オメガ&ルビー~マグマ団カガリ隊に配属された件~ 作:れべるあっぷ
さて、と。
オレはウサギちゃんと合流し、悪夢にうなされるルチアちゃんを抱きかかえライブ会場の外に出たのはいいが。
無警戒でいて無防備にもほどがある。
「止まりなさい!そこのマグマ団2人組み!!」
「「うわー」」
マヌケにも声が出た。
ポリに包囲されていた。
当然といっちゃ当然だった。あんなにアクア団とライブ会場でドンパチやってたんだ。
一般人が通報していてもおかしくない。
いやはや、この街のジュウンサーさんも美しいですねー。相棒は安定のガーディですか、そうですか。
よく見渡せばポリ以外にも一般人やメディアなど野次馬もいたりする。あちゃー、カメラ回ってるじゃん。
「あなた達、その子をどうするつもりですか!!大人しくこちらに渡しなさい!!」
オレたちを制止しようとジュンサーさんが警告する。
オレ達に拒否権はない、抵抗するなら力ずくで行使する。オレ達を連行すると言っている。
いいねー強気なジュンサーさん。そのキレ目に惚れてしまいそうだぜ。
だから、
「うん、いいよ」
「「「「いいのかよ!!?」」」」」
うるせーな野次馬ども!!
オレは大人しくジュンサーさんにルチアちゃんを渡した。
「え、え……??」
言った当の本人も当惑しているけども。
「いや、病院連れてってやれよジュンサーさん。この子はこれから衰弱していくんだ。1ヶ月ぐらいは目を覚まさないから」
「えぇっ!?1ヶ月も!??」
「驚かれるのも無理はありません。これも全てアクア団が全部悪いんです……」
「うわー、やり方が汚いっすねー先輩。それと何で急に敬語なんスか??」
しんみり感を出すためにだよ!
「おい、カメラ!!もっとちこう寄れ!!」
「は、はいっ!!」
昨日の昼、ルチアちゃんがオレ達に突撃インタビューをした時にいたカメラマンだ。
「おいカメラマン!オレは今、悲劇のヒロインアイドル・ルチアちゃんをジュンサーさんに渡した!確かに手渡した!ちゃんと映したか??」
「はいぃっ、カメラに収めさせていただきました!あざーっす!!」
「これでジュンサーさんがルチアちゃんを病院に連れていかず、アクア団の息の掛かった施設に送りでもしたら、それこそ大問題だよな!!」
「なっ……!??」
そうさ、これでまたルチアちゃんがアクア団に復帰したら大変だ。
警察とアクア団が繋がっているだなんてゴシップ、絶対にあってはならないことなんだから。
「あざーっす、全国生中継バッチリです!!」
「うるせー、全国は駄目だ!地方だけの放送にしろよボケ!!」
「そんなっ、無茶苦茶な!?」
はい、回れ右して帰れ。
「滅茶苦茶な子共ですね」やら「先輩はクレイジー(笑)ッスから」などとそこで暢気に何喋ってんだ、ジュンサーさんとウサギちゃん。
ウサギちゃんやい、(笑)ってどういう意味だコラ。
「安心してください。我々は必ずルチアちゃんを無事病院へ届けます。アクア団も、それからあなた達マグマ団も関係していない場所へ……」
「ひゅー、言うねー」
「それでは署まで一緒にきてもらいますか? ここで起きた事、あなた達から全て話してもらいます」
「「えー」」
「えーじゃありません!」
まー、当然そう言われるわなー。
めんどくさいなー。行く気なんてさらさらないんだけどなー。
というか、行くに行けないよなー…………………
「先輩……」
「わかってるっつーの」
くそったれが、本日最後の仕事だ。
「ジュンサーさん。絶対にルチアちゃんをアクア団に渡すなよ……」
「言われなくてもわかってますよ……」
「ほんと、救えねー奴らッス。ぺっ」
………。
野次馬を掻き分けてこっちにやってくる3人組がいた。
大男が真ん中に、両脇に男と女のしたっぱで構成されたマヌケな奴らがやってきた。
アクア団、まだ何か用でもあるのか?というか全国放送だけどいいのかアクア団??
こいつは嬉しい誤算だった。
オレはニヤニヤが止まらない。
「オウホウ、マグマ団のガキ共、ルチアをどうするつもりダ?こっちに渡しヤガレ!」
「なんだよ喚くなよボブ。ルチアちゃんはもう既にオレからポリさんの手に渡った。オレに言うんじゃなくジュンサーさんに言えよ」
「やばいですぜ、ウシオさん。ガキからの手ならともかく、サツを敵に回すのは絶対やばいです!」
「リーダーも先生もきっとそう仰られますよ」
「ぐぬぬっ」
あぁ、こいつがウシオか。
「ふははっ、残念だったなーアクア団!一歩遅かったなアクア団!今回もお前らの負けなんだよ!!さあ帰った帰った!!」
「「………」」
ウサギちゃんとジュンサーさんのオレを見る目が少し冷たいけども気にしない。
「どうしますか?ウシオ様」
「どうもこうモ、どうしてこうナッタ!?だからオレっちは言ったんダ!!反対したンダ!!1人で勝手なことするなッテナ!!ホラ、見ろ!!計画がパーだ!!面白くネェ使えない女ダナ!!」
「おい、言葉には気をつけろよアクア団。ルチアちゃんが何だって??」
「アン?アァ、使えネーって言ったンダ。弱ェくせに次はワタシに任せてくださいダッテ?作戦は考えてありますダッテ?アニィもセンセーもイズミの野郎もルチアを甘やかしたのがいけなかったンダ。デ、どうダ、ケッキョクはガキ共はピンピンしてるじゃネェカ。テメェは負けて部下も無駄に消費シテ、何も成果を出してないどころか捕まってしまえば本来の目的も果たせれネェ。仲間を増やすことしかできねぇ無能がシャシャリ出てきたからこうなったンダ、これじゃアクア団のイイ恥さらしダ!」
「そこは良く頑張ったでいいんじゃないのか?お前らは仲間に対して慰めも労いの言葉の一つも掛けられないのかよ??」
「アニィ達なら言うかもシラネェがオレっちは違ウ。面白くネェ奴はアクア団に相応しくネェ。もっと鍛えさせるマデ」
「そうか、そうか……で、ルチアちゃんを力ずくにでも取り返すのか??」
「フン、今日の所は引き上げてヤル。帰るゾ、オメェラ」
「「は、はぃっ!」」
と引き返そうとしたアクア団をオレは止めた。
帰られたらオレが困るんだよ。
「まー、待てよアクア団。お前らが用事無くなってもこっちはまだ用事あるんだよ。つーかさ、なに、お前らまだルチアちゃんを諦めてないんだよな?特にウシオつったか?デカいの」
「アン?」
「オレはさ、もう疲れたからお前らに説教をするつもりもない。でも、これだけは言っておく」
愚かなりアクア団。
今日でルチアちゃんと幹部を1人失って戦力ダウンだな。
「カメラっ、もう一回ちこう寄れ!」
「えぇ、また!?」
と驚くわけだけども。
ちゃんと撮っておけよカメラマンのあんちゃん。
「いいか、お前らも野次馬共もお茶の間のアクア団の奴らもよーく聞いておけよ!!」
「せ、先輩、もうその辺にしといた方が……」
うるさい。
オレは今モーレツにキてんだ。
「次、またルチアちゃんを利用するってんなら地獄をみるぜ、こんな風にな」
オレはモンボを一個取り出した。
見せしめって大事だよな……
今まで口封じのために、病院送りの昏倒昏睡状態にしていたのも駄目だったんだ。
「ゲッ、ジュンサーもカメラのあんちゃんもこっから離れるッス!!」
「えぇどっち!??」
「ちょ、ちょっと、今ならまだ止めた方が……っ!??」
「もうあーなった先輩は止まらないッス!!えげつないワザに巻き込まれる前に避難するッスよ!!」
いや、カメラマンはオレの勇姿を映してほしんだけども……離れて正解だ。
「いけっ、リザードン。メガ進化」
さあ、お茶の間に知らしめろ。
オレ達を怒らせたらどうなるのかをなっ!!
あ、ちなみに色違いメガリザードンはYな。性格はいじっぱりだけど。
特性:ひでり効果でひざしが強い。
「オウホウ、怖いもの知らずなガキやっぱりおもしレェ!こうでなくっちゃナ!!」
「えぇっ!?ウシオさんコレ生中継ッスよ!??」
「いや、でも向うから仕掛けたことだから正当防衛になるのでは??評判悪くなるのはあっちでしょ??」
阿呆か、アクア団の評判は既にどん底だよ。
そんなことよりも、さあ出せお前らのポケモンを。
「シザリガー、つるぎのまいをしてアクアジェット!!」
「あーほんと無茶苦茶ですぜウシオさん!ヘイガニ、アクアジェットだ!」
「キバニア、アクアジェットでリザードンの動きを封じ込めるのよ!!」
ふはっ、まずは二匹突っ込ませてリザードンを動きを止めようって作戦か?
その間に舞ったシザリガーで本命のアクアジェットってか?
なんだよ、ちょっとはやるじゃん。
まーでも、ひでりなのに安易に水タイプわざ使ったお前らの負けだ。
両手でヘイガニ、キバニアを受け止め、頭突きでシザリガーのハサミを受け止めたメガリザードンY。
おしかったな。
「び、びくともしない!?ここまでレベルの差が違うっていうの!??」
「だ、だからやめときましょうって言ったんですぜ!!」
「チ、チクショー!!」
―――Oパワー発動―――
とくこうパワーの効果により、メガリザードンYの特攻が3段回上がった。
「リザードン、吹き飛ばせブラストバーンだ」
「グオオオオオオオオオオオッ!!」
フラストレーションを一気に爆発させる。
あまりの熱量に視界が真っ白になった。
やべ、やり過ぎた。
『ミナモシティ南西部にあるポケモンコンテストのライブ会場で事件勃発。
マグマ団とアクア団の抗争にアイドルが絡んでいた!?』
報道スクープ番組のテロップにはこう流れていた。
『重軽傷者178人。死者0人。
アクア団関係者、逮捕者続出。
現在も逃走を続けるマグマ団2人組みにご注意ください』