オメガ&ルビー~マグマ団カガリ隊に配属された件~   作:れべるあっぷ

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マグマ団VSアクア団

―――AM10:00―――

 

 幽閉されたマグマ団アジト。

 

 外部も内部からもへのコンタクトも取れない状況が24時間は既に経っていた。

 

 停電とかそういうレベルではない。給気口は作動している。

 

 しかしワープパネルが作動しておらず、また電波ジャミングのせいか通信機器が一切駄目になっている。

 

 アリの巣構造が仇になったか、予算にケチつけて非常用通路を造らなかったこともあり、アジト内の各フロアへのワープは例外なく通行止めだ。

 

 司令室で沈黙する者。

 

 トイレ前通路で地団駄を踏む者。

 

 食堂で立ち往生する者。

 

 寝室で瞑想を試みる者。

 

 大浴場で気を紛らわすために泳ぐ者。

 

 研究室にて盗撮したショタ写真を眺める者。

 

 そして、崩壊寸前の者。

 

 一部ではオメガ少年のせいじゃないかと団内では噂された。まだ電波が圏外になる前に公開されていた動画のせいもあった。

 

 もちろん、オメガが裏切り敵に寝返ったなどと愚かな思考は誰もしない。

 

 ただ、敵を作りすぎたのだ。

 

 アクア団を必要以上に攻撃して逆上させたか。ホウエンのチャンピオンを表舞台から葬った。ポケモン協会の連中が業を煮やしたか。それとも新たな敵を作ったのかもしれない。

 

 何にしろ各フロアへの移動手段を断たれた彼らは1日も気を張っていた。

 

 ずっと神経を磨り潰してきた。

 

 一生閉じ込められたままなのか不安と恐怖が彼らを支配する。

 

 敵の目的がわからない。

 

 情報が足り無すぎる。

 

 だから、想像するしかないのだけども……

 

 ヒトが長時間ずっと集中できないのも計算の内であった。

 

「敵襲ーーーッ!!敵襲ぅーーーーーーーッ!!」

 

 誰かが叫んだ。

 

 マグマ団のしたっぱの誰かが悲鳴にも似た叫びを上げた。

 

 実際に彼は戦闘態勢に入る前に敵のポケモン技によるダイレクトアタックを諸に喰らい崩れ落ちていた。

 

「アクア団が何でここにッ!!?」

 

「くそっ!!どうやって侵入してきたんだ!??」

 

「アレよ!!見てっ!!」

 

 とあるフロアでワープパネルが再稼動していた。

 

 アクア団の連中がなだれ込んできた。

 

 前触れも無く、警報が鳴るわけもなく、心の準備もできず彼らは余儀なく反対側のワープパネルから撤退を……

 

「駄目だっ、反対側からも現れやがった!?」

 

「挟み撃ちですって!?ありえないわッ!!そっちのパネルはっ、ここから唯一繋がる書庫のはずでしょ!!?」

 

 彼らに正面と背後からの攻撃に抗う術はなかった。

 

 

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 また、別のフロアでは……

 

「くそっ、絶対あいつのせいだ!!なんであのガキのせいで俺たちがこんな目に会うんだよ!!」

 

「言っててもしょうがねーだろ!!それは生き残ってから本人に直接言え!!まずは生き延びることだ!!そーだろ!!」

 

「はぁはぁ……ぼく、もう駄目だよ…………ッ!!」

 

「駄目でも走れ!!死にかけても踏ん張って走れ!!あそこをワープして態勢を立て直すぞ!!それにこっちの方が地の利はあるんだ!!返り討ちにするぞ!!」

 

「くそっ、くそっ、トレーニングルームでどうにかなるんだろーな!!」

 

「俺とグラエナでギリギリまで足止めをする!!その間にお前らはモニター室でフィールド選択、トラップ配置、迎撃態勢までできるよな!!さあ行ってくれ!!」

 

「くそっ、くそっ、くそっ、くそっ、くそっ、くそっ、くそっ、くそっ!!」

 

 彼らは想像力が足りていなかった。

 

 ワープ先の想像力を怠ったのかもしれない。

 

「ま、待ち伏せだと!?」

 

「そ、それになんで……ここってホムラさんの部屋だよ!!?どうなって……っ!?」

 

「バカッ、攻撃がくるぞ!!避けろッ!!」

 

 彼らは態勢を立て直すこともできない。

 

 

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 また別のフロアにいた団員は……

 

「まさか、ワープパネルの経路が換えられたとでもいうのか……おのれ、アクア団っ!!五つ子の底力を見せてやる!!」

 

「しかし、ワープパネルの制御システムってアジト内にあるコントロールルームでしか書き換えられないんじゃなかったっけ?まさか、内部にアクア団に通じる裏切り者がいるってことか……!?」

 

「まさか、オメガの奴が……!?」

 

「アンポンターン!!あいつがカガリ様を裏切って恩を仇で返すわけないだろー!!」

 

「そうだ。あいつはこんなくだらないような事をする奴じゃないってことは俺達は知っているさ。それよりも、今は目の前の敵に集中しよう。話はそれからだ!」

 

 彼らカガリ隊の五つ子はそれぞれグラエナを繰り出した。

 

 戦場になったフィールドは女湯の大浴場と少しばかり特殊ではあったが。

 

「ふふっ、いつも思うんだけど、男の五つ子って需要あるの?ないよね??」

 

「ないない、絶対ありえない。見てるだけでキモいっしょ。つーかここって男子禁制じゃないんですかー?何勝手に女の園を土足で踏み荒らしてんの?あははっ!」

 

「きゃははっ、やっぱりこいつらって彼女とかいるのかな??彼女いない歴=年齢って顔してるよね!!だってモテなさそうだも~ん!!」

 

「アンポンタ~ン!今はどうでもいいって!!そういうことは帰ってから話そうよ。いつもみたいに、こいつらの悪口をさっ」

 

「そういうことだから……そちらの五つ子さん達は今日こそ無様にくだばってくれないかしら……というか、あなた達ってわたし達に気あるわよね?彼女の1人も作れない分際だものね。デートもしたことないんでしょ?よかったらその粗末のモノも踏んであげましょうか?どうせ童貞でしょ?きっと私達が相手しないと一生童貞のままよね。うぷぷっ……」

 

「「「「「じょ、上等だコラーーーッ!!」」」」」

 

 煽っていくアクア団の五つ子ちゃん。

 

 勃発したバトルはいつも恒例の五つ子ちゃん(男)VS五つ子ちゃん(女)であった。

 

 もちろん、アクア団の五つ子ちゃんたちもグラエナ5体である。

 

 ただ、このあと敵を湯船に突き落とす、突き飛ばされる乱痴騒ぎになることも今は知る良しもない……

 

 

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 そして、場所はまた飛んで変わって場所は食堂。

 

 ここも戦場だ。その中で抵抗をし続けるマグマ団の一団にリーダー・マツブサの姿も見受けられる。

 

 司令室にいた彼もアクア団の襲撃にあった。

 

 なんとか数の暴力を凌ぎ、敵を撃破しながら各フロアを移動して行き着いた先がここであった。

 

 マツブサが駆けつけたことにより、団員たちの士気は高い。

 

 さらに……

 

「リーダー・マツブサ!!このホムラが加勢しますぞ!!」

 

 幹部・ホムラの登場によって団員はいっそう雄たけびをあげた。

 

 反撃の合図のように。

 

 しかし、内心マツブサは舌打ちしていた。

 

 倒しても倒しても次から次へと沸いて出てくる敵の多さに。

 

 そして、次から次へここに集まる仲間たちに……

 

 アジトのマップとワープパネルの経路はもう役に立たない。

 

 地の利も生かせない。

 

 その中で、奇妙にも偶然たまたま食堂に行き着いたわけだが……

 

「まさか……」

 

 マツブサは身震いした。

 

 額に嫌な汗が流れた。

 

 仮説ができた。

 

 散らばった獲物を一点に誘き寄せる経路を新たなルートに書き換えたのだとしたら……

 

「そんなバカなことが可能なのか……」

 

 アクア団が即興でするのは無理があるだろう。

 

 しかし、身内の者なら話は別だ。

 

 裏切り者がいるのならば……前々からこの襲撃を企てて計画を練っていれば可能な芸当だ。

 

 コントロールルームに居座り続ければ、監視カメラの映像を見つつその都度、状況に応じてワープパネルの経路を変更することも可能だ。

 

 そもそも、このシステムは本当に内部からしか操作できないかも疑わしいが……

 

 マグマ団の中でもシステム操作できる者も限られてくる。

 

 真っ先に思いいたるのはカガリだ。

 

 制御システムは彼女の管轄にあたる……

 

 否、彼女はこのマツブサを裏切るはずがないと信じている。彼はそう信じたかった。

 

 となれば、彼女の部下の内でコントロールルームを行き来できる残る者は……白衣を着た元デボンの職員……いや、ホムラも知識はあるはずだ……などと思考を張り巡らせた。

 

 勿論、長考している場合じゃない。

 

 声を掛けられた。

 

「リーダーさん!ほらっ、ボサッとしてないで目の前の敵に集中集中!」

 

「にょにょ~い!」  

 

 少女に声を掛けられた。

 

「あぁ、すまない……それに君まで駆けつけてくれたとは心強い。早くこの窮地を抜け出そう」

 

「りょうか~~~~~い☆なんちって」

 

「にょにょっにょ!」

 

 カガリ隊副隊長及び作戦部長のこのヒガナにお任せあそばせ。

 

 マツブサは目の前の敵に気を取られ、隣にいる少女もシステム制御に携わっていたことを思い出すのが遅かった。

 

 警報が今頃になって鳴り出した。

 

 

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 そして、場所はコントロールルーム。

 

 ワープパネルのシステムを制御するフロアにて。

 

 1人のマグマ団が目の前の数台のパソコンのモニター、マウスを動かしクリックし、キーボードに何やら打ち込もうとした。

 

 マグマ団の幹部・カガリの手はいつもの業務の数倍の速度で動いていた。

 

「……………」

 

 もちろん、彼女がこの計画の実行犯ではない。

 

 彼女は唯一ここにたどり着き、システムの制御を試みようとしていた。

 

 部屋は不自然に無人であった。

 

 しかし、今は時間がおしい。

 

 カガリは背後を警戒しながらワープパネルのルートを書き換えていく。

 

 仲間がアジトから脱出しやすいように、外にいるオメガと連絡を取れるように各フロアから出口へ直行できるように……

 

「ギャーッハッハッハ!しょんべん行ってる間にこりゃまた珍客がいるじゃねーか!カガリ様よぉ!!」

 

「………ッ!?」

 

 聞き覚えのある不快な声。

 

 オメガを誘拐し毒を盛った男。

 

 クズキリα。

 

 男はカガリを背後から羽交い絞めにした。

 

 苦しい。気味が悪い。吐き気する。

 

 元マグマ団のカガリの部下だった男の嫌な吐息が耳にかかりゾクりとした。

 

「あーカガリ様はやっぱりやわらかいなー。いいニオイもする」

 

「……はなせ…………ッ!!」 

 

「そりゃ無理な相談だ。せっかく2人きりになれたんだ。楽しいことしようぜー」 

 

「絶対に…………イヤッ!!」がぶりっ

 

「いでっ!?」

 

 口に侵入してきた指を遠慮なくおもいっきり噛んでやった。

 

 口の中に嫌な鉄の味がする。

 

 カガリは糞野郎から距離を取り戦闘態勢に入る。

 

「バクーダとかマジかよカガリ様ぁ……」

 

「ここで死んで……」

 

 糞野郎もポケモンを繰り出した。

 

 よく鍛えられたゴルバットだ。

 

「まー待て待て、このモニターを見ろ。おもしれーもんが見れる。ちょうどマツブサとホムラのボケはリタイアしたみたいだぜ」

 

「う、嘘だ…………そんな……………なんで………………ッ!?」

 

 糞野郎は一台のパソコンを操作し映像が切り替わる。

 

 映し出されたのは場所は戦場と化した食堂。

 

 赤のコスチュームばかりが倒れていた。

 

 その中にマツブサが敵に踏んづけられている場面があった。

 

「どう、して…………あの子が…………っ!!」

 

 リーダーを踏んづけている少女はカガリも知っている。

 

 カガリの部下なのだから。

 

 副隊長で作戦部長なのだから。

 

 3日前に皆で一緒に温泉に行ったばかりなのだから……

 

 カガリは困惑した。憤った。そして、悲しんだ。

 

 しかし、敵は待ってはくれない。

 

「あっ、それともう1つ。今からポケモンバトルするけど2人っきりってのは嘘だ。めんごめんご」

 

「やっほー、おまた~」

 

「ッ!??」

 

 緊張感のない声の女。

 

 サングラスをかけ頬に傷跡がある柄の悪そうなマリルを引き連れている。

 

「ギャハハッ、たっぷり可愛がってやるぜカガリ様ぁ!!」

 

「キャハハッ、たっぷり骨の髄までしゃぶってあげるわーカガリさまぁ~!!」

 

 敵が正々堂々戦う筈もないのは承知であったはず。

 

 正面から向かってくるような輩でもない。

 

 バクーダを仕事させてくれない。

 

 本命はやはり背後から。

 

「キャハハッ、食べていいよークチートちゃん~」

 

「……………オメガ…………………………………た、す………けて…………………………………ッ!!」

 

 柄の悪いクチートの凶悪な口が大きく広きカガリを強襲した。

 

 これにて、マグマ団リーダー及び幹部2名は早々にゲームから退場するのであった。


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