オメガ&ルビー~マグマ団カガリ隊に配属された件~   作:れべるあっぷ

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罪と罰

 マグマ団のアジトは複雑な構造でできている。

 

 エントツ山内部に多数の部屋と入り組んだ通路にワープパネルを搭載されたソレはまさに人工の蟻塚のようだ。

 

 侵入者ならもれなく迷子確定。

 

 マグマ団の奴等でも未だに迷子になる奴だっている。

 

 そんなアジトだから、そこそこトイレの数も多い。

 

 ほんとありがた迷惑な話だ。

 

 トイレ掃除をする奴の身になってみろってんだ。

 

 オレは朝礼に間に合わなかった。よってマグマ団の幹部・ホムラ―――通称・ホムホム―――に罰としてトイレ掃除を言い渡された。

 

 あぁ、もちろんアジト内全てのトイレを掃除しろという絶望的な話しではない。トイレ当番の下っ端どもと手分けして掃除しろって話なワケだけども。

 

 ちなみにオレと一緒にお寝坊さんした女子2人組みは別々の罰を言い渡されている。

 

 はあ、不幸だ……

 

 朝は自由時間なんだよ。

 

 トレーニングするのも良し。

 

 ポケモンバトルするのも良し。

 

 ポケモン達と触れ合うのも良し。

 

 街に買い物に出かけるのも良し。

 

 勉強するのも良し。

 

 まぁそんな今日の朝のスケジュール。

 

 テンションだだ下がりですわ。

 

 そっこーでトイレ掃除終わらせよう。

 

 テキトーに洗剤撒いてホースで水撒きプシャー……

 

 ふははっ、楽しくなってきたぞー!

 

「君、ちゃんとブラシも使うのだよ……」

 

「あ、ですよねー」

 

 運が悪いな、リーダーがトイレにやってきた。

 

 仕方が無い、言われたとおりにゴシゴシしますか。

 

 掃除用具入れからブラシを取り出しゴシゴシゴシ。

 

「調子はどうだね?」

 

「まぁおかげさまでボチボチっすわ」

 

「カガリの特効薬も役に立ったのだな……」

 

「良薬苦しでしたけど」

 

「それは何よりだ」

 

 ゴシゴシゴシ。

 

「君がここに来てもう半年が経つのか。早いものだな……」

 

「そうっすねー……」

 

 そう、オレがマグマ団に入って早半年、カガリたんに助けてもらって今日に至る。

 

 あの日、ジョウト地方からホウエン地方に引越した日にあんなムゴイ事件が起きなければオレは普通に原作の主人公として物語の旅に出ていただろう。

 

 でも、そうは問屋がおろさなかった。

 

 手短に話せばこうだ。

 

 あの日、オレはアクア団に拉致された。

 

 父親がトウカのジムリーダーであのセ〇リだ、身代金を要求したり傘下に入れと脅す計画だったのだろう。

 

 でもその前にオレが暴れた。こういう性格だ、昔から怖いもの知らずで手持ちにポケモンが無くても大人の1人や2人なんとかなると思い上がっていた。

 

 もちろん、返り討ちにあった。

 

 たまたま偶然にもカガリたんが奴らの隠れ家にしていた秘密基地から聞こえる悲鳴を聞き助けてくれた。

 

 カガリたんが助けてくれなかったらオレは………

 

 まあ時既に遅し純粋な少年・ユウキの心は壊れた。

 

 暴行を受けた傷跡は消えるワケじゃないんだ。

 

 男の尊厳を傷つけられたら尚更さ。

 

 この憤りはどうしても抑えきれないんだ。

 

 だったら、こうなった以上アクア団は1人残らず駆逐するしかねーよな。

 

 オレ1人じゃ限界もあるだろうからマグマ団を利用しようと思ったんだ。マグマ団もオレを利用すればいい。

 

 持ちつ持たれつお互い利用するような関係尚且つ時々カガリたんへの恩返しをしたいと考えたワケ。

 

 だからオレは自らマグマ団に入ることを選んだんだ。

 

「君が来てからマグマ団は賑やかになった」

 

 そうかな~……寧ろ逆に空気悪くしてそうだが。

 

「カガリはいつも任務の報告をする時に君の話をする。ポケモンの知識が凄いやら面白いポケモン技の使い方とか関係の無いことも含めてな……あのカガリが饒舌になるの稀である。弟みたいなのができてよっぽど嬉しかったんだろう」

 

 弟みたいか~……照れるじゃん。

 

「それにルビーくんが来てよりいっそう賑やかになった。ホムラはここは託児所じゃないと不満を漏らしているがね」

 

「そっすねー」

 

「確かに君たちはやり過ぎな所がある。ホムラみたいに不満を持つ者もいるだろうけど、皆が君たちに注目している。負けず嫌いな者が多いみたいだ、私はこれをいい傾向だと捉えることにしたのだよ。私からも礼を言おう」

 

「お、おう……」

 

「だが手が止まっている、もっと丹念に心を込めて磨くんだ」

 

「あ、はい………」

 

 ゴシゴシゴシ。

 

 くっそ、早く小便終わってくれませんかねー。

 

 ゴシゴシゴシ。

 

 早くトイレから立ち去ってくださいませんかねー。

 

 ゴシゴシゴシ……

 

 あぁやっと終わったみたいだー。

 

「午後からの任務……検討を祈る」

 

「アイアイサー……ッ!!」

 

 去り際の台詞として上々。

 

 リーダーはトイレを後にした。

 

 昼からの任務も頑張ろうかー。また迷惑かけることになるけども……

 

 必ずアクア団の野望は止めなければならない。

 

 古代の伝説ポケモンの復活阻止。

 

 極めては最悪のシナリオを想定してカイオーガに対抗するためにこっちもグラードンを手中に収めておきたい。

 

 いろいろやることてんこ盛りだな、マグマ団。

 

 たいへんだな、マグマ団。

 

 だからカガリたんのためにちょっとでも力になれればと思っている。

 

 あと、それからそれから……

 

「手洗っていけよ、おっさん……」

 

 皆も小便したら手は洗おうな。


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