ソードアート・オンライン 〜直死が視る仮想世界〜   作:プロテインチーズ

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クリスマスイベです。少し短いですがキリが良いのでここで切りました。
後、話の展開的に強引だと思いますが、自分の腕ではこれが精一杯でした……


代償簒奪Ⅰ

 2024年 11月、浮遊城《アインクラッド》に二年目のの冬が訪れた。つまりそれはこのゲームが始まって一年が経過をした事を意味する。

 

 そんな中、攻略組を含めたプレイヤー間である噂が広まった。それは複数のNPCが口にし始めたのだ。

 年に一度のクリスマスの夜に《蘇生アイテム》をおとす《フラグmob》が現れるという。名前は《背教者ニコラス》。

 

 そして、俺とキースも他のプレイヤーと同じくコンビを組んでこれを狙っていた。いや、それは正確じゃない。狙っているのは俺一人だ。俺が死なせないと誓ったサチを復活させる為に。

 

 これは俺の身勝手な我が儘だ。俺一人で行くつもりだった。でも、その要求をキースはそれを笑って跳ね除けた。

 一人で行くのは危険すぎると。ダチなんだから頼れよといったのだ。

 

 それだけじゃなく少しでもリスクを減らす為にキースは前に言っていた友人を誘っていた。そして、そのキースを救ったという友人の正体を知った時は本当に驚いた。

 

 「前言ってた俺のダチってのを紹介するよ」

 

 二人でNPCが経営するレストランで晩飯を食べているとそんな事を言い出したのだ。前もってそれは聞いていたから驚きはしなかったが、人見知りの俺は少し、いや結構緊張していた。

キースはメッセージで呼び出すと入り口から友人らしき人物が入ってくるのが見えた。

 流石の俺も自分の目を疑った。何しろ、いたのは、

 

「ほら、こいつが前に行ってた俺のダチ、シキだ」

 

「どうも。キースのダチ?だ」

 

 かつて《孤高の英雄》、《狂戦士》などと呼ばれ畏怖されたプレイヤーだったのだから。

 あまりの衝撃に晩飯の味すら忘れて、二人の関係を聞いた。前は同居人だったが今は隣同士の部屋を借りて住んでいるのだとか。キースの戦闘技術はシキに教わった部分もある、今は別々にソロで活動している等々。謎に包まれていた《英雄》の正体を知れたのだ。

 鼠でさえ知っている事はかなり少なく、俺はそんな貴重な情報をを手に入れる事が出来たといえよう。

 

 話してみると、確かに色々気怠げで達観した少年といった印象は変わらなかったが、本当に時々、好物の甘い和菓子を食べる時の仕草やキースにからかわれている時の反応は年相応の少年だった。

 俺もフレンド登録をしたが驚く事にシキは俺で二人目だという。もちろん、一人目はキースだ。ソロの俺もそこまで少なくはない。

 

 キースはそんな風変わりな友人もイベントクエストに誘っていたが、やる事があるといってさっさと行ってしまった。

 二人だけのコンビでは、年に一度のイベントボスを倒すのは厳しい。もし、何かあった時のカバーがきつくリスクがでかすぎるのだ。

 

 今はそれを減らす為の《レベリング》の期間だ。レベルが上がれば上がる程に安全度も比例して上がる。クエストまで後、五日ある。その間に何としてでも《背教者ニコラス》を倒せる程度まで上げなければ。

 

 俺達がいるのは第四十八層、通称アリ塚と言われる経験値スポット。しかし、そこに《Pop》される巨大なアリ型の《mob》は雑魚ではない。その上、一度に湧き出る数が多い。それ故に効率が良いと言われるでもある。本来はパーティで挑み互いをカバーし合いながら稼ぐのがセオリー。それでも二人でなら俺一人よりは断然に危険度は下がる。

 

 キースは本当にサチを救えるか分からないのに、俺の勝手の為にここまでしてくれている。俺が折れる訳にはいかない。昼から夜までずっと潜って付き合ってくれている。でも、もう日が暮れてから随分と経つ。いくらソロで慣れているとはいえ、俺とキースにも疲れが来ていた。

 

「はぁはぁ、そろそろやばいかも」

 

 キースが座り込んでいった。いつもの余裕のある表情をしていない。俺もそろそろ戻ろうと提案しようしていたので、ちょうど良かった。

 俺はポーションを二人分取り出しそのうちの一つを寄越した。

 

 その時、背後から誰か来た。すぐに警戒し、武器に手をやるが生憎それは無用な心配だった。そいつは俺の昔からの知り合いだったからだ。

 

「相変わらず無茶なレベル上げしてんじゃねぇよ、キリトよ……ん? おめぇ、誰かと組んでんのか?」

 

 暗闇から現れたのはクラインだった。

 趣味の悪い赤いバンダナをつけ、あまり見栄えが良いとはいえない無精髭を生やした侍風の装備をしたプレイヤーだ。

 どうやらソロを貫いていた俺が誰かと組んでいるとは思わなかったらしく、かなり驚いているようだった。

 

「誰だ、知り合いか?」

 

「あ、あぁ、紹介するよ。一層からの腐れ縁のクラインだ。ギルド《風林火山》のリーダーをしている。クライン、こっちは今、俺と組んでるソロのキースだ」

 

「キースだ。今はキリトと組ませてもらってる。あんたの名前は何度か聞いた事あるぜ。一気に攻略組の仲間入りした《風林火山》の噂もな」

 

キースはイケメンという訳ではないが、端正な顔つきなのでソロの俺とは雰囲気からして違う。

 

「おう、こっちこそ。他の攻略ギルドに比べりゃ大した事ないぜ。一ギルドの頭張ってるってだけだしな。それにしてもよぉ、ソロのお前がどういう……」

 

 紹介が終わるとクラインはそう言って俺の肩を掴んできた。やっぱりこいつは良い奴だ。前に自分を見捨てた相手の事を心配してくれる程には。

 

「まぁ、色々あってな。攻略組と同程度には強い奴だし頼りになる。良い奴だし」

 

「そうか。おめぇがそう言うなら文句ねぇ。でもよ、いくらコンビだからこんな時間までレベル上げやってんのか?」

 

「いや、そろそろ戻るさ。ここで死んでちゃ元も子もない」

 

「おめぇ、やっぱりあれ(・・)狙ってんのか」

 

 俺は何も言えなかった。クラインはサチ達の件について知っている。恐らくここに来たのもそれを鼠から聞いて、か。

 

「それが無駄って事もあるんだぞ? 思い出すのも癪だが茅場の野郎が言っていた事は事実だ。それを承知でか?」

 

 泣きそうな、それでいて俺の事を本当に考えてくれているのが分かった。俺は一言、あぁとだけ答えた。こんな良い奴が心配してくれるというのに自分の愛想の無さに怒鳴り散らしたくなる。

 

 クラインは俺の意思が固いのを分かると、苦虫を噛み潰したような顔をしただけで俺を止めようとはしなかった。面倒見の良いこいつの事だ。てっきり俺をパーティにいれるなりすると思ったを

 その代わりにキースの方を向き直り、いきなり頭を下げたのだ。

 

「キースさん、こいつは口下手で無愛想で戦闘マニアの馬鹿たれですが、例のクリスマスのイベントクエスト、よろしく頼んます」

 

 やっぱり知ってたのか。俺が《蘇生アイテム》を狙ってる事を。俺が鼠から情報を買った事をさらに買ったんだな。

いきなりの事で俺もキースも面食らったがやがてキースはニィと笑った。

 

「おう、任されたぜ!」

 




次でこの話は終わります。

かなり難産でした……

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