オメガ&ルビー~マグマ団カガリ隊に配属された件~   作:れべるあっぷ

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言いたいこと言わせてもらうわよ

 熱い。

 

 全身が熱い。

 

 ぐつぐつと煮えたぎるほどに熱い。

 

 出血が酷い。満身創痍なのだろう……

 

 動きが鈍く一歩前に踏み出すのも精一杯だ。

 

 でも……

 

 心の奥底から怒りが溢れるばかりだ。

 

 熱が帯び憤怒の炎が燃え上がっているのだ。

 

 だから、オレはアクア団を駆逐してやる。

 

 この手で……

 

 ポケモンバトルで無力化した後は制裁タイムだ。

 

 最早ポケモンの出る幕はない。

 

「ま、まってくれ、俺達が悪かった……ぎゃん!??」

 

 この手でアクア団を壊す。

 

「や、やめてくれ、それ以上したら死んじまう……ごがっ!?」

 

 ただただ壊す。

 

「わ、私たち、何でも言う事聞きくから!!裸踊りでもご奉仕でも何でもするから!!」

 

「そ、そうそう!!私達、君の部下にでもパシリにでも奴隷にでも何でもなりますから!!殺さない……「「でぼらっ!??」」

 

 ショタコンも壊す。

 

「おいやめてくれ!!その2人が冗談言ったのは本気で悪かったと思ってる!!俺の顔に免じガバァ!?」

 

 お前もふざけたので壊す。

 

「このフロアであとはお前ら2人だけだなアクア団……」

 

「くっ、このままじゃ……お前だけでも逃げるんだ!!後輩!!」

 

「そ、そんな、先輩だけを置いて逃げれません!!私達2人揃ってコンビじゃないですか!!」

 

「………じゃあ2人仲良く揃って寝てろ」

 

「「あべしっ!??」」

 

 神経を逆撫でしたから壊す。

 

 お前らは腕の1本へし折って勘弁しやるか。

 

 あぁ、腹立たしい。

 

 くそったれが……

 

 

 

×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×

 

 

 

 熱い。

 

 体中が燃えるほど熱い。

 

 破壊衝動が抑えきれないほどぐつぐつ煮えたぎっている。

 

 吐血が酷い。

 

 何故ここまで出血していて死なないのか不思議でしかないが思考は鈍くどうでもいい。

 

 あるるとの激闘後も少しだけ仮眠をとったはいいが気休めにしかならなかった。その後の各フロアへでのアクア団との乱戦でさらなるダメージを負ったがまだ生きている。

 

 まだ死んでいない。

 

 まだ暴れたりない。

 

 まだ壊しつくせていない。

 

 まだ目的は達成されていない。

 

 次のフロアこそあの糞野郎がいるかもしれないのだ。

 

 そう思うとまだ死ねるはずなかった。

 

 もっとだ。

 

 もっとアクア団を壊したい。

 

 もっと暴れまわりたい。

 

 何でもいいからアクア団をぶっ壊したい。

 

 そう、ハルカちゃんという人質を理由にしてでももっと壊したい……そうじゃなきゃ、この怒りは熱は収まらない。

 

「誰か、助け…て……」

 

「動くんじゃねーぞ、このアマ!!」

 

「………」

 

 戸惑いさえもうない。

 

 たまに見かける光景ではあるから。

 

 怒りをぶつける格好の餌だ。

 

 気絶して倒れるアクア団を蹴り転がし声のする方へと向かう。

 

 どこもかしこアクア団とマグマ団の敗者で横たわる異常なフロア。

 

 流血し痙攣し泡を吹いて失禁している者も見受けられる。

 

 そんな中、嬲られている女がいた。

 

「や、めて……痛い……痛いよぉ……」

 

「お前が大人しくしていたら傷つけずにすんだんだよ!!」

 

 ホムホムの部下の女だ。

 

 彼女も敗者になったのだ。

 

 勝者に嬲られていた。

 

 衣服がビリビリに破けられ乳房が露になり爪で刻まれ流血していた。

 

 グラエナの鋭い爪が乳房を押さえている。

 

 彼女は美人だから男も欲情するだろう。

 

 ポケモンを使ってでも勝利したからには味わいたい極上の獲物を貪りつこうと……

 

 オレはアクア団の男をこの手で壊した。

 

 壁に立てかけていたはずのブツを手に持ってフルスイングして壊した。

 

 ホムホムがリーダーマツブサへ献上した高価な絵画だったブツだ。

 

 額縁がクリーンヒットしてグチャリと嫌な音がした。

 

「はぎゅぅぅぅぅうううううううッ!????」

 

 男は未来永劫子孫を繁栄することはない。

 

 オレは転がる男を蹴り飛ばした。

 

「グラララッ!!」

 

「なんだ、犬っころ?主人がやられてご立腹か?だがレベル30程度のお前じゃ今のオレを噛み付くことすらできないぞ」

 

「ゴバァ!??」

 

 アッパースイングで飛び掛ってきたグラエナを迎撃した。

 

 額縁が変形し絵画は無残に破れた。

 

 最早、ポケモンの出る幕じゃない。

 

「さて、と……」

 

 オレはそこらへんからマグマ団の野郎の上着を剥ぎ取り女に被せようとして……

 

「ほっといて……」

 

「………」

 

 ショック。

 

 初めての面識でもないがはっきりと拒絶された。

 

 目が親の仇を見るかのように、悪党を退治した味方に向ける目じゃないことは確かだった。

 

 完全な敵意のある目だ。

 

 女は泣いていた。

 

 涙を流し、胸の傷など気にも止めていないかのように掴みかかってきた。

 

「どうして……どうしてっ!!君のせいで皆やられちゃった!!みんなみんな傷ついた!!」

 

 女が言いたいことはただ1つだ。

 

「君が来てからずっとこうだ!!厄介事を持ち込んでくるなっ!!この疫病神っ!!」

 

「………」

 

 ビンタされた。

 

 いや、女のビンタの嵐は止まらない。

 

「周りをよく見てみろよこの疫病神!!皆が君と同じバケモノじゃないんだから!!めっちゃ強くないんだから!!そりゃ数で攻められたら負けるわよ!!皆傷ついて血流して気絶して泡吹いて失禁して骨折してもしかしたら死んだ奴だって出てくるわ!!」

 

「でも、今までの事件で死んだ奴は誰一人いない……今回もそうだ」

 

「んなワケあるか!!どんな夢物語だ!!頭ん中はお花畑かオラッ!!カワイ子ぶってるのもいい加減にしろー!!人は死ぬんだよ!!いつでも死ねるんだよ!!倒れている奴等をこのままほっといたら衰弱して死ぬんだよ!!敵味方関係なく死ぬんだよ!!そもそもおかしいんだよ!!ポケモン技ダイレクトに人に当てといて今まで死者無しってチートかコラっ!!どんなバクだ!!ちげーだろ!!たまたま運が良かっただけだろ!!ここまで大規模な戦争じゃなかっただけだろ!!それでも奇跡だったってだけだろ!!でも次も奇跡が起きると考えるのちっとばかしちげーだろうがよ!!このクソッタレなゲームでは人をどれだけ痛めつけても死なないルールでもあるってんのか!!んなワケねーだろ!!」

 

「お、落ち着け、傷に触るぜ……??」

 

 頬が痛い。

 

 もの凄い剣幕だ。

 

「うるせーよガキが!!いいかよく聞けよガキが!!私はな、お前のことが前から大っ嫌いなんだよ!!ホムラ隊長もお前のことが大嫌いだってよ!!仲間の大半も同意見だろうが!!だってそーだよな!!厄介事しか持ってこーねんだかんな!!いい加減にしろよガキが!!お前、今までどれだけ私たちに迷惑被ったか知ってるか?半年間、お前が誘拐されてきてからだよバカ!!毒盛られて死に掛け寸前のガキを拾ったのが運の尽き!!妙に残業が増えてただ働きだ!!しかも間接的に事件を起したガキの後始末もやらされたこともあったな!!人員が足りないからって理由でな!!そのおかげでホムラ隊長の愚痴を毎日聞かされる私達の身にもなってみろ!!あの男ぐちぐちネチネチ長いんだよ!!耳にタコができるんだよ!!そのおかげで親友はノイローゼだ!!えぇ私の親友はそこに横たわっているピー子です!!ノイローゼになりながらも今回の事件に巻き込まれた被害者です!!泡吹いて失禁している哀れなピー子です!!ピー子はな、ホムラ隊に所属しながらにガキのファンだった!!重度のショタコンだった!おい!!お前!!ちゃんと私の話しを聞いてるのか!!?」

 

「な、なんとか………」

 

 襟元両手で掴んではぐわんぐわんしていると脳が揺さぶられる。

 

「ピー子はお前を陰ながら応援していた!!何も知らずにのほほんと暴れまくって厄介事を次から次へと持ってくるお前に文句1つ言わずに隊の誰よりも残業してノイローゼになってまで!!少しでもお前の役に立とうとしていた!!ホント馬鹿だよな!!頑張って応援し援助し続けた結果がこれなんだから!!ちっとも報われなかったのだから!!だけど、これも違うだろ!!少なくともピー子は報われていいはずだろ!!このままじゃピー子があんまりだ!!お前はそんなピー子に労いの言葉を送れるのか!!ピー子がこれまで受けた傷を癒せるのか!!いままで何も見返りをしなかったお前はまたピー子を傷つけるだけだろ!!お前、ピー子のことモブキャラとしか見ていなささそうだもんな!!お前モブキャラとは絡んだりしないタイプの人間だもんな!!つーか私は何でピー子ばっかり肩を持ってるんだ!!私だって毎回疲労困憊なんだよ!!私も報われたいんだよ!!今までマグマ団として世間に冷たい目で見られてきたけども報われたいんだよ!!アクア団の蛮行を止めたと自負したいんだよ!!賞賛してもらいたかったんだよ!!胸張りたかったんだよ!!でも、今回だけはもう無理だろ!!一般人を人質にしたクソッタレなゲームは死人が出る過去最悪の事件として取り上げられうだろうさ!!身動きの取れないここに横たわるマグマ団はアクア団の馬鹿と共にブタ箱に放り投げられるだろうな!!そもそも知ってっか?もう既にマツブサリーダーを筆頭に幹部や主力のメンバーはリタイアしたっていう事実をな!!アクア団の奴等にハメられ今現在どうなっているのか状況さえわからない始末だ!!リーダーが敗北したマグマ団は敗走したくても敗走できない状況下なんだよ!!出口がどこにあるのかわからないんだよ!!私達はアジトに閉じ込められたまんまなんだよ!!まだゲームが終わってないから!!何もかも全てお前のせいでだよ!!」

 

 ……オレのせい?オレが暴れたからか……??

 

「じゃあ……オレは何もせず指を咥えて治療だけ受けてアクア団に脅えていたらよかったっていうのかよ……ッ!!」

 

「あぁそうだよ!!お前が暴れるだけで経費がはね上がるわ他所で人員不足になるわ人を傷つけるしか能はないわで誰得なんだよお前って存在はよぉっ!!お前を一重に助けたカガリさんもさぞ不本意だったろうな!!こんなバケモノだと知れば見殺しにしていただろうし!!それに恩を仇で返すくそったれ野郎とは夢にでも思わなかっただろうな!!」

 

「バカ言うなよ……オレはカガリたんに恩を返してきただろうがよ……今までどれだけアクア団の主要な施設を壊してきたか、お前らができなかったことをやってきただろうがよ……ッ!!それでアクア団の脅威を取り除いてきたじゃねーか!!」

 

「そうやって暴れてきた結果がこの惨劇じゃないのって話しだろうがバカ!!いい加減気づけよ!!お前は限度も知らず後先考えずに暴れたせいでここまでアクア団の反感を買ったんだ!!誰がそこまで暴れていいと言った?誰も言っていなかったはずだろ!!でもお前は言う事を聞かなかったっていうじゃないか!!お前はただ復讐したいだけだろ!!お前はただアクア団を蹴散らし嬲って鬱憤を晴らしたいだけだろ!!人質を助けるという大義名分を作って暴れたいだけだろ!!当事者じゃない私だってわかる!!先に奴等がしかけたとしても、どれだけ理不尽なことをされたとしても、ここまでクレイジーに倍返しどころか100倍にして返したお前が悪い!!アクア団に関わる全ての人間を敵に回したのだから!!身内も友人も知人も恋人も商談相手も取引先とも全てだよ!!この意味がわかるか!!そいつらを敵に回しまた返り討ちにしてはさらに敵を作ったお前は最早救いようのない疫病神なんだよ!!カガリさんも可愛そうにな!!こんなバカを、いや、バケモノの命を救ってしまったってんだからな!!」

 

「………うるさい」

 

「もうお前は否定できないよ!!否定できないし許されない!!最早このくそったれなゲームの行く末がどうなろうがなるまいが、この事態を収拾させることさえできないお前は許されないよ!!お前はもうマグマ団にいらないし!!罪さえ償わなくていいからな!!死んでくれとは言わない!!本当なら私がこの手でお前の人生に終止符を討ってやりたいほどだ!!だけど、お前はまだガキだ!!人生はこれからなんだ!!だからこのホウエン地方から出て行けよ!!惨めに屈辱を味わって噛み締めてホウエンの未来を遠目から眺めて悔やむがいいさ!!今日でわかった!!はっきり言ってお前はホウエンに必要ないんだよ!!」

 

「………」

 

 オレは項垂れ沈んだ。

 

 怒りという感情が冷えきっていく。

 

 目の前の怒りに勝ることができなかった。

 

 彼女の言い分が正しかった。

 

 オレは疫病神でただ暴れたいがために理由を作って暴れてきたバケモノだ。

 

 カガリたんに恩を仇で返しハルカちゃんという人質を理由に暴れてきたどうしようもない怪物だ。

 

 事実を言われてヘコむ……

 

 オレのメンタル弱っ。


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