オメガ&ルビー~マグマ団カガリ隊に配属された件~ 作:れべるあっぷ
昼飯時――――――。
運搬作業も終えて約束通りヒガナたんにはランチ奢ってもらう。
オレ達キンセツシティの一角にあるフードコートに足を運んだ。
―――キンセツキッチン―――
有名店だよな、知らない奴はいないだろう。
料理を注文して出来上がるまでの間、ポケモンバトルが楽しめるバトルフードコート!と云えば聞こえは良いか。
しかし、実際は鬼畜仕様の椅子取りゲーム。
空いてる席があればそこで座って待ってれば良し、空いてなければ待機中の誰かと強制的に勝負しなければ飯にはありつけない。
拒否権は無い。
弱い奴、運の悪いトレーナーは飯にさえありつけない。
何度も雑誌やテレビ番組などで紹介されていたり、東西南北各地方や外国からもココ目的で観光しにくる輩もいたり、でも現実に直面して何も口に入れることなく帰国する輩も暫しいるそうな。
本当にムゴいルールだぜクソッタレが。
だから、オレは弱そうな相手から席を奪って早くも飯にありつけた。
ビレッジサンドうめー!!
戦って勝った者だけが味わえる汗と涙と感動やらいろいろ詰まったサンドだな、こりゃ。
あ、ヒガナたんも対戦そろそろ終わりそうだ。
ヒガナたんに喧嘩を売ったのはエリートトレーナー達だ。
ゴニョニョ1匹でエリート集団5人抜きかよ……シガナぱねぇ。
「そ、そんなバカな。将来チャンピオンを約束されたこの僕でさえ負けるだなんて……ッ!?」
「君の思い描く未来予想図には想像力が足りなかった。はっきり言って、その程度のレベルでチャンピオンなんて口にしない方がいいよ」
「にょにょー」
「くそっ、覚えてろ~」
相変わらず容赦がないな、ヒガナたん。
「おつかれさん、ヒガナたん。シガナもおつかれ~」
料理を持って席に戻ってきた1人と1匹を労う先輩想いのオレ。
「オメガ君おつかれさまー」
「にょにょにょー」
相変わらずシガナはカワイイのう。
「まーたキミに先を越されたね。ウサギちゃんは相変わらずまだみたいだけど」
「まーナメプしとりまっから」
あっちの方でまだ戦ってるウサギちゃん。
オレ達が食べ出して焦ってる顔がまたグッドだ。
「で、ウサギちゃんの先輩であるキミは相変わらず弱者を狩るゲス技戦法かい?」
「その言い方は心外だな。これでも良心的な方だと思うぜ?」
「まーここで暴れられたり建物を半壊にされても困るけどねー、シガナー」
「にょにょにょー」
「だからなるべく弱い奴選んでワンパンキルしてるじゃん」
ワンパンって最高だろ。
1匹倒すのに、ゲームでいうとこの技のPPが1しか減らないんだぜ。
一撃で仕留めるために弱いトレーナーなのか強いトレーナーなのか選ぶための目も勘も養えるんだぜ。
プロ意識高ぇな、おい。
「でも、君のバトルは見ていて面白くないんだよね~。特に最近は……」
「ズバッと斬り捨ててくるなー……」
「愛も無かった」
「さいですか……」
ホント容赦ないな、ヒガナたん。
オレにどうしろってんだ。
めんどくさい先輩だ。
「後輩想いな私はずっと考えていたんだ……君には何かが欠けていて物足りないってね」
「大きなお世話なんだけど……」
「にょにょにょ~」
おーおー心配そうに見つめてくるなーシガナ。
カワイイ奴め~。
「ちなみに聞くけど、何か足りないってポケモンに対する愛情ですかー?」
括弧、棒読みだぜ。
「いやいや、君がポケモンに愛情を注いでいるのは紛れもない事実だよ。愛情も無かったらあのレベルのポケモン達にリンチもといミンチにされていただろうしね~」
「今もウチの子達はたまに言う事聞いてくれませんが? 一匹はそれはもういっぱい噛み付いてきますが??」
「それは甘噛みだよ」
「甘噛みで致命傷なんですが……!?」
まぁ確かにまだ病院送りになったことは無いけども。
「まぁそれはジムバッジを集めれば解決する問題だねー。私が言いたいのはポケモンに対する愛情ではなくて、ポケモンバトルに対する愛ってやつ??」
ここにきて疑問系……
「さっきも言ったけど君のポケモンバトルは見ていて面白くなかった。それはワンパンばっかりしてるからが原因かなって思ったりしなかったり。まー君の言い分ぐらいは分かってるつもりなんだよ。なんたって後輩想いの良いヒガナ先輩だからね」
はいはい……
「一撃必殺、オーバーキル、ワンパンをするのもいいんだよ。私だってワンパンキルしたくなる時だってある。でも、ここはキンセツキッチン!バトルフードコートはもっとこう熱く燃え上がるようなヒートアップした戦いが皆見たいんだよ!!ワンパンしてもいいけど全部をワンパンで終わらすなよ!!」
「えー……」
「にょにょー……」
ホントめんどくさい先輩だな。
「要はパフォーマンスも大事ってことだろ?」
「そうそう!」
「今のウサギちゃんみたいに……??」
「そうそう!! ウサギちゃんはそこんとこ分かってるみたいだよ!!」
まだバトルを終えないウサギちゃん。
ホルビーでナメぷしてたんぱん小僧と激闘を繰り広げているダメダメな後輩。
でも、確かにバトルは白熱して観客のボルテージは上がっていた。
「じゃあ、今度から一撃で倒さないように、じわりじわりといたぶって倒せばいいんだろ??」
「いや、ちょっと待ってなんでそうなるのかな、もっと想像力働かせてよ。そんなんで野次馬が盛り上がれるとでも思ってるの?ドン引きされるだけじゃん、もうこうなったらアレだ、あの三匹は今後キンセツキッチンで使っちゃダメ!」
「いや、勝手に決めんじゃねーよ」
このめんどくさい先輩は無茶言うな~。
そして、さらに滅茶苦茶な爆弾を落としてくる。
それがヒガナたん先輩だ。
「ぶっちゃけ物足りなさを感じていたのはコレだね。オメガくん、君にもマスコット的ポジションのパートナーを作るべきだ!!」
「え、なんだって??」
難聴スキル発動ってな。
「私にはシガナ、ウサギちゃんにはホルビーがいるように、君にも愛らしくもバトルでは観衆を盛り上げてくれるそんな相棒が必要なんだよ!! 唯一無二の君のマスコットキャラだよ!!」
「遊んでる暇は無いので却下でお願いします。」
アクア団を駆逐するため、そんな相棒作ってる暇はありません。
「シャラップ! これは上司命令だよオメガくん!! 今日の午後のミッションから帰ってきたらどのポケモンに選んだか聞かせてもらうからね!!」
「にょにょにょー!!」
「ほらほらシガナも新しい友達ほしいって言ってるよー」
「えー……」
クソッタレが、なんでこうなるのー。
本当にめんどくさくて仕方が無い。
でも、先輩の無茶振りに付き合うのも後輩の役目だ。
わかったか、ウサギちゃん??
「ぜーぜー、ウチの…ウチのランチ……まだッスか?」
「うん、まだみたいだねー」
「ふぇぇ……」
5人目の挑戦者を退け席に戻ってきたウサギちゃん。
若干涙目だ、それがまたグッド。
でも、そろそろウサギちゃんが頼んだ料理も出来上がるだろう……
ん??
「わっしゃっしゃ、嬢ちゃんはまだ料理来とらんようじゃの」
「ふぁっ!?」
なんてバッドタイミングだ。
ま・さ・か・の6人目。
ツいてないな~ウサギちゃん。
ここキンセツシティのジムリーダー・テッセンのじじぃが勝負を仕掛けてきた。
「どれ、ワシと席取り合戦とシャレ込もうじゃないか。なぁマグマ団の小娘よ」
「こんのぉ………上等だよ老いぼれジジィがぁああああ!?」
「「………」」
「にょにょ~」
ウサギちゃんがブチキレた。
「いけっ、ホルビー!!」
「わしゃしゃっ、ここでも敢えてホルビーでくるか! でも手加減は無しじゃ……いでよ、レントラー!!」
((あっ、これアカンやつや))
「にょ~……」
この後、予想通りウサギちゃんは負けた。
ウサギちゃんの実力ならナメぷしなかったらいいだけの話しなんだけどなー。
何はともあれウサギちゃんは悔しさのあまり出来上がった料理も食わずにキンセツキッチンから逃亡するのであった。
「はあ、またか……」
「任務先は屋台でもやってるだろうに、そこで何か買ってあげるんだよ、オメガくん」
「にょにょにょ~」
ほんと世話が焼ける後輩だな、ウサギちゃんは……
まー、そこがまた可愛くてグッドだな。
「あ、君のマスコットキャラの件、ちゃんと考えといてよね」
「にょにょにょ~」
「ちっ、わかったよ……」
はあ、これはめんどくさいっての。