オメガ&ルビー~マグマ団カガリ隊に配属された件~   作:れべるあっぷ

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ボーナスステージ

 オメガくんゲットだぜ!

 

「ユウキ……ッ!!」

 

 センリにとって息子が誘拐され悪夢を見せられ怪物になって……そして、まだ尚絶望は続く。

 

 息子はモンスターボールで捕えられヒトではなくなった。

 

 怪物であるから、ポケモンであるから息子はモンスターボールに入ってしまった。

 

 世界は理不尽にも絶望的にセンリの味方ではない。

 

 モニターに映る絶望がソレを物語っていた。

 

 黒幕が持つモンボをマグマ団の少女達が取り戻す望みはもうなさそうだ。

 

 幹部の子がやられ、ハルカちゃんは痺れて動けず……残り1人、ハルカちゃんと同じ容姿をした、でも肌が限りなく真っ白く目つきが悪いウサギな女の子さええあのザマだ。

 

 立ち上がる体力さえなかった。

 

 立ち上がろうとして崩れる。立ち上がろうとして倒れてしまう。

 

 その繰り返しだ。

 

 それも当然だった。

 

 クソッタレなボス戦だけで満身創痍だ。反撃する力さえ残っちゃいない。

 

 だから、これが息子と直接会える最後なのかもしれないとセンリは悟った。

 

「ユウキ……今度こそ父さんが助けるからな!」

 

「駄目ですセンリさん!行ってはいけません!!」

 

「無茶じゃセンリ殿っ!まだあそこは戦場じゃっ!!辛抱せいっ!!」

 

「ですがっ!!このままではユウキが……っ!!」

 

 外へ続く、エントツ山頂上へのワープパネルは次の次のフロアにあることはわかっている。

 

 だからツツジやテッセンをはじめとするジムリーダー達がセンリを止めにかかった。

 

「センリさん、こう言ってはなんですが我々がミミロップへ加勢をすることは不可能ですよ」

 

「ミクリさん!!貴方は私に息子を見捨てろとおっしゃるのですか!!」

 

「そうは言ってませんよ。でも、今の我々が立たされている状況が分からないほど貴方の目も節穴じゃないはずです。ミミロップが足止めに入った時点で我々はまた無力なんですよ……」

 

「くっ……」

 

「わたくし達の悪いくせですね。保守的になってしまい状況は最悪です……」

 

 ツツジの言葉にミクリが珍しく悔しそうに唇をかんでいた。

 

 何が今起きているのかセンリも状況を把握している。

 

 ミミロップの登場で黒幕の魔の手からジムリーダー達は倒れた者たちも含めて一歩手前のフロアへ非難していた。

 

 今、ミミロップが外とこのフロアを繋ぐ唯一のフロアで、黒幕のポケモン達と死闘を繰り広げているのである。

 

 敵はドラゴンタイプが3体。

 

 禍々しい黒のカラーリングを施したLv96クリムガン、Lv98ガブリアス、Lv100カイリュウーの改造ポケモン達。最悪なのはワープパネルの行く手を阻む仁王立ちカイリューに攻撃が届いていないことに加えて、少しでも隙を見せるのであればジムリーダー達が避難したワープパネルへと突っ込んでいこうとするヤバさだ。

 

『この子達は欲求不満なオスばかりだ。シガナだけ遊ぶのズルいってさ。だからこの子達とも遊んであげてね!』

 

『にょにょ……』

 

 同情するようなシガナの視線は忘れはしないだろう。メガ進化さえしてればこんな奴等に苦戦はしなかったというのに。

 

「センリさん……我々はあのゴニョニョが足止めをしている間に動きべきだったんです。ゴニョニョ一体だけなら我々も身を挺してミミロップを先へ行かせられたのです。ですが、今加勢をすればかならず足手まといになる」

 

 奴等の矛先がミミロップ以外のジムリーダー達に向かえば最悪だ。

 

 だから、今は……ここでただじっとミミロップの勝利を信じて待っているしかできないのだ。

 

 ここにいるジムリーダー5人の話しはだ

 

「あとは、トウキさんとアスナさん、フウくんにランちゃんが上手くやってくれていればいいのですが……」

 

 今まで白目を剝きながらもセンリの足にしがみ付き離さなかったナギが口を開いた。

 

「そうだね。彼らには重荷だったかもしれないけどやってもらうしかない」

 

 万が一の保険のために別働隊を編成していた。

 

 ミミロップが敗れた場合の保険だ。

 

 ここに侵入してきたカイリュー等とジムリーダー全員で立ち向かう必要はない。

 

 だから、彼らを先に別ルートから頂上へ向かわせた。

 

「じゃが、ここはマグマ団のアジトじゃ。蟻塚のように複雑に入り組んでおる。入ったら最後、そう簡単に出口へ辿りつける生易しい構造にはなってはおらんぞ?」

 

 迷子になっている間に事は終わってしまう恐れもある。

 

「ならば、我々が案内しよう。土地の利は誰よりも理解してる自負があるのでね」

 

「まー我々のアジトですから」

 

「お、お前達は……っ!?」

 

「わしゃしゃしゃ、ここにきてお前さん方の登場とは神様のイタズラにしちゃちと意地悪じゃな」

 

 マツブサ・リーダーとホムラが現れた。

 

 センリとマツブサの視線が交差する。

 

 お互い言いたい事はあるだろう。

 

 だが今は置いておけ。

 

「こっちだ、急ぎたまえ……最短コースで頂上へ案内しよう」

 

 さあ、ここからはボーナスステージだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 さて、すごく真面目な話し。

 

「ヒトとポケモン、昔は同じだった……」

 

 本当に真面目な話し。

 

「であれば私は彼を怪物にしてみようと考えた。そうすればモンスターボールにも収めることだってできると想像した」

 

 結果はどうだ?

 

 大成功だった。

 

「ねぇウサギちゃん。頑張った分だけその努力はいつか報われるというけどさー……どうやら本当みたいだね!」

 

「………」

 

 てっきり大人たちの戯言だと思っていたよ、とヒガナは喜んでいる。

 

 神様は自分の頑張りをちゃんと見ていたのだ。

 

 だからご褒美を与えてくれたのだと……

 

 こんなクソッタレな地獄に生きて甲斐があったと、ヒガナはマスターボールに頬擦りした。

 

「だからさ、君も強く生なよ?こんな絶望的な世界だけど、もう昔のことは忘れて今を生きよう!たとえオメガくんがいない世界だとしても、ね」

 

「回りくどいのはキライなんだけど、元作戦部長さん……何が言いたいのかしら?」

 

 オメガくんは私のモノ宣言がいいたいだけでないのはルビーも分かっている。

 

 ルビーも薄々感づいてはいる。ヒガナはオメガじゃなくルビーを次の対戦相手に指名した理由が……それがどんな意味をもたらすのか…………

 

「いや、本来のシナリオはエントツ山の決着から私が黒幕でしたーのネタバレからのカガリ隊長でもハルカちゃんでも何でもいいからテキトーに人質かっさら攫って、オメガくんとバトって私の胸の内を告白してハッピーエンドを迎える予定だったんだよねー」

 

 何度も言うがいつにもなく真面目な話しだ。

 

「でも君という存在はまったくもってイレギュラーだった。なに、私もまだまだ想像力が足りなかっただけさ。ありえないことなんてありえないんだから。だから、君が今ココにいるこの事実がとても嬉しいんだよ!君の行動がいちいち私を興奮させてくれるんだ!血が騒ぐっていうかさ!胸の高鳴りが抑えきれないっていうかさ!!オメガくんに比べものにならないくらい最高の好敵手が目の前に現れたって信じて疑わなかった!!この瞬間、君はそれほどまでに私の中でもっとも価値のある存在なんだよ!!」

 

 だから、ヒガナのシナリオは続くのだ。

 

 ゲームはまだ続く。

 

「さあ第2ラウンドだ!私は『また』カイオーガを復活させてあげるよ!だから『また』ホウエンを海の底に沈めたくなかったら……頑張ってそれを止めてみせるんだね、ルビーちゃん!なんなら『また』アオギリと共闘でもしてみるっていうの傑作だね!!」

 

「ぺっ………」

 

 ヒガナはいかなる手段を用いて間違いなく古代ポケモン・カイオーガを復活させるだろう。

 

 それはルビーの知る由もないレックウザを降臨させる過程にあるのだが……

 

 問題なのは……オメガというチートな切り札を使用してくることじゃない。

 

「ゲームをする前に、一つ訊いていい?アンタ、いったい本当に何者なのよ……?」

 

「ん?今更その質問をするのかい??分かりきっているっていうのに……じゃあお決まり文句を言ってあげるよ。『それは私が決めるんじゃなく、君が決めるんだ』だよ」

 

 そして、もうその答えは君はもう知っているはずだ。

 

 今までヒントは十分に与えてきたのだから。 

 

『がはは、何度も言うがルビー嬢……それは俺が決めるんじゃなく、嬢ちゃんが決めるんだ』

 

『うん、わかったかも。アオギリ!』

 

 最悪の記憶が脳裏を過ぎる。

 

 それは1週目のアオギリの台詞だ。お決まり文句だった。

 

 だから、ルビーは泣いた。

 

 だから、ルビーは怒った。

 

 だから、ルビーは力を振り絞って立ち上がり踏ん張って叫んだ。

 

「アンタだったのか…………アンタのせいで、パパやママも皆死んじゃった!!アンタがアオギリをそそのかし殺したんだ!!この人殺しぃっ!!」

 

 これが答えだった。

 

 ヒガナは間違いなくルビーのいた世界にいたヒガナだと肯定したと同然だった。

 

 最悪の敵もアタシと2週目……それがルビーの答えだった。

 

 ありえないなんてことはありえない。

 

 ルビー自身がそれを証明しているのだから……

 

「やれやれ、人殺しとは物騒な言葉を使うねルビーちゃんは」

 

 人聞きが悪いなーと。

 

 だから、ヒガナは別の言葉でオブラートに包んでその質問を問いかけを肯定した。

 

「皆を海に還しただけだよ。不本意ながらね」

 

「くそぅ……何がゲームよ、絶対にアンタは許さない………っ!!」

 

 そう言ってルビーは力尽き倒れた。

 

 もう睨んで泣くことしかできなかった。

 

 あまりにも惨めで、ヒガナはそんなルビーを嘲笑った。

 

 ヒガナもこれ以上はルビーに何もしない。

 

 トドメを差すのはこのボーナスステージではないのだから。

 

 もうゲームは始まっているがあるべき2人の決着を形があるのだから。

 

 だからヒガナは背を向けてアジトへ帰る準備をする。サザンドラと横たわる緑髪の少年のベルトからオノノクスだけを回収した。

 

 もちろん、ヒガナが用意した新たなるアジトへ……

 

「あははっ。じゃ、またねルビーちゃん!これから帰ってオメガくんとイチャコラさせてもらうとするよ!!」

 

「にょ~!!」

 

 だから、バイバイと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ待ちたまえヒガナくん。どこに帰るかは知らないが……」

 

「私の息子を返してもらうか……ッ!!」

 

「およ……??」

 

 マツブサとセンリ、そしてよく知った面子がヒガナの行く手を阻む。

 

 これほど珍しい光景はないだろう。

 

 ヒガナにとっては愉快な光景である。そして、何もかもが遅い。

 

 今回のエントツ山でのくそったれのゲーム、ヒガナの1人勝ちである。

 

「へー面白い光景だ!マグマ団のお偉い方たちにジムリーダーの面子が揃いも揃って……でももう遅い!!オメガくんは貰って行きまーす!!」

 

 ヒガナはボーマンダーを繰り出した。

 

 メガ進化も抜かりなしだ。もちろん、Lv100で改造を施されたキチガイだ。

 

「メガバクーダ!噴煙!!」

 

「マグカルゴ、火炎放射!!」

 

「ケッキング!!切り裂く!!」

 

「ミルカロス!!ハイドロポンプ!!」

 

「レアコイル!!電磁砲じゃ!!」

 

「チルタリス!!竜の息吹!!」

 

「ダイノーズ、パワージェムですわ!!」

 

 上からマグマ団のマツブサにホムラ。

 

 続いてここに辿り着いたジムリーダー・センリ、ミクリ、テッセン、ナギ、そしてツツジのポケモンたちの攻撃がボーマンダを強襲する。

 

 しかし、

 

 メガボーマンダーの圧倒的ポテンシャルで彼らの攻撃を全て受けきりものともせず飛んで行き、タイミングを見計らって外へ出てきたクリムガンやガブリアスを回収して明後日の方向へ飛んでいってしまった。

 

 カイリューがあとから追っかけてきたミミロップの最後の攻撃を受け止め何事もなかったかのように立ち去っていく。

 

「くそっ、バケモノ共め……」

 

「ユウキ、すまない……私は……」

 

 もう一度センリは息子の名を叫んだ。

 

 こうして絶望のエントツ山事件は幕を閉じた。

 

 次に来る絶望の前座だと云わんばかりに………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「シガナ……あともう少しだよ。この世界も終わらせよう」

 

「にょー……」


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