オメガ&ルビー~マグマ団カガリ隊に配属された件~ 作:れべるあっぷ
さて。
外出禁止をくらったオレ達はこの一週間をどう有意義に過ごすかという問題に直面した。
このワガママボディ(意味深)を持て余すということがどういうことかお分かりだろうか。
そう、アクア団を駆逐できない。
ルチアちゃんを退けた今、せっかくのチャンスだと思うんだけどなー。
あー退屈だ~。
アクア団を駆逐できない今オレ達にできることは……
カガリたんに呼ばれて研究室にやってきて……
「少し…………チクっとするだけ…………」
「………」ぎりっ
「オメガ……いい子、いい子……痛くないよ……怖くないよ…………はい、終わった」
「ふぅ………」
いや、今のは安堵のため息とかじゃないんだからな。
別に注射とか怖くねーし。
「アホーッ!!」
誰がアホだ!!
口が悪いな、ヤミカラス。
オレの頭に乗っかっては神経がずぶとい。
「先輩、オメガ先輩、いい年して注射なんかにビビってんスか、情けない。歯ーくいしばっててイヤ~んなかんじ~ッス」
「………」
もっと口の悪い奴がいた。
「そういうお前は目を瞑ってるよなウサギちゃん。そんなに怖いのかい注射が??」
「は?怖くねーし」
次はウサギちゃんの番だ。
「でも、声が震えているぜ。オレの見て痛そうとか思っちゃった??」
「はあ?んなワケねーし!」
「でもでもウサギちゃん、アレはチクっとってレベルじゃなかったぜウサギちゃん。ちゃんと歯をくいしばっていて正解だった」
「ふ、ふーん……そんなに痛かったんスか?」
「あぁ、痛かった。バンギに手を噛み付かれるより痛かったぞウサギちゃん!!」
「ソレ本当に大丈夫なんスか!?」
などとウサギちゃんを不安に煽るオレだけども。
迫真の演技のかいもあって、カガリたんの手に持つ注射器を、その先端の針をもの凄く不安そうに見つめるウサギちゃんだけども。
ふははっ、涙目なウサギちゃんもまたグッドだ。
「オメガ……ルビーにイジわるしちゃダメ………めっ」
「お、おう……」
カガリたんに「めっ」された。
「いつかコロス」
「アホー!」
「………」
本当にお前ら口悪いな。
いや、退屈だから後輩をからかってやろうとしただけじゃん。
これも先輩の愛じゃん。
そんな涙目で睨んでも怖くないぜ~……
ちなみに状況確認だけども、任務でオレ達が吐血したことを報告したら心配したカガリたんが採血とろうと言い出した。
現在服用している錠剤の効果が薄くなっているから血を吐いたとのだとこと。
それで新しい薬を作るためにも採血は必須なのだ。
で、今にいたる。
ウサギちゃんは目を瞑って歯をくいしばりオレの袖を握っては採血された。
お前、ホントにオレがいないとダメだな……ウサギちゃん。
「はい、終わり………ルビー、いい子いい子」
「えへー」
「アホー」
「………」
まー、今のは見なかったことにしよう。
というか、このヤミカラスもうほぼ「アホー」しか言ってないけど大丈夫か?
まー、こんな感じでぐーたらにもアジト内で一週間を過ごすことになった。
結構辛い。
「オメガ、たまには息抜きも必要…………しっかり休んで…………わかった?」
「はーい」
カガリたんに言われたら仕方がないな。
忙しい中オレ達のこと面倒見てくれてありがとな。
だから大人しく休養しますか。
はあ………
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さて、場所は少し変わってここはコトキタウン。
色とりどりの花々と樹木の緑のコントラストが美しい、しかしゲームでは何もない主人公がただ通過するだけの町。
本当に目ぼしい建物はポケモンセンターとフレンドリーショップしかないこんな小さな田舎町にひっそりと佇むとある小さな図書館がある。
人知れず、知る人ぞ知る小さな緑色の図書館。
そんな図書館に珍客が訪れた。否、常連客ではあるがな。
名はダークライ。
北の大地からやってきた悪夢の体現者。
彼は図書館に借りていた本を返しにやってきた。
オメガ少年達が出禁をくらって退屈で持て余す中、彼はこの一週間をとても感謝していた。
「あら、こんにちは」
「………」コク
受付にて女性に本を預けた。
女性もダークライに慣れたもので、普通に挨拶して手際良く返却本のチェックしていく。
「今日は天気も良いし中庭で読むのにはいいわね。ふふっ」
「………」コク
行ってよし、と。
ダークライは次に読みたい本を探しては……
「こんにちわ、ダークライさん」
「………チワ」
途中、図書館でいつも会う少女と挨拶を交わして中庭に向かった。
空は快晴、昼寝を誘うかのような暖かな日差しに包まれて、大きな木を背もたれにして本を読み始めた。
少しチラ見をするとその少女も中庭にやってきてはいつものベンチに座り小説を読みだした。
偶然2人が読んでいるのは恋物語な小説……
ダークライが図書館に通う理由は明らかで、この退屈な一週間に感謝した。
静寂の中、閉館の5時までずっと2人は小説を読み続けるのであった。
もちろんこのことは皆に内緒である。