オメガ&ルビー~マグマ団カガリ隊に配属された件~ 作:れべるあっぷ
それにしても恐ろしく退屈な一週間だ。
外出禁止ってこれほどまでにキツイ罰だということを改めて実感した。
療養も兼ねてだからか、カガリたんやヒガナたんの手伝いでもしようとしたら休めと軽く叱られた。
かといって、他の奴等の手伝いをするつもりは一切ない。
あぁ、なんてワガママなオレ。
しかしだ。
そもそもアジトで大人しくって性分じゃないんだよ。余計にストレス溜め込んでるだろうが、アクア団駆逐してる方がよっぽどーストレス発散できるんだがな……
フラストレーションは溜まっていく一方だ。
ふはっ、次に出くわしたアクア団がどんな悲惨な目に会うか楽しみだぜ。
「先輩、そんなに暇ならウチのホルビーの真価とやらをさっさと教えろッス。約束してたッスよね、任務頑張ったら教えてくれるって」
「え、そんなこと言ったっけ??めんどうだな、つーかウサギちゃんは前回の任務で何をしてたんだっけ??」
「テメー……」
「あーわかったわかったから泣くなウサギちゃん!」
「だから泣いてねーし!」
はいはい、そういうことにしといてやるよ。
それと先輩に対する敬語がなってないぞ。
もう面倒ではあるんだが、ウサギちゃんのために一肌脱ぐのもやぶさかではない。
暇つぶしもできるしな。
「じゃ、トレーニングルームへ行こうか。作戦会議もそこでしよう」
「おおーッス!!」
なに、この可愛い生き物。
―――D-3ブロック―――
さて、トレーニングルームにて。
「先に言っておくぜウサギちゃん。あのじじぃのレントラーに勝てても最強にはなれないぜ?」
「それでいいッス。とにかくホルビーを今よりも強くさせたいッス」
まー単純な強さだけならレベル上げだけでいいよな。
「で、ホルビーの真価ってなんスか?ホルビーは努力値をどれに振ったらいいんスか??どんなトレーニング方法すればいいんスか??」
「まー、そう焦るなウサギちゃん。時間は有限だが暇を持て余しているんだ。トレーニングをする前にホルビーの育成論をまず聞け」
ただやみ雲に筋トレするより、まずはどこをどうしたいのか、ホルビーをどう戦わすのを知ることが大事だぜ。
「ウサギちゃん、ホルビーの合計種族値がどれくらいなのか知っているか?」
「ウチ、オメガ先輩じゃないんで数値のことはわかんねーッス」
「237だよ。200族。例えばポチエナが220と同じ200族。ウサギちゃんの手持ちのポケモン、ゲンガーなら500、ミミロップは480、チルタリスが490、ザングースでさえ458。あぁ、じじぃのレントラーは523と単純な数値だけならレントラーが勝っているよな」
「ぐぬぬ、レントラーが憎たらしいッス」
もちろん数値が全てじゃない。
しかし500族相手に200族のポケモンが勝つことだってできる。
それができる辺りポケモンバトルは面白い。
「さて、ホルビーの種族値とレントラーのを比較して書いていくぜ」
ウサギちゃん、ホルビーの種族値の低さを活目せよ。
作戦会議のために持参したノートに種族値を書いていく。
ホルビー:HP38/攻撃36/防御38/特攻32/特防36/素早さ57=合計237
レントラー:HP80/攻撃120/防御79/特攻95/特防79/素早さ70=合計523
「………」
気をしっかりもつんだウサギちゃん!!
「あー、もうレントラーはいいっス、アクア団のキバニアとかポチエナとかグラエナあたり相手にして勝てたら十分ッスわー」
キバニア:HP45/攻撃90/防御20/特攻65/特防20/素早さ65=合計305
グラエナ:HP70/攻撃90/防御70/特攻60/特防60/素早さ70=合計420
「ふ、ふ~ん、あっそう、でも実際戦ったらウチらの方が強いッスよ~」
目が泳ぐウサギちゃん。
なに、この生き物。
もっと意地悪したくなるな、おい。
ヤミカラス:HP60/攻撃85/防御42/特攻85/特防42/素早さ91=合計405
「だ、だから、何なんッスか!!それがどうかしたんスか!!先輩のポケモンの方が優れてるって自慢したいんスか!!?」
ダークライ:HP70/攻撃90/防御90/特攻135/特防90/素早さ125=合計600
「ろ、ろっぴゃく……」
あ、泣いた。
もう意地悪はこれぐらいにしとこうか。
「先輩のことなんかキライっす」
ダメだこりゃ。
「嫌いで結構。さて、いろんなポケモンの種族値を数値化してきたが、数値が全てじゃない。ウサギちゃんがさっき言ったように実際バトルすればホルビーは勝てる。実際にアクア団のポケモン達に勝ってきているんだ。それはウサギちゃんのトレーナーとしての能力があったからこそだ」
「と、当然ッス」
「オレが言いたいのは、今書いたポケモン相手でもホルビーは勝てるだけのポテンシャルを秘めているってことだ。それを活かすのも殺すのもウサギちゃん次第だってこと」
もちろん、どうしたって苦手な相手はいるがな、と付け加えて。
「えぇっ、ダークライにさえもッスか!?」
「あー、ダークライの場合は運がよければの話しだけどな。運が良ければワンパンキルできそうだ」
「マジッスか!?」
さて、本題。
「ホルビーにもちろん努力値は振る。性格:いじっぱりの特性:ちからもちだ、これを活かさない手はいない。よって、攻撃と素早さに252の極振りで余り6はHPでいいや」
「お、おう……」
しっかり付いて来るんだウサギちゃん!!
ホルビーの攻撃は特性:ちからもちの効果もあり実数値195になるんだぜ。(計算間違ってなかったら)
「それで、都合良く攻撃と素早さの個体値が最大の31だ、よかったな。HPと防御と特防が11~20と中途半端で残念だがな。理想は0なんだが……」
「いや、ホルビーが紙耐久なのは認めるッスけど、せめてもっと個体値高い方がよかったんじゃ……努力値も個体値も素早さを上げるってことは裏を返せば攻撃を受けたくないから敵より早く攻撃するってことッスよね?ワンパンキルできる秘策があるって先輩は言ってるッスけど、ワンパンを狙っても先に攻撃受けたら一発でこっちがやられてしまうッスよ……??」
「そうさ。だから、それを逆手に取るんだよ」
「ん??」
「ワザと技を喰らうんだよウサギちゃん」
「ウチが馬鹿なのか先輩がアホなだけか、どっちッスか?そんなことしたら瀕死になるっつったッスよね?やっぱりタコだこの先輩」
「いや、タコはお前だよウサギちゃん。それでもバッジ7つ持っていたトレーナーだったのかよ、ウサギちゃん」
「今その話は関係ねーッス!!」
いや、関係あるね。
というか、かつてバッジ7つ集めた才能あるトレーナーが、ここまで言ってオレの狙いが分からないのもどうかと思うが、これで証明できたようなもんだな。
これからホルビーを相手にするホウエン地方のトレーナーの大半は、アクア団然りこの戦術にまんまとハマるんじゃねーの。
「想像力を働かせようぜ、ウサギちゃん。ホルビーに気合いのタスキを持たせるんだよ」
「瀕死級のダメージを喰らってもHP1だけ耐えるアイテムっすか……だから紙耐久の方がいいと?」
「そう、ワザとHP1に調整するんだ。これがミソだ」
確かホルビーってカウンターは覚えないよなー……どっちでもいいけど。
「それで、HPが1になったらこの技を使う。『じたばた』ってワザをな」
「えーと、HPが低くなればなるほど威力があがるノーマルタイプの技ッスか」
作戦ノートに書いていく。
ウサギちゃんでも分かりやすいように書いてあげるオレまじ良い先輩。
「そう、たったこれだけでレントラーはワンパンできるぜ、ウサギちゃん」
HP1の時の『じたばた』の威力は200。
攻撃力195(実数値)×威力200×1.5(タイプ一致)で59,100のダメージを与えられる。
これは同じ『ちからもち』のいじっぱりマリルリのはらだいこ後のアクアジェットが53,760よりほんの少し高めの威力。
たとえば、命の玉を持ったいじっぱりファイアローのブレイブバードが34,164ダメージ。
たとえば、ガブリアス(攻撃極振り持ち物無し)の逆鱗が32,760ダメージ。
まー計算が合っていたらの話だが、これを見るかぎりホルビーの『じたばた』もバカにできない。メジャーなポケモン達に遅れを取らないのが比較できるだろう。
もちろん、数値上での話し。
あと、ノーマル技じゃないアクジェやブレバ、逆鱗は相性がよければ効果抜群でダメージ2倍になるが敢えて言わないでおこう。
そんで、最後にじじぃのいじっぱりレントラーのワイルドボルトなら25,515程度と表記した。
攻撃力189(実数値)×ワイルドボルト威力90×1.5(タイプ一致)で25,515だ。珠を持っていたとしてもホルビーのじたばたの方が威力は上だということを示せばいい。
「おぉっ………」
ウサギちゃんが驚きの声を上げた。
「そして、素早さを克服するために高速移動は覚えさせておくといい。初手で高速移動して瀕死級をワザと喰らいHP1調整、相手の素早さを抜き去りそこから『じたばた無双』だ」
「うおぉぉぉおおおッ!!」
「もちろん、その『じたばた』を敵にぶつけるためには読み合いが必要になってくるぜ。HP1調整したのはいいが敵の第2撃が先制技だと無駄死にだし、天候も砂嵐とかだとダメージ受けるし、敵の特性や相手の所持アイテムが何なのかを見極めなければならない。それでいうとアクア団のキバニアとかサメハダーは要注意だな」
特性:鮫肌とかな。
「あと、敵のレベルが低いとHP1調整がしにくし、レベルが高いとワンパンで倒せなくなるだろう。だから同等ぐらいの相手を見極めなければならない」
まーレベルが低い相手には地震とかストーンエッジ、電光石火でいいと思うがな。
「ほへー、奥が深いッスね~」
「だから言ってるじゃん。結局はさ、勝つか負けるかは戦術次第、お前の手腕に掛かっているんだぜウサギちゃん」
「ウチ、頑張るッスよ!!」
「ウサギちゃんならできると信じてるよ。頑張れ」
なんたってウサギちゃんはオレの自慢の後輩なんだから。
口が悪くてワガママでヤンキーぶってて凶暴生物だけども、これだけは確かなんだ。
口にして言わないけども。
「でも先輩、レントラーの威嚇はどう処理するんスか?」
「え、なんだって??」
「威嚇で攻撃力下がっても『じたばた』でレントラーを倒せるんスかって聞いてるんスよ?お?」
「………」
忘れていただなんて言えない。
「………つべこべ言わずそろそろ努力値振ろうぜ、ウサギちゃん」
「おいっ」
「よっしゃ、ヤミカラス。トレーニング開始だーーー!!」
「カァー!!」
「あっ、逃げんなタコ先輩っ!!話しはまだ終わってないッスよ!!」
こうして2日目はトレーニング漬けで時間を潰すのであった。