オメガ&ルビー~マグマ団カガリ隊に配属された件~ 作:れべるあっぷ
ハルカちゃんとの初バトルはオレ達の勝利に終わった。
当然の勝利とはいえ、駆け出しのルーキー相手に先手打たれ手こずるこの体たらくぶり……まー幼馴染になる予定だった女の子だからちょっと大甘なところはあるさね。
「オレ達の勝ちだ、ハルカちゃん。それとも、まだ隠し玉でも隠してるかい?」
「いやー4体目は流石に隠し持ってないよ……あたしの負けだよ、ユウキ君。てへへっ」
「………」
なに、このかわゆい生き物。
どこかの誰かさんも見習わなきゃな。
テレ笑いした天使のようなヒロイン……もとい主人公はオレ達に背を向けて、顔だけ振り返り手を挙げてこう捨てゼリフを吐く。
「うん……やっぱり、まだあたしには早かったかも。もっと強くなって出直してくるね……それじゃ、またねユウキくんっ!」
「おう、またな……ってそうは問屋が下ろさないんだよ、ハ~ルカちゃん!!」
「ひぇ~!??」
このオレがそれを許すはずがなかった。
たとえ天使でもただで帰すわけなかった。
むしろ天使だからこそ帰さない。
手首を掴み、立ち去ろうとするハルカちゃんを強引に引き止める。
もちろん、頭の上にヤミカラスを乗せて待機してある。
「ポケモン技をダイレクトアタックされて顔面ヘッスラまでキメたオレが君を見逃すと思った?阿呆か、お楽しみの時間はこれからだぜハ~ルカちゃん」
「だ、だよねー、あははははー……」
暴力は振るわないさ。
なに、ちょっとジムリーダーやショタコン共にしたようなイタズラをするまでだ。
ツツジたんは足の指や裏側が弱点だった。アスナはおっぱいが弱点だった、ナギたんは言葉責めからの尻叩きが弱点だった。双子ちゃんは耳が弱点……いや、ランちゃんだけが弱かった。うん、決してフウたんには触れてないからな。ただ双子だからリンクするってだけの話し……
まーそんなふうに……
ハルカちゃんにはヤミカラスの羽根で脇をコチョコチョしてやろうか!!
ふははははっ!!マグマ団カガリ隊のしたっぱ見習いエリートのこのオメガを相手にするっていうことが、どういうことか身体で覚えてもらわないとなぁ!!(ゲス顔)
「でも、そっちの女の子は限界みたいかも」
「うおーいっ!?待て待てそこで吐くな!絶対に漏らすなよ!死ぬ気で踏ん張れよウサギちゃん!!?」
「ふんばっちゃダメかも」
「うぅ………」
本当にタイミングを見計らったかのような間の悪さだぜ、ウサギちゃん!!
「よーしっ、ホント手が掛かるよなウサギちゃんは!!あと3分は我慢しろよ!!」
オレはヤミカラスを戻してリザードンを取り出した。
というか、焦りのせいかハルカちゃんを乱暴にも手を振りほどいたせいで、尻餅つかせてしまった。
「い、いった~い!!もうちょっと優しく扱ってよ!!」
「悪いなハルカちゃん、もう君に構ってる余裕は無いんだわ。お仕置きも例の荷物もおわずけだ」
「な、なによソレ……」
「まーオレら以外の奴らからソレを奪われないよう、せいぜい強く狡賢く頑張りな」
「い、言われなくてもそうするかも……ッ!!」
行き先はわかっているんだ。
明日にでも追いかけてやる。
オレはウサギちゃんを乱暴に担いでリザードンの背中に乗り込んだ。
「あーそれと最後に一言」
「な、なに……?」
ハルカちゃんは脅えた表情をしていた。
「オレはユウキじゃない。オメガだ……そこんとこ、よろしく」
「………っ!!?」
彼女は何か言いたそうだった。
言葉を詰まらせた。
たぶん、オレはオレが思っている以上にハルカちゃんを冷徹な目で見下ろしていたのかもしれない。
あー気の毒に。
恨むならアクア団を恨みな、ハルカちゃん。
お友達になれなくて本当にオレも残念に思っているよ。
こうして、オレ達はハルカちゃんを残して猛スピードでトウカの森から脱出した。
さて……
『私のおっぱいは君がいつも揉んでくれるからちょっとずつ成長していってるよって話しをするんだったね、オメガくん』
「ちげーよ……」
ここはフラワーショップ、サン・トウカ。
トウカの森とカナズミシティを結ぶ104番道路の、比較的トウカの森近くに佇む花屋でオレはヒガナたんと連絡を取っていた。
ウサギちゃん?あぁ、ウサギちゃんなら花屋のトイレにぶち込んだぜ。ギリギリセーフだったぜ。
『現在時刻は―――PM5:58―――だけども、やっと連絡してきてくれたねオメガくん。ずいぶん報告が遅いんじゃないかな??今回の任務、そんな手こずるようなものじゃないよねぇ』
「まーいろいろあってな。今、サン・トウカっつう花屋にお邪魔してるんだわ」
この通信はその報告のため。
事後報告ではなく、経過報告。
ヒガナたんにはこう報告しておこう。
例のトレーナーをトウカの森で待ち伏せしていたつもりが、逆に待ち伏せされ1本取られ遅れを取ったってな。
『ふむふむ、君の幼馴染のハルカちゃんとやらは案外やるもんだねぇ』
「幼馴染じゃねーし、お前なに勝手に他人の身内どころか近隣周辺まで調べてるの?」
『そりゃあ君が裏切った場合のことを考えればお隣さんの家族構成ぐらいまでは調べたくなるよ。まー君に限ってそれはないか……カガリたんは命の恩人だもんね、裏切れるわけがない』
「………」
『あはは、イヤだなー……そんな怖い顔をしないでよ、オメガくん。冗談さ』
だが、しかし……と、ヒガナたんは告げる。
『ナメぷするのも大概にしないと私も立場ってもんがあるんだからさー、お仕置きとか今後の君達の処置とかを考えなきゃいけないんだけども………///』
「………」
ホロキャスター越しのヒガナたんの手にしている首輪とリードと、頬を染めて上目遣いでモジモジした態度にイラっするんだけどな。
『私ね、オメガきゅんをペットにするのが夢なんだ///』
「そんな夢はドブに捨てちまえ」
『ぶーぶー、つれないよオメガきゅん!!』
「お前がくだらない話をするからだぜ、ヒガナたん。任務は必ず遂行する。なんなら明日にでも終わらせてやるよ。カガリたんにもそう報告しといてくれ」
『またまたー、どうせ幼馴染とイチャコラしてワザと長引かせたりするんじゃないのー?』
「しねーよ……」
っつーのは嘘だけども。
当然だろ、最悪の形になったけどせっかく出会えたんだ。
ハルカちゃんとイチャコラしたいんだよ。
コチョコチョの刑とかしないといけないしな。
もちろん、任務はちゃんとするし。
とりあえず朝一にムロに向かう予定だ。
『まー気になる異性にイタズラする気持ちは凄くわかるよ!でもほどほどにね!』
ヒガナたんの場合はその手に持ってる首輪とリードが物語ってるがな。
もう既にアジトに帰りにくいな、おい。
「それはそうと、話が少し変わるけど……」
『ん?私のバストサイズはCになったばかりだよオメガくん///』
「だからちげーよっ。最近アクア団の中でポケモンを誘拐した奴に心辺りあるか??花屋のお姉さんのクチートが行方不明なんだが」
『おっぱいの話はスルーなんだね……』
本当にめんどくさい先輩だ。
ウサギちゃんを花屋の個室のトイレにぶち込んで、待ち時間はアロマなお姉さん達に謝罪したり世間話をしたり携帯番号を交換したりして時間を潰していた。
その時に目に入ったチラシを見つけた。
行方不明なクチートたんの捜索願いだった。
あれは何かと訊ねたら、可愛がっていたクチートたんが行方不明になったとのこと。
なんでも、お店の昼休みの時間、裏庭で遊んでいたら客がやってきたそうな。その日は運悪く店番1人で、お姉さんはクチートたんを裏庭に残して客の相手をしたそうな。
恋人への花を一緒に選んでいたお姉さんにとってまさかであっただろう。裏庭に戻ればクチートたんの姿は既になかった。
クチートたんが彼女の元から勝手に去っていくとは考えられないほど、良い関係を築いていたそうな。非番であった他の従業員や客達がそう証言している。
だから、浮かび上がってくる1つが誘拐になるわけだ。
どうしてもオレの思考はそこへ行ってしまう。
これは2、3日前の出来事だそうだ。
オレとウサギちゃんがアジトで外出禁止をくらってる間の出来事だ。
オレ達が外に出られないからアクア団のアホ共は調子に乗ったんじゃねーのか。
オレはそう考えた。過去に人攫いした実績もあるし疑われても仕方が無い。
だからアクア団に潜入している情報通なヒガナたんに訊いた。
ヒガナたんはそれを聞くなり考える素振りをするなりしてこう答えた。
『ん~……いや、知らないねぇ』
「そうか……まーでも、一応調べといてくれよ」
『君のアクア団嫌いはピカいちだねぇ……』
アロマのお姉さんが涙を見せた。
アクア団なら絶対に許さねぇよな、おい。
『まー少しなら調べてみてあげるけども……』
オレのお願いもあまり乗り気じゃないヒガナたん。
珍しいというか何故か激オコだ。
『はん、君も偽善者気取りのイケすかない人助けの真似事は程々にして任務に支障が出ないようにね、このクレイジーボーイが!!このショタボーイが!!この任務が終わったら今まで出会って交換してきたショタコン共の電話番号をアドレス帳から全部削除してやるからな!!』
「なんだよ、ジェラシーなのかよヒガナたん……」
『そうだよ!私だってジョラシーなんだよ!!』
ジョラシーってなんだよ。
もうスルーしていいや、めんどくさいし……
このあとの愚痴は以下省略。
さて、くだらないやり取りで30分は過ぎた。
今日はカナズミシティにあるマグマ団の秘密の隠れ家で寝泊りしよう。
明日に向けての作戦会議もしよう。
ヒガナたんに秘密の隠れ家への利用の申請をしてもらい、あとはウサギちゃんがトイレから出てくるのを待つだけだ。
「オ、オメガきゅ~ん」
「『………』」
うえ~ん、とアロマのお姉さんが店から出てきてオレに泣きすがる。
きゅん付けはやめてほしいと何度言えばわかるんだ!!
「なんだよ、チエちゃん……」
『チ、チエちゃん……??そ、そいつが新たなハーレム・オブ・ザ・ショタコンの仲間入りしたアロマのお姉さんなのかいオメガきゅん!!?』
鼻息荒いお前はもう黙ってなさい。
オレはヒガナたんとの通信を切ってやった。
「ねぇ、もう閉店していいかな?あの子トイレからなかなか出てこないけど閉店していいかな?家で弟くんが待ってるんだよ~。今日は両親が家に帰ってこない日ないの、弟くんと愛を育む絶好のチャンス日和なんだよ~、うえ~んっ」
「はぁ、どいつもこいつも……」
オレはもう疲れたよ、とっつぁん。
おまけ
チエ「ねえ、弟くん…」
弟 「な、なに、お姉ちゃん?」
チエ「私、クチートたんが心配で夜も眠れないの……」
弟 「う、うん、心配だよね。ごめんね、僕があと1年早くポケモントレーナーになってれば、探しに行けたのに…」
チエ「ううん、弟くんは何も悪くないよ。寧ろ、ありがう。毎日慰めてくれて……」
弟 「と、当然だよ…なんたって、ぼ、僕たちは家族で姉弟なんだから!」
チエ「うん、うん、ありがう。でね、今日も弟くんにいっぱい甘えたいんだけどね……///」
弟 「………」ごくり
弟くんはアロマのお姉さんの手に持つモノに絶望を覚えた。
チエ「こ、このクチートたんの着ぐるみを弟くんに来てほしいなぁ……///」
弟 「………」
この後、弟くんは白目を剥いて気絶するワザを身に付けたという。