オメガ&ルビー~マグマ団カガリ隊に配属された件~   作:れべるあっぷ

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その甘さ嫌いじゃねーぜ

 砂嵐はおさまった。

 

 バンギを戻し視界がクリアになり、ステージ全体が見渡せるようになった。

 

 そこかしこバンギにつけられた爪痕が痛々しい。破壊されたステージ、重傷を負ったしたっぱ共……ステージで立っているのはオレだけ。

 

 ルチアちゃんはチルルを戻すがそこに座り込んで啜り泣いていた。

 

 しかし、絶望はまだ終わらない。

 

 終わらせない。

 

 オレはアクア団に容赦がない男なんだぜ?ルチアちゃん。

 

 但しちょっとめんどくさいことになった。

 

「ごほっ……」

 

 この間の悪さ……吐血した。

 

 おいおい、マジか。

 

 クソッタレめが。

 

「血!?オメガくん、まさか……ッ!?」

 

 はあ……

 

 どこまでもめんどくさく、どこまで甘いのやら。

 

「ルチアちゃん、いい加減にしないとオレも流石にブツぞ?敵の心配より先ずは味方の心配をしろよ」

 

「でも、でもっ、その血は……ッ!!?」

 

「血ならアクア団のしたっぱ共も流してるだろ?」

 

 そっちの心配をしたれよ。

 

「オメガくんの場合ワケが違うでしょ!?今の医学でも治せないような猛毒って聞いてるわよ!!?」

 

 だからカガリたんが特効薬を作ってくれてるんだよ。

 

 完治はまだしてないがな、効果はちゃんと出てるんだぜ。

 

「で、それで?」

 

「それで、って……だから、もう終わりにしよ。お願いだから、もうこれ以上暴れたりしないで。もう見てられないのよ君のこと!!」

 

「………」

 

「そりゃ仲間の人たちも心配だよ!平気な顔してれるワケないでしょ!今も早く救援呼びたいよ!!でもそれ以上に君のことが心配なのよ!」

 

「………」

 

「オメガ君の身体は安静にしてなきゃ駄目なんだよ!私知ってるもの!先生から聞いたもの!このまま無茶し続けていったらいつか取り返しのつかないことになるって!!」

 

「だから、こうなったのはアクア団のせいだろうが……」

 

「ごめんなさい……」

 

「アクア団がオレに謝るな……」

 

「でも、私はずっと君に謝りたかった……本当にごめんなさい!」

 

 また、君は泣く。

 

 理由は少し考えてみればわかることだった。

 

「ごめんね、全部私が悪いの……私がスカウトしたから、その人たちが君を誘拐したんだから」

 

「それはルチアちゃんのせいじゃねーよ」

 

「でも、強さを求めた。自分を犠牲にしてヒトを傷つける強さを求めた!!」

 

「………」

 

 ヒトを傷つける強さか……

 

「ずっと謝ろうと思ってた。早く君を止めなきゃと思ってた。でも、君の噂を聞くたびに怖くて行動にも移せなかった!私は何もできなかった!!」

 

 大粒の涙が溢れ止まらない。

 

「本当にごめんなさい……」

 

 もし、それが本当なら……

 

「その気持ちだけで十分だよ。ルチアちゃん、ありがとう」

 

 アクア団にお礼を言うオレもどうかしてるぜ。

 

 オレは気付けば泣きじゃくるルチアちゃんの頭の上に手をぽんと置いた。

 

 アクア団で敵ではあるが、オレのことをオレの知らない所で思い悩んでくれていただなんて、どれだけ甘っちょろいんだろうか。

 

 まーその甘さは嫌いじゃねーぜ。

 

「しかしだ、ルチアちゃん。そんなことを聞かされたらますます君を許すわけにはいかないし、君1人が謝ったところでどうにもならねーよ。こうなったのは全部アクア団が悪いんだから。連帯責任って奴だ。アクア団はまとめて悪夢は見てもらう」

 

 例外はない。

 

「さて、最後の仕上げだアクア団」

 

 圧倒的な力で絶望させた。

 

 仲間を巻き込んで絶望させた。

 

 ステージを破壊し絶望させた。

 

 当然、昼からのライブは中止だ。今日ライブを楽しみにしていた君も、客も全て絶望以外にありえない。

 

 君はまたそうやって傷ついていったらいい。負い目を感じて生きればいい。

 

「ま、待って―――――ッ!?」

 

 待たない。

 

「ダークライ、ダークライッ!!」

 

「ヤレヤレ」

 

 ウサギちゃんのサポートをしていたはずだけど、そっちはどうやら終わってたみたいだな。

 

 2つ返事で必ず姿を現すダークライ。

 

 悪夢を体現したかのようなポケモン。

 

 悪夢をみせる協力者。

 

「ダークホール」

 

 さよならだ、ルチアちゃん。

 

 暗黒な球体がルチアちゃんを覆いつくした。

 

 安らぎを与えるはずがない。

 

 安らかな寝顔は見れない。

 

 見れるはずもない。

 

 これからルチアちゃんに待っている悪夢に希望なんてありゃしない。

 

 ダークライの見せる悪夢はちとヘビーだぜ。

 

「クソッタレが……」

 

 ほんと胸くそ悪い終わり方だな。

 

 本当にこんなやり方でしかできなかったのかよ……

 

 他にやり方なんていくらでもあっただろうに……

 

 だけど、オレはこの道を選んだ。

 

 だからもっと強くならなきゃな……

 

 もっと、もっと強く……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、と。

 

 自問自答反省モードは終了。

 

「先輩、この後どうするつもりッスか?」

 

 雑魚掃除を終えてたウサギちゃんに問いただされた。

 

「ルッチーをどうするつもりッか?」

 

 一つ返事を間違えるだけで殺されかねない圧力がハンパねぇ。

 

「なあ、どうしてウサギちゃんはそこまでルチアちゃんに肩入れするんだ?」

 

 この質問は野暮だったかな。

 

「ファンだから?」

 

「ウチと同じ夢を持ってたからッスよ。ぺっ」

 

「あ、そう……」

 

 そうか……でもツバ吐く必要なくね?

 

 それルチアちゃんに対してイラついている証拠だよな?決してオレと会話してイラついてるワケじゃねーよな??

 

 まー何にしてもだ。

 

「ルチアちゃんはアクア団の息の掛かっていない病院に送っていこう。それで終わりだ」

 

「ちっ」

 

 え、不満なの??

 

 マジで性質悪いな、オレは一体ルチアちゃんをどうすればいいんだよ。

 

 はあ……でもオレの決定権に従うんだ。

 

 これだからウサギちゃんはウサギちゃんなんだよ。

 

 さて、

 

 悪夢にうなされるルチアちゃんを抱きかかえライブ会場の外に出たのはいいが……

 

 無警戒でいて無防備にもほどがあった。

 

「止まりなさい!そこのマグマ団2人組み!!」

 

「「うわー」」

 

 ポリに包囲されていた。

 

 当然といっちゃ当然だった。あんなにアクア団とライブ会場でドンパチやってたんだ。

 

 一般人が通報していてもおかしくない。

 

 マヌケにもほどがあった。


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