比企谷八幡は平穏な生活に憧れる   作:圏外

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日常回なのは良い……平穏な日常を手に入れた八幡だからな……自然な流れだ……
だがこれはどういう事だああ〜〜〜〜っ⁉︎全く話が進んでいねぇじゃあねぇかよーーーーッ!ナメやがってこの作者ァ超イラつくぜぇ〜〜〜〜ッ‼︎
コケにされた平塚先生と雪ノ下は置いてけぼりじゃあねーか!読者の事も考えろってんだ!チクショーーーーッ


比企谷八幡らは日常を過ごす

「ただいま」

 

「あ、お兄ちゃんおかえり。どしたの?やけに遅かったけど。もうご飯出来てるよ?」

 

「ちょっとな。平塚先生に捕まってた」

 

「あー、結婚できない人だっけ?」

 

「その覚え方はやめろ……」

 

 

妹の小町と軽い会話をし、食卓に着く。両親は共働きの上大抵二人とも遅く帰ってくるので夕食は二人で食べることが多い。

 

 

「ほら、今日はお兄ちゃんの好きな肉じゃがだよ〜。どう?結構自信あるんだけど」

 

「ああ、小町の作る飯は世界一おいしいよ」

 

「うわぁてっきとー」

 

 

妹は冗談を軽く流すようにそう言って笑う。まごうことなき本心なのに。

 

 

「で、本当は何があったのかな?」

 

「……どうしてそう思う?」

 

「先生に捕まったくらいでこんなに遅くならないでしょ。も・し・か・し・て〜、しのぶさんとなんかあった?恥ずかしがらないでさ、言ってみ?最愛の妹に言ってみ?」

 

「お前な……」

 

 

はぁ、またこれか。高校に入って私に友人ができ、川尻と知り合ってからは何かあるといっつもコレである。

 

 

やはり中学生女子、こと恋愛に関しては興味津々だった。小町曰く、昔からお姉ちゃんが欲しかったそうだ。

 

 

「本当に何もないさ。ただ、ちょっと面倒なことに巻き込まれてな」

 

「面倒なこと?お兄ちゃんが?」

 

「ああ。実はな……

 

 

 

 

……と言うわけだ。もう二度と行かんがね」

 

 

話してしまった後から、小町に言っても良かったものかと後悔する。やはり私はちと妹に甘すぎるのか?偽る気があっても変わる気は無いので、結局甘いままなのだが。

 

 

そうすると小町は苦虫を噛み潰したような顔でこちらを見ていた。

 

 

「いやいや……お兄ちゃん。それはダメでしょ。確かに聞いてる限りではその女の人ちょっとムカつくけどさ、初対面の人に手首よこせって……普通にドン引きだよ……」

 

「だろうな」

 

「そんな他人事みたいに」

 

「実際もう関わる気がないのだから他人だよ。どうせあいつ友達いないだろうし、奴も先生も周りにバラすような性格はしていないさ」

 

「もっとドン引きだよ…………しのぶさんにそんなこと言ってないよね?」

 

「あいつらにそんな事言うはずないだろう」

 

「なら良いけどさ……もう人にそんな事言うのやめてよ?小町も総武高行く予定なんだから」

 

 

あいつらに言わないならそれで良いのかよ。なんだかんだ小町も私に似て来てるような気がするなぁ……家でも立ち振る舞いを考えるべきか?

 

 

「ならもっと勉強しろ。このままじゃ落ちるぞお前」

 

「それが最愛の妹に言うことかー!受験生に落ちるなんて言っちゃいけないの!」

 

「ま、解らんところがあったらいつでも言え。どこでも教えてやる」

 

 

そう言って片付けを始める。今日は小町が準備をしたので、片付けは私の役目だ。

 

 

「んじゃ小町お風呂はいってくるね」

 

「風呂上りにはキチンとハンドクリームを……」

 

「お兄ちゃんうっさい」

 

「……」

 

 

ハァ……思春期と言うのは嫌なもんだ。昔はちゃんと言うことを聞いてくれていたのに……最近では手を触らせてもくれないし……お兄ちゃん哀しい。

 

 

2、3年前までは頬ずりしても恥ずかしがるだけだったのになぁ……

 

 

ま、キチンとハンドクリームは塗っているようだがな。肌荒れ知らずの手を見ればわかる。……我ながら変態みたいだな。

 

 

 

《次の日》

 

 

 

「小町起きろ。もう7時過ぎだぞ」

 

「むぅ……まだ7時じゃん……」

 

「全く……早く寝ないから朝起きられないんだ。もっと健康に気を使わないと、夜更かしは肌荒れの原因になるから」

 

「黙れ変態。ふぁあ……ご飯出来てる?」

 

「……」

 

 

小町は単純なので、こうやってちょっと怒らせるとすぐに起きてくる。……別に傷付いてなんかいないさ。

 

 

「ほらさっさと朝飯を食え。置いていくぞ」

 

「お兄ちゃんは小町を置いてったりしないから大丈夫」

 

「なんだその自信は……ほれ、口にジャム付いてる」

 

「え?ジャムってる?」

 

「……一応教えておくが、ジャムるってのは詰まるって意味だぞ」

 

「細かいこと気にしないの。そんなんじゃモテ無いよ?」

 

 

別にモテたくて外面被ってるんじゃあない。葉山みたいに誰からも注目されるなんて、まるで監視されてるようじゃないか。

 

 

私は行きすぎた裕福は要らないが、満足のいく暮らしをしていたいんだ。それこそ宮澤賢治の『雨ニモマケズ』のようなね。

 

 

っと、そろそろ時間だ。早く行き過ぎるのはまだしも、遅れると言うのはとても注目を集める行為だ。それだけは避けなくてはならない。

 

 

外に出ると、何故か小町が私の自転車の荷台に跨っていた。

 

 

「ほらお兄ちゃん早く早く!遅れちゃうじゃん、小町が」

 

「……このちっぽけなクソガキが……」

 

「コラ、口が悪いよ」

 

 

もしかして私は妹に舐められているのか?この比企谷八幡の最も嫌うことの一つは人に舐められることだというのに……

 

 

結局、小町に頼まれるとされるがままなんだがね。

 

 

 

 

「そう言えばさ、お菓子の人にはもう会った?」

 

「なんだ?その御中元に毎回ハムを送っても何も言われない羨ましいポジションを勝ち取った人のような呼び方は」

 

「ハムの人にそんな感情もってるのお兄ちゃんくらいだよ……じゃなくて!ほら、お兄ちゃんが助けた犬の飼い主さん!」

 

 

その事はあまり思い出したくないんだがね……

 

 

私は入学式の日、柄にもなく友人を作ろうとして早くに家を出た。そんなテンションだったからかは知らんが、飛び出した犬を助ける為に車に轢かれてしまったのだ。

 

 

私は未来永劫猫派だったはずなんだが、どうやら両方の派閥に属してたらしい。まさかこの私が考える前に体が動くという事を体験してしまうとは……まるで悪夢だ。

 

 

その後は錯乱した親父が病室に飛び込んできたり、私が居ない間に示談交渉が済んでいたり、小町が来る頻度が日に日に下がっていったりした。

 

 

そうして2ヶ月そこらを病院で過ごす羽目となり、1ヶ月は松葉杖をついていた。人生の中でも最悪と言える日々だろう。みんながみんな親切心で私に向かって来る。目立つなんてもんじゃない。

 

 

思い出すだけでムカッ腹が立ってきたが、そのおかげで戸塚と知り合ったと考えると許してやらんでもない。それが私の今の感情だ。

 

 

「で、そのハムだか菓子だががどうしたって?私はそんな奴には一度も会ってないぞ」

 

「え〜?おっかしいな、確かに同じ高校だから今度会ったらお礼言っとくって言ってたんだけどなぁ〜」

 

 

ありがたいと、私は素直にそう思った。やっと誰もがその事を忘れたのに、これ以上蒸し返されたらたまったものではない。

 

 

「で、そいつがくれた菓子は美味かったか?」

 

「うん!結構高いやつだったよ。クッキーがサクサクで美味しかった」

 

「そうか、私が今まで知らなかった私宛の菓子はそんなに美味かったか」

 

「………………てへっ☆」

 

 

やっぱりムカつくなこのガキ。

 

 

それにしても、あの時助けた犬の飼い主か……どうも嫌な予感がする。

 

 

なんとなくその時の事関係で何やら厄介事に巻き込まれそうな気がしてならない。これだから人生と言うのはままならないものだ。

 

 

この比企谷八幡、ピンチになるといつも『運命』に味方されているような気もするが、そもそもピンチにならない生き方が理想なので、あまり『神』や『運命』と言った類を信用していない。

 

 

厄介事をなんとか切り抜けていく人生など、欲しくはないのだ。そんなスリリングな人生など死んだ方がマシだ。

 

 

 

 

 

《2ーF教室》

 

「……」ガララ

 

「あ、おはよう八幡君」

 

 

いつも通り無言で教室に入ると、川尻が声をかけてくる。最近川崎が学校に来るのが遅い。戸塚は朝練だ。

 

 

「おはよう。川崎はまた来ていないのか?」

 

「そうなのよォ〜、最近遊びに誘っても前より付き合い悪いし、LINEとかで聞いても『関係ない』の一点張りでさァ〜」

 

 

こいつは自分の名前が古クサイ事を気にして『イマドキ』って風になりたいらしいが、喋り方もどこか昭和な感じがする。

 

 

「まあ?こうやって八幡君と2人で居られるのも中々オツなんだけど〜キャッ」

 

「それにしても心配だな。まさかとは思うが、『ウリ』なんてのはやっていないよな?」

 

「沙希が?ナイナイ、そんなことする子じゃないって。バイトか何か始めたんじゃない?」

 

 

オイオイ、こんな早朝まで続くバイトは校則違反だぞ。補導でもされれば私に被害が来るかもしれないじゃあないか。

 

 

「ねぇ八幡君、昨日さァ、平塚先生に呼ばれてたじゃあない?何言われたの?作文なんかでミスするタイプじゃあないわよね?」

 

「いつも通り雑用の手伝いと、ちょっと話してただけさ」

 

「ふぅん。本当にそれだけェ?」

 

 

川尻は結構目敏い。私に興味を持ったのも、元々は『デキル奴オーラ』があったから、というなんとも良くわからん理由からだ。最初は警戒していたが、本当にビビッときただけらしい。

 

 

そんな少し適当な彼女が、ピシッとした性格の川崎と仲良くなったのは割と気になる謎である。仲の良い奴らを『似た者同士』と言ったりするが、少しくらい違った方が仲良くできたりするのか?

 

 

「それだけだよ。何もないさ」

 

「そー言うなら深読みはしないけどさ。ホラ、八幡君に嫌われたくないし?」

 

 

そんな事を話していると、戸塚が朝練から帰って来た。いつもより少し早い。

 

 

戸塚は一言で言うと『男の娘』だ。一部の女子からは王子様と呼ばれているらしい。手もテニスをしている割には華奢で、この私ですら一瞬『ソッチ』に目覚めかけた程である。

 

 

「お、戸塚おはよう。朝練は終わったのか?」

 

「おはよう八幡。今日はちょっと早めに終わったんだ」

 

「もぉ、サイちゃんタイミング悪いよ〜」

 

「あはは……」

 

 

今の所私の理想は、こいつらと駄弁りつつ静かな高校生活を終えることだ。

 

 

出来れば卒業後も、仲良くしていきたいところだがね。こんなことを考えるようになるとは、中学の頃の私が見たら相当驚くだろうがね。




しかも川崎も出てないし……
えらくない……ぜんぜんえらくないッ‼︎

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