ソードアート・オンライン 〜直死が視る仮想世界〜   作:プロテインチーズ

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お気に入り登録の増加にびっくりしました。
60超えて喜んでいたらいつのまにか200とは……
これも皆様のお陰です。本当にありがとうございます!
これからも誤字、指摘、感想、訂正、評価等あればお願いします。


2/23追記、今回の話に自分の大きな勘違いがあり、感想でご指摘を受けて訂正させてもらいました。
詳しくは活動報告にて。


死神降誕

 第十層《フロアボス》を討伐会議の中、あいつは再び俺達の前に姿を現した。

 

「会議中、邪魔して悪いな」

 

 《孤高の英雄》シキだ。俺たちに姿を見せるのは随分、久しぶりだ。攻略組のプレイヤーは騒つく。良い意味でも悪い意味でも《アインクラッド》中の有名人。鼠から聞いた話だと、下層プレイヤーの中にはシキを神聖視する集団も出始めたらしい。

 

 《フロアボス》を単独で倒す実力とその美貌、そしてPKを躊躇ず行うその心の強さ。それらに憧れるプレイヤーがいるようだ。

 あの第六層の会議以降、姿を見せなかったが今更何の用なのか。

 

「なんや、自分! 今更ワイらに何の用や!」

 

 やはり最初に噛み付いたのはキバオウだ。今にも遅いかからんばかりの勢いだ。リーダーのディアベルが手で制した。

 

「この第十層の《フロアボス》は俺一人が倒すぜ」

 

 こいつ……! まだそんな事を!

 

「……理由を聞いても?」

 

 混乱しているプレイヤーの中、ディアベルは冷静にシキに質問した。隣にいるアスナは俺のコートの袖を掴んでいる。

 

「前にあんな事、言った手前悪いんだけどな。他の層の《フロアボス》より第十層のはもしかしたら強いかもしれないんだろ。ならそいつは俺が倒す」

 

「つまり君は《フロアボス》と一騎討ちで戦いたいという事か? どうしてそこまで一騎討ちに拘るんだ。俺達と戦った方が安全だ。危険は少ない方が……」

 

「うるさいな。別に今すぐ迷宮区に行って《フロアボス》の部屋へ殴り込んでも良いんだぜ?」

 

 俺はその言葉にシキの本性が一部見えた気がした。

 こいつは恐らく、生粋の戦闘狂という奴なのだろう。この《アインクラッド》という死ぬかもしれない異常な世界の中でそれを全く物怖じしない生き方は……少なくとも俺には出来ない。他人を全く寄せ付けないその雰囲気は抜き身の剣のようだ。

 

「それをしないでここに来たのは曲がりなりにも前にあんた達に言ったからな。《フロアボス》をしばらく倒さないって。一応、その義理を果たす為にこんな所に来たんだ」

 

 その不遜な態度に攻略組のプレイヤーはついに爆発した。

 

「ふざけんな!」

 

「《英雄》とか呼ばれて調子に乗ってんじゃねぇぞ!」

 

「この人殺し野郎!」

 

 ディアベルが抑えるように命令するが場は収まらない。元々嫉妬深いネットゲーマー達だ。シキの実力を妬んで溜め込んでいても仕方がない。でも……

 

「ならまた《決闘》で決めるか? なんなら数人でかかって来いよ」

 

 威圧、いや殺気を込めた視線でプレイヤー達を睨みつけた。それだけで場は静まり返った。

 何で、こんな奴がこの世界に……

 PKをするかもしれないプレイヤー……あの黒ポンチョの男のような奴がいるというのに。シキという異常な強さの実力者相手が本気でPKをしたらどうなるのか……

 

「やろうって奴はいないのか。前に俺と《決闘》した奴は覚えているだろうがな。俺の行動を邪魔するな。まぁ、第十層が終ったら俺も大人しくしとく。あんたらの邪魔はしないよ」

 

 俺は拳を握り締めていた。そうだ。シキのなすがままにされているのはその強さのせいだ。俺達で到底敵わないそれ。

 俺がもっと強ければ……

 強くなってやる……いつかお前に追いついて……

 

 プレイヤー達の反応がないのを見るとシキはすぐにその場を去って行った。第六層の攻略会議の再現だった。

 

 その翌日、シキが第十層《フロアボス》を単独で倒し第十一層のアクティベートがされた。

 その後、彼の新たな異名が広まった。

 ーーー狂戦士ーーーと

 

 

 大した事なかった。

 俺が第十層の《フロアボス》を倒した後思った事だ。

 一応、一つの区切りになる第十層の《フロアボス》は強敵になると思ったのだが……当てが外れた。

 次の俺の狙いはクォーターポイントになる第二十五層だ。それまでは《フロアボス》に挑む事はない。この世界の《フロアボス》は俺にとって大した事なかった。俺が持つ死を視る魔眼はこの世界にとっては規格外すぎる力だ。その分、かなり負担も大きいが。それもこの世界での魔眼の制御も出来るようになってきた。

 

 《フロアボス》と戦わないとなると俺はどうするのか。さらにその上の敵と戦えばいい。《フロアボス》よりも複雑に動き、それらよりも的が小さく且つ実力がある敵。

 それはプレイヤー達だ。とそれも《決闘》ではない。俺が生きてる実感を抱く為には温い《初撃決着モード》や《時間制限モード》じゃ意味がない。つまり真の意味の殺し合い。

 しかし、そんな簡単にPKなんて出来るわけがない。何もしていないグリーンなプレイヤーを襲うなんて俺の理に反する。

 

 殺されても誰も文句を言わない連中。俺が狙うのはオレンジプレイヤーだ。情報屋から買い取った話では集団でPKやMPKをしているようなプレイヤーも現れ始めたらしい。

 かといって俺が直接そのプレイヤー全員に殴りこむのは悪目立ちすぎる。さらにステータスを上げる為にレベリングも必要だ。俺の現実世界での技術をこっちの世界でも使えるようにしておきたい。

 使い分けなくてはならない。一プレイヤーの《Shiki》としての顔と殺人者としての顔を。

 

 オレンジの情報は情報屋から買えばいい。情報屋から俺の情報を抜き取られるリスクも万全にする為ほとんどない。準備は既に整っている。

 ーーーさぁ、殺し合うか。オレンジども。

 

 

 

 しばらくして《アインクラッド》の裏、特にオレンジプレイヤー達の間でとある黒い噂が流れた。

 

 PKをしているとどこからともなくPKKプレイヤーが現れ殺されてしまう。

 白い仮面に白い和服を着ており、さながら暗殺者のように《短剣》を操り例外なくオレンジ達の命を刈り取られる。

 

 奴はこれまでオレンジ達により不遇の死を遂げたプレイヤー達の代行者。奴はこう名乗った。

 

 ーーー其は例外(オレンジ)を許さぬ死神なりーーー

 

 

 

「ここまでが最近裏で流行ってる《死神》についての噂ダヨ、キー坊」

 

「……何というかツッコミどころ満載じゃないか、それ? そもそも全員死んだのにどうやって《死神》?とやらの格好が分かるんだよ」

 

「オレンジで襲われた奴の中に生き残りがいたんダ。ま、その《死神》とやらに見逃されたって方が正しいかもナ」

 

 じゃあ、ダメじゃないか。《死神》とやらも随分と噂が一人歩きしたもんだ。

 

「そいつは今どうしてる?」

 

「黒鉄宮の牢獄にいるヨ。《死神》を怖れて自首したそうダ。そいつ以外にも何人かいるが結局は分からずじまいだナ」

 

 オレンジに恨みがある奴の犯行なのか。でも躊躇いなく殺しが出来る精神。さらに攻略組に並ぶ強さ。何者なんだ? 攻略組にそんな事をする奴はいない。それをするぐらいなら少しでも迷宮区を踏破しようとするだろう。

 

「まさか本当に《死神》って訳じゃない。もしそうなら……」

 

 第一層でビギナー達を置いていった元《βテスター》の俺も恨まれても仕方がない。もし、その《死神》が現れたなら俺は……

 

「キー坊?」

 

「あぁ。いや、なんでもないさ。どんなカラクリがあるんだろうなって思ってな」

 

「うーん。《死神》に関しては深く考えない方がいいと思うゾ。奴はオレンジばかり狙ってグリーンには手を出さないからナ。中にはPKをしたら《死神》が来るって事で抑止力になってる部分もあるんダ」

 

「でもグリーンを狙わない保証がない」

 

「……その時はまた対策を立てればいいだロ。《死神》の事ばかり考えても仕方がないサ」

 

「……そうだな」

 

 そうだ、アルゴの言う通りだ。あまり《死神》ばかりに捕らわれるのはおかしい。俺はゲームクリアを最優先にする攻略組なんだから。

 だが、もし……

 《死神》が俺を、アスナを襲った時、俺はシキのように…… プレイヤーを殺す事が本当に出来るのか……?

俺はしたくもない想像をしながら、グッと右手を握り締めていた。




そろそろオリジナルの話入るかもです。
それはそれとして、タイトルまじで考えるのむずい……

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