オメガ&ルビー~マグマ団カガリ隊に配属された件~ 作:れべるあっぷ
午前11時過ぎ。
後輩のウサギちゃんから連絡があった。
非常事態だそうだ。
確かウサギちゃんは罰としてめんどくさい先輩が担当してる荷物運びの手伝いじゃなかったっけ?
トラブルごとは勘弁なんだが……
ホントは嫌なんだが、残りの自由時間寝ていたんだがかわいい後輩の頼みだから駆けつけてあげるんだからな!!
「E-16ってどこだよ……」
これだからアジトは複雑でイヤなんだよ。
いちいち端末開いてアジト内マップで確認しなくちゃならない……
そして、30分後……ようやくE-16ブロックに辿りついた。
ウサギちゃんやめんどくさい先輩にその他諸々の団員と合流した。
「やー、待ってたよオメガくん。随分遅かったね」
「先輩、おせーッス。女子を待たせるとかありえねーッス。ちっ」
それはあんまりだ。
「これでもダッシュで来たっつーの! 見てみ、息切れして汗かいてるだろ! 必死に走っ
てきた証拠だ!」
「それは迷子になった証だね」
「ち、ちげーよ」
そう指摘するのはめんどくさい先輩であるヒガナたん。
本当にこの子、いろいろとめんどくさいんだわ。
「先輩、オメガ先輩……ここからテメーが罰として掃除していたトイレまで最短5分なんスよ? これだからタコ先輩は……いい加減アジトの内部構造とワープパネルの経路全部頭に叩き込めよな。ペっ」
後輩のウサギちゃんはさらに性質が悪い。性格も悪い。
本名はルビー。ウサギはあだ名みたいなものだ。
白髪と赤い瞳、そして病的に白い肌をしたヤンキーぶってる女の子……もとい凶暴生物。
ここに集まる先輩の皆さん方は今のやり取り見てましたかね聞きましたかー?後輩にあるまじき態度ですよー、注意してやってくれませんかねー。
あ、皆オレから目を逸らしやがった。
くそったれが、オレが自分で言えばいいんだろ……凄いガン飛ばされてるんだけどもビシっと言っちゃうぞ~(震え声)
「お前な、先輩に向かってツバをよく吐くよな?怒るぞホントに」
「えっ、先輩的にウチのツバってご褒美なんじゃ……??」
「えっ、そうなのかい??」
「んなワケあるか!?」
もうヤダ、カガリたんに慰めてもらいたい。
「で、非常事態って何だよ、ウサギちゃん。いや、ウサギちゃんの口から何も聞きたくない。ヒガナたんが説明してくれ。ハーリアップ」
「君も君で先輩に対する態度なってないと思うんだよね~……??」
「はいはい、それはさて置き……非常事態って何があったんですかー? 運搬先でどんな大怪獣が攻めてきたんですかー?」
「はあ……別に君が思っているような非常事態じゃないよ。それはウサギちゃんがついた嘘さ」
「は??」
「………」ギクっ
ウサギちゃんがオレに嘘を付いただって??
どういうことだってばよ。
「まあぶっちゃけると、まだウサギちゃんは罰を受けていない。いろいろこっちも事情があってこれから運搬作業に取り掛かるわけだしねー」
「え、じゃあ何かオレはこれから受けるウサギちゃんの罰を手伝わされると解釈していいの?」
「うん、そうだねー」
「えへー///」
「………」
えへーじゃねーよウサギちゃん。
カワイ子ぶったってそうは問屋がおろさないんだよフザケんなよ。
こちとら残りの自由時間放棄して必死に走って駆けつけたのにツバ吐きかけられて心の涙流してるっつーのに……
「もうお前1人でやれよクソッタレが」
「まーまー、ウサギちゃんはオメガくんとじゃなきゃ頑張れないクチだからねー。一緒にやってあげてよ。昼飯も奢るからさー」
「先輩と一緒じゃなきゃヤダ……っす」
あ、あっそう……昼飯は当然奢ってもらうとして。
ウサギちゃんはそんな顔してもダメだって…………ズルいって……………
「ちっ、わかったよ……」
「「「「ちょろいな~お前……」」」」
うっせーよ野次馬共!!
「で、荷物の運搬ってどこに何を運べばいいんだよ、ヒガナたん!!」
さっさと始めようぜ!!
「うはー、荒れてるねオメガくん。今回はキンセツシティマンションの一室に家電や家具を運ぶだけの引越し屋さんだねー」
「新たなヒミツ基地ってワケか……」
マグマ団はホウエン地方の西側を中心に勢力を拡大していくための拠点作りもしている。
時にその町に隠れ家を、時にはひみつのちからを使ってヒミツ基地を作り、さらにカガリたんを筆頭に科学の力を結集させたワープパネルによってアジト内から、例えば今回のキンセツシティのマンションの一室まで遠距離でもワープできる装置を設置して行動範囲を広げていく作戦だ。
まぁデメリットは隠れ家の存在がバレたらワープパネルで簡単に侵入されるってことだな。
「キンセツシティはセキリュティが高く外部からの襲撃も中々無いだろうし……苦労して部屋借りた甲斐があったよ」
「つーか、よくあそこの物件借りれたッスね。あそこの入居条件と金額鬼高いはずッスけど?」
オレの横をぴょこぴょこ歩くウサギちゃんが訊ねた。
「まぁコネとか使ってー安くも見積もってくれたんだよ。それに引越し屋さんは私達だけでするしそれだけでコスト削減だね」
ヒガナたんのコネって……はて?
「先輩、重たいのは他の奴等に任せるッスよ」
「それな……ッ!!」
もちろんだろ。
他の団員たちはギャーギャー喚きながら作業に取り掛かっている。
お前そっち持てよ。いや角を持つな脚を持てよ!いやいやテメーに指図されたかねー!!などと、見苦しく無様にでも少しでも楽したいから頑張ってもらおう。
「いやいや、できれば君達のポケモンにも手伝ってもらいたんだよ。その方が早く終われるよねー、シガナ」
「ニョニョォ」
あ、いたのその子。
ヒガナたんの相棒ゴニョニョが挨拶してくる。かわいい奴め。
「じゃあ、出て来いお前ら……」
「「………」」
出てくる気配無い。
つーか、ボール投げても誰も出てこない……意地でも雑用したくねーのか貴様らー!?
「うわー……誰も出たがらない。先輩の器が知れるッス」
「………」
ウサギちゃん、そんなこと言ってるとスネて帰っちゃうぞ~……
「じゃあウチが代わりに自慢のポケモン出すッス。出て来いッス、ホルビー」
「「あぁ、ホルビーか……」」
ウサギちゃんに似合ったポケモンのご登場だ。
「な、なんすかその反応は……何かおかしいッスか!?」
「いや、別に~。ホルビーかわいいよなー」
「ほんと、好みは人それぞれだからねー」
「むー、なんか馬鹿にされてるかもッス……」
「そんなことないって……」
「そーそーないない」
いや、ホルビーをウサギちゃんに勧めたのオレだけども。
進化させないようにかわらずの石をプレゼントしてあげたのもオレだけども。
ウサギちゃんがここまで気にいるだなんて思わなかったからさー。
嬉しい限りだぜ。
「まーまー、なんでもいいから早く終わらせてお昼たべようねー、シガナ~」
「にょにょにょ~」
このあと、ウサギちゃんの手持ちのポケモンを全て動員して運搬作業が進められた。
オレ、マジでいらなかったんじゃね?って感じだった。
そのあと、ウサギちゃんのポケモンたちから報復をくらった……
げせぬ。