オメガ&ルビー~マグマ団カガリ隊に配属された件~ 作:れべるあっぷ
いつもの悪いクセだ。
こんなピンチだからこそなんだけどな……
何だか身体が疼いて昂ぶってきた。
「ウサギちゃん。最初はグー……」
なんか滾ってきた。
「「ジャンケン、ポンッ!!」」
オレがパー。
ウサギちゃんがグー。
「な、何をしてるの2人とも? こんな時にふざけないでよ!!」
「いやいや、こちとら大真面目だぜルチアちゃん」
「そーそー、ジャンケンで勝った方がルチアちゃんの相手して、負けた方が周り雑魚のお掃除係を決めていただけッスよ」
まー、今回はウチの負けッスけど、とウサギちゃんがボヤく。
「なっ、君達のポケモンは没収したでしょっ! 君達はポケモンバトルさえ許されないのっ!! 私の誘いをけった君達はもうここで私達に降伏して全てが終わるまで暗い牢屋の中に閉じ込められるのよッ!!」
「まーそう自分の思い通りにいかないのが世の中だぜ、ルチアちゃん。一番それを体感してきている君が何をいまさら……」
「ちっ……」
また……。
「ルチア様っ、こいつら追い詰められて頭おかしくなったんでは?」
おっ、やっとモブAが喋った。
「こ、ここは私達に任せてお下がりください!!」
「モンスターボールも持っていない丸腰のガキんちょ2人を取り押さえることぐらい我々にだって……ッ!!」
「駄目っ、迂闊に近づいちゃッ!!」
そう、オレ達を取り押さえたいのなら先ずはポケモンで気絶させるか虫の息になるまで痛めつけることだな。
メガ進化したチルル使えよ。
じゃないと……
「ゲンガー、シャドーボールっす」
「ケヒヒッ」
「「ぎゃッ!?」」
ウサギちゃんのポケモンに襲われても文句も言えない。
安定の奇襲攻撃。
油断していたモブA、モブBの背後に現れたゲンガーにシャドボを撃たれ軽く吹き飛んだ。
観客席にいたオレ達の横を通り抜けてステージ近くまで軽く転がり気絶した。
「ああっあああああいつらッ!? 躊躇無くヒトにポケモン技撃ってきたぞ!??」
「ヒトに向かって撃っちゃいけないって母ちゃんに教わらなかったのかよ!!?」
「ひぃっ、こんな話し聞いてないよ!! いや、ガキんちょ達の噂は聞いてたけど、ポケモン没収したと言うから今回の任務引き受けたのにっ!!」
「ル、ルチア様ッ!! アイツらのポケモンは、モンスターボールは全て没収したのでは……っ!??」
「そ、それは……」
あー、もう。たかが2人シャドボの餌食になっただけで煩いなー。
「おい見苦しいぞアクア団、ビービー喚くなアクア団。ルチアちゃんを責めてやるな、確かにオレは3個、ウサギちゃんは5個のモンボを没収されたっつーの。ただしモンボの中を嫌うポケモンがいて今の現状を作り出したってだけだろうが」
「してやられたってワケね。どのみち昨日君達が眠りについてから拘束しようとしても、結局は争うことになっていた。君達の余裕はそこからくるのね……」
「まー、アレだ。モンスターボールの中を嫌い影の中を好むポケモンはウサギちゃんのゲンガー1匹じゃないってことを覚えておいた方がいいぜ、ルチアちゃん」
ウサギちゃんのゲンガーはちと特殊だが。
「ダークライ。ダークライ……ッ!!」
「ヤレヤレ……」
コイツも特殊っちゃ特殊だがな。
誰にもズルいとは言わせない。
誰からの批判も受け付けない。
勝つか負けるかの勝負に卑怯も反則もへったくれもない。
弱いポケモンより強いポケモンを使うの方がいいに決まっている……
ホウエン地方とは程遠い北の大地の伝説であろうと使えるなら使う。
こういう宿命だから。
そういう運命なんだから。
ただ、それだけ。
たったそれだけのコイツは協力者。
「ワガハイ ハ ポケモン デ アル」
うん、知ってる。
「ニックネーム ハ ナイ」
うるせーよ!?
手に持ってる小説のタイトルと台詞をパクリやがって登場するんじゃねーよ。いや、人間を勉強するためにいろんな書物を読むことも大事だけども。
今もぺらぺらページめくって音読はしないでくれ。かっこ悪い。
しかし、人語を喋り読書する得体の知れないポケモンにアクア団したっぱ共は動揺を隠せないでいた。
「ダークライ……確か、シンオウ地方に出てくる伝説のポケモンよね?どうしてオメガくんが……??」
流石にルチアちゃんは知っていたか。
「というか何故グラードンじゃなくて遠い地方のもっと苦労しそうなポケモンを先に捕まえているのよオメガきゅん!!」
「う、うるせー、コイツが勝手に現れてオレに協力するってついて来ただけだよ!そして、オメガきゅん言うな!!」
ホント笑えないから厳禁な!!
もう一度大事だから言うけどホント厳禁な!!
「なににしても、そのポケモンじゃ私のチルルとは相性悪いはずよね? 随分舐められたものね、私たちこう見えてもポケモンバトルだってできるんだから!幹部や団長が相手でも引けを取らないんだから!負けて後悔しなさい!オメガきゅん!!」
ダメだ、もうきゅんきゅん言ってたらいい。
「あのな、ルチアちゃん。相性だけがポケモンバトルじゃねーし、これは公式ルールにのっとったポケモンバトルでもねーんだぜ?君はアクア団として今までマグマ団と何回バトルした?今までどんな経験をしどんな戦術を駆使してきた?いったいどんな修羅場をくぐり抜けてきた?死線もくぐり抜けたこともない夢見るお嬢さんにオレは負ける気がしねーんだわ」
「言ってくれるじゃない……君のその言動、いちいち勘に触るというかますます惚れちゃうじゃない」
「まーそういう冗談も今の内だぜルチアちゃん。君の夢も希望も全て打ち砕いてやるから、冥土の土産に圧倒的な格の差ってやつを見せてやるよ……まーダークライは使わないけども」
「「「「使わんのかいっ!??」」」」
うるせーよ、アクア団したっぱ共。
あたりめーだろ!レベル50のダークライで相手するのはちと荷が重いわボケー!!
たぶん、ルチアちゃんのチルルもレベル50代ぐらいだろうし。オレはそれを数値で読むことができるワケだが。
そして、ルチアちゃんを倒したら次はおめーらの番だからなしたっぱ共!!
「ダークライ、読書もいいがオレのモンボちゃんと取り返してきたのか? 早く寄越せ!!」
「コレダ」
「よし、上出来だ」
「「「「……ッ!??」」」」
いつの間にかダークライの手に持っていたモンボ2つ。
1つは置いてきたか……いや、ダークライのために取っておいたラスト1個のモンボだったが、本気で親がオレなのは断固として反対なんだな、コイツ。
まあ、いいけども。
「ゲンガー、ウチのも寄越せッス」
「ケケッ」
どうやらウサギちゃんも5個ちゃんと取り返したみたいだな。
「ル、ルチアさまー、楽屋に置いていたガキんちょ共のモンスターボールが何者かに盗まれましたー!!」
「ここにあるっての……」
マヌケなしたっぱFがやってきてステージ入り口付近で叫んでいたが虚しかった。
「ルチアちゃん、オレ達の快進撃はまだ終わらない。終わるのはおめーらアクア団だよ」
「くっ……!?」
オレは口と鼻を覆い隠すためスカーフを巻いた。フードも被った。
準備は万端。
さあ……
「派手に暴れろ、バンギラス。メガ進化―――――――ッ!!」
宴の始まりだ。
絶望の始まりだ。
悪夢の始まりだ。
ステージに砂嵐が舞き上がった。