比企谷八幡は平穏な生活に憧れる   作:圏外

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大変遅くなりました……次回は早めに投稿できると思いますが、その次はまた時間が空くかと思われます。


キャンプに行こう!・その3

「……くぅ……すぅ…………」

 

 

キャンプ2日目。いつも通りの時間に目を覚ますと、隣には寝息を立てている戸塚……

 

 

……ただ同性の友人と同じ部屋に泊まっているだけなのに何故戸塚だとこんなに私が()()()()みたいになってしまうのだろうか。戸塚だからか。

 

 

「……ほれ、起きろ戸塚。朝だぞ」

 

「んむ……?はちまん……?」

 

 

寝ぼけている戸塚を起こして布団を片付ける。

 

 

「おはよう、八幡」

 

「おはよう戸塚。ほれ、布団を片付けるぞ。この部屋の掃除もしなければいけないからな」

 

 

そしてその後は朝食、それが終わればイジメ問題の話し合いだ。ここが勝負だな、上手くいけばいいが……

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、昨日の続きをしようか。何か意見があったら言ってくれ」

 

 

葉山の一言から話し合いが始まる。やはり葉山は自分の優位性をわかっているようで、自分中心の話し合いを進める前提で言葉を発している。

 

 

そう仕向けたのは私なんだがね……さすがに小町からの頼みを無碍にする訳にもいかない。本当に身勝手なことだと思うが、葉山にはお役御免となってもらおう。

 

 

「お兄ちゃん!連れてきたよ!」

 

「お、ありがとう小町」

 

 

小町には平塚先生を呼んできてくれ、と言ってあった。平塚先生を見て雪ノ下が複雑な表情をする。

 

 

おそらく雪ノ下は私が葉山の意見に賛同したのは今回の件を『面倒事だから放置する』と考えているからだろうと予測していたが、私が行動を起こしたので驚いている、と言ったところか。

 

 

「……えっと、平塚先生を呼んだのは比企谷だよな?」

 

 

葉山が私の方を向いて聞いてくる。

 

 

「ああ、そうだけど?」

 

「何でだい?」

 

「いやなんでって……変にイジメ問題に入り込んでイジメが悪化でもしたら責任は平塚先生に行くわけだし、一応呼んでおいたほうが良くないか?」

 

 

その言葉に葉山は納得したような顔をして、平塚先生は表情を濁らせた。

 

 

「まぁ、確かに当然っちゃあ当然よね」

 

「まあそうだべ」

 

 

そして三浦と戸部も私に賛同の意を示す。

 

 

奴らは昨日私が葉山の意見に賛同したことで、私たちを『自分たちの仲間』として認識している。奴ら程度の思考力なら、『仲間』である私たちの意見ならば仮にグレーゾーンでも平然と賛成してくれるだろう。葉山は別かもしれないが、三浦が賛成したならば下手に口を出すまい。

 

 

「……そうだな。平塚先生、今から話し合いを始めますが、良いですか?」

 

「ああ、始めたまえ。私は君たちの自主性を重んじて特に口を出さないがな」

 

 

まあ、それで良いか。欲を言えば『決定権を私に委ねろ』ぐらいは言って欲しかったが、これでも問題はあるまい。

 

 

先程私が『責任は平塚先生に行く』と言ったことで、自覚していなくともこの場の全員は失敗した場合は平塚先生が罰を受けると認識したはずだ。

 

 

それだけで少しでも『失敗するかも』といった不安が残る案を採用する訳にはいかなくなる。平塚先生自身も危ないと思ったなら止めるはずだ。

 

 

こう言う少年団のキャンプや林間学校などの泊りがけの行事の場合、『教職員の話し合い』は必ず行われるものだ。……平塚先生が進言しているかはぶっちゃけ怪しいが、少なくともボランティアスタッフの高校生の引率なら何か言われているだろうし、自覚はあるだろう……多分。

 

 

「それじゃあ、何か意見はあるか?思い付きでもいいから何か考えがあれば言って欲しい」

 

 

葉山司会のままで話し合いは始まる。だが意見を出したところで危険があればすぐに否定されるはず、そうそう何をするかは決まらない……

 

 

「じゃあさ、昨日俺が出した話し合いをするって意見なんだけど……」

 

「悪いがそれは許可できない」

 

 

私の思惑通りに、平塚先生がその意見を斬る。

 

 

「……理由を聞いてもいいですか?」

 

「まず虐めというのは、教師や親などの立場が上の者に知られたとなると、表向きは無くなるがその分『裏』でわかりにくい虐めとする様になるんだ。何かするのなら、『私達が動いている』と直ぐに小学生たちに知られることはできない」

 

 

後はそんな時間をスケジュールに入れることもできないしな、と言って視線をそらす平塚先生。葉山は表情が暗くなる。

 

 

三浦が不機嫌になるが、先生に噛み付く事は出来ない。リア充という連中は『空気を読む』、つまり先生に下手に手を出す事などできはしないのさ。

 

 

それからも戸塚の『小学校の先生に知らせる』という意見を『本人が知らせたと思われたら逆に虐めが悪化する』と言われ、雪ノ下の『本人に撃退法を伝授する』という意見は『誰もがそんな強い奴じゃあないのだよ』と断られた。

 

 

そのうち意見は殆ど出なくなり、皆俯向く様に考えている。

 

 

これでいい。このまま意見が出なくなれば『下手に小学生の問題に手を出すな』となって終わるはずだ……

 

 

 

 

 

「ねぇ、みんな。ちょっと良い?」

 

 

 

 

声を上げたのは由比ヶ浜だ。

 

 

正直、由比ヶ浜を通して雪ノ下の意見を出されると厳しいのだが……(三浦が賛成する可能性が非常に高い)

 

 

だが、そういう訳でもないらしい。雪ノ下は心底驚いた表情をしている。なら一体どう言う……

 

 

「いきなりで悪いんだけど、この件、私に任せてくれないかな?」

 

 

由比ヶ浜が口にしたのは、予想を上回る一言だった。

 

 

こいつ……話を聞いていたのか?責任は平塚先生に行くわけだから、無理なことは出来ないと暗に示したのだが。空気を読むことだけが取り柄の由比ヶ浜が変な行動を起こすのは想定していないと言うのに……

 

 

「……結衣、悪いけどこれはそんな簡単な問題じゃ……」

 

「良いだろう、話してみろ由比ヶ浜」

 

「平塚先生⁉︎」

 

 

しまった……!この教師はそういう奴だった……まさかとは思うがそれを見越して……と言うのは無いか。

 

 

「ただし、何をするかここで説明したまえ。反対意見が出るようであれば、流石の私も許可を出すことは出来ん」

 

「ありがとうございます平塚先生」

 

「うむ。考えを聞かせたまえ」

 

「はい。えっとね、私はーーーーー」

 

 

……………………………………?

 

 

こいつ、正気か?

 

 

「……結衣、それってさ……」

 

「由比ヶ浜さん、その案では……」

 

「ゆきのん、訳は後で話すから」

 

「由比ヶ浜さん……」

 

「……なぁ、由比ヶ浜。本当にそれでどうにかなると思っているのか?イジメ問題だぞ?」

 

 

 

 

「みんなには分かんないかもしれないけど、本当にこれで何とかなるんだよ。私には分かるんだ。だってーーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《自由時間・side雪ノ下》

 

 

「ねぇゆきのん。最初からヒッキーは平塚先生を連れてきて、イジメが悪化しそうな意見を押し通せないようにするつもりだったのかな?」

 

「……どうかしらね」

 

 

少なくとも比企谷くんは昨日の時点では何かを企んでいるような感じではなかった。何方かと言えば鶴見さんの事など何とも思っていない、そんな風に見えた。

 

 

比企谷くんの事は正直、よくわからない。恐らく『厄介事を避ける』ように行動していることくらい。由比ヶ浜さんは比企谷くんに対して悪い感情は持っていないようだけれど、個人的には余り親しくしてほしく無いわね……

 

 

そんな事は後だ、今は……

 

 

「……由比ヶ浜さん」

 

「どしたの?ゆきのん」

 

 

……由比ヶ浜さんが提案した方法は、確かに私には出すことができなかったと思う。

 

 

 

 

『ふむ……良いだろう。許可する』

 

『平塚先生⁉︎』

 

『ありがとうございます、平塚先生』

 

 

 

 

許可を出した平塚先生は嬉しそうに微笑んでいた。由比ヶ浜さんが自分の意見を堂々と言えるようになった事が、堪らなく嬉しかったのだろう。でも、

 

 

「私はまだ納得できていないわ。本当に()()()()でこの問題が解決するの?私にはとてもそうは思えないのだけれど……」

 

 

そう言った私の事を、由比ヶ浜さんは少し複雑な表情をしながら笑った。

 

 

「うん、確かにそうだろうね。多分隼人くんもゆきのんも、ヒッキーもこれで解決するなんて想像もしないと思うよ。正直あの子たちの気持ちもあんまりわかってないと思うし」

 

 

その言い分は尤もな意見だと思う。自分で言うのは傲慢な気もするが、私たちは『強い』側の人間だ。葉山くんも、おそらく比企谷くんも虐められた事はなさそうなのだし。

 

 

「……確かに彼らは虐められたことなんて無いと思うし、私も虐められたら叩き潰してきたから正直余り気持ちが分かるとは言えないけれど……」

 

「違うよ、逆だよ逆」

 

「え?」

 

「いじめられっ子の気持ちは私もよく分かんないよ。虐められたこと無いし」

 

 

 

 

「私が分かるのは、『いじめっ子』の方の考え方」

 

 

私が居たのもそっちの方だし、と恥ずかしそうに言った。




作戦の方は考えてありますので、多分今週中には投稿できるかと……

あと雪ノ下と由比ヶ浜はカレー作ってる時にルミルミと会話済みという事でお願いします。内容は原作通りです。

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