オメガ&ルビー~マグマ団カガリ隊に配属された件~   作:れべるあっぷ

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戦場

『ステージ内にて砂嵐が発生しました。関係者以外はすみやかに避難してください。繰り返します、ステージ内にて――――――――』

 

 なんてマヌケな放送が流れるけども。

 

 メガ進化前のバンギラスの特性『すなおこし』によってライブ会場ステージに場違いの砂嵐が巻き上がる。

 

 対策していなかったルチアちゃんやアクア団したっぱ共はもれなく目や耳、鼻、口に砂が入る。じゃりじゃりするだろ。チルルも例外じゃない。

 

 ウサギちゃんはオレと同じく口と鼻をスカーフで隠しフードを被り耳を守り、目は防塵ゴーグルを装着してフル装備だ。

 

 ダークライとゲンガーはうっとおしそうに影の中へ撤退していく。

 

 さて、派手に暴れてやろうか。

 

「グルァ!」

 

「あだっ、かみつく相手はオレじゃねーからな!!?」

 

 バンギに手噛まれた!?

 

 もうこの甘えん坊さんめ。

 

 ヒガナたんも言ってたよな、これは甘噛みだって……

 

 いや、そんなことよりも、

 

―――Oパワー発動―――

 

 とくぼうパワーの効果により、メガバンギラスの特防が3段回上がった。

 

「い、今何したの……??」

 

 はて、何したでしょう。

 

「メガバンギラス、竜の舞」

 

「グルゥアッ!」

 

 竜舞もOパワーも使わなくても本当は勝てると思うんだけど、ルチアちゃんには絶望してほしいから圧倒的なパワーを見せてやりたいじゃん。

 

 メガバンギラスの攻撃と素早さも1段階上がった。

 

「チルル、ハイパーボイスよ!!」

 

「チル……ッ!!」

 

 ノーマルタイプの技がフェアリータイプになる特性『フェアリースキン』から繰り出されたハイパーボイス。

 

 広範囲、そして視認しにくいボイス攻撃は砂嵐を掻き分けメガバンギラスに届いた。回避できなかった。

 

 確かに悪タイプなメガバンギにとってフェアリータイプは脅威なワケだけども、効果は抜群だーなわけだけども、しょうみ格闘タイプ以外怖くない。

 

 しかも、ある程度耐久のあるメガバンギにさらにOパワーを施したんだ。生半可な火力で突破できるわけがない。

 

「グルルゥ……」

 

 ほら、普通に耐えた。

 

 HPゲージがあるなら4分の1も減ってないんじゃないか。

 

 なんてこともなかったかのようにメガバンギラスは次の指示を待っている。

 

 砂嵐がチルルを襲う。

 

「そ、そんな……レベルの差が違いすぎるっていうの??」

 

 レベルの差だけじゃない。

 

 種族地も違えば個体地も無駄に6Vで努力地も振って、さらにOパワーも使ってるんだ。

 

 やれることはやる。使えるもんは使う。

 

 勝利への執着心、執念の本気度が違うってわけですたい。

 

―――Oパワー発動―――

 

 こうげきパワーの効果によりメガバンギラスの攻撃が3段階アップした。

 

「メガバンギラス、もう一度竜舞」

 

「グルァ!」

 

「チ、チルル、もう一度ハイパーボイスよ!」

 

「チ、チル……ッ!」

 

 メインウェポンがこのザマだ。

 

 大したダメージは入らない。

 

 かと言って流石にこのままずっと受け続けてるワケにもいかんけどな。

 

 砂嵐がチルルを襲う。

 

―――Oパワー発動―――

 

 きゅうしょパワーの効果によりメガバンギラスの技の急所率が3段階アップした。

 

「もう一度、竜舞」

 

「チ、チルル、コットンガード!」

 

 メガチルタリスも耐久向けのポケモンだが、防御をぐぐぐーんと積んでそれが吉と出るか凶と出るか……モフモフがえらい増えたな、おい。

 

 砂嵐がチルルを襲う。

 

「こ、こんなの、どうしたらいいのよ……」

 

「ルチアちゃん、絶望するにはまだ早いなー、こっからが本番だぜ?」

 

 そう。

 

 こっちはまだ攻撃をしていない。

 

 オレのバンギの真価はこっからだ。

 

「メガバンギラス、ストーンエッジ」

 

「グルゥゥアアアアアアアッ!!」

 

「「――――ッ!??」」

 

 積みすぎて凄まじい破壊力を秘めた攻撃がチルルを襲う。

 

 圧倒的で暴力的な力の差に恐怖で反応も遅れ、真正面から当たればいくらモフモフ度が増したチルルでも無事じゃすまない。

 

 急所にも当たりやすくなってるし、ワンパンキルしかねない。

 

 万事休すっていったところか。

 

 しかし、突き上げたストーンエッジはチルルから外れ巨大なスクリーンに直撃した。

 

 突き刺さり煙を出しショートした。

 

「おしいッ!さすが命中率80%のストーンエッジ!だがそれがいいッ!!」

 

「ス、ステージが……」

 

 砂嵐がチルルを襲う。

 

「くっ……チルル、距離を取ってハイパーボイスで向かい撃ってッ!!」

 

「もう一度ストーンエッジ」

 

 お互いの攻撃がぶつかり合う。

 

 ハイボは相殺することなかれメガバンギは渋い顔をしてダメージを受けた。こちらの攻撃はまたしても外れる。

 

 しかし横殴り気味に出したストーンエッジは少し砕けて、観客席へと飛び散った。

 

 悲鳴が上がった。

 

 アクア団の下っ端どもの悲鳴だ。

 

 運の無いやつらだ。

 

 砂嵐がチルルを襲う。

 

「またっ……み、皆下がって! ここは私だけでいいから……ッ!!」

 

 だが砂嵐の中その声は一体何人まで届くのだろうか。

 

「人の心配するより自分の心配をしな。もう一度ストーンエッジ!!」

 

「チルルッ!お願い止めてッ!!」

 

「チルッ!!」

 

 今度こそチルルは真正面から攻撃を受けようとする。

 

 これ以上の犠牲を出さないためにも。

 

 でも、またハズレだ。

 

 脅威の命中力80%の攻撃は外れて照明へ突き刺さった。

 

 鈍い金属音とレンズが盛大に割れる音が鳴った。

 

 照明が落下した。

 

 したっぱ共がワーワーギャーギャーうるさいなー。

 

 砂嵐がチルルを襲う。

 

「もしかして、ワザとなの……??」

 

「………」

 

「ねえ、黙ってないで答えてよ!!」

 

「もし、そうだと言ったら?」

 

「ぐすっ、最低ね…………」

 

 あちゃー、またルチアちゃん泣かしちまった。

 

「酷いよオメガくん。今は私と戦ってるのになんでこんな酷いことができるの……?あんまりだよ……」

 

「酷い?そうか??おかしな質問をするんだなルチアちゃんは……これは公式なポケモンバトルじゃねーし敵はルチアちゃんにチルルの2人だけじゃないんだ。だから全力で敵全てを殲滅しようと躍起になってるバンギに手加減してくれって言ってるみたいだぜ、それ」

 

「そ、そんな言い方はしてないっ」

 

「いいぜ、望みどおり手加減してやるよ。メガバンギラス、手加減の地震だ」

 

「グ、グルァ……」

 

 そんな無茶振りできるかよ、とメガバンギは目で訴えてくるけど地震を放った。

 

 大地は揺れステージが激しく揺れた。

 

 会場全体が振動によって軋む。建物が崩壊してしまうんじゃないかと不安になる。

 

 おいおい、手加減しろといったじゃん。いや、手加減してこの威力か。

 

 喚いていたしたっぱ共は観客席で転げたり、天井からのよくわからない落下物から必死に避けていたり。

 

 ルチアちゃんはその場で尻餅をつき、手加減されても尚チルルはダメージを喰らい蓄積していた砂嵐のダメージと総合してそろそろ限界を迎えていた。

 

 いや、アイツはよく頑張った方だぜ?

 

「チ、チルル、羽休め!」

 

「惨いな、さっさと楽にしてやれよ。メガバンギラス、もう一丁いってみよう。手加減した地震」

 

「グルラァ……」

 

 今度こそ先ほどよりも崩壊し始めた。

 

 天井からはやっぱりよく分からない天井のパーツやら照明等が落下してきた。

 

「お願いもうやめて!!チルル、羽休め!!」

 

「嫌だ、やめない。メガバンギ、地震と見せかけてストーンエッジ。入り口を狙え」

 

 今度こそ明らかにチルルではなく、逃げ惑うしたっぱ共の退路の一つを塞いでやった。

 

「甘いなールチアちゃんは……」

 

 砂嵐はまだ止まない。

 

 砂嵐はチルル、それからルチアちゃんやアクア団したっぱ共をまだ襲う。

 

「全てがクソ甘ーんだよルチアちゃん。誰一人犠牲も出さずにオレ達を止められると思った?ここがライブ会場だからって派手に暴れてステージを破壊しないとでも思った?阿呆か、ここを戦場に選んだからには覚悟を決めろよ!それが嫌だったら出しゃばってくんじゃねーよ!生半可な覚悟でオレ達の前に現れるんじゃねーよ!!」

 

「うぅ……」

 

 メガバンギ、ストーンエッジ!

 

 しかし、これも外れて審査員席に直撃する。

 

 まー意地悪するのもこんくらいでいいだろう。

 

 アイドルでチヤホヤされていた練乳より甘いルチアちゃんに免じて次で終わりにしてやるよ。

 

 砂嵐もそろそろ止みそうだし。

 

 いや、そろそろポリとか駆けつけてきそうだしな。

 

 忘れてならないのはここがライブ会場で市街地にあるってことだ。

 

「メガバンギラス、締めの冷凍パンチッ!!」

 

「グルゥゥアアアアアアアッ!!」

 

 最後はせっかくだからチルル対策で覚えさせた冷パンで締めよう。

 

 タイプ不一致だけど、効果抜群であまりのパワーにチルルが吹っ飛んだ。

 

 ごめん、やり過ぎた。

 

 観客席まで飛んでいき、座席を破壊しながら壁際まで止まることはなかった。

 

 予想外だったのは一度チルルが起き上がったことだ。

 

 ルチアちゃんのために死ぬ気で持ちこたえようとしたのだ。立ち上がろうとしたのだ。チルルの中でまだ戦いの炎は消えてはいないのだ。

 

 そういうの嫌いじゃないぜ。

 

 しかし、砂嵐がチルルを襲い戦闘不能になった。

 

 あっけない程にいつも通り、オレたちの勝利だクソッタレめ。

 


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