オメガ&ルビー~マグマ団カガリ隊に配属された件~   作:れべるあっぷ

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ゲームスタート

 制限時間は明日の午後5時。

 

 オレはバッジを8つ集めマグマ団アジトへ繋がるワープパネルを起動させる。

 

 そして、アジトに侵入したあの糞野郎をぶっ殺す。

 

 ゲームクリアすればエントツ山で磔にされたハルカちゃんを解放することができる。

 

 敗北すればハルカちゃんはマグマの底に落とされる。ルールを破ってもゲームオーバー。

 

 まったくもってふざけたゲームだ。

 

 でもやるしかないだろう。

 

 アイツの口ぶりからは本気でハルカちゃんをマグマに落としてみせるだろう。オレを絶望させるために躊躇いもないだろう。

 

 マグマ団の連中も今現在、アジト内に閉じ込められている状況とみていい。カガリたんが心配だ。

 

 アイツがもう既にアジト内のどこかに潜んでいるのか、それともオレがゲートを起動させて乗り込んでくるのかは不明だが……間違いなく1人で襲撃するはずがない。アクア団の連中も侵入してくるだろうな。アジト内でマグマ団とアクア団が入り乱れ乱戦となるだろう。

 

 ジムバッジの収集、ついでのアクア団の雑魚退治もどれもが時間稼ぎか……

 

 1番懸念するべきなのは、今日の悪行によってポケモンセンターが利用できるかどうか……うん、ムリだろうな。

 

 朝方チャンピオン・ダイゴを病院送りにし、昼からカイナ博物館で暴れたし完全にブラックリストに載っただろう。あー、ルチアちゃんの1件も穏便に済ますべきだったか。

 

 くそっ、何もかもが因果応報か。裏目に出てしまった。

 

 ポケモンの回復が間に合うかどうか……これがあの糞野郎の目的だろうな。

 

 オレをバカにしていたがリザードンは脅威だ。あの糞野郎でもそれぐらいわかっているらしい。

 

 残りの傷薬で足りるかどうか……アジト内にも回復装置はあるが、果たして使い物になってくれるかどうか怪しい。

 

 それならいっそのこと、フレンドリーショップを襲撃してまた1つ罪を甘んじて受けようか。

 

 身から出た錆びってワケじゃねーがな……

 

 何をしてでもハルカちゃんはオレが必ず助け出す。

 

 アイツとの通信も切れて、また部屋は静寂に支配された。

 

 テッセンのじじいが棚から黒いボックスを持ち出した。

 

 無線のルーターかと思っていたが、良く似ている。

 

 蓋があり、開けばバッジが7つはめ込む仕様になっていた。よくもまぁ手の込んだ仕掛けだ。

 

 一度、オレの戦利品である所持しているバッジ4つをはめ込んでみる。ぴったりだった。

 

 残りは4つ。男連中から勝利しないといけないがな……

 

「おぬし、どうする?ワシをここで叩くつもりか??」

 

「いや…じじいには世話になった。ここまで辿りつけたのもじじいのおかげだ。無下にはしない。後回しにするからジムで待ってな」

 

 と、言いたい所だが。

 

 そもそも、この非常時にルネのバッジ以外は用はなかったりする。

 

 ここで、この監視された部屋でテッセンのじじいにネタバレする必要もないだろう。

 

 ウサギちゃんの隠し持ったバッジ7つを拝借すれば話しは簡単だ。あと、残りの1つ・レインバッジをミクリから勝ち取るだけだ。

 

 しかし、ウサギちゃんがもう既に部屋からいないからめんどくさい……アオギリを追ってハジケタウンに向かった。ソライシ博士の家ならオレよりウサギちゃんの方が詳しいだろう。それとも、流星の滝に直行したかだ。

 

 なら、プランCで行くか……

 

「しかし、アクア団はやり過ぎじゃ。一体おぬしはあやつにどんな恨みを買ったんじゃ?」

 

「知らんな。ジョウトでアイツと会った覚えもないし、恨みを買うつってもショタコンのお姉様方の中にアイツの彼女がいたぐらいしか想像付かないが……」

 

「意味がわからんわい」

 

「まー、何にしても、拉致して毒まで盛られフルボッコのフルコースだけじゃ飽き足らず幼馴染を人質に取るぐらいまでにオレは恨みを勝ったそうだ」

 

「そういえばおぬし、毒を盛られたそうじゃな……」

 

「ちっ、いちいち他人の心配してる場合じゃねーぞ。この事は他言無用だ。何も救えなかった奴らに話してどうなる」

 

「………」

 

 オレの問題をもうお前らジムリーダーに何も期待はしていない。

 

 オレ達は部屋を後にした。

 

 装置に設置したバッジ4つはとりあえず懐に回収する。あと、この無線の装置も回収しておこう。誰かに盗まれたら大変だ。

 

 屋上がいい。屋上に行こう。

 

 監視、盗聴された部屋でするような話しじゃない。

 

「それよりも事態は想像していたよりも深刻だぜ。アイツの狙いはオレだ。しかし、それは本来の目的をカムフラージュさせるためだとしたら?想像力を働かせろ」

 

「本来のアクア団の目的じゃな?」

 

 そう。カイオーガの復活。

 

 これがアクア団の本来の目的である。

 

 今回の、一部の者の暴走の影に隠れて強行してくるかもしれない。

 

 十分にありえる話だ。

 

 アオギリがソライシ博士の元に訪れる理由もそれだ。

 

「アクア団のリーダー・アオギリはソライシ博士が発見した隕石を回収しにいったのだろう」

 

「何故じゃ?隕石と古代ポケモンに何か繋がりがあるんじゃな?」

 

「いや、違う。隕石と古代ポケモンとの間には何も繋がりなんてない。アオギリの野郎は隕石の持つ力をある装置に当て込み爆発的なパワーを引き上げようとしてんだ。それがエントツ山頂上で実行するわけだけども」

 

「人質の女の子のいる場所でかの?そんな場所で何をするつもりじゃ??そんなことで古代のポケモンを目覚めさせることができるとしたら……まさか、火山を噴火でもさせるつもりかの!?」

 

「個人の恨みで暴走している糞野郎も面倒だがアオギリの野郎も面倒だぜ」

 

 しかし、解せない。

 

 何故それをオレ達に教えたのか。

 

 口を漏らしたというレベルじゃない。

 

 ウサギちゃんとオレを引き離すためか……

 

 オレはかぶりを振ってふざけた想像を、思考を払いのけた。

 

 何にしてでもだ。

 

「まー、アオギリの野郎の計画はあくまでオレの想像だ。それに安心しな。もしその計画が実行されよとしていても、それを阻止するためにウサギちゃんはアオギリの後を追っていったんだぜ」

 

「しかし、あの落ち込みようじゃ。小娘1人では心配じゃのぉ」

 

 まー心配だが、気持ち切り替えてアオギリの野郎をぶっ飛ばすだろうよ。

 

 本当にぶっ殺してなければいいがな。

 

 言っておくがオレもぶっ殺すとか散々言ってるけど、それは言葉のあやであって、ちょっと半殺しにして病院送り程度で、しかし、あの糞野郎はもう2度と女とセックスできないような体にしてやろうか!!

 

 子孫繁栄を終了させてやる。

 

「さて。ではサクッとジム戦でもしてきましょうかねぇ……と言いたい所だがな」

 

 オレは背伸びした。

 

 空を見上げた。暗がりで覆われた夜の空。

 

 キンセツの夜空は星がそれほど見えない。

 

「おぬし、親父さんともぶつかる覚悟はできてるんかの?」

 

「ん~覚悟?そんなのいるか??そもそもジム戦する気などハナからないのだがな」

 

「なんじゃと……??」

 

 そんなに驚くことか?

 

 いや、ハルカちゃんはちゃんと助けるつもりだぜ。

 

 全力で、どんな手を使っても助けだす。

 

 卑怯だと言われても、悪魔だと恐れられても助けてみせる。

 

「じじい、もっと想像力を働かせろよ。まさか、本当に敵の言うとおりにこのオレが残りのバッジ4つを真面目に勝ち取るつもりだと思ったか?後に控えている殺し合いのためにちょっとでも温存したいって思うのが普通だろ?何もおかしくない。皆考えることだ。だから……って阿呆か、そんなマヌケ面してんじゃねーよ」

 

「まさか、おぬし。他所から奪い取る気じゃな……!??」

 

 テッセンのじじいは察してレントラーを繰り出した。

 

 プランAの真面目にジム戦をするわけでもなく、プランBのウサギちゃんのバッジ7つ+ルネのジム戦のみ作戦でもなく、プランCの8つバッジを所持しているトレーナーから拝借する計画を阻止するためにポケモンを繰り出した。

 

「おいおい、女の子1人の命が掛かってるんだぜ?それでもオレを止めるってか??」

 

「そうじゃ!それでもじゃ!!結局はマグマ団もアクア団も同類じゃな。暴力でしか解決でない愚か者じゃ。おぬしは長いことマグマ団に身を置き過ぎたようじゃのう。狂気に満ちておるぞ!!」

 

「狂気に満ちたっていいだろうが!!これでハルカちゃんが助かるんだからな!!死ぬより何倍もマシだ!!綺麗ごとばっかり言ってる場合じゃねーぞ!!もっとよく考えろ!!死んだら何もかもが終わってしまうんだよ!!そいつの人生も!!そいつの周りにいる人々も!!だったらぁっ!!例えそのせいで苦労して8つバッジを勝ち取ったトレーナーの心に傷を負わせてもさぁっ!!命と天秤にはかけられねーんだぜ、じじい!!安心しろ!!事が終わったらちゃんとそのトレーナーにバッジは返してやるって!!アフターケアは有料だけでどもなっ!!」

 

「だ、駄目じゃ!そ、そんなこと、このワシは絶対に認めんぞい!!」

 

 はーやれやれだぜ。

 

 ここまでプレッシャーを放ってるのに、引かないか。

 

 流石はじじいと言ったところだぜ。

 

 だったら、もう仕方が無いな。

 

 じじいを葬って前へ進むとしよう。

 

 オレはモンボを手に取り――――

 

「シガナ、レントラーに体当たり」

 

「にょにょ~い!」

 

「「っ!?」」

 

 まさか、このタイミングでめんどくさい先輩が現れた。

 

 奇襲だったが、レントラーは間一髪のところでシガナの体当たりをよく躰したものだ。

 

 まさか、レントラーが発している静電気、もしくは磁気で勘付いたってことはないだろうな?

 

「助けにきたよオメガきゅん!!どう??そんな私に惚れた??」

 

「はいはい、惚れた惚れた」

 

「いやん!反応が雑過ぎやしないかい!?」

 

「いつものことだろうが。それより、今までどこで何してたんだ。連絡はできないはポケナビは解約されてるわ、ふんだりけったりなんだけどな」

 

「こっちも似たようなもんだよ。アジトに帰れないしマグマ団は皆、通信の類いの端末機は使えないようになっているらしい。これもアクア団の陰謀だねぇ」

 

「………」

 

 なんで、お前はそんなに嬉しそうな顔してるの?と問いただしたいんだがな。

 

「ウサギちゃんが近くにいないようだけど?ってことは…………はっ、まさかこれはチャンス!?今晩、やっと2人きりになれたね///」

 

「あの、お前まで暴走しないでくれます?」

 

 どうやらお邪魔虫のウサギちゃんがいなからいつもよりテンション高めだ。

 

 オレは彼女に簡単にこれまでのことを説明した。

 

 ヒガナたんはテッセンのじじいに目を向ける。

 

「ふ~ん、要はあのおじいさんに邪魔されて困ってるんだよねぇ」

 

「まーそうだな」

 

「よしっ、だったらここは後輩想いなヒガナ先輩に任しなさい!!私はいつだって君の味方だよオメガ君!!」

 

「マジ助かるぜヒガナ先輩」

 

「くっ、勝負せんかい小童!!」

 

 これで体力温存ができる。

 

 それと、とヒガナたんに手渡しされたものがある。

 

「コレは私の分身。だから私だと想って愛情を注いで使ってね///」

 

「ただのポケナビじゃねーか」

 

「ただのじゃないよ!!一般トレーナーから拝借した分だよ!!決して奪い取ったとかじゃないんだからね!!」

 

「うわぁ……」

 

「にょにょ~……」

 

「シャラップ!!君達に私の苦労がまるでわかってないんだよ!!」

 

「「「………」」」

 

 まーた、めんどくさいモードに突入しそうだから早く退散しようか。

 

「じゃあほどほどにな。ヒガナ先輩」

 

「いやん!!任された!!」

 

 オレはリザードンを出して飛び乗る。

 

「小童!待つんじゃ!!まだ話は終わっとらんわい!!」

 

「終わりだよ、じじい。あばよ」

 

 リザードンを促しキンセツの空に消えていく。

 

 残るはヒガナ先輩とテッセンのじじいだけ。

 

 シガナVSレントラーの勝負は見てみたかったがな。

 

 目指す場所はチャンピオンロードだ!!


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