比企谷八幡は平穏な生活に憧れる   作:圏外

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大変遅くなりました……別に私生活が忙しいというわけではないんですが、展開が全く思いつかなかったもので……ゴメンナサイ。


キャンプに行こう!・その2

「お兄ちゃん」

 

「……どうした?小町」

 

 

風呂から上がった後の自由時間、小町が声をかけてきた。十中八九さっきの話だな、小町は私の話に対して不信感を抱いていたはずだ。

 

 

「さっきのヤツ。あれお兄ちゃんもっとどうにかできるんじゃあないの?」

 

「さあな。どっちにしろ見知らぬ小学生のために尽力するような性格はしていない。小町も知ってるだろう?」

 

「……お兄ちゃん。やっぱり助けるような性格、とは言わないんだね」

 

「……」

 

「お兄ちゃんは、微塵もその子を『助けよう』と思っていない。違う?」

 

 

さすがは小町、と言ったところか。

 

 

「お兄ちゃんの言う通り、小町はお兄ちゃんの事ならよく知ってる。お兄ちゃんは小町にだけはなんでも本音で話してくれるからね、お兄ちゃんの性格は誰よりも、多分お父さんやお母さんよりよく知ってると思う」

 

「お兄ちゃんさ、自分勝手だよね。そのくせ周りの目を気にしすぎるしすごく頭が良いから、みんなが納得した上で自分に有利に働くように周りを動かす事をする」

 

「お兄ちゃんは、多分みんなの中で1番その女の子の事を考えてない。そして助けるとか助けないとかじゃあなくて『自分に迷惑がかからないようにする』ことだけを考えてる」

 

「多分お兄ちゃんがやろうとしてるのは『イケメンさんと金髪さんが満足する事』を中心に据えた作戦。でしょ?」

 

「……さすが小町だな、私の事をよくわかってる。八幡的にポイント高いぞ?」

 

「小町的にはポイント低いけどね」

 

 

軽口を叩いても小町の表情は晴れないままだ。

 

 

「……それに、多分その女の子も良い方向にはいかない」

 

「……ほう、理由は?」

 

「わかんない」

 

 

おどけた様子も無く、ただ平然と理由も無く不安だと口にする小町。だが確信はしているようで、その目には迷いが一切ない。

 

 

「小町はバカだからさ、どうやれば上手くいくのかなんてわかんないし、イケメンさんが言った事だって『無難だな』ってくらいにしか思わなかったよ」

 

 

小町はしっかりと私を見つめながら、でも、と続けた。

 

 

「さっきも言ったよね?お兄ちゃんの事ならよく知ってるって。さっきのお兄ちゃんは、絶対に上手くいくなんて思ってなかったはず。じゃあ上手くいくはずがないよ。だってお兄ちゃんはすっごく頭が良いから」

 

「強いて言うなら、これが理由かな」

 

 

……やはり、小町には頭があがらんな。妹可愛さも相まって勝てる気がしない。

 

 

と言うか、兄妹とは言え人の気持ちを確信レベルまで読み取れるとは、少し私に似てきたか?成長と言って良いかはわからんが、元々小悪魔的な性格がより強かになっている気がする。

 

 

「……ああ、その通りだ。このまま話し合いなどしても奴らの関係性が悪化するだけだ」

 

「やっぱり」

 

「だが、下手に引っ掻き回すよりはまだマシだ。小学生たちは私たちの前で少し気を遣ってくれればそれで良い」

 

「それだけで、先ほど私が言った『いじめ辛い雰囲気』というハリボテが出来上がる。葉山たちはこれで満足するだろう」

 

 

実際こうなってくれればとてもやりやすい。ただ小学校の先生に『みんなで話し合いをする』時間を作ってもらい、ガキどもの話し合いを眺めるだけ。仕事を葉山たちに押し付ければ、私は楽ができ葉山たちには『働いた感』がでて一石二鳥だ。

 

 

私がこの後行うのは、この『話し合い』を『集会』に変える事だ。その集会が始まる前に、それとなく『仲良く』だの『みんなで』だのと言った事を口に出し、小学生たちに『疑心暗鬼』になってもらう。

 

 

誰しもが経験したことがある感情だろうが、子供というのは『怒られる』事を極端に恐れる。だからこそ『バレないように』イジメを行う。もしイジメがばれて『先生に怒られる』事になるのを避けるためにな。

 

 

『もしかしてバレて怒られるかも』と思わせる事によって、誰にもを見られないように、と警戒させる事ができたら私の勝ちだ。小学生から見たら私たちは立派な大人、つまり『怒る側』の人であり、警戒する対象。私たちの前でイジメにつながる事を見せる事はしなくなる。それを葉山たちに見せれば『成功』だ。

 

 

「はぁ……これだからごみいちゃんは……」

 

「ごみいちゃんとは何だ、ごみいちゃんとは。この作戦なら誰にも迷惑がかからない上に上手くこの場を収め……」

 

「普通『どうやって助けるか』を考えるとこでしょ⁉︎何で『どうやって上手く収めるか』を考えてるのさ!」

 

 

まぁ言わんとする事はわかるんだが、助けるメリットもない以上やる意味が無いだろうに。

 

 

「別に小学生をどうこうしようとしてるわけじゃあ無いんだし、特に問題無い。一応そこまで悪くなるわけでも無いと思うぞ?」

 

「いや、悪くならないじゃあなくて。お兄ちゃんなら何とかできるでしょ?」

 

「そんな事を言われてもな……正直面倒だし、よく知らん高校生の援護でいじめがなくなっても今後上手くいくとは限らんだろ」

 

「それは……そうだけどさ……でも、んー」

 

「と言うか、小町は何をそんなに気にしてるんだ?一応こっちもそれなりの高校に通う高校生だ、そこまで……」

 

「だってお兄ちゃん、悪化するってわかってるだけならまだしもこの作戦のまま意地でも曲げないんでしょ?イケメンさんたちの意見に同調したのはイケメンさんたちに下手に作戦を変えられないためだよね?」

 

 

……そこまで分かってしまうものか。こんなアホでもやはり私の妹か。実際はそれだけではないが。

 

 

「はぁ……分かったよ。関係を悪化させるような事はしない。約束する」

 

 

そう言うと小町の顔がぱあっと明るくなる。全く、世話の焼ける妹だ。このまま行けば葉山グループを良い気にさせたまま私たちにはノーダメージで終わったんだがな……

 

 

「じゃあお兄ちゃん、あの子を助けてくれるんだよね!」

 

「いや?『私は』何もしない」

 

「はぁ⁉︎」

 

「何もしないと言うか、する必要が無いと言った方が正しいかな?元々は私が上手く押し通して葉山たちに『自分たちのおかげで成功した』と錯覚させてやり過ごすつもりだったが」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!関係を悪化させる事はしないって……」

 

「わからないか?『私』は何もしない。関係を悪化させる事を止めるのは『先生』だ」

 

 

先ほどの話し合いが始まる前、平塚先生は『私は寝る』と言っていた。話し合いが始まったのは夕飯を食べた後だったので、だいたい6時半。普通に考えると寝るのは早すぎるだろう。つまり……

 

 

「私たち高校生が小学生の事を考えているように、先生たちも高校生の事を考えて頭を悩ませているのさ。教師も大変なもんだ、死んでも教師にはなりたくないね」

 

「最後の最後で台無しだよ、お兄ちゃん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《深夜1時半・教師side》

 

「えー、明日の打ち合わせは以上でよろしかったでしょうか?では、これで……」

 

「すみません、少々お時間よろしいですか?」

 

 

声を上げたのは、今回の林間学校のサポートスタッフのボランティアとして来ている高校生達の引率、平塚先生だ。

 

 

「どうぞ、平塚先生」

 

「実は高校生達の間で、ちょっとした動きがありまして」

 

 

その言葉に、大半の人間は眉を顰める。それもそうだろう、自らが担当しているわけでも無い高校生の動きで睡眠時間が削られるのは迷惑そのものだ。ただでさえ深夜の見周りで少ししか眠れないのに。

 

 

「どうやら小学生たちの中に1人孤立気味と言うか、虐めとまで行くかはわかりませんが、仲間外れにされている子を見つけたようで、自分たちでどうにかしてやりたい、と言っているんですよ」

 

 

仲間外れにされている子、というのに小学校の教師は心当たりがあるようで、納得したような声もちらほら上がっている。だが心当たりがあるからと言って、はいそうですか、と言えるわけでは無い。

 

 

「言わんとする事はわかりますが、こういう問題は安易に手を出すと悪化しかねませんからねぇ……」

 

「その件は私たちも何度か関わっているんですが、止めても止めても新しい子にターゲットを移すだけでまるっきり効果が無いんですよ……」

 

「それにどうにも、大っぴらに物を隠したり暴力を振るったりといった直接的なものはしないようですので、我々としても対処が難しいのです」

 

 

この小学校教師たちの声に、平塚先生は少なくない憤りを感じる。ただでさえ『熱血教師』に憧れがあるタイプの平塚先生にはこんな諦めたような態度はとても癪に障った。

 

 

「私の生徒たちは『解決の為に動く』と言っています。どうか力を貸してあげてはくれないでしょうか。全ての責任は、私が取ります」

 

 

この通りです、と言って頭を下げる平塚先生を見て、学年主任を務める初老の男性教師は懐かしさを覚えていた。20代の新人教師にありがちな『金八先生』や『GTO』に憧れを抱くタイプで、自分にも恥ずかしながら同じ様な事をした覚えがあり、少々心を動かされる。

 

 

だが、悲しいかなそれが上手くいく事はないだろう。昨今では『教師に相談しても対応してくれなかった』として学校側が責任を被ることが多いが、大抵の場合、イジメ問題は教師が関わりすぎると悪化の一途を辿る。下手に手を出す訳にもいかないのだ。

 

 

それでも、この平塚先生の感情は大切なものだと、学年主任の男性教師は思う。こうして問題にぶつかっていき、生徒も教師も共に成長して行くのだろうと。

 

 

「いい生徒さんたちですねぇ。優しさもあり、行動力もある。さすがは総武高校さんだ」

 

「ありがとうございます。では……」

 

「はい、許可しましょう。ですが、下手に関わると悪化しかねないのも事実。一応行動を起こすときは、私を通してもらいます。宜しいですね?」

 

「……はい、わかりました。お時間をお借りして、申し訳ございません。私からは以上です」

 

「はい。ではこれ以上意見がなければ解散にしましょうか。見周りの先生方は2時から1時間交代で行いますので、頑張ってください。それでは、会議を終了します。お疲れ様でした」

 

 




3週間ほど策を考えていたが、結局何も思いつかなかったので保険の小町に頑張ってもらった。上手い策を考え付く発想力が欲しい……


俺ガイルのアニメを見て思った事なんですが、八幡が策をみんなに伝えたのがコスp……衣装に着替え終わった頃……

つまり、先生たちに報告してなくね?

先生が八幡の事を最低呼ばわりしたのも、もしかしたら報告なしに危険な事をした腹いせって事なのかも……とか考えてみたり。

要望のあったしのぶプロフィール

川尻しのぶ

・髪型は軽くパーマをかけたポニーテール。うなじがキュート。胸はBカップ(くらい)。背は戸塚以上川崎未満。
・高校一年の頃、八幡となんやかんやあって『なんでロマンチックなの』と思い、以後アプローチを続ける。そのせいで元々つるんでいた派手めのグループから外れてしまったが、特に気にしていない。
・上記の様に、結構ロマンチスト。
・猫が好き
・趣味は食器集め。お気に入りは無理して買ったウェッジウッドのハンティングシーン。
・ぶっちゃけこのSS自体見切り発車なので余り細かい設定はない。『なんやかんや』の部分も基本未定。
・でも気が乗ったらグループ結成編とか書くかも。正直ルミルミ編あんまり気乗りしないし。

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