ソードアート・オンライン 〜直死が視る仮想世界〜 作:プロテインチーズ
ここでは初投稿です。誤字、指摘、感想など待ってます。よろしくお願いします。
(あぁ……こっちでも
俺がこの世界に来た時に最初に思った事はそれだった。周りの人々を見ると和気藹々と過ごしている。友達同士らしい数人が固まって楽しそうに喋りながら歩いている。
また、別の人物は心なき店主が経営している店を冷やかしている。
さらに、また別の人物はこの世界に来て余程嬉しいのか、笑みを浮かべながら、迷いなく通りを走り去る。
あれが噂に聞く《βテスター》ってやつか? 俺も《MMOトゥデイ》などでそこそこ情報を仕入れているが……なるほど、あれを見るとかなりこの世界に慣れているのが分かる。
彼らに共通しているのは誰もが希望に満ち溢れた眼をしているという事。これからの冒険に胸が踊っているのだろう。
本来なら彼らの反応が正しいのだろう。
何せこの世界は世界初の仮想世界で行われるVRMMO《ソードアート・オンライン》なのだから。間違っているのはそんな仮想世界に一人で来て勝手に絶望している俺の方だ。
俺の気分を最悪にしている元凶にして、普通の人間なら視える筈がない幼稚園児がクレヨンで描いた落書きのような
すぐに俺は瞳の奥へ意識して、眼の力をコントロールする。チリチリする。頭の中がグルグルする。
側から見れば眼の色が蒼から黒へ変わったのでギョッとした事だろう。幸いにしてその変化に気づいたプレイヤーはいなかったが。
(結局、仮想世界でも変わらないのか……考えてみればどんな
ならこの現象も納得はいく。
まさかこの時は夢にも思わなかった。この世界が単なる遊びのゲームではなく、命を懸けたデスゲームになるという事に。
いくら
一応、そこそこのゲーマーだと自負しているので、この仮想世界での冒険に興味がない訳ではなかった。
チラリと自分のHPの端を見る。その隣にはこの世界の俺の仮の名前である《Shiki》の文字が書かれていた。
(この世界は俺の伽藍堂を埋めてくれるのやら)
俺は《はじまりの街》である程度、装備やアイテムを購入するとすぐに《圏外》へ飛び出し、この世界で何が出来るのか検証した。
俺が使用するのは《短剣》だ。現実でもある程度使い慣れているので一番これがしっくりと来たのだ。
《MMOトゥデイ》に載っていた《剣技》とやらを敵《mob》である《フレンジーボア》に試す。のっそのっそと歩いてるだけなので良い練習台になる。
(なるほど。《剣技》があるのとないのでは雲泥の差だな。身体が軽い。ここまで運動性能に差が出るとは)
現実でも剣術を嗜んでいた俺はすぐに慣れる事が出来た。
ふと周囲を見ると俺と同じように《フレンジーボア》と戦っているプレイヤー達がいる。
友人同士なのか親しげにレクチャーしてもらっているようだ。俺も経験者、つまり元《βテスター》から教わればよかったのだが、人付き合いを煩わしく感じる俺は他のプレイヤーと関係を持ちたくない。そもそも人に借りを作る事が嫌いというのもあるが。
二時間程で大体の《剣技》のコツを掴んだ俺は《はじまりの街》周辺からすぐに走り去り、次の拠点へ向かった。
こんな雑魚どもでは俺を満足させてくれない。
(大体、現実の身体と《仮想体》の違いに慣れてきた。それにこの忌々しい眼も使う事が出来た)
元々ソロでこのゲームを楽しむつもりだった俺はすぐに次の拠点……《ホルンカの村》へ向かった。
《ホルンカの村》といえばかなり有用な《片手剣》の武器である《アニールブレード》を手に入れる事ができる《キークエスト》があった筈だ。どうやらかなり面倒なものらしく《リトルネペント》というモンスターの中でも《花つき》という奴が落とす《リトルネペントの胚珠》を手に入れるという内容だ。
その出現確率は一パーセント以下でかなり低い。《βテスター》の情報が正しければの話だが。
しかし、俺に関していえばそれは必ずしも必要ない。俺は《短剣》使いで《片手剣》は持っていても意味がないからだ。
なら何故その時間がかかる、且つ面倒な《キークエスト》をわざわざ俺が受けるのか。
理由としてはレベルアップというのもある。が、それは付属的な意味合いが強い。
真の理由は俺が現実世界でも共通の趣味でそういった刃物を集めているからだ。刃物ならば武器ではなくナイフや包丁なども、俺が眼を引くモノならば何でも手に入れようとした。
この世界は剣の世界。気に入った剣を手に入れようとする事は悪い事でも何でもないだろう。
それから俺は大体、一分に一体の割合で《リトルネペント》を屠っていた。
しかし、《リトルネペント》を狩り始めて三十分程した後だろうか。仮想体であるこの身体が突如、光に包まれたのだ。
「はっ?」
そして、俺はどこかに転移されてしまった。それがこの世界の真の始まりだった。
追記、行間の入れ方というか一番いいのがわかんないですね。御意見お待ちしています。