのだろう。眠っていた父は少しの間私たちを見た後再び気絶するかのように眠ってしまった。
…私たちは父にとって歯牙にもかけない存在なのだろうか?それほどまでに私たちは弱く、期待のできない存在に堕ちてしまったのか?
いや違う。そんなことは思ってはいけない。創造主が私たちを貶めたなどそんなことはない…はずだ。
再び父が目を覚ました。しばらくの間、自分たちの前から姿をお隠しになった。見限られたのだろうかと心配になったが戻ってきてくださった。そして私たちを見てくれた。こちらを見てくれたとき体が熱くなり動きが雑になってしまった。私たちはここにいます、私たちを見てください。全員共通した思いが動きにでてしまった。そんな私たちに再び失望したのだろうか、立っていた父は膝から崩れ落ち、手を床につき涙を流していた。崩れ落ちる前に私たちは確かに聞いた。
「足りない」と
「嘘でしょう」と
浮遊していた何体かが地に落ちた。
ああ、私たちにはやはり力が足りないのですか?
虚像のほうが私たちよりもまだましなのですか?
父が、創造主がお求めになるほどの剣ではなかったのですか。ならばなぜ捨ててくださらなかったのか。創造主はわざわざ父にまで私たちの体たらくをさらしたかったのか?少し創造主の仕打ちを恨めしく思った。
父に事の真偽を問いたくなって私たちのうちの一体が父のそばに寄った。ほかの者たちも徐々にだが父のそばに集まってきた。すると父は泣き止み、たたずまいを正した。とうとうお答えをくださるのですね。全個体が身構えた。
「ありがとう」
…………え?
思考が飛んだ。なぜ、という疑問が浮かんだ。なぜ父は私たちに礼など言うのかが全く分からなかった。そのあとも父は私たちに謝罪をしてくださった。創造主のもとから離してすまないと。さらに私たちの命を心配してくださった。その2つの言葉で確信ができた。父が私たちを必要としてくださったのだと。父に見捨てられたのではないのだと。父の慈悲深さに体が熱くなった。この方は私たちを必要としてくれている。そのことが体の熱に拍車をかけた。
「こっちに来てくれるかな?」
救いを求める信者のように全個体で父のそばに走った。
ちょっと待てといわれたので待った。父はどうやら私たちの中で一個体をそばに置きたいようだ。少しの間全員の顔色をうかがっていると、父がその中の一個体を自らの手で選びそばに寄せた。選ばれなかった個体は気落ちしていたが次の瞬間再び思考が飛んだ。
その個体に名前を付けたのだ。
ただの剣である私たちの一個体、いや一人にまるでヒトのように接してくれている。父がまぶしく思えると同時にその一人に嫉妬した。一人だけ父の寵愛を受け続けるのだろう。それとも一人以外は選ぶまでもない個体だったのかと創造主に対してさらに恨みを持った。だが、父はそれぞれの個体に名前を付けて私たち全員を一人のヒトとして扱ってくださった。
「これから君たちは全員が兄弟、姉妹で私が父親だよ。みんな仲良くしようね」
そういって父は再び眠りについた。
激動の一日だった。創造主の考えはわからないが父には従っていこうと思えるそんな一日だった。
「これから君たちは全員が兄弟、姉妹で私が父親だよ。」
はい、私たちは皆、父に名を与えていただいたヒトであり兄弟、姉妹です。
ああ、父よ。本当にありがとうございます。私たちを必要としてくださって。見限らずにいてくれて。
私たちは兄弟全員で父の期待に応えていきたいと思います。
ですので、どうか創造主のように私たちを見捨てないでくださいね。
いかがでしたでしょうか?
無理やり感が半端ないです。
2016/2/21 施設について消えていたため追記しました。