オメガ&ルビー~マグマ団カガリ隊に配属された件~   作:れべるあっぷ

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午後5時ジャスト

 戦いが終わる。

 

 クソッタレな屑野郎を撃破してゲームクリア。

 

「ぢぐじょう……いでぇ……あぢぃ……ぐぞがぁ……ぎざまらおぼえでろ…………」

 

「まだ生きてるわ、アレ……」

 

「オメガは……甘い…………」

 

「……そう簡単に死んでもらっては困る」

 

 気絶しないその精神力に舌を巻く。

 

 サザンドラは黒コゲで撃沈しているというのに。しぶといのは確かだが、同情さえする必要もない。もう奴は自由に体を動かすことはできないだろう……

 

 何はともあれ戦いが終わった。

 

 カガリとルビーがオメガと抱きつき、ほつれ、そのまま3人は倒れた。

 

「ごめんねオメガ……ボクは君を見捨ててしまった……」

 

「もう気にすることはないさ、カガリたん」

 

「でも……」

 

 謝りきっても謝りきれない過ちを犯した。

 

 もう以前みたいな関係に戻れるとは思っていなかった。

 

 でも、オメガはこう言ってくれた。

 

 だからカガリはまた泣くのであろう。

 

「オレは今でもカガリたんのことが大好きだぜ」

 

「ふぇっ!?」

 

 いや驚きで涙も吹っ飛んだ。

 

「ちょっと今の会話おかしくない!?アタシもいるのにどういう了見で告白してんのよ!!」

 

「もちろんウサギちゃんも大好きだぜ」

 

「ふぁっ!?」

 

 驚きで疲れも吹っ飛んだ、そんなことはないのだが。

 

 この節操なしの堂々の爆弾発言に、ルビーも満更じゃない。

 

 今まで本人を前に口にして言われたことがなかっただけに2人とも破壊力バツグンのノックアウトである。

 

「ひひ、ひひひっ、へぇ、まーアンタがアタシを好きってのは知ってるし周知の沙汰だしー別に面と向かって言われても嬉しくなんかないしー、しかも他の女にも告白してるとかマジありえないしーでもでもカガリなら目を瞑るーって、ねぇーカガリはどう思うー?」

 

「………///」

 

 駄目だ、完全に別の世界へトリップしていた。

 

 ちょっとの間そっとしてあげるのが優しさであろうか。

 

「あ、先に一つ訂正したいんだけど、アタシはもうウサギじゃないから。ルビーよ。そこんとこよろしく」

 

 もうウサギの皮を被った悪魔でいる必要もないのだ。

 

「うんわかった。ウサギちゃん」

 

「おい」

 

「オレにとってはウサギちゃんはウサギちゃんだぜ?ルビーもウサギちゃんも結局は同じ女の子には変わりないってことだぜ。お前はお前のまんまでいいんだよ」

 

「ん?いや、よくわからないわ」

 

「さいですか……」

 

 オメガの想いは伝わらない瞬間だった。

 

「というかそんな暢気な話ししてる場合じゃなかった!!」

 

「はっ、ここは……どこ?」

 

「おぉ、戻ってきたかカガリたん。それにいきなり大声出すなよウサギちゃん。又の名をルビーくん」

 

「うっさい!アンタに構ってる暇なんてなかったわ!!あーもうシリアス気分ぶち壊しよ!!」

 

 それヒドくね!?と驚きを禁じえないオメガである。

 

 トリップから戻ってきたカガリはルビーの言わんとしてることを察した。

 

 幸せな顔が徐々に険しくなっていく。

 

「ルビー……影は使える?」

 

「もう余力は残ってないわ。とりあえずそこでくたばってるハルカを叩き起さなきゃ」

 

「おいおい一体なんの話しをしてるんだよハニー達ぃ。このままアジトに帰ってオールナイトカーニバルしようぜ~(棒)」

 

「「ウ、ウザイ……」」

 

 3人の温度差が激しいのは見ても分かるとおりであった。

 

 奴は一度怪物になってしまったせいもあるのかもしれない。

 

 宿敵を倒してオメガは1人納得のいくゲームセットを優越に浸っているのかもしれない。

 

 だからウザイ。

 

 ルビーはそんなアホをスルーしてハルカの元へにじり寄った。体力がもう限界だ。

 

「ハルカ!ハルカ!!起きなさい!!この小娘ぐーすかずっと寝てやがるわ!!いい加減起きなさい!!」

 

「おいおい張り手はひでぇだろ。もっと優しく起してやれよ。お目覚めなさいと囁くようになんならオレが……」

 

「アンタは黙って!!」

 

 涎を垂らして幸せそうな寝顔をしているビッチを容赦なく張り手を食らわせるルビー。

 

「ふぇ、ここはどこ!?あなた達は誰!!あたしはハルカ!!ユウキくんをミシロに連れて帰るまであたしは旅を諦めない!!あなた達という悪に負けたりするもんか!!いや、いたい!!痛いよウサギちゃん!!?」

 

 この場にふざけた輩は2人もいらないと言うかのように張り手は目が覚めても尚続く。

 

 まじ鬼畜だった。

 

「よし、起きたわね??」

 

「う、うん、痛みで視界がぼやけてきたかも……」

 

 無駄口を叩くぐらいには元気であるそうだ。

 

 今は何にしてもだ。

 

 あとは手探りでゲンガーの口からココから脱出できそうなアイテムを引き当てるだけだ。

 

 まるで四次元ポ〇ットだな、というオメガのよくわらからない感想もスルーだ。

 

 彼らは決して忘れてはならなかった。

 

 クソ野郎との決着をつけただけで本当のゲームセットじゃないってことを。

 

 裏で進行しているゲームはまだ続いているってこと。

 

「あのねオメガ……よく聞いて…………」

 

 カガリがルビーの代弁をするには時間というもはあまりに足りなかった。

 

 パチパチパチ――――――――――――――――――

 

 場違いな拍手が聞こえる。

 

 ルビーが舌打ちする。

 

 カガリが言葉を失った。

 

 ハルカは蒼白な顔で奴を見た。

 

 パチパチパチ――――――――――――――――――

 

「皆、ゲームクリアおめでとう!」

 

「にょにょにょ~!」

 

 ミミロップの足止めはここまでだった……

 

「じゃあボーナスステージと行こうじゃないか」

 

 体力残っていないこの極限状態で最悪の敵だ。

 

 誰も動けない。

 

 オメガは戸惑うばかりだ。

 

 何が何だかわからない状況だった。

 

 暢気なもので、めんどくさい先輩が今頃やってくるのはいつものことだと思っていたから。

 

 こういう軽口を叩いて後処理をいつものようにしてくれると思っていたから。

 

 だから、こんなことを言われても何もことの重大さに気付けない。

 

「迎えに来たよ、オメガくん」

 

「にょ~い」

 

 シガナがカガリにハイパーボイスを放った。

 

 その意味がオメガには分からなかった。

 

 シガナがハルカに舌で舐めるで痺れてしまった。

 

 オメガはハルカがこれからエロ担当なのかと見当違いをしてしまうのであった。だから意味がわからない。

 

 シガナがルビーにボディブローを食らわした。

 

 ルビーも大概凶暴生物でその程度なら死なないことを知っている。だからじゃれているのだと思ってしまった。

 

「ちょ、なんだよこの状況……」

 

 突如振って沸いて出てきためんどくさいヒガナが上司や部下、そして一般人に手を挙げているのが意味がわからなかった。

 

 やめさせようにも、止めようにも、体が反応しなかった。

 

 だって、そうだろ?オメガの知っているヒガナたんはそんなことするはずないんだから。

 

 あの流星の民の末裔のヒガナたんだぜ?

 

「さて、と。オメガくん、あと少しだけ待っててね。このこそ泥から返してもらうモノを取り返してからアジトへ帰ろう」

 

「お、おう……」

 

 泥棒は駄目だ。

 

 泥棒をしたんならちゃんと持ち主に返さなきゃいけない。部下の教育も上司がしっかりせにゃなるまい。オメガはヒガナの言葉をそう解釈した。

 

 意味がわからない。

 

「ぺっ、もう洗脳は終わってたってオチかしら……」

 

「ん~?洗脳だなんて人聞きが悪いウサギちゃんだ。唾を吐き上司への口の訊き方もなってないイケナイ子にはお仕置きだね!」

 

「あぐぅ……」

 

 ヒガナに押さえつけられたルビーは抵抗できず、影を地面からひっぺはがしたシガナはそのままゲンガーを持ち上げ地面に叩きつけた。

 

「あ……」

 

 オメガはやり過ぎなんじゃないかと思いながらも何も言えなかった。

 

 体も動かなかった。活動限界はとうに来ている。

 

 叩きつけたゲンガーに馬乗りになったシガナのボディはルビーに影響を及ぼしていく。

 

 ついに堪えず胃の中のモノが出てきてしまった。

 

「オ、オロゲェ……」

 

 ゲンガーもたまらず吐き出した。

 

 それは先日とある山の祭壇に奉ってあった宝玉である。

 

『べにいろのたま』と『あいいろのたま』である。

 

 このこそ泥はとんでもないものを盗んでいたようだ。オメガはルビーへ疑惑の目を向ける。

 

「駄目じゃないかこんな大事なモノ盗んだら~。オメガくんもウサギちゃんと一緒に行動してたら止められたでしょ??」

 

「にょにょーい?」

 

「いや、オレは何も知らない……」

 

 何かの間違いでは?何か理由があったのだろう……そんな彼女を庇う言葉を言えたはずだ。

 

 オメガは意味が分からなかった。今夜はオールナイトカーニバルする相手をこうもあっさり疑惑の目を向けてしまった。

 

「オメガくんは何も悪くないんだよ。悪いのは盗みをしてクソッタレなゲームを何食わぬ、いや悪戦苦闘を演じていたこそ泥が悪いんだよ。私の目は節穴なんかじゃないよこの悪党!他にも盗んだモノを吐き出してもらおうか!!」

 

「あぐぅっ」

 

 さらに思い一発はルビーをゲロさせるのに十分だった。

 

「おいおいおい、いたいけな緑髪の男の子がゲロまみれで出てきちゃった!!彼はいったい何者なんだい!!?」

 

 アンタの送りこんだ刺客でしょうが、と吼える力さえ残されていなかった。

 

 ちなみに、「べにいろのたま」も「あいいろのたま」もゲロ塗れである。

 

「ヒ、ヒガナたん……こいつ、オレ知ってるかも……」

 

「ほ、本当かいオメガくん!?」

 

「こ、こいつ、もしかしたらだけど、トウカに住んでるミツルっていう身体の弱いガキだぜ……なんでウサギちゃんがこいつを…………??」

 

「そりゃ決まってるじゃないか!ウサギちゃんはオメガくんだけじゃ満足できず他の男の子に手を出したに決まってる!!」

 

「な………」

 

 もう滅茶苦茶だ。

 

 オメガさえ思った。このクソッタレなゲームの裏側でウサギちゃんがとんでもない盗みを働いていたことに滅茶苦茶だ。

 

「ち、ちが……アタシは……オメガ、信じて……」

 

「ウサギちゃん残念だけどもう証拠が出てしまったんだ。全部ゲロった方が楽になれるよ」

 

「………」

 

 次々と暴かれる盗み癖の悪い少女の実態。

 

 何故、彼女がマスターボールなど貴重なボールを所持していたのかもうお分かりであろう。

 

「う~ん、このやり方だと彼女の最大の禁忌はゲロちゃくれないかー……」

 

「勘弁してくれ。これ以上は見ていられない……」

 

「ホント愚かだよね。他の男の子にうつつを抜かすませた女の子だよ。オメガくんは知ってるかな?ウサギちゃんって実はアクア団のボス・アオギリのことも狙ってたらしいよ。敵対関係にあるけどがっしりしたおっさんもタイプっぽいねぇ」

 

「そんな……」

 

「………」

 

 このアホ共は絶対許さない、とルビーは思った。

 

 流星の滝は罠だと知ってはいたが、こんなハメ方があるとは思わなかった。だから許さない。

 

 こんな黒幕の戯言を間に受けたアホにもキツイお灸を吸えてやると誓った。

 

 ルビーはオメガとヒガナを睨んだ。

 

「おー恐いねーシガナー」

 

「にょ~」

 

「でもねー、アオギリはないっしょ。あのおっさんにはイズミって幹部の女がいるんだから。あ、だからウサギちゃんは諦めてオメガくんで我慢したんだ。でも、欲求は満たされずミツルくんに手を出した。うんヤヴァイね、このまま野放しにしてたらこりゃどんどん男を襲っちゃうよ。だったら、ここで始末するのが元部下へのケジメだと思わないかい?オメガくん」

 

 黒幕ヒガナはこう言っているのだ。

 

 オメガに命令してるのだ。

 

 ルビーを始末しろと。

 

 ルビーはもう動けず格好の的なのだ。

 

「だが断る!!」

 

 オメガはそこだけははっきりと断った。

 

 きっぱりと男らしく愚かにも格好つけて、だ。

 

「オレはウサギちゃんのありのままを受けいる!いや、盗みをしたのはショックだけど、他の男共に浮気したのもオレが不甲斐無かったからだ!だったらそれ以上の男になるようになってみせる!!なんたってオレはウサギちゃんが大好きだからな!!」

 

「「………」」

 

 ヒガナの思惑がハズレていく。

 

「オレは欲張りな男だぜウサギちゃん!ウサギちゃんも好きだしカガリたんもハルカもヒガナもジムリーダーの女共も、特にランちゃんが大好きだー!!皆オレのものだー!!」

 

「は?何言ってるのオメガくん……??」

 

 駄目だ、やはり怪物だったことが原因でハイになっているのかもしれない。

 

 バカだ。許しがたい大馬鹿者がここにいる。

 

 でも、この大馬鹿者に救われた者もいる。

 

「だから、オレはウサギちゃんの味方でもあるんだぜ。おいヒガナたん、どうにかしてウサギちゃんの罪を軽減できる方法を探すぞ……!!」

 

「ほんと君はおバカさんだねぇ……殺すのは冗談だよ」

 

「にょにょ~」

 

 ヒガナは呆れ、ほくそ笑んだ。

 

「くっくっく、バカがいるわ………ほんとにバカよ、アンタは…………」

 

 ルビーもたまらず笑ってしまう。

 

 この状況下、お気楽にバカを言っているの彼だけだから。

 

「じゃあ、シリアスもぶっ壊してくれたオメガくんの物語は一旦終わりにしてウサギちゃん、ちょっと真面目に話そうじゃないか……」

 

「なっ、ヒガナたん、オレだけ仲間外れにするな……っ!!」

 

「あー、なるほど……ごめんオメガ。絶対に助けてだしてみせるから」

 

「だからそりゃどういうk…………ッ!?」

 

 オメガの物語は一旦ここで終わる。

 

 ルビーは悟った。

 

 自分はまだ殺されない。

 

 この女は最大の禁忌をゲームの駒として欲している。

 

 その方がよりゲームは盛り上がるからだ。

 

 だから、そのヒガナが手に持つマスターボールがオメガに使われた。

 

 ねぇ、どうやったらそんな発想をするのかしら?

 

 ヒトがモンスターボールの中へ吸い込まれていく。

 

 怪物だったから成せるのかもしれない。

 

 何にしろ、ヒトとポケモンの歴史が塗り替えられていく。 

 

「オメガくんゲットだぜ!」

 

「にょにょにょー!」

 

 時刻は午後5時ジャストの出来事である。


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